スーパーロボット大戦OG 人理の守護者   作:MATTE!

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良薬は……

明日香結里の日記

△月◎日

深海で圧壊しそうになったり、ラトと一緒に着せ替え人形になったり、DCに襲われたりしたけれど私は元気です。

皆がラトの魅力にようやく気づいて口々にかわいいって言ってて、似たような格好をしていた私に何も言わなかったけれど、まあそこは別に良いです。

ラトは可愛いもん。だからいいんです。

ローちゃんに何拗ねてるのと言われたけど別に私は拗ねてないです。

お姉ちゃんがかわいいって言ってくれたから別に良いんです。

 

 

△月★日

……喋る猫を私は初めて見た。

正確には猫じゃないらしいけど、見た目は完全に猫だった。そんな猫たちを連れていたマサキさんが仲間になった。

そして仲間になって数分でマサキさんはものすごい方向音痴だということが発覚した。

リオさんに艦内を案内されてたのに、ものの数分ではぐれて迷子になったらしい。

捜索隊が結成される事態にもなったけど、なんとかマサキさんが見つかった。

見つかったというか、マサキさんが迷子の末、皆がいる格納庫にたどり着いたというか……カザハラ博士の危機に間に合ったんだからグットタイミングだったのかな?

イルムさんがヒュッケバインからカザハラ博士が持ってきたクルンガストに乗り換えることになった。

……短い出番だったね。ヒュッケバイン。

お姉ちゃんがイルムさんのクルンガストを見て「私の機体……」って呟いてたけど……やっぱりパクられちゃったのがショックだったのかな。

 

 

 

 

******************

 

 

 

 

 一日の日課となっているシミュレータを終え、小休止をしようと食堂の扉を開けたとき、私は信じられない光景を目にした。

 

 

「クスハちゃんと私の合作です。おいしいですし元気がでますよ、これがね!」

「ええ、効き目は抜群です!」

 

 

 ソレはお姉ちゃんとクスハさんが自分たちで作った栄養ドリンクを皆に勧めている姿だった。

 そんな現実から目を背けたい状況だったけど、逃げちゃ駄目だと私は声を張り上げた。

 

 

「──それを飲んじゃ駄目!!」

「え!?」

 

 

 私の声に驚いたのか皆の意識が食堂の入り口にいた私に移る。

 惨劇は回避されたと思った。しかし、最初に勧められていた彼だけがソレを口にしてしまった。

 

 

「ぐがっ!?」

「マサキ!?」

「お、遅かった……」

 

 

 ドリンクを口にしてすぐにマサキさんがばったりと床に倒れた。皆は慌てふためきマサキさんに駆け寄る。

 そんな中、リュウセイさんがぎこちなく私を見て、お姉ちゃんを指さした。声が出ないのかリュウセイさんの口はパクパクと動くだけで音を発していない。

 でも……うん、分かるよ。リュウセイさんが言いたいこと。私にはよーく分かる。だから私は頷いた。

 あの日、クスハさんの栄養ドリンクを初めて飲んだとき、私は察した。ああ、リュウセイさんも私と一緒か、って。

 リュウセイさんの思うとおり、お姉ちゃんの特製ドリンクは──

 

 

 

 

 クスハさんと同じくらい激マズです。

 

 

 

「相当お疲れだったんですね……」

「そうね……せっかく疲れがとれるドリンクを作ってきたのに……」

 

 

 いやそのドリンクが原因だよ。皆の心が一つになる。

 自分たちのドリンクが原因でマサキが倒れたとも露とも思っていない二人に全員が心の中でツッコミを入れた。心で思うだけで直接口に出すことはしなかったけど。

 

 

「……“それ”一体何が入ってるの?」

 

 

 さっきまで健康体だった人間が一口飲むだけで気絶した代物(劇物)

 一体どんな物が入っているのかとアヤさんは尻込みしながらその中身を聞く。

 

 

「え?そんな特別なものは入れてないわよ?林檎、バナナ、蜜柑……」

 

 

 指を折りながらお姉ちゃんはドリンクの中身を言っていく、それは何の変哲も無い普通の食材で、皆はどうしてそれで人が気絶する飲み物ができあがったのかと困惑の表情を浮かべる、でもその後半の中身を聞いて彼らは理解した。

