【凍結】剣製の魔法少女戦記 外伝・ツルギのVividな物語   作:炎の剣製

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今日は執筆意欲がちょっといつもよりあったので同日投稿します。


―追記―

ティアナの名前の部分を『ティアナ・L(ランスター)・グランセニック』にしておきました。


010話『覇王の記憶とシルビア』

 

 

 

さて、こうしてこの子を運んできたのはいいけど、

 

「それでノーヴェはどう思う……?」

「え? こいつの事ですか?」

「まぁそんな感じね」

「まぁそうですね……色々と複雑そうですからあたしには少し荷が重いって感じがしました。ただ……」

「ただ……?」

「はい。こいつはストライクアーツがおそらく好きなんだなってシホさんと戦っている時に思いました」

「そうね……きっとクラウスの記憶に引きずられてあまり人生を楽しめていないと思うから私も後で色々と手を回しておくわ。それに、私もこの子とは真面目に話したいから……過去の人として」

「えっ? シホさんが過去の人……? どういうことですか?」

「あぁ……そう言えばノーヴェは私の事情を知らなかったのよね」

「まぁ六課時代はただの敵でしたから……」

 

ノーヴェはそれで少しだけ申し訳ない感じの表情を浮かべている。

 

「大丈夫よ。この事を知っているのは六課とか知り合い関係だけだから。むしろノーヴェには知っておいてもらいたいのよね。この子と関わっていくならおのずと私の事も知る事だから」

「そうっすか……」

 

そんな話をしながら私とノーヴェはスバルの家まで到着した。

玄関の呼び鈴を鳴らすと、

 

『はーい!』

 

中からいつもの元気そうな声が響いてきた。

そして扉が開かれてそこにはラフな格好のスバルが出てきた。

 

「待ってましたよシホさん。ノーヴェもよく来たね」

「ええ。少し時間を貰うけど大丈夫? スバル」

「大丈夫ですよ。ティアももうすぐ来るって言ってましたから」

「ティアナも来るのね。……ヴァイスとの貴重な時間を割くのは少し申し訳ないわね……」

 

そう、ティアナは去年にヴァイスと結婚して、ティアナ・L・グランセニックとなって今は一緒に暮らしているんだけどまだ子供は出来ていないらしい感じであるのだ。

 

「あははー。まぁティアもヴァイス先輩と色々と楽しみたかったみたいだけどシホさんの頼みだと言うと喜んで引き受けてくれたんですよ」

「それならいいんだけどね」

「ところで、シホさんが抱えている子が例の子ですか……?」

 

私が背中に背負っているハイディさんに気づいたのだろうスバルが目を向けてくる。

 

「そう……ロッカーとかも調べさせてもらって荷物も回収してきたから分かった事なんだけど本名はアインハルト・ストラトス……本当のクラウス・G・S・イングヴァルドの末裔みたいなのよ」

「あの例の覇王の人のですかー……やっぱりシホさんってこういう王様たちとの巡り合わせがよくありますね」

「まぁそうね。私もよくよくそう感じているわ。そういうスバルだってイクスとかヴィヴィオとかとも知り合いじゃない……?」

「あははー。そうでしたね」

「なぁ……? 世間話もいいけどそろそろ中に入れさせてくんねー? あたし、お腹空いちまったよ」

「あー、はいはい! それじゃシホさんも中に入ってください」

「わかったわ」

 

それでスバルの家の中に入れさせてもらい、アインハルトをベッドに寝かせた後に、

 

「それじゃ私もすずかとフィア達に連絡してくるわ」

「わかりましたー」

 

少し席を外して自宅に通信をかける。

通信越しにすずかの映像が映りだした。

 

『あ、シホちゃん、どうしたの? もうこんなに暗いのに……』

「ごめんねすずか。ちょっとクラウス様の子孫の子と喧嘩っていうのも変だけど相手をしてきたから今日は面倒を見るのもあってスバルの家に泊まっていくわ」

『あのクラウスさんの……? シホちゃんって本当によく巻き込まれるよね』

「まぁそう言わないの。士織とクオンにはもう今日は寝かせておいてくれない?」

『うん、わかったよ』

「明日には帰れると思うから」

『了解だよ。それじゃお休みなさいシホちゃん』

「ええ。お休み、すずか」

『うん♪』

 

そんな感じですずかとの通信を終える。

すずかも私の事を信頼してくれているのかなにも疑う事もしないから愛されてるなぁ……としみじみ思う。

その後にスバルがなにかを作ろうとしているんだけど、

 

「それじゃ久しぶりに料理を恵んで上げようかしらね」

「わー! シホさんの手料理だー! 嬉しいですよ!」

「あたしも少し楽しみだな。シホさんの料理の腕の噂は聞いているから」

 

結局今日はアインハルトは起きなかったからティアナが来るまでみんなで食事を楽しんでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん……あれ……? ここは……」

 

私はシホさんとの戦いで気を失った後にどうなったのだろうか……?

まさか警察に連れてかれたわけでもないのは周りを見回せば分かる。

誰かの家の中でしょうか……?

