【凍結】剣製の魔法少女戦記 外伝・ツルギのVividな物語   作:炎の剣製

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更新します。


004話『強くなるために……』

 

僕はいつも通り家に帰ってきた。

ヴィヴィオちゃんも一緒にいるのもいつも通りだ。

今日も士郎パパに特訓してもらうために寄るとの事。

 

「ただいまー!」

「お邪魔しまーす!」

 

僕は家に帰ってくるとそこにアインスママがいるのを確認した。

アインスママは僕の事に気づくと笑顔を浮かべて、

 

「お帰りツルギ。ヴィヴィオもよく来たな」

「はい。今日もよろしくお願いします!」

 

ヴィヴィオちゃんは元気よく挨拶をしているんだけど少しアインスママは苦笑いを浮かべながらヴィヴィオちゃんの頭に手を置いて、

 

「あまりなのはの事を心配させてやるなよ。最近帰るのが遅いってよく愚痴られているんだからな」

「はい、ごめんなさい……」

「わかっているならいいんだ。あ、今日はもう少ししたらシュバインオーグが来ることになっているからツルギは夕食後に魔術の特訓もあるから心しておくんだな」

「わかった!」

 

そっか。今日は久しぶりにシホお姉ちゃんが来るんだ。

それなら僕がどれくらい上達したか見てもらわないとだね。

それで僕とヴィヴィオちゃんは少しだけ椅子に座って待っていた。

ちなみにパパはまだ仕事らしいから家にはいないので今日はシホお姉ちゃんが呼ばれたらしい。

それでしばらくすると、玄関が開いて、

 

「アインス、こんばんわ」

「来たかシュバインオーグ」

「ええ」

 

シホお姉ちゃんは朱色の銀髪を揺らしながら家に入ってきた。

でも、

 

「シホお姉ちゃん。今日は士織ちゃんとクオンちゃんはいないんだね」

「ええ、ツルギ君。まだあの二人には年も年だから魔術の訓練はあんまりさせていないのよ。今は基礎知識を学習中だから」

「そうなんだー」

 

ちなみに士織ちゃんというのはシホお姉ちゃんとすずかお姉ちゃんの子供で、クオンちゃんというのはこれまたシホお姉ちゃんとフィアお姉ちゃんの子供で二人とも今年で四歳になる女の子である。

二人とも大人しい性格で四歳にしてはかなりの力を秘めているんだよね。

また後で遊んであげないとね。

僕たちの友達の中では従妹という事もあって一番二人とも僕になついてくれているしね。

 

「それじゃツルギ君にヴィヴィオ。特訓するから少し体をほぐそうか」

「うん!」

「はい!」

 

シホお姉ちゃんがそう言ったので僕たちは多少の訓練なら可能な広い庭に出てシホお姉ちゃんと一緒に体操をする。

まずはストレッチは基本中の基本だよね。

体をほぐさないとやれることも少なくなってくるから。

シホお姉ちゃん曰く、「万全な状態で挑めるのは幸せな事」らしい。

シホお姉ちゃんは僕たちには過去を話してくれないけどかなり前には最低状態の環境下でしぶとく生き抜いてきたという実績があるからかなり学べることは多いんだよね。

それは士郎パパも同じだけどシホお姉ちゃんは女性な分を入れると士郎パパ以上に困難したそうだし。

するとシホお姉ちゃんはなにかを思い出したかのような表情をして、

 

「……そう言えば、ヴィヴィオ」

「はい。なんですかシホさん?」

「最近なんだけど戦技教導隊の方でなのはに最近ヴィヴィオが夜遅くに帰ってきて心配っていう話を聞いたんだけど、なのはとユーノに話していないの……?」

「うっ……それは、その……」

 

それでしどろもどろになるヴィヴィオちゃん。

まぁそれはそうだよね。

ヴィヴィオちゃんは内緒にしているつもりだけどなのはさん達には結構行動は把握されているから。ここらへんはやっぱり親だから当然の事だけどね。

 

