後これはifの1つです。本編とは無関係です。原作での薊の話は一切ないです。薊が出てこない世界線の話です、だって薊とかの話って時期的に冬だから……本編で出てきてないキャラは出てこないので、あしからず。
今日は巷ではクリスマスイブ、と言うらしい。いや、知らなかったわけではないけれども……今までクリスマスイブなんて普通に過ごしてた記憶しかないからな、どうでも良い日の一部にしか過ぎなかった。
まず、クリスマスならサンタがやって来る。子供にとっても親にとってもこれは一大イベントだろう。だがクリスマスイブとなると……これはどういう風に過ごせば良いんだ?
クリスマスの前日となれば、確かに心が踊りそうにもなる。楽しみに待ち望んでいる日がやって来る、と思う人が多いだろうから。まぁ俺は家から基本出ないクリスマスを過ごしていたわけだが。
いや、だってクリスマスっていつの季節にあるか知ってる?冬だよ冬。しかも年明け間近ってことはもう、極寒の冬だよ?毛布でくるまって過ごすのが一番に決まってるじゃないか。
恋人とかいるなら違うのかもしれないけど、恋人どころか友達とすらクリスマスに出かけたこと無い人だってこの世にはいるんだよ。俺とか俺とか俺とか。
クリスマスの思い出は竜胆先輩と俺と母さんの3人で、クリスマスの準備を家でしていた時にクリスマスツリーの飾り付けをしていた。そしてツリーの一番上に星を飾った瞬間、電気が流れて光って驚いて小さな脚立から落ちたことくらいだ。
あの頃は俺も若かったんだっ……脚立があんな危険な存在だと知っていれば、乗ろうだなんて考えなかったはずだ!まぁ竜胆先輩はそれ以来、クリスマスとかそういった行事の時には家に来なくなった。
理由って言われても、そもそも竜胆先輩って俺の家の子供じゃないし。あっちの家庭でも楽しくやってたらしい。少し寂しかった時があるのは、俺だけの秘密だ。
……あ、とりあえず本題に入ろうと思う。今日はクリスマスイブという事で遠月学園でイベントがあるらしい。その名も……いや、別にイベント名なかった。
折角クリスマスイブという事で、学園長が企画したらしい。今の1年、2年、3年それぞれ関係なく立食パーティーのようなものを開き、親睦を深めようという感じらしい。
しかもわざわざ全員に正装を渡してくるというおまけ付き。ありがたいんだけど、こんな堅苦しい奴を着たくはなかった。だけど私服のセンスなんて皆無だからまだ良かったのかもしれない。
に、しても……これで合っているだろうか?こんな正装なんて人生で着るとは思ってなかったなぁ……
「グッド、モーニングーー!雪ー!着替え終わったか〜?」
「……終わりました。着方、これで合ってますかね?」
「……あ、あぁっ、うんうん!合ってると思うぞ!」
色々考えていたらいつのまにか時間になっていたらしい。今日は竜胆先輩と一緒に会場まで行くと約束していた。ちなみに今は午後5時だから、決して朝ではない。
会場と言っても、別に遠月学園の中にあるし遠くはないんだが……まぁそこは気分の問題と言われた。俺と行って気分を悪くする一方なのでは、という言葉は飲み込んだ。
「……ほ、ほんと反則……雪、まじ……」
「……あ、竜胆先輩も似合ってますよ?」
「ふぇっ!?へ、へへっ、そうだろー?まぁあたしもこういうの苦手なんだけどな〜」
今の竜胆先輩の服はドレスだ。少し薄めの赤色と少し宝飾がされている豪華なドレス。胸元が少しだけ空いていて、目のやり場に困る。いつもと違い髪を下ろしているから、いつもと全く違う印象に見える。
「んじゃいこーぜ!折角のパーティーだし楽しんだ者勝ち!雪も楽しんでいくぞ!」
「……善処します」
「お、こういう時エスコートとか頼んだら良いのかなっ?」
「勘弁してください……俺にエスコートのやり方とか分からないです」
「手とか繋げば良いんじゃないかな?やり方知らないなんて知ってるぞー?」
「……手?こういう、感じですか?」
竜胆先輩の手を握る。すべすべしていて女の子らしい手って感じだ。こんな細い腕であんな風な料理をするんだから、人ってのは本当によく分からない生き物だと思う。
「……おっ、おう!こ、こんなんでいいと思うっ!!」
「……顔赤いですけど……やめた方が良かったですか?」
「い、いやっ!?こ、このままで……お願いしますっ……」
なぜか急に敬語になって、すごいしおらしくなった気もするけど手を繋いだ状態で会場へと向かった。向かっている途中、竜胆先輩が顔を赤くしたまま全然話してくれなかったから、気まずかった。
しかも結構顔うつむかせてるし……手を離そうとしたら「ダメッ!!」って言ってくるし……クリスマス前日だと、こんな風になるのだろうか?イベントの日に一緒にいるのは久しぶりだから、その間に竜胆先輩が変わったりしたのだろうか?
