貴女の隣に立つ為に   作:ウルタールの猫

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憧れの女性との共通項が欲しくて

機械を打ち据える作業をひたすら繰り返していると地響きと共に大きな機械が姿を現した。

受験生達は機械から距離を取るように動いている。

 

0の数字。

逃げていく受験生。

総合的に考えて、あれがポイントのない機械なんだろうな。

 

ここから見る限り大きさは20M程。

あの女性の大きさと、ほぼ一緒の大きさ。

僕にはまだ、至れない大きさ。

 

思考が停止する。

 

 客観的に見ている僕がいる。

 

作業を中断。

 

 絡め取っていた機械を放り投げる。

 

ビルの屋上へと駆け登る。

 

 階段を登るのがもどかしい。

 

屋上への扉を蹴り開ける。

 

 空が青い。

 

全力で柵を飛び越え、翼を広げて飛翔。

 

 雲がゆったり流れている。

 

全速力で飛び立つ。

 

 全身で風を切る感覚が心地よい。

 

目標は巨大機械。

 

 無機質な4対の瞳の様なパーツが赤く輝いている。

 

翼の生えている肩甲骨周辺の筋肉を総動員。

 

 重力の軛に抗う。

 

より高く上昇。

 

 身体へと負荷がかかる。

 

巨大機械の上を取った。

 

 上空30m

 

雄叫びをあげる。

 

 チャンネルが切り替わる。

 

全霊を尽くし、リスクとリターンを度外視し、憧れへ至るためだけに、全身を巨大化する。

質量が増大し、巨大機械に落ちていく。

 

 鉄の塊へぶつかる痛みに身構える。

 

今肥大化できる最大の大きさ10M。

 

相手の上空を確保し、落下するだけ。

シンプル故に絶大な威力を叩き出す。

名付けて「アトラティックプレス」

 

僕がボディプレスを繰り出したことによって地響きが起こり、巨体のバランスが崩れた。

咄嗟に触腕を3本突き出して、かろうじて三点でバランスを取る。

 

巨大機械と僕。

これだけの質量だ。

転けてしまえば地震騒ぎになりかねない。

 

ただでさえ重い自重に加え、僕の体重を支えている今、巨大機械は一歩も踏み出せない。

僕を邪魔に感じているのか、やろうとしている事を悟ったのか、必死に腕部で押し退けようとする。

 

  だけど、負けられない。

 

触腕を巨大機械に絡み付かせ、その動きを封じる。

 

  大きさは未だにあの女性には遠く及ばないけど。

 

動きを止めた巨大機械へ全力で絡ませた触腕へ力を込める。

 

  背後を逃げていく小さなヒトには興味は湧かないけど。

 

ミシミシと機体が悲鳴をあげる。

 

  巨大な危険からヒトを守る。

  その共通項を獲得するために。

 

巨大機械が砕けるのと同時にプレゼントマイクの終了を告げる声が響く。

 

 

 

思わずやってしまった。

 

あの巨大機械を倒す必要性は皆無だった。

行動不能にしても加点のない0ポイント。

つまりは何の特にもならない行動。

その間に得点をもつ機械を倒した方が評価も上がっていた可能性が高い。

 

あんな巨大な駆動機械、もしかしたら雄英から巨額の予算を投じられ開発された物かも。

 

 

 

 

 

 

 

...減点行動ではないことを祈ろう。

 

 

そんな事を度外視してでも、あの日見た液晶越しの女性に近付きたかった。

その気持ちが強くてやってしまった。

 

だけど僕にもできた。

ヒトとプログラミングされた機械という差あれど、巨大な敵を倒したんだ。

部分的に肥大化分には問題はないが、全身を巨大化するとすごく眠くなる...

 

雄英の保健医であるリカバリーガールが怪我をした受験生に治癒を施して回っている。

 

今は少し場所を借りて仮眠を取ろう...


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