メインキャラと同年代じゃないオリジナル主人公は間違っているだろうか?   作:反町龍騎

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六話

「は〜い、それじゃあ訓練再開するよ〜」

 

 なのはが教導隊訓練生達に声を掛ける。そのなのはに訓練生の中の一人の男性が手を挙げる。

 

「はい、ファウロン君」

 

「あの、高町教導官。小鳥遊嘱託魔導師は放っておいていいのですか?」

 

 ファウロンと呼ばれた男性が見つめる先、それに釣られてその場にいたほぼ全ての者が見た先には、体育座りで光の宿っていない目を小刻みに震わせ、何事かをブツブツと呟いている、小鳥遊宗二がいた。

 

「あ〜いいのいいの。宗二君は今はまだあのままでも」

 

「今はまだってどういう事ですか!?」

 

 先程まで生きた人間とは思えないほど死人臭がしていたのに、何故――ええいうるさい!第三者目線の地の文め!何が死人臭だ!俺は生きてる!

 

「どういう事って、宗二君は私と模擬戦だよ〜」

 

 ファッ!?そんな可愛い顔で死刑宣告をするなんて!酷い!酷いわお母さん!

 

「ごめんなさい許して下さい俺まだ死にたくないんですぅぅぅッ!」

 

「だから死なないってば!」

 

「そんな悪質な嘘は通用しませんよ!」

 

「悪質な嘘って酷い!」

 

「ゼロ距離SLBとか殺す気満々じゃないですか!」

 

「そんなこと無いもん!それは宗二君に手加減出来ないだけだもん!ちゃんと非殺傷設定で撃ってるから死ぬ事なんて無いもん!」

 

「もんとか言ってんじゃないよ!あんたもう二十三でしょうが――あっぶなぁッ!」

 

 ついつい言い合っていて頭に来たからなのはさんに対しての禁句を言ってしまった。ワオナニアレジメンエグレテル。

 だ、駄目だ!足が震える!震えるのは脳だけで充分ですよ。

 

「今なにか言った?」

 

「イイエナニモイッテマセンヨ。イウワケナイジャナイデスカ、ハハハ」

 

 ヤベェ、目が笑ってねぇ。逆に俺は首から下が笑ってる。恐怖によって。

 

「そう?なら良かった」

 

 ホッと胸を撫で下ろす。納得してくれて良かった。流石は処女。

 

「宗二君、O☆HA☆NA☆SHIする?」

 

「エンリョシテオキマス、コロサナイデ」

 

 なのはさんまで心を読んでくるとは⋯⋯。俺にプライバシーはなくなりつつあるようだ。

 

「は〜い皆、今からいつもと同じメニューをこなしてね。それが終わった人から休憩です」

 

 なのはさんの言葉に、元気よく返事をする彼ら彼女ら。若いっていいね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 オゥフ、ミンナバテテーラ。

 可哀想に。鬼教官高町によってしごかれてしまったのか。南無南無。

 

「じゃあ今から、宗二君と私で模擬戦するから、皆見ててね〜」

 

「いやあああああぁぁぁぁぁァァァァァッッッ!!!」

 

「逃げちