専業主夫目指してるだけなんですけど。   作:Aりーす

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腕月治った日 次は怪我しないと決めた曜日

 

 ついに治りました。やっと治った。骨折って割と長いときは長いんだな。今まで骨を折ったことは無かったから知らなかった。精々バスケでボールの取り方がまずくて突き指をして、そのまま続けようとした瞬間にボールが飛んできて指がヤバくなった時以来の痛さだ。骨折の方が痛かったけど。

 

 まぁ結構日にちが経った。ほんとはもう少しちゃんと日記を書いたり、料理の練習をしたり、大会本戦の様子を現場で見たりしたかったのだけど、見事にドクターストップとりんどー先輩に止められた。

 

 一応結果だけは知ってる。幸平くんは薙切(ア)さんに勝って、美作くんにも勝って決勝まで行った。新戸さんは残念ながら負けてしまったらしい。でもその相手は結果的に優勝した訳だし、仕方ないといえば仕方ないのかもしれないけど、そう割り切れるほど心は強くないと思う。

 

 決勝は幸平くん、葉山アキラくん、黒木場リョウくんという3人での決勝だったらしい。なんで3人で決勝することになったんだ、とか色々気になることはあったけど、まぁそこは気にしなくていいと思う。そんな時もあったんだって感じ。

 

 決勝は確か秋刀魚だったかな。秋刀魚って割と難しい魚だと思う。ジャンル次第では捌く事も得意じゃない人だっていると思うし、自分で市場に行って秋刀魚を選ぶのが前提だったらしい。

 

 つまり秋刀魚を選ぶことが出来ない人もそこで落とされる。流石は決勝と言うべきなのか?でも魚を一切使わない国の料理を作ったりしてる人にとっては無理なお題だよな。オールジャンルで出来るようになれ、ってのを今言われても割と無理だよなぁ。

 

 料理自体は一応映像では見た。作ってる段階で確実に美味しいってのはわかったけど、優勝が誰かまでは予想できなかった。あの中だと幸平くんは発想ではピカイチだったけど、圧倒的に上に立てるジャンルが無いってのが今回は仇になったかな。

 

 他の2人は自分の得意ジャンルを活かしたりできてる訳だし。幸平くんは発想と腕の2つで上に立ってる。だけどそれじゃ特化してる人には一歩足りない時がある。今回はそうなっちゃっただけ。実際あの3人の実力はほぼ横一線だと思うし。

 

 葉山アキラくんは優勝後のインタビュー的な奴で俺のことを言っていた。優勝する以前に、一年の中で最も脅威と思っていた者が参加すらしていなかった。今回の優勝は嬉しく思うが、全てを受け止めることはできない。と言っていた。

 

 これのどこに俺の要素があるのだろうか?りんどー先輩とかは俺の事とか言ってたけどなぁ、参加してない人なら他にもいるじゃん。薙切さんとかだって出てないし、俺はてっきりそっちを言ってるとしか思えない。

 

 そう言ったらりんどー先輩に溜め息を吐かれた。本当に頭の上にクエスチョンマークが浮かんでたよな、俺に。もしくは矢印とかで何言ってんだこいつ、みたいにされてるかもしれない。

 

 いつかあの2人とも話したりしてみたい。出来るなら料理とかを食べたり、作ってる姿を見たりして勉強してみたいとも思う。治ったばかりで無茶するなってすぐに言われるけど。

 

 そう言えば学園ではこれからスタジエールと呼ばれる実地研修が行われるらしい。それぞれが指定された店に行き、目に見える実績を残せないものは退学になる、という恐ろしい行事だ。

 

 の、はずなのだが。俺は怪我のせいもあり若干授業も欠席していた。その為スタジエールは俺は不参加になるらしい。りんどー先輩が言うには、雪はスタジエールは免除!というかねぇ、雪に見合う店ってのがあまりにも少なすぎて……と言われた。

 

 俺に見合う店ってなんだ?まぁ答えは分かってる。俺は家庭料理を作る専門になる人間。又の名を専業主夫になる人間。家庭料理を売りにしている店は少ない、いや、むしろ無いと言っても過言では無いからか!となった。多分これは正解。

 

 一応行かせる店はあったらしいが、怪我の安静時期と少しだけ重なったのと、予定では外国の店に行く予定だったらしい。その後日本に戻ってきてまた一軒、というハードスケジュールの為中止。どんなスケジュールを作ったらこうなるんだ?