んー……今度母さんに聞いてみようかな……あと、新戸さんにも聞いてみよう。新戸さんなら分かりそう……な気がする。でも俺の勘ってそこまで頼りにならない。
会場に着いたが、1年、2年、3年は予想通り場所が結構違う。というより自由なのだが、一年は一年同士、と言ったように自分の学年の人達と集まっているようだ。
竜胆先輩は会場に着くなり手を離して「そっ、それじゃ!ちゃ、ちゃんとっ、た、たのしめよっ!」と言って三年生の人達が集まっている場所に小走りで向かっていった。
……やっぱり怒らせたりしてるんじゃないだろうか、とも思ったが最近こういう考えをしているとため息を吐かれることが多くなった。未だに理由が分かっていない。
入り口に立ったままだと邪魔なので、とりあえず目についた人の所へ向かう。周りに結構な人がいるけど、多分話してくれるとは思う。
「……ん?お、千崎!お前も来たのか!」
「まぁ、折角だからな。……すごい人数に囲まれてるな、幸平は」
「そうか?別にいつも通りだけどな……てかほら、田所とかは寮で一緒だからここに来る時も一緒ってだけだしな!」
「……むしろこんな人数とよくいれるな……」
「いやいや、店だったらこんな人数じゃ済まねえって!……あ、つか秘書子が探してたぜ?」
「秘書子?……あぁ、新戸さんか。次はそこにいく予定だけど」
「……いや、最初にそっちに向かった方が良いと思うんだけど?」
「……なんでだ?順番とか別に意味ないだろう?」
「……はぁ……クリスマスが近づいてるのに未だにそれは健在なんだなぁ……とりあえず行ってやれって」
……よく分からない事言うんだな、幸平は。ひとまず幸平の言うことに従って新戸さんを探す事にした。
「……まさかとは思ったが、何一つ進展していないとは……」
「ほ、本当ですね……部外者の僕達でも分かるんですが……」
「いや、流石にあの鈍感さは、ねぇ?」
「まぁあれが彼の持ち味なのかもしれないね?……別に幸平くんにも当てはまらない訳ではないんだけどね?」
「え、俺?いやいや、俺は別に鈍感とかじゃないですし、まずあんな風に好かれたりはしてないと思うんですけど……」
「(……隣の田所ちゃんとか見た方が良いと思うんだけどねぇ……1年生男子ってのは鈍感が基本スキルだったりするのかな?)」
「(……創真くんのばか!)」
「???」
「あら、千崎くん。貴方も来たのね?」
「薙切さん……俺が来るのって意外ですか?」
「そう、ね……どちらかと言えば参加しなそうなイメージだったわ。ほら、今回のパーティーは参加自由じゃない?」
「……え、そうなんですか?」
「……し、知らなかったの?」
知らなかった。竜胆先輩に誘われたし、断る理由はなかったしそもそも参加を拒否できるなんて知らなかったんだけど。……いや、知ってても竜胆先輩からの誘いだから断ってないけどさ。
一応明日は予定あるから早めに帰りたい気持ちはあるし。明日はクリスマス当日という事で、家に帰る……前に水原さんの店で食事をさせてもらう事になっている。水原さんに頼んで少し持って帰らせてもらう事になっている。折角だから母さんにも食べさせたいし。
「……あ、そうだ。新戸さん知りませんか?」
「露骨に話を変えたわね……緋沙子?……んー、知ってるけど、自分で探したらどう?」
「……知ってるのに教えないってドSだからですか……」
「よく本人を目の前にそんな事言えるわね……まぁそうじゃないわよ。でも貴方の為でもあるし、緋沙子の為でもあるのよ」
「……よく分からないんですけど……」
「……はぁ……まぁ貴方が思いつく場所を探しなさい。ヒントを出すなら、この会場にはいないわ」
……この会場にはいないの?折角のパーティーなのにいないってどういうこと?……でも知ってるって言ってたしなぁ……考えていても分からないので、思いつく場所に向かってみることにした。
「……まったく、まだそこまでしか行ってないなんてビックリよ」
……いくらなんでも鈍感にも程があるんじゃないかしら?緋沙子も緋沙子ね、あの子は自覚してるのに、ちゃんと踏み込もうとしてないんだもの。
ライバルがあの小林竜胆先輩、だって事はあるにしても……流石にヘタレとしかいう他ないわね。まぁとうの本人はそんなことにも気づかず鈍感さに磨きをかけてるようだけど。
全く……千崎雪夜はいつか刺されるんじゃないかしら?女子の気持ちを『3人』も持って行くなんて、ね。
……ふふっ、どうしてかまだ諦められないのよね。緋沙子に幸せになってほしいから、ちゃんと決意したはずなのに。自分の気持ちを諦めて、緋沙子の気持ちを優先したのに。
私の目から流れる、涙という存在は。私の心みたいに嘘をつける賢い存在ではなかったみたいだ。
思いつく場所に来てみたら、いた。会場から出ていつもよく話したりしている、円形の小さなテーブルに座っていた。格好はドレスで、見えるのは後ろ姿だけだが、いつもよりも綺麗に見える。
「新戸、さん?」
「っ!?ち、千崎!?何故、ここが……?」
「薙切さんが、思いつく場所にいるだろうって言ってくれたんで……探しに来たんです」
「……別に、私を探しに来る理由はなかったんじゃないか?」
新戸さんは俺と目を合わせようとしない。ひとまず目の前の椅子に座るが、それでもこちらを見ようとしてくれていない。
「……折角、パーティーなんですし……俺は新戸さんとも話したかったんです」
「……たったそんな理由で探しに来たのか?」
「……後、幸平とか薙切さんに探せって言われたのもあります。どうしてか2人にため息吐かれましたけど……」
「……私だってため息吐きたい気分だよ。さっきの答え、私じゃなかったら殴られてもおかしくないぞ?」
え?ちゃんと正直に答えたはずなんだけど……怒られてしまうような理由があったのだろうか?
