戦女神~転生せし凶腕の魔神   作:暁の魔

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やっとここまで更新できました。
後書きにアンケートがあるので、是非見てください。


―狭間の宮殿・起―

 

 

 

アンリ・マユを狭間の宮殿へ向かわせるために、宮殿を中心とした三ヵ所に結界を成す。その役目を引き受けたのが、白銀公、ルナ=クリア、レクシュミの三人だ。

それぞれがリブリィール山脈、腐海の地、ニース紅河へ行き、アンリ・マユを閉じ込める結界を形成させたのだ。

 

ハイシェラとセリカは、紅き月神殿へ決闘をしに行った。アンリ・マユを倒すのならば、より強い者が女神の身体を使う方が良いという、ハイシェラの提案によって。

 

そして俺は、集合地点である狭間の宮殿の内部にいた。俺の使い魔達と共に。

 

それはそうと、セリカの使い魔となっているナベリウスに、ディストピアへ来ないかと口説いてみたら見事に振られた。

『興味……ない……』だとさ。いや俺もロリは興味ないけど。

 

ソロモンの魔神。あいつらは魔神の中でも古神に該当される程で、非常に強い。

だからすべて仲間にしたかったんだが……二桁突破する前に失敗した。

 

――洗脳ルートが解禁されました。ただしセリカが敵になります。――

 

ん? なんか文字が頭の中を通り過ぎた気がしたんだけど……気のせいだな、気のせい。

うん、絶対にそうだ。

 

あ、でもアムドシアスは仲間になった。

かつてハイシェラがアストライアの身体を使っていた時に、アムドシアスはハイシェラに負けたことがある。その時のあいつの世話役が俺だった訳だが、その役目を受ける際に条件を出していた。それが、アムドシアスを俺に譲ること。

 

優秀な上級魔族の配下を複数体渡すことが交換条件だったが、今のあいつは国を持っていないのであやふやになり、貰うだけになった。

アムドシアス自身も、芸術の分からないハイシェラよりも俺の方が良いと言ったので、俺の使い魔になることに遺憾はなく、事はスムーズに進んだ。

 

ちなみに他にいる俺の使い魔は、まずハルファスにアスタロト。更に、つい最近仲間になった魔神ロノウェ。もちろんロノウェもソロモンの魔神だ。最近まではぐれ魔神だったのだが、ディストピアへ入国してきたらしい。

ラテンニールも俺の使い魔だが、今は召喚していない。

 

更にこの使い魔の中でも、俺の正体を知らないのはアムドシアスだけだ。

理由? 口が軽そうだったから、と言う他ないな。それにアムドシアスはともかく、俺の正体を教えでもしないと、他の連中は俺に仕えないだろうし。

 

「……全員石に戻れ。どうやら来たようだ」

 

ここでアムドシアス以外の皆を召喚石に戻し、近づいて来る気配を待つ。

 

「もう、来ていたのですね」

 

「ルナ=クリアか。既に扉は開かれている。だが、解放し続けるには神の力が必要だ。それについてはお前に任せる」

 

「確かに、任されました」

 

ここ、狭間の宮殿は俺のものだ。だから出入りも自由なのだが、それはあくまで俺限定の話だ。他の者も入るのならば、俺が中に入っている間にも扉を開き続けてもらわなければ、俺以外が出られなくなる。

いや、出られるには出られるのだが、そうすると俺の正体がばれることになる。それはまだ望んでいない。

 

ルナ=クリアと共に、騎士であるゾノ・ジも来る。ルナ=クリアは祈るように目を閉じ、綺麗な姿勢で起立している。祈るように、というより、実際に祈っているのだろう。

 

それからしばらくして、セリカらが現れた。やはり、ハイシェラにはちゃんと勝てたようだ。セリカの手にある剣から、膨大な魔力が発せられている。どうやら剣に封じられているらしい。

 

「セリカか。どうやら勝ったらしいな。……その魔剣、まさかハイシェラか?」

 

「ああ、そうだ」

 

(今思えば、セリカと戦う前にゼアノスとの決着をつけておけばよかっただの)

 

ん? 今の、ハイシェラの心話か? セリカと繋がりがあるわけじゃないから、普通は聞こえないはずなんだが……相性でもいのか? まあいい、聞こえない振りでもしておこう。あいつの相手をすると延々と続きそうだし。

 

「ここから先は、現神ですら恐れる処刑場と言っても過言ではない。それ相応の覚悟はできているか?」

 

「ああ。どうであろうと、俺は進む」

 

