CODE:HERO   作:TubuanBoy

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第五話

 

 

「そう、僕はエデンが定めた法で裁けぬ悪を裁く六人のヒーロー、C:B06(・・・・・)渋谷透魔。

 

個性発現者で初のC:Bさ」

 

「コードブレイカー……06?」

 

「そお、06。

コードブレイカーは強さや立場で01から順に番号が振り分けられるんだ。

僕は最近入ったばかりだから06。

この人はエース番号の01。」

 

「コードブレイカーが六人もいるなんて……」

 

この個性社会で悪人(ヴィラン)を相手に悪を倒すにはヒーロー以上の強さがいる。

 

渋谷でさえ想像以上の強さなのにそんなのが後4人もいるなんて驚きだ。

 

「そもそもコードブレイカーとは、エデンとは何者なんですか?」

 

大神から詳しい話を聞いていない八百万は渋谷に尋ねた。

 

「あれ?それも先輩から聞いてないんだ」

 

渋谷はエデンとコードブレイカーについて話した。

 

「元はエデンは異能者を保護する組織なんだ」

 

「異能?……個性とは違うのですか?」

 

「君たちからしたら自然エネルギー発生させる、発動系個性の様なものさ」

「自然エネルギーと言うと上鳴さんの電気や轟さんの熱や冷気ですか?」

「うん、まぁそんな所

個性と同じ特異体質なのは変わらないけど使いすぎると厄介なことになるのが特徴だね」

 

「厄介なこと?……」

「……それはね」

 

ロストやコードエンドのことを喋ろうとする渋谷に大神が怒る。

 

 

「おい!」

 

「あぁ……はいはい」

 

(そういえば先程、使い過ぎて人に見られない姿になったって言ってましたね。

おそらくその辺なのでしょう。)

 

 

「それにしても珍種がC:Bを名乗るとはな」

「珍種?」

「後で説明するよ。

それと僕は『珍種』でもないから」

 

珍種とは異能を無効化でき、異能の根源である生命力を他者から吸い取ることができる特殊な人間。

異能者を悪魔と例えるなら珍種は天使と例えられることがあるほど双対な関係だ。

 

「何を言っているんだ。

さっきの力は珍種の……」

 

「僕は貴方と同じハイブリッド。

珍種と異能者の間に生まれた禁断の子供」

 

昨今の個性婚で生まれた轟の様な複合個性持ちとは訳が違う。

彼やあの人がそうであった様にハイブリッドには過酷な運命が待ち受けるのは今も昔も変わらない。

 

 

「だが、珍種が発現してるなら珍種だろ」

 

大神もあの人も同じハイブリッドだが珍種と異能、どちらかの力しか発現しなかった。

 

「だから発現してないの」

 

そういうと渋谷は上着を脱いだ。

 

そこには外科的手術により繋げられた右腕があった。

 

「僕は珍種の身体能力と異能の高い生命力を持って生まれてきたハイブリッド、聞こえはいいけど、どちらでもない故に固有の異能を持たず、珍種の異能無効化の力も無い。

故に両者の特性が中途半端に個性として発言したに過ぎなかった、

 

 

 

…………あの時まではね…………」

 

彼がまだ幼かった時、家族旅行の最中に交通事故にあった。

 

原因は不明、しかしエデンに渾名す(ヴィラン)の仕業ではないかという話だ。

 

潰れた車の中で小柄故に唯一助かった彼は薄れゆく意識の中で両親の見るも無残な姿を目撃した。

 

今でもあの時の記憶が鮮明に残る。

 

急ぎ駆けつけたエージェントによりすぐ様エデン管轄の病院に連れてかれた彼は大手術を受ける。

 

彼も重傷で右腕は深い傷があり、内臓も所々損傷していた。

故に医者は移植手術を提案した。

 

父親は手足どころか原型さえも分からないほどにぐちゃぐちゃだったため、母親の腕と臓器を移植することにした。

 

手術は見事に成功。

それからしばらく経ってからであった。

彼に『珍種』の力が宿ったのは。

 

移植によって彼の体構造は大きく変わり、個性『生命力』は変化し、個性『珍種』となった。

 

「僕が生きていられるのは母さんの臓器と父さんから受け継いだこの生命力のお陰……異能と珍種、2つの血が僕を支えているんだ」

 

渋谷の話を聞いて八百万は思うところがあった。

 

