戦女神~転生せし凶腕の魔神   作:暁の魔

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やっぱり、新作プレイ&仕事で書き終わるのが遅くなりました。予告から一カ月以上経過とか、まことに申し訳ない。いつも以上にgdgdかもしれません。特に後半。
次回はもっと早く投稿したいものです。

エウの新作をプレイした後の、友人との会話。
作者「( ゚д゚)ヴィーンゴールヴ宮殿に変な設定が追加されてやがる……」
友人「こんな空飛ぶ宮殿をゼアノスが手に入れたら……」
作者「ん? もう持ってるけど?」
友人「チート主人公に、使徒は古神と機工女神で、使い魔はソロモンの魔神。それに加えて、これか」
作者「うん」
友人「(#゚Д゚)過剰戦力にも程があるだろ!!」
作者「御尤もです」

いやマジでどうしましょう。あんな設定、知らなかったよ……。
それに今回、ソロモンの魔神多すぎだろ。4柱も……って、VERITAは5柱もいたか。
あとラテンニールが面白かった。

誤字脱字報告、その他感想、お待ちしております。


―始まる死闘―

 

 

 

「雷光――」

 

「地龍――」

 

「「滅綱斬!!」」

 

■■■■■(オオオオオ)ッ!!」

 

俺へ目掛けて飛んでくる二つの斬撃に合わせ、俺は両前足を振り下ろす。

相殺しようと魔力を込めたソレは、しかし僅かに拮抗しただけで威力負けしてしまった。

手を斬り裂かれて痛みが走り、そこでようやく思い出した。【滅綱斬】は装甲の厚い、つまりゴーレムやサブナクなど、とにかく堅い存在に対して真価を発揮する技だ。俺自身も飛燕剣を使うから、よく知ってる。今まで忘れてたけど。今この技を思い出したけど。

 

そんな【滅綱斬】に、セリカとハイシェラがそれぞれ得意な属性を付加させているのだ。先程サブナクが放った【光分子砲】程ではないが、それに準ずるくらいの破壊力があった。魔力で包み込んでいなければ、消し飛んでいたかもしれない。

 

「並みの魔神であらば、今ので方がついていたのだがな! この程度で済むとは、余程強大な力を持っておる魔神だの!」

 

早くも血を流してしまった俺だが、そこまで酷い怪我ではない。走っていた子供が転んで、両手を地面につけたらガラスの欠片が落ちていて、怪我をする。そのくらいの傷だ。

……充分に酷い怪我の部類だな、これ。でも魔神にとっては軽傷で済むくらいである。特に俺には【超再生】なんてスキルもあるので、時間が経てば掠り傷程度に目立たなくなるだろうな。

 

そして高揚して叫んでいるハイシェラから、異常な速度でこちらに走って来るセリカへと視線を移す。既に足元にまで近づいていたセリカは、大きく跳躍して俺の顔面にその手に持つ剣を下ろした。

 

セリカが今持っている剣は当然ながらいつも使っている、魔神(ハイシェラ)を封じた剣ではない。天使階級第五位の力天使が封印されている、『ヴァーチャーズ』という名の聖剣である。『地の魔神を封じた剣《ルン・ハイシェラ》』には劣るが、騎士にとっては憧れの名剣の一つだ。

 

魔族に対して聖剣は有効だが、それは所詮、魔神ではない奴らに限る。魔神には聖剣など、上級の騎士が持つ剣よりは斬れる、程度の認識でしかない。斬られても大して問題ないだろう。

 

相手が相手ならばまず避けず、構えようともしなかったはずだ。だが今回の聖剣はそれなりの代物であり、何よりも使い手が世界最高峰の剣士だ。振りかぶってきた剣を防がない、なんて選択肢は存在し得ない。なので竜化して厚く鋭くなった剛爪で受け止める。

 

この爪は無属性で【豪鋭爪】というのだが、それこそルン・ハイシェラすら上回る頑強さがある。俺の両前足を斬り裂いたあの二つの斬撃も、この豪鋭爪なら受け止めきれたかもしれないと軽く後悔。

 

「我がいる事を忘れるでないぞ!」

 

ハイシェラが嬉々とした表情で『ジエリアの隷属剣』と呼ばれる地属性の魔剣から、複数の剣圧を放ってきた。俺も良く使う技であり広範囲を斬り刻む、飛燕剣の奥義の一つ、【枢孔紅燐剣】だ。

