貴女の隣に立つ為に   作:ウルタールの猫

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更新しようと思いつつ区切る場所が分からなくなっておりました。
すごく中途半端ですが更新します。
また、今話も独自解釈があります。
ご注意ください。


這い寄る霧

翌朝、HRの時間までマシラオ君に昨日あった出来事や授業の内容について話を聞いた。

 

雄英のセキュリティを掻い潜り敷地内まで入ってきたというのは常軌を逸しているとも言える。

 

終った事をどうこう言っても仕方がないけれど、委員長決めもあったようだ。

 

欠席裁判の生け贄になってしまったかと思ったが、ヒーロー科はやりたがるヒトが多いようで助かった。

 

僕はやりたい訳ではないからだ。

 

口下手だし、リーダーシップを発揮する場面は少いだろう。

 

だからこそテンヤ君が委員長と聞いて反対することもなくむしろ賛同した。

 

朝のHRでは、今日の朝から行われるヒーロー基礎学では救助訓練で相澤先生とオールマイトともう一人でするとのこと。

 

敷地から少し離れた場所で行うから全員バスに乗り込むように指示が出る。

 

道中カエルっぽい子から、デク君の個性がオールマイトの個性と似ているね、と訪ねられていた。

 

公式に秘密とされているオールマイトの個性だが、力を振るって骨がバキバキに折れる訳ではない。

 

なので同一ではないだろうとトゲトゲな子が指摘していた。

 

何にせよ彼からすれば派手な個性で羨ましい

 

と、こぼしていた。

 

けれども僕は派手であれ、地味であれ、その個性の輝く場所はきっとあると思う。

 

例え、指を伸ばすだけの個性だとしても、ヒーローになれなくても、ピアニストやヴァイオリニスト等の音楽家として大成できる可能性がある。

 

むしろ、スポーツと違い芸術の分野では個性の使用は咎められるどころか、奨励されている。

 

複眼の個性で見た万華鏡の様な風景画。

 

ヘソから息を吸う個性の循環呼吸による管楽器の超絶技巧を凝らしたソロ曲。

 

身体からバネを生やす個性によるアクロバティックなダンス。

 

ぬいぐるみを自在に操る個性による人形劇。

 

枚挙にいとまがない程、個性で活躍するパフォーマーは多い。

 

表現に壁はなく、言語、文化、人種あらゆる溝と壁を飛び越える。

 

...そんな益体もないことを考えているとどうやら実習施設に着いたみたいだ。

 

まるで、テーマパークのような内観にクラスメイトのテンションは上がる。

 

責任者の13号先生から挨拶があったが施設名は大阪のテーマパークと被ってしまったみたいだ。

 

13号先生から授業前にお小言と称した、お話が始まる。

 

行き過ぎた個性...

 

嫌な記憶が刺激される単語だ。

 

思考を振り払い、13号先生の話しに意識を向ける。

 

命のために個性を応用させる...

 

その方法を考える。

 

それは凄く有意義な事なんだろう。

 

それはとても建設的な事なんだろう。

 

それは夢に溢れた素敵な事なんだろう。

 

けれども、理不尽な突然は唐突に現れて。

 

ヒトの悪意は奇襲を仕掛ける。

 

少し降りたところにある噴水前の広場に黒いモヤが現れた。

 

モヤからは続々とヒトが出てくる。

 

トゲトゲの子がこれまでの雄英のやり方的に既に始まったのか?と発言しているが今日はレスキュー訓練、関係はないと思う。

 

そしてカレ等の表情は悪意に満ちていた。

 

暴力を振るう、力を振り撒く、倫理に捕らわれない、暗い愉悦に満ちた表情。

 

相澤先生が指示を出す。

 

カレらはヴィランと断定。

 

僕ら生徒は一塊になって避難を、13号先生はその護衛。

 

相澤先生が迎撃にまわるようだ。

 

デク君がイレイザーヘッドの個性を分析した上で不利だ、と苦言を呈したが、相澤先生は一芸だけではプロヒーローは勤まらない。と言い残し駆け出した。

 

噴水前のヴィラン達は遠距離攻撃持ちと思われる一部が相澤先生へ向けて標準を合わせ、個性が発動しないことに首をかしげている。

 

その不意をついて捕縛武器を巧みに操り二人のヴィランが膝を折る。

 

個性が消されるのであれば、と異形系のヴィランが前へ出てくるが機先を制した顔面への拳が突き刺さる。

 

捕縛武器でその大柄な身体を絡め取り、別の襲い掛かってこようとしているヴィランへ投げ飛ばす。

 

分析している場合ではないとテンヤ君の注意喚起に見とれていた僕とデク君は慌てて後に続こうとしてそいつは現れた。

 

新月の夜の闇を思わせる深い黒。

実体を感じさせないモヤのような身体。

いつか、どこかで聞いた、とある神の化身がこのような姿を取ると聞いたことがある。

そのモヤに包まれた人物は気が付けば別の場所へ運び去られるらしい。

 

僕の不安を取り除くかのように、心の奥底に空気が漏れるかのような声が聞こえる。

 

アレはグレートオールドワンではない。

仮に化身だったとしても力弱く、本柱にとってどうでもいいもの。

アレがいなくなったところで気にするものはいない。

と、教えてくれた。

勝ち目のない無謀な戦いではないことに一安心しつつ身構えた。


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