(それだけの過去を持ちながら今も笑顔でいられるなんて……しかし、)

「だったら尚更わかりませんね。

ご両親から命を託された貴方が……大切な人を失う辛さを知ってる貴方が自分の命も他人の命もないがしろにする組織に所属するなんて」

 

 

 

 

「………だから、大事にしてるよ……」

「え?…………」

 

 

 

 

「僕の複合個性なら吸い取られた生命力も十全に活用できる。

 

 

 

彼らは死んだんじゃない、僕の中で生き続けるんだ……

 

 

 

………永遠に…………」

 

 

 

笑顔で答えた渋谷のからは底の見えない狂気が孕んでいた。

 

 

天使の様な笑顔の裏に残虐な悪魔が潜む。

ハイブリッドを体現したかの様な彼であった。

 

TELLLLLL!

 

その時、大神の携帯が鳴った。

その相手は意外な人物であった。

 

「俺だ、ついたか?

手筈通り頼む」

 

『久しぶりに連絡よこしたかと思えば人使いが荒いんだから!』

 

相手は女性の声だが、いまいち聞き取りにくい。

 

「嫌なら断れ」

 

『そこまで言ってないでしょ

老人はいたわりなさいって行ってるのよ

……まぁ、いいわ

懐かしい顔も見えるし』

 

「ん?……知り合いでもいるのか?

この学園に…」

『あんたには関係ない話よ』

「そうかよ……」

 

プッ

 

大神は電話を切った。

 

「どうかなされたので?」

「お前には関係ない話だ」

 

二人のやりとりを見て渋谷は笑った。

 

「ふふっ、話に聞いていた通りの人なんだねエースさんは」

「聞いていた通りって誰だよ……」

 

C:B04(4番先輩)からだよ」

「…………あの野郎…………」

 

 

「他にもC:B2(2番先輩)にはあったけど3番と5番にはあってないですね」

 

3番は気分屋で他人と組むのは向かない性格だし、5番は諸事情により仕事の数を減らしている。

 

現役バリバリでやっているやつなら仕事で顔を見せることもあるだろう。

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※

 

 

全力の個性を使った緑谷の体はボロボロの腕で保健室にはいるが、元気な顔をして部屋から飛び出してきた。

 

「ありがとうございます!

リカバリーガール!あおばーちゃん!」

 

保健室には二人の老婆がいた。

 

「まっすぐで元気な子だねぇ、あの子は

(彼があぁ言う子を気にいるのは珍しいわね)」

「それにしてもお久しぶりですねぇ、あおば先生……」

 

「先生はよしてくださいな、ちよちゃん

私は引退した、ただのばあさんだよ」

 

リカバリーガールに先生と言わしめるこの老婆は高津あおば。

 

リカバリガールが研修時代から世話になった医者の友人で孤児院の院長を長年務めた人だ。

 

医師ではないが、孤児に対する献身的な精神は医者も見習うところがあったようで、その友人の医者と同様リカバリーガールが今でも師事する数少ない人だ。

 

「引退ですか……

ご主人が亡くなられて何年でしたか?」

 

「…………もう、何年になるのかしらね……

でも、あの人らしく笑顔で逝ったのを今でも覚えているわ………」

 

 

彼女は元々エデンの異能者。

それもC:Bの上位部隊である『CODE:NAME』(以後C:N)の一人であったが、パンドラ箱の事件(以後パンドラ事件)以降、C:Nは解体、エデンに残ることもできたが、一般人に戻り自分の恩師が守ってくれた孤児院を再建させる道を選んだ。

 

そして幼馴染の男性と結ばれて今日まで一般人として生活していた。

 

 

リカバリーガールとは一般人に戻ってからの知り合いであり、彼女が秘密組織の一員だったことは知らない。

 

だが、時折見せる違和感や昔の知り合いにこの様に呼び出されているのをたまに見る為、彼女が只者ではないと言うことは知っている。

 

今回は大神が継承者を見るに見かねてあおばを呼び出したのだ。

 

 

彼女達C:Nは異能を2つの所持している。

その内の1つは『対物時変』物体の時間を巻き戻す異能の中でも規格外の力。

 

この力によって緑谷の怪我は完全に完治した。

 

そして2つ目、『活殺穴法』物体のツボをつくことで肉体を強化したり物体を破壊したりすることができる。

 