セリカの攻撃を止めているのは右手であり、空いている左手の豪鋭爪を薙ぐことでハイシェラの技を相殺しようとしたのだが……

 

「させません!」

 

「そこです!」

 

エクリアの純粋魔術【エル=アウエラ】と、テトリの地脈魔術【歪み地響き】。

両者からそれぞれ放たれた強力な魔術によって大爆発が起き、左手は大きくそり返される事になった。

 

【歪み地響き】は空間に発生する歪みに魔力を組み込ませることで、空中に地響きを発生させる魔術だ。通常の地脈魔術は空中にいる者には当たらないのだが、この魔術を使えば当てる事が出来るようになる、画期的な魔術だ。かなり高ランクであるこの魔術を使えるとは、流石はセリカの使い魔と言ったところか。と、内心でテトリの評価を上げる。

 

さて。この両者によってハイシェラの斬撃を防ぐ手立てがなくなり、俺に迫ってきているわけだが、被害に遭うのは俺だけではない。

俺の前足部分には、二つの召喚魔法陣がある。下級悪魔(レッサーデーモン)と、エヴリーヌ直属のベルデーモンを出す為の魔法陣だ。そいつらは今も出現中なのだが、出てきた瞬間に無残にも塵芥と化してしまった。加えて俺にも命中し、思わず仰け反ってしまう。

 

「マーズテリアよ、御力を!」

 

その隙を見逃す甘い女ではない聖女(ルナ=クリア)が、天から落ちる神聖魔術を繰り出してくる。

それは俺を狙ったわけではなく、召喚魔法陣に落ち……バリィンと嫌な音が響いたと思えば、粉々になって消えかけている魔方陣の残滓があった。ベルデーモンの大鋏が一緒に落ちている様が、無駄に虚しさを感じる。

 

「これで、第一関門は突破しました」

 

「後はコヤツを倒すだけ、か。我としてはこちらの方が好みだの。チマチマと小賢しく動くのは性に合わん」

 

ルナ=クリアの確認したような報告にハイシェラが文句を垂れるが、獲物に襲い掛かる肉食動物の如く鋭い目で俺を見ている。戦略としての作戦ならともかく戦術の作戦なんて、ハイシェラには苦痛なのかもしれないな。

 

だがそんなハイシェラに否定的な意見を言う人物がいた。ちょっと驚いたのだが、それは、予想外にもエクリアだ。

 

「ですがどのような策を使おうとも、先に進むためにもこの魔神を出来る限り早く倒すに越したことはありません。深稜の楔魔が最低でもあと二柱、この宮殿に来ていることは確定しています。彼らに宮殿の支配権を取られでもすれば、レスペレント地方にどんな惨事が引き起こされるか……」

 

ベルゼビュート宮殿はレスペレント地方の地下に広がる大迷宮たるブレアード迷宮に、魔力を供給している装置の役目を果たしている。まあ、俺が繋げたワケだが。

それが何なのかと思うかもしれないが、簡単に説明すれば、この宮殿を手に入れる事が出来れば、ブレアード迷宮を思うが儘に操作(支配)することが可能になる。

 

そしてブレアード迷宮はレスペレント地方、すなわちリウイやイリーナ達が住むメンフィル王国やその他諸外国の要だ。今は主にメンフィルが管理・利用しているが、戦争が勃発しそうな深稜の楔魔に取られれば、大打撃を受けるのは確定だ。

 

……と、エクリアは考えているんだと思う。ブレアード迷宮の恐ろしさは、身を()って知っているだろうし。

 

そしてその予想は……実は、ほぼ正解だ。

とある事柄から、メンフィル相手に戦う理由ができた。『彼女』の願いは、復讐。その悲願を叶えてやるためには、王国を潰す必要があるかもしれないんだよね、これが。

もう九割ほど原作知識は記憶から飛び立っているが、残っている知識も、もう役に立たないだろう。

 

だが闇夜の眷属が統治する国とはいえ、凶腕が直々に国を攻撃できるはずもない。下手すれば、光側の現神から無駄に疑われる可能性がある。だからこそ深稜の楔魔として、俺はここにいるわけだ。表面上は深稜の楔魔として、実際はディストピア(滅亡しかけ)の魔神として。

 

これで現神を誤魔化せるとは欠片も思ってない。だが凶腕の正体を一部以外に秘密にしている今ならば、こういった言い訳をすることができる。屁理屈かもしれないが、こういうのも大事だ。

