専業主夫目指してるだけなんですけど。   作:Aりーす

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ちょっと紳士ー!もも先輩の事を幼女とロリって言うのやめてあげなよー!せめて幼先輩に!!!(変わってない)
質問でもも先輩ってあだ名つける相手は格下じゃないんですか?ってのが来ましたが今回でそれに対する描写は入れてます。まぁまずもも先輩があだ名つけてない人ってほぼいないんですもん……


▶︎8−1【幼先輩】

 

 

 その彼を知ったのはいつだったかな?私もあまり覚えていない。知り合いから聞いたのか、それとも噂で聞いたのか、それとも……人との出会いとか知った時の印象ってのはそこまで人の記憶には残らない、そう思う。

 

 友達同士でも出会った当初は他人同士。一体どうやって仲良くなったかなんて事をはっきり覚えてる、そんな人はあまりいない気もする。それが動かない物、例えばぬいぐるみとかなら話は別になる。

 

 誰かに買ってもらった、自分で貯めたお金で買った、お年玉で買った……多分過程は様々だけどそれは記憶に残ってる人が多い。なのに人との付き合いは記憶に留まっていない事が多いんだろう?

 

 無機物と有機物の違いのようなものだろうか?でも、それはどれだけ考えたってわからない。だって結果として覚えていない、そんな答えにしか繋がらないから。

 

 別に語るつもりはなかったけど、なんとなくこんな事が思いついた。……何の話だったかな?あ、そうだ。彼をどういう風に知ったか、だったかな。

 

 きっと、多分、そう思える出来事はあったけど不思議と確信は持てない。まぁでもそれはどうでもいい事。今はしっかりと知り合ってるから。

 

 ひとまずその彼の紹介の前に私も名乗らないといけない、と思う。私の名前は茜ヶ久保もも、遠月学園高等部3年に所属する十傑第四席だ。そして私がいつも抱えているのがブッチーだ。

 

 ……あ、ここからは私って一人称じゃなくてもも、の一人称でいく。もともと話す時は自分の事をももって呼んでるし。

 

 ……ももの事は別にそこまで触れなくてもいいんだけどね。ひとまず彼の話に移ろうと思う。彼の名前は千崎雪夜。今年入学したての1年生、さらに言うなら編入生。

 

 別にただの1年生なら気にも留めないし、興味が湧かない。ただ唯一興味を持ったのは同じ十傑に所属している小林竜胆、りんどーが話す事があるからだ。

 

 とは言っても話してきたのはももくらいだと思う。あ、後1人くらい話してそうだけど……多分口が軽い人とか堅苦しい人じゃないとは思う。まぁそこに触れるつもりはないけど。

 

 りんどーがそんなに言うなんて初めて。まぁ同級生の中でも変わった感じではあるんだけど。身長と胸に関しては同級生とは認めてないから。ももはまだ育つから。

 

 ……だからももの事は良いんだって。まぁ聞いた限りすごいのか、凄くないのかはっきりしない感じ。料理はできるけど目立ちたくないとか、ここに実際来るつもりはなかったとか。

 

 来るつもりがなかったのにどうして来たんだろう?それに来る気がなかったけど受けたら受かった、なんてレベルで受かれるほど甘くはないはず。審査員がよほどポンコツじゃない限りだけど。

 

 どうやらその審査員は薙切えりな、十傑第十席についている一年生らしい。まぁ流石に彼女は知ってるけど……合格が出たとかどうとかには興味がなかったし。

 

 ただそれだけ聞くとさらに頭には疑問しか浮かばないももがいた。どれだけ聞いても感想は「よく分からない」の一択だった。少なくとも分かってるのは男だと言う事、それと名前。

 

 不確定情報、って言うんだっけ?それが多分多いんだと思う。1年生の情報は実際入っても来ないから知らないに等しい。ただりんどーが目をかけてるってだけだ。

 

 多分、その印象はあの日までは同じだったと思う。ももはパティシエだからスイーツの匂いは嗅ぎ分けられる。珍しく一年生が課題を受けている教室に近かった時がある。

 

 その時作られてたスイーツは目で見たわけじゃない。でも分かる。あきらかに匂いが周りとは全く違う。まるで生きて呼吸しているかのように、主張が激しいと思った。

 

 食べたい、見てみたい……授業という名目で来ていなかったら教室に入り込んでも良かった。それくらい、もも以外でここまで主張が激しいスイーツは初めてだった。

 

 その後、ももはりんどーと会話をしてたらその時と全く同じ事がわかった。りんどーは彼がその時作ったのがスイーツであり、複数の種類を作ったらしい。りんどーもそれを食べたらしい。

 

 多分住んでる場所……寮か何かで作ったんだと思うけど。確証があるわけでもないのに、私はそれが彼が作ったものだと不思議と確信を得ていた。矛盾ってのはこういう事なのかな?