 

 あ、だけどちゃんと代わりはあるらしい。どうやら今度誰かしらを呼んでその人に料理を振る舞う事になっているらしい。それに加えて何人かギャラリーが来るらしいけど、どんな状況になったらそうなるんだろうか。

 

 学園長、つまり薙切さんの祖父も何故かそれを見に来る、という事を言われた。おかしいだろ、秋の選抜の審査員としていたのは知ってるけど、俺は秋の選抜には参加してないぞ。運良く参加枠を手に入れてたけど。

 

 多分それは抽選枠とかが一個あったのかもしれない。もしくはそれまでの成績。俺は決して悪くなかったとは思うし、その加点が効いたのかもしれない。選ばれたからって一位とか決まってるわけじゃなかったし。

 

 で、スタジエールは三日後。その次の日に俺はそのよく分からないのに参加するらしい。何故か名前まで付いていた。秋の選考会というらしい。選抜からレベルダウンしてるからってネーミングセンスが良くなってるわけではない。悲しいね。

 

 いや、誰が来るかも知らないけど割と緊張するよ。先生とかも来るって言ってるらしいし。これは選考会っていうかこれは完全にあれだよ、補習だよ。不参加分を取り戻せって休みにでて来る補習みたいなのと同じだよ。

 

 お題まで渡されたし。でも良かった、お題は正直個人的には作りやすい食材だった。俺に与えられたお題はウナギだ。これはあっちで用意してくれるらしい。

 

 普通ならひつまぶしとかなんだよなぁ、個人的にはウナギも好きだけどやっぱりそれにかける蒲焼きのタレ。あれは市販のタレでも非常に美味しいと思う。あのままご飯にかけて食べる事すらあるぐらい。

 

 今回は流石にそれを作るわけにはいかないもんなぁ。そもそも俺はひつまぶしにつける山椒とかはかけたりしないから、ひつまぶしアレンジってのはあまり思いつかない。お茶漬けにする程度かな。しようと思ってはいるけどしたことはない。

 

 子供の頃はよくひつまぶしを暇つぶしと言い間違えた記憶がある。そういえば土用の丑の日にうなぎを食べるっていう習慣的なものの起源ってなんなんだろうな、今度調べてみるか?

 

 書きながら思ったけど安静しろって言われてる時点で、その選考会改め補習会まで練習とか出来ないんじゃないだろうか?まさかぶっつけ本番でやらかすのを期待しているのでは!?な訳ねぇわ。

 

 スタジエールに他の生徒が出発した後なら使えそうだし。ま、頑張れるだけ頑張ろう。数日間スタジエールに使われるなら選考会も数日使われる、とかそんな事思っちゃいけない。もしそれなら精神的にもたないぞ?

 

 久しぶりに部屋のベッドで寝るぞー、おやすみぃ。日記を読み返す50年後の俺くらいにおやすみぃ。

 

 

 

 

1万年と月2千年前から日 愛してる(多分)曜日

 

 

 日記をしばらく書けなかった反動なのか知らないが、月日と曜日の書き方が一気に爆発してる気がする。エクスプロージョンメモリーみたいな感じだ。直訳したら思い出が爆発四散してるけど。

 

 今日、ようやく選考会が終わった。呼び出されて緊張しながら行ってみたらさ、メンバーがおかしいんだよ。学園長は分かる、先生らがいるのも分かる。なんで水原さんと乾さんもいたんだ?

 

 そして極め付け。なんであの先輩いるんだろうなって思った。りんどー先輩とかはいるかもなって思ったけど、俺が唯一りんどー先輩以外でこの学園に入る前に知ってた人がいるとは思わなかった。

 

 まぁ、多分色々運営側とかやってるんだろうけど。あの人料理もだけど運営とかそっちの方が圧倒的に得意だろうし。実質コミュ力高いよ、初期からステ振りされてるレベル。

 

 その人の名前は叡山枝津也。俺より一年先輩の人で、りんどー先輩より少し後に知り合った人だ。正直俺からしたら先輩というカテゴリではなく、面倒見のいい兄のような感覚なのだが。

 

 多分あれは中学に入る前だったか。家でも色々あったし、俺も母さんがそこまで抱え込んでいたことも知らなかった。若干自分の事が嫌になってた時期もある。母さんを苦しめていたのは自分じゃないのか、とか。今になって思えばガキが何を考えてるんだ、って話だけど。

 

 その頃で1人になっていた時にたまたま会ったのが枝津也さんだった。あの頃から割と今みたいな感じだった。自分は恐ろしく上手く立ち回るが、敵を作ることを一切厭わない、という感じだ。

 

 だが、俺が1人でいるたびに枝津也さんは現れた。というかいつも同じ公園にいたからだろうけど。その時から相談に乗ってもらったり、時には何かを奢ってもらったりとされていた。

 

 何でここまでしてくれるのか、というのを中学二年ぐらいに聞いた覚えがある。まぁろくに答えてもらえなかったが。偶々であったり、いずれ俺に恩を返させる為、などと言っていた。言いながら目をそらしてる時点で嘘だと分かった。

 

 枝津也さんが居たことは知ってたし、ここに入学する事になった時はちゃんと連絡した。母さんとりんどー先輩と枝津也さんの3人しか連絡先が無かった中学時代、これが灰色の時代か。