俺の問いに、セリカは少しも迷わず即答した。彼の使い魔達や、白銀公やレクシュミに視線を向けても、同じような答が返ってくるであろう顔をしていた。

 

「我がマーズテリアはアンリ・マユを倒すという一点に対し、神殺しである貴方の存在をお認めになった。魔神ゼアノスが言った通り、この先は神の処刑台です。踏み込めば、二度と戻ってこられない」

 

「分かっている。だが聖女、貴方はそれでいいのか? 俺が戻ってきたとしたら、何れ俺達は戦うことになるのではないか?」

 

「ええ、きっと……敵になるでしょう。それでも今は貴方の手で、邪神アンリ・マユとの決着をつけなければなりません」

 

アンリ・マユ。あいつは今でもセリカの身体を求め、彷徨っている。かつて使っていたアイドスの身体に似ている、アストライアの身体を。更に言えばセリカの魂はアイドスの神核と融合してしまっている。それも原因の一つだろう。

 

セリカとルナ=クリアの会話が終わり、ルナ=クリアが背を向け、俺の方を向いた。

 

「ではこれより、マーズテリアの御力で門を開放し続けます」

 

「了解だ。後は頼むぞ」

 

俺は『許可』を出す。凶腕として、狭間の宮殿に立ち入ることの許可を。

そしてマーズテリアが、門の開閉をすることを許すという事の許可を。

 

マーズテリアの騎士であるゾノ・ジがルナ=クリアに頼み込んだのは、丁度門が完全に開き切った時だった。

 

「聖女様、畏れながら、お願いがございます。神殺しの終始を我がマーズテリアにお伝えしたく、同行することをお許し頂きたく思います」

 

つまり、神殺しがこの世界に戻ることができるのならば、如何なる理由で存在するのかを見定めたい。ゾノ・ジはそう言っているのだ。

 

「彼はマーズテリアの騎士。共に戦うことは出来ません。ですが貴方が許すならば……」

 

「……そこに存在する理由が生まれる」

 

ルナ=クリアの笑みに、セリカは頷き返した。

そしてルナ=クリアが神聖術を発動する。これにより、ルナ=クリアとゾノ・ジの視覚と聴覚が繋がった。

 

「ゾノ・ジ。貴方の命、私が貰い受けました」

 

「御意」

 

その言葉を最後に、俺達は前へ歩き始めた。ルナ=クリアの横を通り、宮殿の内部へと進入するために、長い橋を渡って。

 

宮殿内部は、漆黒の闇に包まれていた。だがセリカの女神、エルフの神、レクシュミに宿っている水の巫女の力によって、光が走る。

永い眠りについていた宮殿が、目を覚ました。

 

道は細くて進み難いが、真下は神の墓場。少しでも踏み外せば、神の加護が一切効かない場所へと、落ちることになる。

 

進んでいくと、迷路のようにジグザグとした道に辿り着いた。特殊な門が構えてあり、そこを通過する度に背景と構造が変化する。

白い背景と黒い背景の2つに変わるのだが、同時に迷宮の構造も変わる。しっかり考えて進まなければ、何度も同じ道を往復するハメになる。

 

(まったく、一々面倒だの。セリカ、ゼアノスの得意な転移術で、一気に奥に進めぬのか聞いてみよ)

 

「ゼアノス。お前の得意な転移で奥へ行くことはできないのか?」

 

「そういえば、貴方は歪魔でしたね。歪魔は空間の『歪み』を利用して転移すると聞きましたが、どうなのですか? この宮殿ならば、歪みは多くあると思うのですが」

 

ハイシェラと白銀公、君ら良い点を突くね。

確かにそれで行くことはできる。その『歪み』も、ここは現世と異界を繋いでいる特殊な場所なだけあって、かなり多い。

だけど……

 

「無理だな。いや、一応はできるが、歪みが多すぎる。足場のない空間に転移しても良いのなら送ってやるが、どうする?」

 

勿論嘘だ。歪みが多すぎると転移しにくいが、下級歪魔ならともかく、俺なら問題ない。

でも、今このタイミングで奥まで転移したら『あいつら』と会えない。あいつらとは、このまま行けば途中のフロアで会うことになるようだし。

 

「そうか。ならば遠慮しておく」

 

「そうしましょう」

 

(まったく、ここぞという時に使えん奴だの)

 

黙れハイシェラ。その剣の真中をへし折るぞ。

 

 

 

―――――――――――――■

 

 

 

この宮殿はアンリ・マユを確実に処刑するため、後々神の墓場へ落とす予定だ。だからこそ、この宮殿と現世を繋いでいる橋を壊す必要がある。

現世に帰る時は崩れる橋を急いで渡らなければいけなくなるが、こればかりは仕方ない。

 

その橋は三つの柱に支えられているので、ルナ=クリアの案内で三カ所を回るためにいくつかの道を渡り、邪神からの精神攻撃を受けながらも、道を遮る数々の魔物と戦い抜いて本殿への扉が開いた矢先。奴は現れた。

 

「み、見つけた……私の、私が捜していた女神だぁぁあ……」

 

邪神に魅入られた腐海の大魔術師。かつて俺を召喚した、ブレアード・カッサレの子孫の成れの果て、アビルース・カッサレだ。というかブレアードに子供なんかいたか?

ちなみに先程『あいつら』と言ったが、その内の一人だ。

 

ペルルが必死に話し掛けているが、アビルースは使い魔であったはずの彼女のことを『鳥もどき』と呼び、相手になろうとすらしない。セリカのことで頭が一杯の様だ。

 

「邪神の影響を受けたためなのか、それともセリカの……女神の肉体が原因なのかね。こんなにも歪んでいるとは」

 

(ゼアノスの言葉は尤もだが、存外、これがあ奴の本質だったのかもしれぬ。セリカ、御主が気に病むことではないぞ)

 

ハイシェラの励ましとも取れる言葉にセリカは軽く反応し、ペルルに話しかける。

 

「腐海の大魔術師……ペルル、お前の主だった者だな」

 

「そうだよ、思い出した!? 僕たちフノーロで一緒に暮らしていたんだよ」

 

「くっ……断片的な記憶はあるが、やはり名や顔は、思い出せない……」

 

「例えセリカと過去に繋がりがあったのだとしても、奴がインヴィディアやリエンソの水源で行ったことは……帳消しにすることなどできぬ!」

 

セリカが無くした記憶を思い出そうとしている中、レクシュミはそう言って剣を構える。

それを見たからなのか、アビルースも戦闘態勢を取ってきた。

それにしても、アビルースがインヴィディアやリエンソの水源でやった事って……

ああ。あの狂った水精の所為で、川の水が汚染された事か。

 

「抵抗するか……抵抗するんですね! いいでしょう、貴女の世界を覆すほどの力を、私のものにして見せます! 何百年だろうと追い続け、この私のものになる者。いいですよ……力づくでその女神の身体、奪ってあげましょう!」

 

その言葉と同時にまず召喚されたのは、戦士の死霊魂や魂の狩人という高位の死霊。

他にも睡魔族を統率するリリエールや、上級悪魔までいる。

しかもその上級悪魔は、見た目はグレーターデーモンに近いが普通のそれではなかった。呪われた哭離生物に寄生されていて、遥かにパワーアップしている。名前をつけるならエクスグレーター、ってところか。

主人であるはずのアビルースよりも存在感があり、実力が高い。

 

哭離生物というのは、呪われている異世界に存在する生物だ。

寄生されると莫大な力を得るが、理性を失ったり属性が変化したりする。武器に付属されることもあるが、大概が呪われた装備品になる。だがその分、性能は抜群だ。

 

「さて、俺はあの図体がデカい魔族と戦っておく。何か異質だし、セリカはアビルースと戦わせた方がいいだろうからな」

 

「それで大丈夫なのですか? 貴方が負けるとは思えませんが、1人では……」

 

「大丈夫だ、問題ない。異質な上級悪魔であろうとも所詮は魔族。魔神の敵ではない」

 

人、それを負けフラグと言う。

 

「それに有象無象より、こっちの方が面白そうだからな」

 

「……やはり、貴方も魔神なのですね。戦いに楽しみを覚える魔神ハイシェラと、今の貴方はよく似ています」

 

白銀公の言葉に、失敬なと思いつつも笑い返し、その悪魔を見る。

さて、先ほどの負けフラグを回収しないように頑張ろうか!

 

 

 




>歪みが多すぎると転移しにくい。
これは、
『歪魔は歪みを使って転移する⇒歪みは歪魔にとって扉のようなもの⇒扉が多すぎると、どの部屋に着くのか分からない』
という作者の勝手な考えですので、特に気にしないでください。

思っていたよりもエルンストの質問が多かったことに驚きました。そこでこのアンケートです。期間は3月18日までの一週間です。

とあるご都合主義が働き、【創刻のアテリアル】の世界に介入―――

① する
② しない

どちらか一つを選んでください。
誰も回答しなかったり、引き分けだった場合は……作者の気分次第ですw
それではお願いします。誤字・脱字も、見つけたら教えてください。

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