歴史は常に残酷だ。
“反乱が起きました、反乱を鎮圧しました。”
こんな短い言葉に一体どれだけの犠牲が含まれているのだろう。
個人は歴史の波に飲み込まれ、消えていく、残ったのは数ある中の一人という事実だけ。
そこに一人一人の意思など関係ない。
どんな思いがあって反乱に参加したのか、どんな人生を送っていたのか。
それを世界が気に留めることはない。
だから私は心に誓う。他でもない自分自身に。
──例え、
──私は、彼らを忘れない。
──人が歩んだ道筋を、無意味だったと言わせない。
──私は人の歩みを見守る者。
「“人”はとても弱くてちっぽけで、一人じゃ何もできないくせに、すぐに争いあう馬鹿な存在です……」
次元の狭間で少女は呟いた。
「そんな愚かな存在だとしても私は人を見捨てない」
人の愚かさは
「私は人を見捨てない。だって──」
──“ ”
「少女は言いました“私は──”あら?」
女性はベッドの中で、子供に寝る前の読み聞かせをしていた。
話を続けているうちに腕の中にいる女の子が眠そうにコクリコクリと船を漕いでいるのに気づく、女の子は目をこすりながらも夢の中に旅立つものかと堪えていた。
「むー……」
「眠いの?ならお話はまた今度にしましょうか」
女性は絵本を閉じ、ズレた毛布を掛けなおして背中をポンポンと叩いて寝かしつける。
「おはなし……いつも途中」
「ふてくされないの、続きはいつか教えてあげるから」
「むー……」
女の子は少々納得がいかない表情を見せるが、睡魔には勝てず女性にすり寄る。
「……ぎゅーってして?」
「うん、ちゃんとぎゅーってするよ」
女の子のおねだりに、女性は快く答え、抱きしめる。
「ぎゅー……おやすみにゃさい……スースー」
「ふふ……おやすみユウリ」
暖かいぬくもりに包まれながら、女の子は夢の世界に旅立った。
その様子を愛おしそうに見つめ、女性もまた眠りについた。
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ゆうりのにっき
○ がつ △にち
また、お話のとちゅうで寝ちゃいました。
いつになったらお話全部聞けるのかなぁ。
あと、きょうも同じゆめを見ました。
またいつもの知らないお姉さんが色々なことを教えてくれました。
だだ、……“ガンなんとか”とか、“ゲッター”とか、“アカシックレコード”とか、“ほかん”とか、“きかいてんし”とか。言ってる意味がよく分からなかったです。
そんなむずかしいことばっか教えてくれるお姉さんだけど、お姉さんはいつも最後にこう言うんだ。
「あなたはあなたの道を歩んで」
いつもはむずかしいことばっか言うくせに最後だけは当たり前のことを言ってくるの。
当たり前なことを言ってくるお姉さんにちょっと……いやけっこうむーっとするんだけど。
子ども扱いしないで!ってわたしがおこるとお姉さんは困ったようにわたしの頭をくしゃくしゃとなでてくる。
それにまたむーっとするんだけど、でも悪い気はしなくて結局そのまま頭をなでられました。
でも……
夢の中のお姉さんは──とても悲しそうでした。
おわり
──私たちは
──人々の行く末を見守る者
──人々の想いを記憶する者
──人々の全てを、我等は