ヴィラン襲撃後の授業。
昨日は休校日だったけど、流石に何日も休んでられないのか授業は再開される。
皆がどう難を逃れたのか話している。
あの後、脳ミソヴィランとプロレス擬きを応援の先生が来るまで繰り広げた話は皆顔が引きつっていた。
予鈴が鳴り、扉が開く。
相澤先生は重症と聞いている。
代理の先生が来るんだろう。
個人的に仲が良いって言ってた山田先生だろうか?
相澤先生がミイラの様相を呈して入ってきた。
休めば良いのに、と言ったトゲトゲな子に、まだ戦いは終わっていないと告げる相澤先生。
曰く、雄英体育祭が迫っていると。
人類に個性が芽生え、共通のスペックを保てなくなった社会ではルールでゲームを規制する事は難しい。
レスリング、相撲、ウェイトリフティング等では増強系、異形系が有利になり。
卓球、テニス、ラグビー等の球技は個性によっては試合にならない。
スポーツの類いはマイナーになったのだ。
しかし、そうなってくると人々はエンターテイメントに飢える。
そこで脚光を浴びたのが雄英体育祭だ。
ヒーローの卵による全力を賭けた青春の日々。
毎年数々のドラマと話題を呼ぶこのイベントは全国にテレビ中継される。
個性未発現時代の高校野球の甲子園。
サッカーの国立のピッチ。
そういった若者の青春の発露を楽しみにする大人達も多いと聞く。
そう言えば一部の大人達は仲間内で雄英体育祭をトトカルチョのネタにしているらしい。
『ほのぼの荘』の隣の部屋の深井 太権さんも僕にベッドしたから負けるなよ、と激励してくれた。
全国の色んなヒトに向けて生中継されるのだ。
もしかしたら、あの女性も見てくれるかもしれない。
せめて、無様を晒すのは避けなくては。
できることなら、格好いいと思って欲しい。
けど、相手も大人の女性だ。
有望だ、と思ってもらえる位には活躍したい。
例年の傾向からして複数の種目を予選として最後には一対一、というのがお決まりの流れだ。
せめて、そこまでは出場したい。
1日かけての長丁場。
こういう場合、目立つ方法は大きく分けて3種類ある。
1つ。
第一種目で他が温存している中、全霊で突出して話題をかっさらう。
2つ。
序盤は実力を隠して体力を温存、最終種目で実力を発揮してダークホース的に注目を集める。
3つ。
圧倒的な実力を示して、終始他者を寄せ付けない。
1つめは一番労力が少なくて済む。
対抗馬が少ないからだ。
常識的に考えるとここで全てを出しきってしまうと後が続かないし、他者のマークも相応に厳しくなる。
その分、総合順位に響いてしまうだろう。
2つ目はそれなりの労力はかかるが、ハイリスクハイリターンだ。
他のヒトも大なり小なり似たような事を考えるからライバルが増える。
何故なら、中継用カメラの台数と表示映像は限られているからだ。
当然、同時多発的に複数人が目立とうとすると目立てない確率が出る。
それに、序盤力を温存して早期脱落してしまうと目も当てられない。
3つ目が一番妥当な気もするが、一番難しい。
何せしっかりとした地力と、相性に左右されない安定性、目線を奪う特異性。
パッと思い付くだけで複数の要素を持ち、周囲の人間と実況者や有力者へ事前にある程度注目される必要がある。
大規模な範囲へ働きかけるハーフな子。
音も見た目も派手な爆発な子。
他、推薦入学者等の一目置かれる肩書きを既に手にしているヒト達。
そう言ったスクールカーストの上位に君臨するヒト達の戦場だ。
ここは大人しく、2つめのプランを採らざるを得ないかなぁ。
そんな事を授業を聞き流しながら考える。
放課後、帰ろうとすると廊下にすごいヒトだかり。
皆ヴィラン襲撃の話を聞くため押し掛けて来たらしい。
仮想競争相手の情報収集に余念がない、と感心していると、爆発の子がすごい勢いで周囲を煽る。
体育祭まであと二週間。
他クラスとこの空気感で学校生活送るのは憂鬱だな...