 

 興味は留まる事を知らなくなった。日に日に知りたいという欲求は増えていき、りんどーに聞く回数も自覚するレベルで増えたと思う。りんどーはたくさん話してくれたけど。

 

 そしてある日、約束を取り付けてくれたのだ。時期的に1年生は宿泊研修が終わった頃だとは思う。彼が住んでる場所に連れて行ってくれるという。ちなみにりんどーは泊まるらしいけど。

 

 大事な後輩らしいけど、寝泊まりはどうかと思う。りんどーは長い間一緒にいたし今更泊まっても何も言われないよ♪みたいに言ってたけど……まぁりんどーに対しては何言っても意味がない的な。

 

 ……なんかそんな事を考えてたらりんどーに怪しまれた。というより何を思ったー?はけー!ってくすぐられた。それは卑怯、ももはくすぐりには強くない。

 

 まぁ少しだけ楽しみな部分もある。少しわがままを言うならスイーツを作って欲しい気持ちもある。……ただももはわがままではない、りんどーみたいにわがままじゃないから我慢をするのだ。えっへん。……なんか子供っぽくなった、やめよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてその日がやって来た。ドアが開いて彼の姿を初めて見た。なるほど、たしかにりんどーが言ってた通りの見た目をしてる、と思う。普通の顔立ち、あまり笑わなさそうな表情をしている。

 

 あぁ、同類だ。そう思ったももは悪くないと思う。ももだって人と話すのなんてあまりしたくない。十傑のメンバーとも目を合わせて話せる人が全員、ってわけじゃないし。

 

 コミュ障、って言うらしい。まぁ人と話すのは苦手だしできる事なら話さなくても良いと思ってる。ブッチーがいればどうにかなるってももは思ってるから。決して寂しくなんてない、から。

 

 彼も、ももと目を合わせてないし。普通に中に入らせてくれたあたり、お人好しなのか迫られるのに弱いのか……相手がりんどーっていうのが悪いのか。

 

 ただりんどーが忘れ物した!とか言ってももを残したのは許さない。……まぁ、なぜか不思議と話せたけど。なんて言うか気が合うのか、無理矢理話しかけたりしてこないし、一緒にいて面倒とかは思わなかった。

 

 ……目を合わせようとしてみたけど、あっちが見てくれなかった。少しそこは残念な気がした。……りんどーがいない時間は静かで、でもたまに話したりしながらゆっくりしてた。

 

 それとなくももはスイーツの話をしてみた。一応私がパティシエだって事くらいは知ってた……っぽいけど実際の所は分からない。別にそれに興味はないのかもしれないけど。

 

 意外に話の流れで作ってくれることになった。ただ少し違和感というか、変な気がした。こう、なんか年下を見る感じの雰囲気で「仕方ないな」って言いたげで厨房に向かったのだ、アイツ。

 

 ……なんでか悪い気がしなかったのも変だ。あそこにいるのは年下なのに、なんか年上に思えてしまう。優しいから?でもそれだけで絆されるほど、ももは軽くない。軽いのは体重くらい。

 

 みた限りと匂いでかぼちゃを使うらしい。ムースを作ってるのはわかったけど、もう1つは少し分からない……というより何かを砕いてるらしい。音で判別してたけど、どう考えたって何かを砕いてる音がした。

 

 まぁ何を作ってるかは分からないけど、スイーツって言うのは大体は冷やす工程が入っている事が多い。つまりその冷やしてる間、味が落ちる可能性もあり得るんだ。

 

 もちろん私はパティシエだからそんなミスはしない。厨房を覗いてみたけど、作り方や動きはスイーツの作り方を確実に知ってる。ももより早く作ってるわけではないし、でもそこらへんの料理人よりかは遅くない。

 

 ただ思うのは、その後ろ姿から分かるほどの自信。何1つ自分の作るものの美味しさを疑ってないような、そんな作り方だと思った。何を作る、ってのは今考えたばかりのはずなのに、かなり早いタイミングで作り出してる。

 

 柄にもなくドキドキしてる。スイーツに厳しい判定をくだす時だってあるけど、ただ楽しみという感情がももの中を駆け巡っている。小さい頃のおやつの時間が来る時のワクワク感みたいな。

 

 ……今も子供だろって思った人はブッチーの餌。身長が20くらい縮めばいいと思う。この世にいるももより高い人は縮めばいいと思う。平均をももに近づければ低くなくなるから。

 

 冷やす工程があるのがあれば無いのだってある。どうやらもう1つはタルトレットだったらしい。……でもタルトレットは何かの上に乗ってる。料理じゃ使った事がない奴だ。

 

 まずはタルトレットだけ食べる。まず思った事は、美味しいという事だった。料理においては当たり前に近い評価だけど……それは意味合いが変われば価値観は全く変わる。

 