 

「隙ありです!」

 

■■■(カアァ)ッ!!」

 

俺が思考に耽った事を察したのか、テトリは魔力の籠った矢を放ってくる。とは言え当たるはずもなく、ブレスで吹き飛ばした。

 

「そこだの!」

 

― エル=アウエラ ―

 

ブレスを終えた俺に、ハイシェラが即座に純粋魔術をぶち込んでくる。

メギドの炎と同等の純粋爆発と言われるその威力は、使用者が魔神(ハイシェラ)の魔力であるために、通常のソレよりも上だ。

まず、この魔術を使える人間自体が少ない。使えるのは宮廷魔術師などのエリートで、魔術大国と呼ばれる国でさえ、十人もいないだろう。

 

そんな魔術を惜しみなくバンバン放ってくるハイシェラは、流石と言わざるを得ない。

生前の俺は彼女を、ソロモンの魔神に匹敵する強大な魔神だと思っていた。たぶんその評価は正しかったのだと、連続して繰り出される魔術を受け、今更ながらそう思う。

 

視界の端には、仰け反った俺を見て好機と悟ったらしいエクリアもいた。同じ純粋魔術で、物質破壊球とも称される【アウエラの裁き】を発生させている。

 

だが俺は、それらを甘んじて受け続ける馬鹿(マゾ)ではない。

 

― ケール=ファセト ―

― 破滅のヴィクティム ―

― 深淵の暗礁壁 ―

 

機工重力と術者の魔力を反応させる、槍型の暗黒魔術【ケール=ファセト】。

身体を崩壊させてしまう、漆黒の霧で包み込む暗黒魔術【破滅のヴィクティム】。

封印王(ソロモン)の力を根源とした、暗礁壁という閉鎖空間に閉じ込めて持続打撃を与える暗黒魔術【深淵の暗礁壁】。

 

最上位の暗黒魔術三つを、同時に前方へ展開する。上位純粋魔術である【アウエラの裁き】や【エル=アウエラ】では、弱めることはできても相殺することはできない。

 

純粋魔術を掻き消して少し弱くなったとはいえ、それでも上位暗黒魔術となんら謙遜のない魔力が、ハイシェラとエクリアを襲う。

 

「く、間に合って……!」

 

「お二人とも!」

 

すかさず、ルナ=クリアとテトリがそれぞれ【防護の結界】と【岩の抗体】を発動させる。物理的にも魔力的にも防御力を高める神聖魔術に、毒や精神攻撃を受けにくくする地脈魔術である。

 

ハイシェラが闇魔力の槍に貫かれ、エクリアと一緒に漆黒の霧に覆われ、暗黒の暗礁が追撃する。その直前に二人が一瞬だけ光って見えたので、間に合っているのだろう。

 

彼女らを守ろうとしているのなら、【防護の結界】はともかく【岩の抗体】では特に意味はない。良くて気休め程度だろう。もっと良い上位の魔術も使えるはずだが、詠唱が間に合わないと判断したのかもしれない。

とはいっても、ハイシェラは上位に値する魔神だ。恐らくあのくらいでは、重傷にすらなってないと思う。でもエクリアは……

 

「無事かの、嬢ちゃん」

 

「はい、何とか……大丈夫です」

 

無事らしい。無傷とは言えないが、大きな怪我、というのはない。ハイシェラと比べれば。

攻撃を受けながらエクリアを引っ張っていたのか、彼女を抱き締めて自身の魔力で包んでいる。そのせいかハイシェラ自身はダメージを受けたようだ。まあ大事ではなさそうだが。

 

「ハァッ!」

 

― 黒ゼレフの電撃 ―

 

いつもと比べて表情が険しいセリカが、珍しく声にも覇気を込めて電撃魔術を放ってくる。高電圧で融解させる、黒い電撃。はぐれ魔神にパイモンが放った【審判の轟雷】に、少し劣る程度の威力だろう。

ハイシェラとエクリアが危険に晒されて、いつもは出ない感情が爆発したのか。普通の人間だったらこの十倍は激昂してるだろうけど。

 

こちらも魔術で相殺しようとして……何かが顔にぶつかり、魔術にも当たってしまった。

 

「きゃん!」

 

悲鳴を上げて宮殿の床に落ちた物体は、エヴリーヌだ。物ではなく者だが、それは些細な事だろう。飛んで来た方を見れば、それなりに傷ついているリウイ一行がこちらを見ている。