 

 枝津也さんはりんどー先輩と同じように十傑に入っているらしい。2つ名は錬金術師、とかだったかな。たまに自作を作って持ってきてた事もあったし、料理が恐ろしく上手いのはわかってはいたけど、ここまでだとは思ってなかった。

 

 1度目があった瞬間にしてやったり、みたいな顔で笑われた。若干騙されたような気がする。結果的にこの日は何も聞かなかったし、いずれ直行して聞いてみようとは思う。

 

 予想外とは言え、ちゃんとやらなきゃいけない雰囲気だったので自分の力を出し尽くすつもりで作った。今回俺が作ったのは鰻のチーズオムレツと鰻のパエリアだ。

 

 チーズオムレツは元々頭の中にあった作り方だ。鰻とチーズは相性は良い方だし、チーズオムレツは切った瞬間のとろける感じがたまらない。そこに鰻の香りをつけるって事でチーズオムレツにした訳だ。

 

 ただパエリアに関しては作るつもりではなかった。元々俺はチーズリゾットを作る予定だったが、チーズを重ねるのはどうかという点もあったし、チーズリゾットは割と簡単に思いつく発想だからだ。

 

 だからパエリアにした。パエリアは基本的に海鮮系を使う料理だから鰻を入れても違和感はない。問題は蒲焼きで入れたとしても他の魚とあまり調和しないという所だ。

 

 そこで加えた工夫、というか工夫とも言えないけど。匂いと匂いをぶつける為にガーリックを少し多めに、またご飯の味付けには蒲焼きのタレも使った。これを使わなきゃダメだよな、普通。ひつまぶし感は否めないけど。

 

 あとは鰻はかなり小さめにカットしたり、貝類にも一つ一つほんの少しずつ分量を変えて味付けして最も合う味付けにはしてみたが、ぶっつけ本番だから不安しかなかった。

 

 作り終わって審査員の先生とか卒業生の人らに持ってく時に割と驚いたよね。なんかいきなり学園長は服脱いでるんだもん。ていうかお爺ちゃんとは思えないくらいの筋肉だったよ、なんだアレ。

 

 周りはあり得ないものを見るような目でこっちを見てた。そりゃそうでしょ、気づいたら学園長脱ぎ出してるんだよ?完全にヤバイ人認定されてもおかしくはないからね。

 

 満場一致で合格、みたいな事にはなった。枝津也さんはなんか当たり前みたいな顔してた。そう言えば枝津也さんが入学して少しした後、たまたまあって2人で料理作った事もあったっけな?

 

 選考会が終わった後、水原さんとか乾さんからは怪我は大丈夫だった?と心配された。後2人からは本当は自分たちの店でスタジエールをしてほしかった、と若干不満そうだった。

 

 いつか伺います、とは返事して、心配かけてすいませんでした、と頭を下げてたら2人に頭を撫でられた。割とびっくりした。後、うん、良い匂いした。俺って年上にすごい弱い気がする。

 

 後、相変わらず水原さんは俺との距離がなんか近い気がする。また耳元でこの前の返事、考えてくれた?って言われた。酔った勢いとかそんなんじゃなかったんだ。まだです、と返す以外思いつかなかった。

 

 後、学園長からはスタジエールはこのまま不参加で構わない、と言われた。やっぱり安静とかを考えてくれてるんだな、って思うとやっぱり良い学園長なんだって思った。脱ぐけど。でも薙切さんの関係者だしなぁ。

 

 あ、そう言えば新戸さんからは連絡がきた。どうやら幸平くんと同じ店でスタジエールをしてるらしい。新戸さんは声から若干凹んでる感じだったし、負けてるのが尾を引いてるんだろうなぁ。

 

 とりあえず慰める、とかはあまりできないから頑張って、とは言っておいた。後他にもなんか言った覚えはあるけど、いきなり怒られちゃって切られた。俺は何かしでかしてしまったのだろうか?

 

 今日の日記はこれで終わりです。という事で寝ます。新戸さんに今度謝らないと、と思いつつベッドに入る。なんでベッドに入るとかを日記に書いてるかはその日の気分。

 

 おやすみなさい。

 

 

 




2ヶ月ぶりの投稿(困惑)前回の投稿から7月20日まで一文字も書いてませんでした。そして21日から書いたら今日には書き終わってました。このスピードを保ちたい人生(無理)第五人格とかモンストとか白猫とかメモデフしてました(土下座)
十傑あそこまで変わるとは思ってなかったぜ!てっきり最終回かと思ったらまだ続くんだね、びっくり。でもこの作品十傑が数名主人公側に来そう……つまり成り立たない説……さらっと出したけど叡山先輩は好きです。男子キャラだと好きな部類……最近投稿されてる叡山先輩主人公ものずっと見てるもん……

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