戦闘訓練終了後、オールマイトは皆に発言を促した。
またもや頭の良い子の手が上がりオールマイトの笑顔がひきつる。
頭の良い子自身の訓練以外の講評の度に的確な意見を列挙されれば、さしものスーパーヒーローもこうなるのか...
と、無駄な思考を割いていたが頭の良い子曰く、今回のMVPは僕に輝いたらしい。
チームのできることと、できないことを分析したうえでできなくて困る事に時間をかけてでも行ったのは良いこと、と誉められる。
しかし悪かった点として、時間を割きすぎた弊害で訓練終盤の戦闘が荒っぽくなってしまったこと。
マシラオ君の意見をもう少し聞いて作戦へ取り込み、より二人の連携を密にできるように調整できれば尚良し、といったところが挙げられる。
ヴィランチームの二人へも行動に講評が語られる。
やはりコミュニケーション能力と他者の能力分析力、得た情報を活かした作戦立案能力が僕の今後の課題だろう。
駆け足で授業が終わり各々が更衣室へ戻るべく、先ほどの授業の感想を語りながら歩を進める。
...油断した!
既に中の良い者同士でグループ分けが始まってしまっているのだ。
そう言えば、他のグループを見ている最中コミュニケーション能力の高い子達同士で意見を交換していた。
成績という、普段は影を潜める優位要素ではなく、コミュニケーション能力という普段から影響力をもたらす、その圧倒的な武力を用いて、既にスクールカーストは形成されつつあるの。
しかし、ここで僕が迂闊に話しかけに言ったら墓穴を掘りかねない。
何こいつ?
ウゼー、って。
話しかけられるのを待つべきなのか?
そんな葛藤の中メガネの子とポワポワの子、モサモサの子が話しかけに来た。
この時ばかりは3人が天の使いに見えた。
メガネの子が放課後に都合が付けば何処かで集まって、互いの健闘を称えて検討を重ねようとの事。
これは、相澤先生が諦めろと言っていた放課後にマックで談笑フラグなんじゃ...?
マシラオ君はノータイムでオッケーしてる。
自然に皆の目線がこちらに集まる。
喜色を抑えつつ、了承の旨を伝えるとちょっと驚いた表情をしている。
...そんなに人付き合い悪そうなのかな?
教室へ戻る間、ポワポワした子改めオチャコちゃんが楽しげに話題を振り撒き、メガネの子改めテンヤ君は独特のジェスチャーをし、モサモサの子改めデク君は表情がコロコロと変わる。
僕とマシラオ君はそんな彼らを眩しそうに見ていた。
相澤先生による合理的ホームルームを経て時刻は放課後。
他のクラスメイト達も検討会という名の反省会をするみたいで教室には結構な人数が残っている。
デク君は目付きの悪い子に伝えなきゃいけない事があると言い残し駆け出して行った。
てっきり参加すると思っていた僕らは拍子抜けである。
観察眼、洞察力、プロヒーローの知識は光るものがあるとのことで少し残念だ。
基本的には対戦相手のチームと場面場面での各々が感じた所感を意見交換。
瞬殺で勝負が決まってしまった触覚の子とカエルっぽい子に客観的な意見を求めたりしている。
触覚の子は主体的に、カエルっぽい子は客観的な意見を出してくれるので多角的に意見交換ができる。
残念なのは今日は『ほのぼの荘』のOBの人達が食材を持ち寄って闇鍋パーティーをするらしいので支度を手伝わなければならない。
中座する形になってしまってすまない、謝ると他府県から電車で通っているヒト達も良い時間ということで解散になった。
帰り道、ある程度方向が一緒なグループで固まって談笑しながら歩く。
途中まではテンヤ君やマシラオ君も一緒だったが、電車通学らしく途中で別れる。
オチャコちゃんもそうかと思っていたが、現在は上京して一人暮らし中とのこと。
仕送りも食費がカツカツらしい。
今日みたいにウチのOB達が食材を持ち寄って来る日は度々あるので、次回は良ければ参加する?と聞いてみれば食い込みにぜひとも参加するとのこと。
デク君やテンヤ君、マシラオ君なども誘おう!といったところで別れ道に差し掛かったので手を振って見送る。
約束をしてから思い出す。
ウチの『ほのぼの荘』の住民達やOB達は大概が異形系個性だ。
流石に僕みたいなこの世の生物の何れにも該当しなさそうなガチ異形はいないけど、結構な人達に避けられる経験を持つ人達ばかりだ。
そんな彼らだから余所者であるカレらに、異形系ではない個性を持つヒト達に良い感情を抱かないかもしれない。
僕に偏見を抱かずに接してくれるカレら、カノジョら。
同胞として暖かく接してくれる彼ら、彼女ら。
双方が仲良くできれば良いな、と想いながら自転車で坂道を下っていく。
...風に散る桜の花弁がやっぱり鬱陶しい。
明朝の更新は諸事情によりおやすみします。
楽しみにして頂いている方々はSANの回復に努めて頂ければと思います。