 

何となく理解できた。

最初はエヴリーヌが善戦していたが、決着がつかずイライラし始めて集中力が途切れて隙が出来た所に反撃を受けた……というところだろう。

 

「く、うぅ……」

 

どうやら一度ではなく、何度も攻撃を受けたらしい。ハイシェラ以上の怪我をしている。

 

「総攻撃だ!」

 

リウイの掛け声で、セリカを除いた全員が一斉に構える。一瞬の間の後、剣を持つ者が構えを解く。それから一秒にも満たない間に魔術の奔流が生み出された。

 

高威力の剣圧が。鋭い突きの斬撃が。剣による幾重もの連撃が。聖なる光剣の一閃が。電撃を纏った連接剣の回転斬りが。

一点に集中した純粋魔術が。光で浄化させる神聖魔術が。神の力を顕現させた暗黒魔術が。地脈の力を得た矢の豪雨が。

 

その全てが、エヴリーヌと俺に迫る。力を溜めていただけはあり、大したものである。そのひとつひとつが、上級悪魔なら容易く消しされるだろう威力。それらが波となって

襲い掛かってくる様は、恐ろしくも美しい。

 

……そろそろ現実逃避は止めよう。こんなものを受けてしまったら、エヴリーヌはもちろん俺でもヤバイ。

さてどうしようかとほんの少しだけ迷い……

 

エヴリーヌを手で掴み、歪みの回廊で転移させる。同時に響き渡る爆音。あいつらの攻撃の全てが俺に当たった音だ。

 

■■■■■(ゴオオオオ)ッ!!」

 

意識していないのだが、苦痛の声が漏れてしまう。いくら俺でも、コレは痛いどころではない。激痛が全身を走っている。

 

「これで……終わりだっ!」

 

― 枢孔飛燕剣 ―

 

総攻撃に唯一参加していなかったセリカが、飛燕剣の極意を集約した最強の剣技を放ち。

意識が、黒く染まっていった。

 

 

 

―――――――――――――☆

 

 

 

ズシィンと、その巨体が倒れる。竜型の魔神のその姿を見て、一同が安堵の溜息を零した。

 

全体から少しずつ魔力がポツポツと立ち昇り、それが空中で見えなくなっていくので、魔神の身体が消滅しかけているのだと判断できる。身体中の傷痕を見て、タフな奴だったとハイシェラは思った。はぐれ魔神との戦いに勝利し、そのまま自分達との連戦。体力が全快していて、それでいて一対一であったなら、勝敗は分からなかった。とも思う。

 

ちなみにハイシェラが(つまり魔神が)いることで一悶着起こりかけたが、既にエクリアがイリーナに説明しており、そのイリーナがリウイを(強制的に)納得させた。

 

「勝てたか……」

 

「結局、この魔神は何だったのよ……」

 

肩で息をしながら、リウイとカーリアンがそれぞれの思いを口にする。二人のこの言葉は、ある意味、この場の全員が思っていた事だった。深稜の楔魔であることは確実だが、逆に言えばそれ以外の事は何も分からなかったのだ。

 

「奴らの言葉を信じるならば……ラーシェナ、グラザ、エヴリーヌ、パイモン、ゼフィラ。そして、ディアーネではない。となると候補は残っている、序列1位のザハーニウ、2位のカフラマリア、7位のカファルー、10位のゼアノス。この4柱だ」

 

事前にゼフィラから聞いていた深稜の楔魔の各自の名前を、リウイは惜しみなく晒した。

何にせよ、深稜の楔魔とは敵対してしまったのだから。少しでも勝率を上げるためには、例えそれがマーズテリア神殿の聖女であろうと情報を提供した方が良いと判断したからだ。

 

だが、ここでちょっとした誤算があった。

セリカとエクリアが、ゼアノスから『セリーヌの死の噂』を聞いたことは、イリーナとの会話で知っていた。しかし『ゼアノスが深稜の楔魔であることをセリカが知らない』ということは、知るはずもなかった。

 

「何……ゼアノスが、深稜の楔魔だと?」

 

「陛下、それは本当なのですか?」

 

訝しげな表情をリウイに見せる、セリカとルナ=クリア。セリカとルナ=クリアが知っているゼアノスは『深稜の楔魔』ではなく、『ディストピアの魔神』としてだけだからだ。しかもあの強さで序列が10位というのにも、納得していない。

