Aono Canata no For Answer 作:一織
朝4:00、スッキリと目が覚める、むしろ何処か心地よいレベルに目が覚める。
私は軽く空を飛ぼうと思い、グラシュを起動する
朝の澄み渡った空気の中、空から見る景色はいつも美しいが、その日は普段よりも綺麗に見えた。
そこから大体30分位してから、地上に戻り、昨日貰った角煮をタッパーから鍋に移し替え、洗う。
そういえば今日返すとは約束したものの、何時頃が良いかは聞きそびれたな。まあ、学園の都合上7時が妥当か
私はそう思い、隣の市ノ瀬の部屋を訪れた。
「はーい……どちら様で…ってミナセさん!!早かったですね」
市ノ瀬に届けに行くと少々驚いた表情をされる
「ん?あぁ……すまない、来るのが早かったか?」
「いえ、そうではなく…」
「ん?あぁ…タッパーだけ持っているのは悪いと思って鍋に移し替えたが?」
私がそう言うと市ノ瀬はほっとしたような複雑な顔を浮かべる
「そ、そうですよね…あはは…」
「すまないな、昨夜実は夕食はすでに取ったあとだったんだ、朝食に頂いたよ」
そう言うと花が咲いたようにぱあっと笑顔を浮かべる。
「初めて食べたが、大変美味しかった。また食べてみたい位だったよ。」
私はそう言うと、学園へ行こうと立ち去る。
が、市ノ瀬がどういう訳か固まったまま動かない。
「おい、どうした?」
私が声を掛けるとハッとしたように、家の中にバタバタと戻り、バッグを抱え出てくる。
「い、いえ、大丈夫です……大丈夫……」
明らかに息が乱れていて、準備を急いでした様に見えたが……まあ良いか、恐らく週番かなにかだと気づいて慌てたのだろう。
そう思い、私は歩き出す。
意外かもしれないが、私は普通に歩いて学園へ行くのも好きだ。
空から見える景色とは違い、人が生活しているのが身近に感じて好きなのだ。
争うこと無く、平和に笑顔を浮かべている人達を見るだけでも幸せな気分になれる。
「………い」
「……フェルト先輩」
「イェルネフェルト先輩!!」
突然私の事を大声で呼ぶものなので、思わずその方向を睨みつけてしまった
「ぴっ……」
「ん?ああ、すまない……えっと君は……有坂さん…で合ってるかな?」
「は、はぃ……合ってます……」
どうやら怯えさせてしまった様だ。
「考えごとをしていた所を急に呼ばれて驚いてしまってね。有坂さんは飛んで行かないのかい?」
私がそう言うと、有坂は顔を顰める。
「……嫌味ですか先輩…」
「別段そういった意図は無かったんだが……すまない、思ったことを口に出すのは俺の悪い癖だな。」
「あ、いえ。なんかこっちこそごめんなさい。」
「ただ、イェルネフェルト先輩のアレを見せつけられた後に飛ぶ気は起きなかったです……きっと、先輩みたいな人を天才って言うんでしょうね……」
「……天才とは99%の努力と1%の閃きである。とは有名なトーマス・エジソンの格言だな。」
「はぁ……?」
有坂は何が言いたいのか分からないという顔をする。
「つまり、努力をすれば、どんな天才にも追いつける。と言いたいんだ。」
「………」
「天才と呼ばれる人間が最初から才能があったのはほんのひと握りだろう、殆どの天才と呼ばれる人間は努力の結晶だ。」
「イェルネフェルト先輩も……努力したんですか?」
「色んな風に飛んだ。綺麗な景色を眺めたくてね。」
「イェルネフェルト先輩は……どうして飛び始めたんですか?」
ふと、有坂がそんな事を聞いてくる。
―――――――
「俺は―――――」
『綺麗な空を少しでも近くで見たかったから』
嘘だ。本当は違う。私は綺麗な景色を、空を、“彼女”と“アイツ”と見たかったんだ。
この平和な世界を――――
大切な人と謳歌できれば良かったんだ。
―――――
そんな事があった日、私は昼休みに屋上で空を眺めていた。
「ん?イェルネフェルトじゃないか、どうした。辛気臭い顔をして。折角の綺麗な顔が台無しだぞ」
「各務教諭……からかうのはやめてください。」
「はっはっは。割と本気なのだがな、して、どうした?女にでも振られたか?」
「それはそんな人居ないの解って言ってますね?」
「流石にバレるか?」
「心当たり無すぎる事言われりゃそうなりますよ」
そう言うと思わずふっと笑みを浮かべる。
「ようやっと笑ったな。私はお前のその顔好きだぞ」
「なんです?急に」
「いや、何故だろうなお前を見ていると年下には思えんよ」
まあ、精神的にはというか前世から考えれば余裕で歳上だもの。
「ふふ……なんの話をしていたのだったかな」
「なんの話でしたっけ?」
私と各務教諭はそう言い笑いあった。
結局、私は何を悩んでいたのかは綺麗さっぱり忘れていた