☆月$$日 天気 ホテルから見る空は青かった
宿泊研修 1日目
今日から待ちに待ってるわけはないが、宿泊研修が始まりました。竜胆先輩からもがんばれーっ!って応援を貰った。少しやる気が出てました、この頃は。
今日、俺は絶対に超えられない壁にぶつかった。もはやそれは地獄と呼ぶにふさわしい場所だった。その場所にたどり着いた瞬間に死を覚悟するレベルだった。
そう、バスという壁に。俺は乗り物に弱い方ではないが、飛行機とバスはとにかく無理だ。バスは揺れがヤバい、飛行機は耳が痛くなるのが嫌だ。飴さんが欲しい人生でした。
隣に座ってた彼には迷惑をかけた。目が隠れてたけど結構心配してくれてるようだったし、本当に有り難かった。今度会ったらお礼をしようと思う。
バス如きと馬鹿にしたらいけない。バスは悪魔の乗り物だ。何故1人が座るにもそこまで広いとは決して言えない席を、二つ並べただけの場所に座らないといけないんだ。
隣が知らない人、ましてや女子だったらどうするんだ!痴漢に間違われて銀色のブレスレットを常時装備して、圧倒的守備力の壁の中で生活する羽目になるんだぞ!
まぁ街を走ってるバスとは少し違って、補助席が付いてたりする方だったからまだ良し。隣も男の子だったし、そこら辺はちゃんと考慮しているんだろう。
もし隣が新戸さんになったものならあの日の再来だ。またSモードになる、俺の予想は何割かの確率で当たるはずだ。多分100回に1回くらいは当たる。
バスから降りたら世界が変わったね。空気がここまで美味しく感じるなんて思わなかった。人が密集してるとさ、まぁ色々あるから。
バス事情はここまでにして今日会った事を全部書く。1日目はそこまで厳しくはなかったけど、多分これから厳しくなるだろうから早めに寝たい。
まずホテル、見たらデカすぎだと思いました。多分庶民とかならたくさん働かないと泊まることすら出来なそうなホテルって感じ。ここで5泊6日のリゾート気分!なんて訳はないって事はわかりきってました。
遠月学園の卒業生の人達がわざわざ来ていた。率直に言うとすごいなってイメージだ。一人一人紹介されてたからここにも書こうと思う。すごい料理人なら一回くらい店に行ってみたいし。
まず1人目、四宮小次郎さん。パリで開いてるフランス料理店でのオーナー、だったと思う。プルスプール勲章というすごい賞を貰ったすごい料理人らしい。
なんか書いてるとふわっとしてる気もするが仕方ない。いきなり1人を退学にしたからそっちのインパクトが強いんだ。柑橘系の匂いがどうとか。
そこまで厳しい世界なんだろうとは思うけど、いきなりそんな事するって凄いなって感じ。ていうかなんであの距離で匂いがする人まで分かるのかな?
2人目、水原冬美さん。イタリア料理店のエフって所を開いているらしい。周りの人と比べると小さめの印象を受けた。ちなみに俺の1日目の課題の審査員もこの人だった。
椅子に変わった座り方してたけど、常に無表情って感じだった。でも審査は厳しめだった。そこは後で書くけど。
3人目、関守平さん。ひのわって言う鮨店を銀座に開いてるらしい。目が細めだったけどあれで寿司とか握れるのかな?俺自身は寿司が好きじゃない。
食べるとしても高いのより安いの、なおかつ魚じゃないのを食べてしまう。例を挙げるとたまごとか。美味しいからいいじゃん、回転寿司最高。
4人目、ドナート梧桐田さん。オーベルジュのテゾーロという店のシェフだったと思う。
オーベルジュって聞き覚えはあまりなかったけど、後で新戸さんに聞いたら宿泊施設が付いてるレストランらしい。この人いきなりナンパってぽい事してたから気が合わなそう。
多分話しかけてたのは幸平くんのペアの子だったはず。田所恵さんだったかな。幸平くんと結構話してる所を見てるし、いい雰囲気じゃないとか思ってみた。
5人目、乾日向子さん。日本料理店の霧のやという店を持ってる人。ドナートさんと同様いきなりナンパから入った人。
何言ってるかはわからなかったけど、多分同性だとしてもあまり言われることのないこと言われたんだろうなって。田所さん顔赤くしてたし。
で、最後に堂島銀さん。料理人かってくらい体つきがヤバい。ボディービルダーみたいな体つきでしょ、あれ絶対。全員すごい人だけどこの人だけはオーラが違うように思えた。
今回の宿泊研修はあの人達が審査員らしい。自分自身の城を持つ人達が従業員と同じように、今回の審査を行う。もちろん通らなかったら退学まっしぐら。というかそれ以前に退学させられる可能性もあるって事だもんな。