それで私は少しの間困惑していると誰かが部屋に入ってきた。

 

「お、やっと目を覚ましたか」

「ノーヴェさん……?」

「おう。こうして会うのは昨日ぶりだな。本当の姿でも会えるのはなんか微妙だけどな」

「はっ!?」

 

そう言えば変身魔法が解除されている……。

それをノーヴェさんも察してくれたのか、

 

「ま、色々と諦めろ。もうお前の荷物も回収してあるから身元も割れてるんだしな」

 

指を差された方を見ると私の手荷物が置かれていた。

そう……知られてしまったのですね。

そんな時にシホさん達もやってきた。

他のお二人は知らない方ですが、どなたでしょうか……?

 

「あら、起きたのねアインハルト」

「あなたは……」

「あたしはティアナ・L・グランセニック。そしてこっちが……」

「スバル・ナカジマだよ。ノーヴェのお姉さんです」

 

どこかスバルさんは嬉しそうに胸を張っている。お姉さんという事を自慢したい感じにも見えて少しおかしく感じますね。

 

「さて……それじゃアインハルト。少しお話でもしましょうか……」

 

シホさんのその一言で私は「はい……」と答える事にしました。

もう逃げる気もないですから気になっていたシホさんともお話が出来るのはむしろ好都合とも言えますからね。

 

「それでだけど、今更だけどアインハルトって呼ばせてもらっているけど大丈夫?」

「はい。問題ありません」

「そう……それじゃ聞きたいんだけど、あなたは昨日に言ったわね? 『やはりあなたも過去からの記憶を受け継いでるのですか?』って……これが察するにあなたはクラウスの記憶を引き継いでいるの……?」

「はい……私にはクラウス・G・S・イングヴァルドの記憶が少し残っています。この髪の色や虹彩異色の瞳、覇王の身体資質にカイザーアーツ……それらも一緒に」

「そうなの……どんな記憶を持っているの?」

「オリヴィエ殿下を守れなかった悲しい記憶です……」

 

私はシホさんの問いかけに正直に答えました。

どうしてかこの人の前では隠し事も出来ないという思いがありましたから。

それを聞いてシホさんは少し考えた後に、

 

「そうね……それじゃ私の事も話さないとフェアじゃないわね。確かに私はあなたが言ったように聖なる錬金術師の力を持っているわ」

「それでは……やはりあなたも末裔なのですか?」

「いえ、それは昨日も言ったけど違うわ」

「それはいったい……」

 

そこでスバルさんが笑みを浮かべながらも、

 

「ね、シホさんってその聖なる錬金術師本人だって言ったら信じる……?」

「え……? それはあり得ない事です。何百年前の話だと思っているのですか……?」

 

そう、そんな事はありえない……。

でも、オリヴィエ殿下もこの時代になぜか復活している事もあり一概に否定できないところが悔しいところです。

 

「ふぅ……そうね。それだったら今からあるものを見せてあげるわ。スバル達に見せるのも初めてなのよ?」

「え? まだなにかあるんですか……?」

「初耳なんですけど……」

 

スバルさんとティアナさんも知らない事らしく少しだけ思案の表情を浮かべていました。

シホさんはそれで笑みを浮かべながらも立ち上がって、

 

「モード・シルビア……」

 

そう、呪文を唱えた瞬間にベルカの魔法陣が地面に浮かび上がり見ればシホさんの髪の色がどんどんと銀色に変色していく。

その光景を見て私は信じられないという気持ちとまさか本当なの?という気持ちでごちゃまぜになっていました。

そしてシホさんはゆっくりと瞳を開くとそこには先ほどまでのシホさんの瞳ではなくルビー色のまさしくシルビアの姿となっていました。

 

「……こうしてクラウス様の子孫に出会えるのは嬉しい事です。アインハルト、あなたは今までずっと苦しんでいたのですね」

 

先程のシホさんの雰囲気は一切なく口調もまるっきり変化していて記憶の通りの彼女だった。

 

「それではあなたは本当に……?」

「はい。私はシルビア・アインツベルン……かつてオリヴィエ殿下の力によって異界へと飛ばされてしまった本人で間違いありません」

「「「…………」」」

 

見ればノーヴェさん達も口をあんぐりと開けていて驚いています。

本当に初めて見たのですね。

 

「アインハルト……こうして出会えたのもなにかの縁です。ですからあなたに会わせたい人がいますのでもうしばらく待ってもらえませんか……?」

「会わせたい人ですか……?」

「はい。条件付きですがクラウス様とも会えるかもしれませんから……」

「…………は?」

 

クラウス様と会える? そんな、あの方はもうとうの昔に鬼籍に入っている。だから私という子孫があるわけですから本人に会えるなんて事が……。

 

「困惑するのは分かります。ですが信じてください」

 

シルビアさんのその瞳を見て本当の事なんだという思いを抱きました。

でも、クラウス様と会える……?

そんな奇跡でも起こらない限りは……私はそれで少しだけ考える事になりました。

そしてその後にシルビアさんはシホさんの姿に戻った後に、

 

「ま、そう言うわけだから少しの間、待っていてね。さ、それじゃ食事でもしましょうか。お腹、空いているでしょう?」

「あ、はい……」

「あと、オリヴィエ殿下にもだけどこの時代の聖王の子とも会わせたいから待っていてね」

「わかりました」

 

色々と知りすぎているシホさんの詳しい経緯を後で話してもらえることを祈りながらも私は皆さんと一緒に食事をした後に、警察署に行って色々と反省文を書かされました。

 

 

 




こんな感じで次話はやっと主人公たちともアインハルトが会えるでしょうね。




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