「……ごめんなさい。でも、まだなのはママとユーノパパには内緒にしておきたいの。だからまだ内緒にしておいてもらってもいいですか、この特訓の事」

 

ヴィヴィオちゃんは少し懇願するようにシホお姉ちゃんに頭を下げていた。

シホお姉ちゃんはそれで少し小さいため息を吐きながらも、

 

「わかったわ。でも、近々なのはもヴィヴィオのために本格的に魔法の訓練を行うとか言っていたからその時になったら告白するのよ」

「なのはママが……わかりました」

「うん。それならよし。それじゃそろそろ体も解れた頃だし始めるとしましょうか」

「うん!」

「はい!」

 

それから始まるシホお姉ちゃんのストライクアーツとは少し違った訓練法。

シホお姉ちゃんが教える戦技教導隊のメンバーには必ずと言っていいほど教えるという中国武術。

これは第97“元”管理外世界……地球発祥のものだ。

地球はもう管理外世界という枠からは魔術師の出現によって逸脱したために今現在ミッドチルダは秘密裏に魔術師の団体の長を務めているギルガメッシュさんとコンタクトを取っているという話をシホお姉ちゃんに以前に聞いた。

僕も初めて会った時は僕と同じくらいの少年が務めている事に関して驚いたのは記憶に新しい。

でも、その実中身は苛烈なもので怒らせたらシホお姉ちゃんでも負けるかもしれないという話で少し戦慄したというのもある。

だって、J・S事件で一気にその名を轟かせたミッドチルダの英雄であるシホさんが勝つ確率は低いというんだから相当のものだ。

慢心しないからなおの事勝てないかも……と、士郎パパも珍しく弱音を言っていたしね。

 

 

 

―――閑話休題(それはともかく)

 

 

「ふっ!」

 

僕が瞬動術という歩法で一気にシホお姉ちゃんに詰め寄るんだけど、

 

「まだ動きが荒いわよ」

 

ペシッ!と拳を振るった僕の横に移動したシホお姉ちゃんがやんわりとチョップをして僕はわけも分からずに沈められる。

やっぱり強い……ただの一回の手刀だけで僕は沈められてしまっていた。

 

「やぁっ!」

 

ヴィヴィオちゃんも僕が倒れたのを合図にシホお姉ちゃんに突撃していったんだけど、

 

「まずヴィヴィオは戦うものの身体をしていないから結構隙が多いのよね」

 

ヴィヴィオちゃんの拳を何度も手のひらで受け止めながらもシホお姉ちゃんはそこから一歩も移動をしていないのを見て、

 

「(まだまだ僕たちじゃたどり着けない高みにいるんだな……)」

 

と、思い知る。

それはそうだと感じながらも、

 

「だからヴィヴィオは力技だけじゃなくて攻撃が軽くても確実に通るような戦法を見出した方がいいわね。例えば―――……」

 

そう言ってシホお姉ちゃんはやっぱりというべきかヴィヴィオちゃんに浸透剄の方法を教えていた。

 

「うん……最初よりはうまく浸透剄を使いこなしてきたわね。でも、まだまだなのはには負けるから要特訓ね。ヴィヴィオはもう休憩しておこうか? 体力はあるとはいえまだまだ地力が弱いんだから」

「ッ!……ハァハァ……はい!」

 

ヴィヴィオちゃんはそれで一回休憩のために椅子に座っていた。

そこにタマモさんが現れて、

 

「はい、ヴィヴィオちゃんジュースですよ。休憩していてくださいましね」

「あ、ありがとう、タマモさん」

「はい♪ それよりツルギ君、いつまで寝そべっているのですか? このままだとシホに勝てませんよ?」

「はっ!」

 

それで僕は今まで観察の為か意識を集中していたために横になっていたのを忘れていたのを思い出して、恥ずかしい思いをしながらも立ち上がって、

 

「そ、それじゃシホお姉ちゃん。少し本気を出すけどいいよね……?」

「ええ。相手になるわ」

「うん!」

 

そして僕は己の中に入っていくように気を研ぎすまして、そして唱える。

 

「……ブレード・オン!」

 

これが僕の魔術回路のスイッチの言葉。

そして僕の一番得意な魔術である概念抽出魔法を脳内で選択して、

 

「概念抽出……ヴァジュラ! 是、雷速歩法!」

 

僕は身体に雷を纏い瞬間的に何倍にも加速できるように体を強化した。

 

「ふっ!」

 

そして一気にシホ姉ちゃんへと接近する。

今の僕なら出来る!