その後はそれぞれ各自指定された人の所での審査が始まった。俺は水原冬美さんの審査の場所だった。
作る料理はイタリア料理。指定は特にないが、制限時間はいつも通りある。イタリア料理店の人にイタリア料理を持ってけって事だから大変だよね。作り続けた経験が違う訳だから、判断する舌も違う。
いや、指定は一応一つだけあったかな。作る料理は早い者勝ち。同じ料理は持ってくる事は許されなかった。合格、不合格関わらずにだ。
厨房ってのはスピードも重要だしって事かな。まぁスピードは問題はないんだけど、問題は作る課題がイタリア料理って事。
俺は外国の料理はそこまで作らない、というより知らないと言った方が正しい。そんな外国のあまり知られてないような料理を、家庭の料理としては出さないし。
と言うわけでそこまで知名度が高くない、でもイタリア料理と言えばってのを作る事にした。もちろんパスタ、ただ作るのは日本のパスタでは馴染みがない人が多いと思う。
と言っても使う麺が馴染みがないってだけだとは思う。今回使った麺はブカティーニ。パスタの麺とかについては調べてた時期があるし。
ブカティーニと言えば俺が思うのはアマトリチャーナだった。麺はその麺の特性や長所によって使い分けられる。まぁ市販のパスタに合いそうなのを探してたらやってみたってだけだけど。
アマトリチャーナは基本、グアンチャーレと呼ばれる豚頰肉の塩漬けや、ペコリーノロマーノと呼ばれるチーズ、それとトマトをベースにしている。
だが時間が時間、さらにグアンチャーレはたしか一週間や二週間かけて作るものだったはず。だから代わりになるのは家庭でも良くあるベーコンだ。
あっちではパンチェッタと呼ばれる。生ベーコンとかもパンチェッタとして呼ばれるらしいから、今回はそれを使った。まぁグアンチャーレなんて使った事ないけど。
元のレシピではサラダ油は使わず、グアンチャーレから出る脂を利用するらしいがもちろんそれはない。だからサラダ油を使った。通常ならオリーブオイルだったはずだけど。
トマトを入れないアマトリチャーナもあったはずだけど、今回はトマトを入れる。それくらいの時間はあったし、最高級のパンチェッタもあったから早めに作らせてもらった。
今回はダブりがアウトだし、早く出す方が有利だ。ただ味はパンチェッタを使うから本場より落ちる。その為、揚げたニンニクを入れる事でカバーを少し入れる。今思えばオリーブオイルで揚げても良かったかな。
茹で時間自体は9分程度だから時間はそこまでかからない。イタリア料理は時間はそこまでかかるイメージはない、特にパスタに関しては。
気づいたら俺のすぐ側に椅子を持ってきて座っている水原さんがいた。声が出そうになったけどなんとか堪えた。ここまで近くで見なくてもいいじゃんか?
結果は合格、一番最初に持って行けたって事もあって運が良かった。もし俺が知らないイタリア料理なんて出されたら終わりだし。
レシピ通りで殆どを作ったし。アレンジを入れる余裕を作ってみたいがそこができない。レシピ自体が一種の料理だからこそ、下手なアレンジで崩れたらと思ってしまう。
幸平くんに今度教わってみようかな?安上がりになるアレンジならより一層知りたい。
その後も試験的なものはあった。満足できるレベルで50食を作れって課題だった。スピードと量が大事だなって思ったからすぐお腹いっぱいになりそうな料理をした。
たくさんの料理を短時間、なおかつお腹いっぱいにさせるってのは家庭の料理では基本だ。これは得意中の得意だったし、会場内では一番最初に抜けさせてもらった。
薙切さんは俺より少し早く終わってたらしい。風呂場の前でたまたま会った。これから風呂に入るらしい。混浴とかじゃないから良かった。
余裕があったらトランプでもしない?って言われたから日記を書いた後でお願いした。もう書く事がなくなったので薙切さんの部屋に行こうと思う。
追記 薙切さんトランプ強かったです、新戸さんジョーカーを俺に送りすぎです。負けまくりました。
小学の頃、卵焼きを練習してなんどもスクランブルエッグになった。そして何度も練習してようやく卵焼きができたって思って、スクランブルエッグを作ろうと頭の中で思ってたら、手は勝手に卵焼きを作ってた事があります。
宿泊研修って他の人が主人公を見る暇がなさそうな気がしてきた。他の人の視点を作れない気がしてきた。宿泊研修にオリジナルはそこまで入れられないし……。多分この次の話は水原さんの視点になると思います。短い気がする。