 

「俺はそう聞いた。そちらの方が知っているものと思っていたが……どうやら、互いの持つ情報にはかなりの違いがあるようだ」

 

お互いに知っている『ゼアノス像』が違っていることに気付き、軽い情報交換を行う。

リウイが知っているのは、深稜の楔魔としての序列と、当事者から聞いた強さ。セリカ達が知っていたのは、ディストピアの魔神だということと、実際の強さ。更には容姿と性格。

 

「ってことはあの時に現れた、いけ好かないアイツが魔神ゼアノスだったってこと?」

 

「話を聞く限り、その可能性が最も高いだろう」

 

カーリアンとリウイが話しているのは、前にブレアード迷宮の『野望の間』にてブレアードを倒した直後に現れた、紫色の髪をした人物のことだ。正しく言えば倒した直後に現れたのではなく、最初からいたのだが、細かいところは気にしない。

 

「ではこの魔神は、魔神ゼアノスではない、ということでしょうか」

 

「そうなるな。聖女殿と神殺しが語った姿とは違いすぎる。見た目は人間と大差ないらしいが、これはどう見ても人間には見えん」

 

「ならばザハーニウかカファルーのどちらかになりますが……神殿の資料には、カファルーは『魔獣の王』とされる姿をしているとされ、ザハーニウは巨躯だということ以外は記されていませんでした」

 

「それは……どちらにも捉える事が出来るな……」

 

ドラゴンならば『魔獣の王』と称されても不思議ではなく、ドラゴンであるが故に今のゼアノスは巨大なので、判断し辛い。

 

この二つの候補でこの強さならば、序列が1位のザハーニウではないかという意見がすぐに出始め、そうかもしれないと皆が納得しかけた……その時だった。

 

「いや、そのどちらでもない。これはゼアノスだの」

 

会話の途中でも話題の魔神をずっと見続けていたハイシェラが、意見を一蹴した。

 

「何故、そう思う?」

 

自分以外の全員が呆気に取られる中、セリカは極めて冷静に尋ねる。この面子でゼアノスと最も永い時間を共に過ごしたのは、他でもないハイシェラである事をセリカは知っている。だからハイシェラが『これはゼアノスだ』と言った時から、セリカはその言葉を信じた。

 

「一見すればこの魔神から魔力が消えていくように見えるが……感知してみるが良い。肉体は薄くなっているが、魔力の質が全く変わっておらぬ。転移が得意な奴のことじゃ、魔力のみを移動させているのだろう。この部屋にはまだこやつの……ゼアノスの気配が残っておる」

 

ハイシェラが言い切って、倒れている魔神を睨めつける。

それに反応するかのように、もしくは観念したかのように立ち昇っていた魔力は巨躯を覆い尽くすかのように渦を巻いた。

 

その魔力の渦が人の形を成し、そこには……

 

「全く……相変わらずの観察眼だこと。嫌だ嫌だ」

 

「貴様と一度でも戦った事のある奴は、こう思う事じゃろう。『何があっても、こいつとの戦闘では一瞬たりとも油断できぬ』とな!」

 

ハイシェラに向かって不敵に笑う、血まみれのゼアノスがいた。

 

 

 





まだこの話が終わらねぇとか、凄くね? 誰がとは言わないけど、早く退場してくれないかな(え
次回には『セリカ&ハイシェラ+その他(アルファ)』VS『ゼアノス』は終わります、たぶん。
でもベルゼビュート宮殿自体はまだ終わりません。



>走っていた子供が転んで、両手を地面につけたらガラスの欠片が落ちていて、怪我をする。
実は、恥ずかしながら作者の実体験です。
手の痛みよりも、痛みのせいで箸を持てなかったことが辛かったです。

>豪鋭爪
原作は技名ですが、本編では爪の名前。

>『彼女』の願いは、復讐。
>王国を潰す必要があるかもしれない
『彼女』とは誰だ……?
メンフィルはどうなるんでしょうね?

>ハイシェラ
>ソロモンの魔神に匹敵する強大な魔神
パイモンと同じく、完全に独自解釈です。

>「貴様と一度でも戦った事のある奴は、こう思う事じゃろう。『何があっても、こいつとの戦闘では一瞬たりとも油断できぬ』とな」
今の所こう考えているのは、ハイシェラ、空の勇士、ディアーネ、ゼアノスの使い魔になったソロモンの魔神……などです。

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