大神のヒーロー基礎学が始まる。
大神は『正義』サイドとして爆弾を回収する役だ。
「あなたは本当にお節介ですね」
「万が一でも学校で死人を出す訳にはいかないので。」
人殺しを止めるために自分の危険を顧みずに行動を共にする。
本当にあの人によく似ている。
その言葉に怒りを感じた大神は右手を八百万の顔の前に向けた。
大神の警告だ。
「あまり自分を過大評価しないほうがいい。
言ったはずだ、俺がその気になればここにいる全員を燃え散らすことが出来るし、あなたにそれを止める方法はない」
その通り、彼女の個性は構造を理解したものを作り出す『
それを差し置いても大神が本気で殲滅を始めたら止められるのはオールマイトだけだ。
「それでも私は諦めない。諦めたらただ、それだけで終わってしまうのですから」
この心も似ている。
しかし、大神はあの人とは違う脆さもに感じていた。
「そうか……話は終わりだ」
腕を引っ込むたかと思ったら大神は右手に青い炎を宿す。
そして、青い炎を八百万に振りかざした。
「え!?」
八百万は自分への攻撃かと思い防御しようとするが服を掴まれ後ろに引っ張られた。
青い炎は八百万の後ろから迫り来ていた氷を相殺させた。
「来たぞ!」
(あの紅白頭か……中々に強力な『冷気』だ)
※※※※※※※※※※※※※※※※※
轟は先行して正義側に単身で攻撃に移っていた。
それは私怨に狩られての戦いとは少し違った。
「僕の個性は君の邪魔になるからね。
君が先行して僕が護りにはいるよ」
そう言い両者納得の上で別れた。
彼の個性は『生命力』。
常人より強い生命力を持つのが特徴。
それにより肉体は活性化し、自然治癒力・身体能力・免疫力の向上する。
緑谷、砂糖に続く増強型だが前者ほどのリスクは無く、その代わり火力が乏しい。
肉体派の彼がそばにいたのでは彼の大火力・広範囲攻撃が生きない。
故に別れたのだと彼は言っていた。
しかし、彼はハナっから防衛役に回るつもりはなかった。
「さてと、行きますか…………」
所変わって大神・八百万と交戦する轟。
「クッソォォォオ!!!!」
建物の通路でエンカウントした2人はお互いの力をぶつけ合っていた。
「………………(ぐっ」
炎と氷の鬩ぎ合い、大神が右手を少し押すと境界線が少し動いた。
轟は相殺させるのにやっとだが大神はまだまだ余裕だ。
轟と大神の力、それは量対質の戦いだ。
攻撃範囲は轟の方が上だがただの冷気。
逆に大神は自らの生命力を使い生み出した『
長所である攻撃範囲が生かせないこの通路では大神に軍配があがる。
それにいくら強力な個性を持っていようがまだ子供。
将来的にならともかく、今はひらけた場所でも大神は負けるつもりはないだろう。
轟は父を拒絶する様になってから訓練して来た氷の個性、それを易々と押し返されて意地になっている。
普段のクールな彼が見る気もない。
彼は強力な個性を持っているだけに皆、攻略しようとするには泣き所である接近戦を付こうとする。
しかし、接近戦とはどうしてもリスクを伴うし、一手間違えれば直ぐに反撃を食らう事を意味している。
それに轟自身、それがわかっているか何らかの対策を施すだろう。
故に一番簡単に攻略するには彼以上の火力で押し通すが確実である。
(勿論、それが出来ればであるが)
(凄い……あの轟さんの力を押し返すなんて…………)
「凄いよね〜あれくらい僕もできるけど」
「え?」
八百万は戦いを見るのに夢中で背後から近づいてくるもう一人の敵に気がつかなかった。
ギリギリでなんとか防御できたが八百万はその場に倒れる。
「きゃ!」
渋谷は八百万を倒すとそのまま大神に向かって拳を振りかざした。
轟と渋谷に挟まれた渋谷の攻撃を轟とは逆の手で受け止める大神。
しかし、それが悪手であった。
「残念でしたー」
突如、大神の力が抜ける。
(この生命力が抜ける感じ……まさか!?……『珍種』!!?)
大神の炎が弱まり、轟が反撃を開始し始めた。
「今だよ!轟くん!」
「余計なことしやがって……」
力が十分に出ていない状態で轟の攻撃を喰らったら不味いことになる。
大神のピンチかと思われた瞬間、大神に助け舟が舞い降りる。
「どいてください!!
大神さん!防御を」
そこには火炎放射器を担いだ八百万がいた。
あたり一面を火の海に帰る八百万。
大神は青い炎で防ぎ、轟と渋谷は距離をとった。
「……八百万さん……ありがとうございます。
お礼を言っておきます」
(逆に危なかったけど……)
「一応、パートナーですから」
これからは私が言わんばかりに八百万は二人の前に立った。
「私だって見てるわけには行きませんので。
大神さん、交代です私が二人を相手するので大神さんはその隙に爆弾を回収してください」
八百万の言葉に轟が怒る。
(舐められたもんだ!……)
轟が氷の攻撃を八百万に放つ。
「お二人の攻略法は先程大神さんに見せてもらいましたわ!」
八百万は再び火炎放射器を構えて轟の氷を相殺させる。
「轟さんの氷は相殺させるのが一番安心、渋谷さんもこの様に冷気と熱気がぶつかり合う壁を作って仕舞えば生身での突破は難しいですわ!」
先程の渋谷の奇妙な力も触れなければ一先ずは大丈夫だと判断した。
「GO!!」
渋谷が助走をつけて火の中に飛び込んだ。
「ライダーキーック!!!」
蹴りで足元のタイルをめくり上げそれを盾に冷気と熱気のぶつかるその中に飛び込んだ。
「逃さねぇぜぇぇ!!!
ハイブリットォォォ!!!」
「大神さん!!」
八百万には眼もくれず大神へと拳を振り上げる彼にはやはり大神との因縁がある様だ。
接触するのは不味い。
大神は使うつもりはなかった刀を抜いた。
渋谷は左手に装備したガントレットで大神の刀を防ぐ。
彼のコスチュームは右手は素手に反して左手には物々しいガントレットが装備されている。
(『珍種』パワーで打ち消せない物理攻撃を防ぐための防具と言ったところか……
こいつ、やはり……)
大神は全身から青い炎を吹き出す。
「無駄無駄!『珍種』パワー!全開!!」
どれだけ強かろうが異能は珍種に無効化されてしまう。
しかし、無敵ではない。
(右脇腹!……)
「グフッ」
脇腹を殴られてい痛うだがそれだけじゃない。
珍種の唯一にして無二の弱点。
個人で場所が違うが全ての珍種に存在する『ツボ』、そこをつけば一定時間珍種を無効化できる。
大神が逆転の一手を刻む時、八百万に危機が迫った。
(この程度の『火』で……
俺が止められると思ったか……)
先程の大神とは違う。
八百万の火炎放射器は威力は高いが轟と渡り会うには足りなかった。
「っ冷たっ!!!」
火炎放射器ごと凍らせた轟は八百万に追い打ちをかける。
「悪いが、彼奴と戦うのを邪魔しないでくれ」
この模擬戦に志願した理由は1つ。
炎の個性持ちである大神と戦う為。
轟は八百万を氷で動けなくして戦闘不能にするつもりだ。
「八百万さん、下がって!」
「させないよ。
珍種の力は封じられたけど、僕には
普通なら急所を殴られて悶絶しようが彼の個性は『生命力』回復速度も速い。
高い身体能力で大神に殴りかかるが、彼の目には渋谷の姿はなかった。
見た目に反して激情家の大神には仮にインスタントパートナーであっても仲間の危機に動かないほど冷酷ではなかった。
「邪魔だ!!」
『
突如現れた白銀の龍は渋谷を巻き込み、渋谷を氷柱にした。
大神の異能は7つの大罪、7つの悪魔を従える7つの炎。
特別な力を持つ異能者の中でも特に特別な存在。
7つの炎にはそれぞれ違う効果が付与されており、『煉獄の炎』もその1つ。
今回使った『白銀色の陰府怪火』は周囲の気温を奪うことで凍結させる絶対零度の炎。
大神はそれを霧状に拡散させてその空間の制圧にかかった。
「
あたり一面銀世界にそして残る二人も動きを止めた。
「動けないですわ……」
「俺の『熱』でも溶けない……ただの氷じゃないのか?」
その冷気は八百万と轟の下半身を凍て付かせ、両者共に戦闘可能者が一人となった為、模擬戦は終了となった。
※※※※※※※※※※※※※※※※※
(今の模擬戦は皆、模擬戦ということを忘れてそれぞれの思惑で動いているようだった……
ヒーローとしては赤点だが、それ以上の実力を見せてもらえた)
(渋谷くんと轟くんはライバル意識から、八百万くん……はよくわからないが大神くんをかばっているように見えた。
一番わからないのは彼だ。
轟くん、渋谷くんはすでに同世代では規格外の力を持っているにもかかわらず、彼らを圧倒する力を持つ彼は一体……)
