Aono Canata no For Answer 作:一織
みさきがぼろ負けしてるけど私はみさきが嫌いなわけじゃないんだ。むしろ結構好きなんだ。でもほら、配役的にみさきだったんだ。
俺は悪くねえ!!俺は悪くねえ!!
(みさきファンの人達ごめんなさい!!)
みさきは困惑していた。ありえない。おかしい。こんな事があるなんて。
「どうした鳶沢、迷いが見えるぞ」
「―――っ!?」
次の瞬間、背後から衝撃が襲い、体勢を派手に崩す。
その理由は至極当然のように背後からタッチされたからだが、みさきは本気で飛んでいた。
(なんで!?どうして本気の私が数分前に始めたばかりのイェルネフェルトくんにここまで追い詰められてるの!?)
「コーチ、みさきちゃん、本気で飛んでますよね!?なんでイェルネフェルトさんにあそこまで……?コーチ?」
「そんな…この短時間で“アンジェリック・ヘイロー”を…?」
「アンジェリック・ヘイロー…?」
「アンジェリック・ヘイローは、相手の周りを円を描いて高速で回転し続けることで、相手をタイムアップまで閉じ込めることで勝利することを目的とした技だ。
体力の消費が激しく使用できる時間が限られる上に自分がリードしている状況で無ければ使用する意味がない。
原理は、手元のメンブレンコントロールのみで加速し続けると、すぐに円を描いて回転し続けてしまうだろう?だから加速技としては成立しないが、その性質を逆手にとって考案されたのがこの技だ。そして、一度決まると抜け出すことはほぼ不可能だ」
「そんな高度な技術の技をイェルネフェルトさんは…」
「まだFCを初めて30分と経っていないのに出来ている…これは末恐ろしいな…」
「……悪いが俺の勝ちだな、鳶沢」
「―っ……そうだね」
「まあ、初めてやってみたが、あの技は実戦であまり使わない方が良いか」
「―――どういうつもり?」
みさきは少し怒った口調でミナセに言う
「あれは疲れる、それに自分優位でなければ使う意味が無い、それに―――」
「あれは人の心を折る」
「――――――」
「俺がされたら心が折れるさ、抜け出す術を見つけられない内は――な」
そう言うと、ミナセは地上に向かい背を向けて去る
みさきは呆然とそれを見るしか出来なかった。
みさきが呆然と見ていたミナセの背中は
何故かとても小さく、寂しそうに見えた。
―――――――
『その力で貴様は何を守る?――――』
『終わりか――あるいは貴様も』
“あの頃”は守るべきモノがあり、守るべき“人”が居て…
強くなれば、強くあればそれでよかった
でも今は、
今この時、この世界では
自分のこの力が憎かった。
―――――
(私は……なんの為にFCをしたかったのだろうか…?強くあれば?強くなりたかった?どちらも違う。“この世界”で力は必要無い。相手を負かすことに、なんの感情も無かった訳では無かった、でも“あの頃”は相手を負かせば、そうすることが、自分の、“彼女”の、世界の為になったから)
「私は……なんの為に空を飛ぶ……?」