・待機艦娘
ホムンクルスとして鋳造されたものの艤装が準備されていない艦娘。
水上歩行もできない為陸上での射撃訓練・体力作りを主に行う。
まれに間宮のように自分で役割を見つける者もいる。
その鋳型のは魔術界でも最高のものが利用されており、通常のホムンクルスより長い耐用年数を誇る。
大淀は招かれた部屋の中を見回した、この部屋の主人がとったであろう写真が飾られている。
備え付けの机には書きかけの新聞がインクの匂いを醸し出している。
「いやぁ、大淀さんがいらっしゃるなんてビックリしました」
「急に押しかけてしまってごめなさい、お邪魔でしたか?」
「そんなことないですよ、ちょっと息抜きしようとしてたトコですから」
目の前に出された紅茶は確か、金剛が嗜んでいたものだったように覚えている。
待機艦娘として、十分な給金を得ているとは言えない彼女がそれでも拘っているのがこの紅茶だという。
(こういう拘りがある人ってどれくらい居るのかしら)
提督が不在の間、仕事に追われて来たせいかこう言った「遊び」のある生活と言うものを考えた事が無かった。
兵器として鋳造された身として当然だし、今まで疑問を持たなかったが。
(戦争に勝つ、その目的さえ忘れなければこう言う時間も悪くないかしら)
ならば、休みを楽しむ為にも自分の仕事を全うしよう。
「青葉さんが面白そうな事をしていると聞いたから、見せてもらえないかと思ったの」
「も、もしかして大淀さんは青葉新聞に反対派、だったりします?」
「いいえ、そんなつもりはないけど。
どんなふうに作るのか気になったから見学させて貰いたいと思ったの」
ホッと、安心した様子の青葉がどれだけこの新聞部に入れ込んでいるかがうかがえる。
「それで、新聞はどの様に発行されるのかしら?」
「とりあえずは月一で発行して、毎回誰かにインタビューしたコーナーを載せようと思ってます。他には季節の話題や戦績優秀な人の武勲コーナーを作ろうかと」
「その話も提督と相談を?」
「そうなのですよ、『事実を捻じ曲げない』『誰かが傷付く記事にしない』『部外秘は載せない』なら自由にしてもいいって言われました」
完成した新聞は鎮守府本館のロビーに張り出す事にしたらしい。
「ねぇ、提督へのインタビューについて聞いてもいいかしら」
「ええー、ちゃんと記事にするまで待って貰えませんか?」
「どうしても気になってるの、だからお願い」
「おお! もしかして大淀さんも『そっち派』ですか!?」
いきなりテンションを上げて乗り出す青葉、何やら目がキラキラと(獲物を見つけたかの様に)輝いている。
「青葉さんちょっと近いです! それに、そっち派と言うのは?」
「『提督の事が気になっちゃう派』の事です。 新人でしかも若い男性なら話題も盛り上がろうと言うものですから、既にそわそわしてる子も居ますよ」
どうやら他には『提督なんか居なくても戦えるんだからね! 派』や『使えるならそれでいいけど興味もない派』があるらしい。
青葉には名付けのセンスが壊滅している事がよくわかる。
「そうね、気になっているのは確かですよ」
「そうですかそうですか! いやー叢雲さんにはイキナリのライバル登場ですか面白そうですね!」
(勘違いさせてしまったようだけど、提督の情報を集めるにはちょうどいいかしら)
「だから、お願い。少しでも良いからお話聞かせてもらえるかしら?」
「もうしょうがないですね〜。
青葉さんはジャーナリストだけど、恋する乙女の味方でもありますから!!」
大淀は大本営から送り込まれたスパイです。
国連のカルデアに対立する派閥から派遣されました。