「分かってない顔だな?全く……こんな気分になる私がバカらしいじゃないか。……ふふっ」
「……俺にはよく分からないです」
「いいさ、今は。いつか分かってくれればいい。私の気持ちにも、他の人の気持ちにも、な」
「……善処します」
俺がそう返事すると、空から白い物が降ってきた。季節的にはピッタリな白い、俺の名前にもある雪が空から降ってきた。ふわふわ、ふわふわと……ゆっくり、俺の肩や新戸さんの肩にも優しく乗ってくる。
ホワイトクリスマス、という奴だろうか?実際住む場所にもよるがクリスマスの時期に雪が降る、というのはあまりない気もする。北海道とかなら話は違うかもしれないが……九州なんかじゃほとんど降らなそうなイメージだ。
「……戻るか、千崎。雪も降ってきたし寒くなりそうだ。えりな様を心配させたくないし、な」
「……はい」
俺はふと、さっきの竜胆先輩と会場に来た時を思い出す。あの時は俺が言われてやった事だけど……どうしてか今は、俺からやらなければいけない気がした。
これは雪のせいなのか、それともクリスマスイブなんてよく分からない行事の所為なのだろうか?俺の意識や脳よりも早く、俺の手は新戸さんの寒そうな右手へと向かっていった。
簡単に手を握れた。新戸さんはいきなり握られたのに、何も言わない。その手はかなり冷えていた。俺が想像しているよりも、長くここにいたのだろう。申し訳なさなのか、それとも俺の気の迷いなのか。
少しずつ新戸さんの体温が上がっていくのが、繋いだら手からわかる。歩いてはいるが、2人とも言葉を一切話さない。聞こえてくるのは会場から聞こえる華やかな声。雪がゆっくりと降る、そんな音。
そして、今まで経験した事がない程響く、自分自身の胸の鼓動。
長時間走った後の動悸とはまるで違う。どこが痛いような気もするのに。
こんな時間が続いて欲しいと願っているのは、俺だけだとは思うけど。
胸の鼓動がこんなに心地よく思うのは初めてだ。
ふと覗き見た、俺と手を繋ぐ少女の顔は……寒さに当てられたのか、顔が真っ赤だった。
そして、窓に映り込んだ俺の顔も、同じように赤かったのは……単なる見間違いなのだろうか。それとも。
「なぁ、千崎」
「……なんですか?」
「……千崎。これから言うことは嘘でも冗談でもないから、聞いてくれ」
「…………」
「私は、お前の事が………………」
鳴り響くベルでかき消されたようにも感じてしまう、そんな小さな声で言われた言葉は。はっきりと俺の耳に届いた。この聞こえた音は、声は、言葉は。
幻聴でも夢でも何でもないのだろう。
この先の事は、話さないようにする。だけど一つ言える事は。
俺にとって、この時以来。クリスマスイブがクリスマスよりも大事なイベントになった、と言うことだけだ。
刺されろよ(直球)恋愛無理(直球)
お久しぶりです。忙しかったんですが、昨日くらいから時間ができてました。なのになぜ投稿しないのか……理由は一つ。白猫してました。茶熊のティナが欲しいんや。30連したけど出てこないんや。今ジュエル貯めてます。どなたかフォロワーになってくれたりしませんか。名前検索で「Aりーす」でランク95、アイシャがリーダー(おそらく)の人が出て来るはずです(多分)空きがある限りフォローしますから!お願いします(土下座)クリスマスイブもクリスマス当日もなんと!白猫するぜっ!石1000個貯めるからな、ぼっちで。