そう言う気持ちで吶喊したんだけど……、

 

「……まだ一直線過ぎるわよ? これならまだ銃弾の方が脅威だわ」

 

あっさりと僕の雷速歩法は躱されてしまった。

やっぱりすごい!

それならと僕はシホお姉ちゃんの周りを何度も瞬間的に移動しながらも、やっとの事でシホお姉ちゃんの背後を取ることに成功したために、

 

「これで決めるよ! 概念解放! ヴァジュラ!!」

 

僕の手のひらに今宿っている雷をすべて集束して一気に雷撃として放つ。

これならさすがのシホさんも!

だけど、

 

「まだまだ最後の詰めが甘いわよ。やるなら至近距離で放たないと……」

 

シホお姉ちゃんはなにかの刀を投影して僕の雷を切り裂いていた。

そうか! 千鳥!

僕がそれに思い至ったのを最後に意識が暗転する……。

 

 

 

 

 

 

しばらくして僕は目を覚ます。

 

「あ。ツルギ君が起きたよー!」

 

ヴィヴィオちゃんの顔が最初に映った。

どうやら僕は起きるまでヴィヴィオちゃんに膝枕をされていたらしい……。

 

「えっと、僕は……?」

「そのね。シホさんがツルギ君の雷を切り裂いた後に一瞬で背後に移動して意識を刈り取ったんだよ」

「そっか……まだまだだね」

「いえ、いい線は行っていたわよ。これなら同年代の友達間ではツルギ君には勝てる子は少ないんじゃないかしら?」

 

シホお姉ちゃんにそんな風に褒められて、

 

「でも……やっぱりシホお姉ちゃんが僕の目指す高みの一つですからまだまだ精進します」

「その心意気はよしね。慢心してはダメよ? いざって時に慢心したらすぐに負けてしまうんだから。ヴィヴィオもそこら辺は徹底しておいてね?」

「うん!」

「わかりました!」

「さて、それじゃそろそろいい時間だからヴィヴィオは家に帰りなさい。なのは達が心配しているわよ?」

「はーい!」

 

ヴィヴィオちゃんはそれで帰る支度をしていたので、

 

「それじゃヴィヴィオちゃん、また明日ね」

「うん。またね!」

 

そう言ってヴィヴィオちゃんは帰っていった。

そんな後姿を見ながらシホさんはある事を呟く。

 

「でも、今のヴィヴィオはまだデバイスは受け取らなそうね……」

「デバイスですか?」

「そう。マリーさんやなのは、フェイトがヴィヴィオのために専用デバイスを渡すとかいう話を聞いたんだけど、ヴィヴィオはまだ自身の事を未熟だと感じているからきっとまだ受け取らないと思うのよ」

「そうなんだ……」

 

ヴィヴィオちゃんもこれから大変そうだね。

 

「ま、それはそれとしてツルギ君はあとでヴィヴィオのフォローに周る事。いいわね?」

「うん!」

「それじゃそろそろ士郎も帰ってくるだろうからツルギ君はお風呂に入って来なさい。そして食事後に魔術の特訓よ」

「わかった」

 

それで今日のシホお姉ちゃんによる特訓は終了した。

ヴィヴィオちゃんの事が少し心配だけど、今は見守る事にしておこう。

 

 

 




シホの登場回でした。
っていうかやっと次回ヴィヴィオSideに入るかもしれないです。
一話はまだ終わらず……。




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