 何でかって?それはね……

 

 

「紫蘇、ネギ、人参、大豆、納豆、アジ、マグロ、レバー……」

 

 

 一杯のドリンクに果物、野菜、魚、肉……全部入れてるんだもん、不味いに決まってるよね。

 

 

「うん、ごくごく一般的なものしか入れてないわ」

「待て、色々と突っ込みたいところがあるが、とりあえずこれだけは言わせろ。何でもかんでも一つにまとめるな!!」

「えーでも、あれこれ色んなものを食べたり飲んだりするよりも一杯のドリンクで栄養が補給できるなら良いじゃない。入れたものだって健康に良いものだけで、身体に悪いものは一つも入れてないわ」

「シオン博士。健康に良いものを全部入れたからといって、それが本当に健康に良いものかは別です」

「そもそも常識を考えてください。魚と肉が一緒に入った飲み物なんて100%おかしいです」

 

 

 ドリンクの中身にイルムさんが、何でもかんでも入れれば良いってものじゃないと怒る。

 お姉ちゃんは変なもの入れてないって主張するけど、そもそもそれを全部一緒くたにしているのがおかしいとライさんとローちゃんにつっこまれた。

 お姉ちゃんはわかってないようだったけど。

 ……どうして普通の食材で人一人気絶するような代物(劇物)を二人は作れるんだろう。

 

 

 ……クスハさんは分からないけど、お姉ちゃんの名誉のために言っておくと、レシピ通りなら美味しいものを作れるんだ。こんな状況じゃ説得力は全くないけれど。本当に、レシピ通りなら美味しいんだよ。

 ローちゃんだって言っていたもん。お姉ちゃんはレシピ通りに作れば美味しいものを作れるって。

 だけど……

 

 

「最初に味見したか聞くべきだった……」

「失礼ね、人に飲ますものなんだから味見はしてるわよ。“美味しい”ことは確認しました」

「!?」

 

 

 誰も手をつけなくなったドリンクを飲むお姉ちゃんに周囲がどよめいた。

 科学者として(知力)軍人として(戦闘力)アイドルとして(魅力)、全てがバッチシなお姉ちゃんの唯一の欠点。

 それが味覚音痴(これ)だ。

 お姉ちゃんの味覚は一般人(私達)には早すぎる。

 ……味見さえ……味見さえしなければ美味しいものは作れるんだ……本当に、味見さえしなければ美味しいものは作れるんだ!(本当に重要な事だから何度も言いました)

 

 

「ま、マサキは大丈夫なの?」

「大丈夫……かどうかは分からないけど。起きたら元気いっぱいにはなると思うよ」

 

 

 心にトラウマを負うだろうけど、体は問題ない……それどころか飲む前よりもっと元気になるんじゃないかな。

 二人のドリンクをそれぞれ飲んだ私は断言する。

 お姉ちゃんのドリンクもクスハさんのドリンクも飲んだ後ものすごい元気が出るのは間違いない。

 だけど……わざわざアレを飲んでまで元気になるメリットは正直ない。

 良薬は口に苦しって言うけどアレは違うよ。不味いよ。

 

 

「こんなに美味しいのに……」

 

 

 たった一名(マサキ)の犠牲で「最凶健康ドリンク失神事件」の幕は閉じた。

 しかし、私達は忘れてはいけない。

 彼女達はまた、第二、第三のドリンクを作り出す。

 皆の疲れをとる。とても純粋な善意で彼女たちはまた第二、第三の地獄を作り出すだろう。

 

 

 

 

 地獄への道は善意で舗装されているものなのだから……

 

 

 

 

 

△月@日

お姉ちゃん+クスハさんの合作、最凶健康ドリンク失神事件の衝撃が収まらないうちにまたDCに見つかって襲われた。

ビアン博士が新機体に乗って現れたり、他にも色々あったんだけど……正直あまり記憶にない。

色々あったのになぁ……最凶ドリンク失神事件の衝撃が……というかそれしか印象に残った記憶がない。

恐るべしお姉ちゃんとクスハさん。ご愁傷様ですマサキさん。

 

 

 

ちなみにこの事態を深刻に見たダイテツ艦長からお姉ちゃんとクスハさんは調理場へと立ち入り禁止令が出た。

二人はものすごくガッカリしていた。

 

 


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