相沢同様オールマイトも大神に不信感を持っていた。
※※※※※※※※※※※※※※※
激戦を繰り広げた四人にクラスの皆は賞賛を送る。
「にしても惜しかったな。渋谷に轟」
「……そうだな………」
切島の言葉に轟はそっけない風に答えた。
彼も性格がアレなのでクラスに馴染めない感があるが、それ以上に始終圧倒されていた轟としては素直に受け取れないところがある様だ。
しかし、音声なしの映像では見る人が見ないとわからない、クラスの皆は別格の四人の戦いだったというところだ。
「みんな凄かったけど、やっぱ大神が一番凄かったよな。
一撃で皆んなを制圧しちまいやがったんだか……ってどうした!?大神!!」
瀬呂が大神の方に目をやるとそこには顔面ぐるぐる巻きの大神がいた。
「………少し、個性を使い過ぎてしまって……人に見せられる姿でないとだけ言っておきます」
連日の任務に加え、7つの炎の中でも上位4つの内の1つを使ったお陰でロストしてしまった大神はその存在を隠すためにコスチュームの機能を早速使っていた。
(くそっ……予定外に力を使い過ぎた)
轟との戦い方を力押しにした事と渋谷に生命力を直に抜かれたのも原因だ。
「わかるぜ。
俺も個性を使いすぎると肌がカサカサになるしよ」
「オイラも頭皮から血が出るんだよな」
と瀬呂に続き、葡萄頭が賛同する。
(たしか、弾力性と吸着性の強い何かを頭から生える個性だったかな?……)
個性の場合、『ロスト』とは言わないが、ゲロイン、肌荒れ、頭から流血、眠くなる、お腹が痛くなる、アホになる等々、このクラスはトリッキーな個性ほど残念ロストが多い。
「でも、終わって見ると渋谷が一番化け物に見えるよ」
「え?……なんで?」
とアホになる奴が言うと渋谷は不思議な顔で見た。
「いや、そこだよ。
なんで氷漬けになって平気なんだよ」
「?………溶かしてもらったからね」
「いや、普通なんがあるだろ。」
ロストの大神、下半身を氷漬けにされた八百万と轟と轟は疲れた雰囲気だが一人、全身氷漬けになった渋谷だけはピンピンしていた。
戦った八百万が呆れ顔で賛成する。
「本当に呆れた『生命力』ですわね」
「本当だぜ。正にゴキブリ並の生命力だなwww」
「ちょっと!!
ゴキブリと同列にしたら失礼でしょ!!
……ゴキブリさんに!!!」
「「「そっちかよwww」」」
と言う渋谷の天然ボケが炸裂した所で模擬戦は終了した。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
その日の放課後、渋谷を探していた大神を見つけ八百万は後をつけた。
モニターで見ていたみんなは気づかないだろうが、戦いの最中大神の個性を打ち消していたかの様であった。
個性『生命力』にあの様な事が出来るとは思えない。
彼もまた大神同様力を隠していると八百万は考えていた。
「よく、ここがわかったね。」
屋上にいた渋谷を大神が見つける。
八百万は隠れてそれを見守る。
「何とかと煙は高いところが好きだと聞いてな」
「キツイな〜先輩は。
さっきのはちょっとした挨拶じゃないですか」
(先輩か………やはりな………)
「本題に入る前に邪魔者がいるみたいだ。
八百万百、これ以上の深入りは警告したはずだ!」
八百万の尾行は気づかれていた。
八百万は渋々姿をあらわす。
「すまない、この話は後日だ」
「いいんじゃないですか?彼女は貴方の監視対象でしょ?
なら、貴方の説明にもなるし」
その言葉に驚く。
八百万が記憶を取り戻している事はエデンには大神しかいないはず。
「お前、それをどこで……」
「
(平家ェェ!)
彼はC:Bの中でも読めない男だ。
さしずめ、彼の異能で集めた情報から推測されたのだろう。
「話が読めませんね…
渋谷さん、貴方も人殺しを推奨する組織のコードブレイカーなのですか?」
「人殺しを推奨する組織か…
確かにそうだけど、先輩からどんな風に説明されたんだか」
説明なんてされてない八百万が効いているのは悪人だからと簡単に人を殺す組織とその暗殺者の存在だけだ。
「そう、僕はエデンが定めた法で裁けぬ悪を裁く六人のヒーロー、
個性発現者で初のC:Bさ」
オリジナルのキャラの渋谷くんは実はC:B 。
No.6という事は大神は……
苗字は言うまでもなくあの人の流用。
下の名前も……まんま、ですね。