それで緑谷の肉体を活性状態にした。

時間で解けてしまう処置だが、繰り返し施すことで肉体強化を馴染ませて個性使用時の反動を少しでも減らすのが目的だ。

 

以前、大神に施してくれた時は凄まじい強化だったが、今の彼女にその様な力はない。

 

高位異能者でないあおばの寿命は普通の人間と変わらない。

 

歳をとるにつれて生命力は弱まり、その姿が彼女の『老人になるロスト』と同じくらいになる頃、彼女に残った力は僅かなものであった。

 

対物時変を使えばそれを回避することも出来たが、彼女の場合はこれで良かったのかもしれない。

 

『愛する者と共に歳を重ねる』そんな当たり前のことが出来たのだから。

 

旦那が死んでからも彼女が生きているのは旦那の遺言にできるだけ生きて親友達を見守ってくれと言うものがあったからだ。

 

 

「さて、私も帰りますよ。

今度からは定期的にこの学校に来るから、その時はまた、昔話に花咲かせましょ」

 

 

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

ただの模擬戦、されど模擬戦。

それぞれの個性の可能性を見せつけた結果になったこの授業は、それぞれに信念とも言える思いを抱かせるのであった。

 

 

「半分野郎の力を見て勝てねぇっと思っちまった!!

 

ポニテの奴の言うことに納得しちまった!

 

能面野郎の底知れなさにビビッちまった!

 

クソ猫の動きを見て真似できないって思っちまった!

 

でもな!俺はこっから……

いいか!?

 

こっから1番のヒーローになってやる!」

 

ナンバーワンヒーローとその継承者の前で宣言していた。

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

「大神零!」

 

 

下校中の大神を見つけた轟は彼を呼び止めた。

 

 

「アンタを俺と同じ熱と冷気の複合個性の使い手と見込んで頼みがある!!

模擬戦で使ったあの技!リヴァイアサンとかヘルナントカとか言ってたあの技を俺に教えてくれ!!」

 

そう言って轟は頭を下げた。

彼は決してプライドが低いほうではない。

しかし、彼の野望はそれさえも捻じ曲げるほどに高いものであった。

 

片方の『熱』の個性を使わずにNO.1ヒーローになること。

 

それは永遠の2番手である父親に対しての復讐であった。

 

その為には同じ土俵(同じ個性)でありながら自分より強力な力を持つ大神から少しでも学ぶしかないと考えたのだ。

 

轟のその目はまっすぐなのに何処か濁っている様であった。

 

大神は問う。

 

「その目はだれか復讐してやりたい奴がいる目ですね。

……だれです?……君にそこまで思わせるのは……」

 

「…………親父だ…………」

 

師事されるのであれば話さなくては失礼だ。

轟は素直に答えた。

 

自分の生い立ち、個性婚、母親の乱心、父親への復讐。

 

それは母親が乱心し、実兄を復讐対処にしていたかつての大神であり、自分を見てほしい、認められたいと父親に反抗するかつてのC:B4であった。

 

「…………わかりました。

先に言っておきますが、私と同じことはできないと思います。」

 

「……そうか…………」

 

「ただ、近いことはできるはずです。」

「本当か!?」

 

7つの炎は火が持つそれぞれの特徴を極限まで高めたものだ。

 

リヴァイアサンも熱と冷気の温度調整を極めれば可能だろう。

 

大神は強い口調で言った。

 

「だが、今のお前には無理だ

プライドを捨ててから出直してこい」

 

「………それはお前に関係ない!」

 

「……今のがヒントだ………」

「はぁ?」

 

「じゃぁな……」

 

 

彼は昔の自分と限りなく近い心の持ち主だ。

しかし、大神との決定的な違いはヒーローという存在の影響から殺人という選択を選ばないことだ。

これも時代の流れなのだろう。

悪に堕ちる心配のない自分と共感できるところが多い少年と無我夢中で前に進もうとする少年。

大神は老婆心ながら力を貸したいと思い始めていた。

 

 

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 

 

 




あおばーちゃんはやりたかったネタの1つ。
スキあらば出していきたいと思います。

ケツァルクアトルさんの感想の影響でドンドン渋谷くんが
ネコミミ男っぽんなってる気がする………
まぁ、にゃん丸コスチュームのヒーローだから全然問題ないんですがねwwwイメージは各々で。

USJ襲撃の前か後にCB寄りのオリジナルストーリーを挟もうと思います。



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