 手を加える必要性を感じないくらい、美味しい。スイーツは甘みが強すぎたって万人には受けない。甘みはある、だけど不思議と食べていて飽きがくる味ではない。

 

 スイーツは食べているうちに飽きてしまう、そんな表現が生まれやすいと思ってる。甘いだけ、美味しいだけ、食べれるだけ……1つでも成り立ってないと食べてはもらえないけど、成り立っていたって状況では食べれない。

 

 甘い物は別腹、とも言う。だけど飽きはある。下にあるのはその飽きに対する対策でもあるんだと思う。下はチョコレートクッキーだ。中にクリームが入ってるタイプの。

 

 そこで残念に思ったのはここの部分も手作りの方がいい、と言う事だ。だけどこの素朴な味だからこそタルトレットと一緒に食べた時、美味しさが活きてるのかもしれない。

 

 ……思う事はたくさんある。でも、ももの口から出る言葉は自分でも予想してない事だった、のかもしれない。

 

「……パティシエになる気は、ない?」

 

「……ないです。得意ってわけじゃないですし……」

 

「……そう、残念……」

 

「俺にパティシエは合ってないですし」

 

 ……後ろ姿からはそんな事は思えないんだけど、ね。逆、なのかな?パティシエじゃあ、自分の全てはぶつけられないって意味かな?……むぅ……少しムッときた。

 

「……分かった。でもまた誘うから」

 

「……話を聞いてないんですか、先輩は」

 

「聞いてる。りんどーとは違うから」

 

「……諦めって言葉を覚えてください」

 

「覚えてる。……少し馬鹿にしすぎ」

 

「……そういうつもりはなかったんですけど」

 

 そう言いながら頭を撫でてきた。……すぐにやってる事に気付いて手を離したけど。まぁ先輩だし、歳上だし……?すぐに謝ってきたけど、逃げるように部屋に行っちゃったし。

 

 そしたらすぐにりんどーが帰ってきた。私が食べてるのをみてずるい!と言いながら普通に食べてた。……りんどーが言ってたのはよく分かった。りんどーが勝ちたい相手と言ってたのも、分かる。

 

 ももだって本気でやって勝てるかどうか、はっきり言って分からない。でもそれはほんの少ししか話したことも会った事も、料理を食べた事もないからだ。

 

 りんどーは長くいるからこそ、まだあるはずの本質がわかってるんだと思う。……ちょっと、いや、かなり興味を持った自分がいる。

 

 あと、どうしてか撫でられて悪い気はしなかった。そのことをりんどーに言ってみたら「兄と妹みたいだもんなー?」って言われた。……お兄ちゃん、的な?

 

 ……普通に想像できてしまった。なんか、ももから見たらそう見えてきたっていうかそうとしか見えなくなってきた。……歳はももの方が上のはずなのに。

 

 ……お兄ちゃん、か。……いや、そう呼ぶ気はないから。ただ寝泊まりするって事もあってさらにそう感じてきた。寝る前にも少し部屋にお邪魔したし。

 

 あ、呼び方を決めた。ゆっきー、って呼ぶ事にした。りんどーみたいに呼び捨てでもよかったけど、りんどーは雪って呼んでるから近づけてもみた。……ブッチーみたいですね、って言われた時は笑いそうになった。

 

 他の人からは可愛らしいあだ名をつける時は、その相手を格下に見てる時って言われる。実際はその通りだけど……ゆっきーは少し違う。

 

 スイーツの腕前はまだ私には届いていないのが、一つの理由。でも届くことは出来るし、その道だけを選べば必ず今のももを追い越せる。

 

 二つ目の方がもっと大事な理由。私視点からの考えだけど、これが本当に重要。……ももの中で、ゆっきーというあだ名は『可愛らしいあだ名』には入ってないって事。可愛らしいあだ名の判断はもも基準だから。

 

 その後は寝泊まりしてすぐに朝出てったけど。……りんどーの起こすのは大変そうだったけど放っておいた。助けを求めるような目で見られたけど無視した。パティシエの誘いを断るからだ。……パティシエになって欲しい気持ちは本当だし、諦めないから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……バレないように、いつかお兄ちゃんって呼んでみたいな。これはももの心の中だけで隠してる事。

 




見た目でたくさん(作者に)判断されてる話ですね(´・ω・)お兄ちゃんだと勘違いされてるんじゃない???5000文字いったやん……次は主人公の親か美作視点かな?それと思ったより竜胆先輩出せなかったので、竜胆先輩の話は新しく入れます。親、美作、竜胆先輩、水原先輩でリクエスト回は終わろうと思います。聞いて、別視点で男視点って美作が初です。

同級生の新戸緋沙子(姉)と上級生の茜ヶ久保もも(妹)に挟まれる主人公な。まぁ恋愛感情ないしハーレムではない。ある意味温かい家庭だけど。

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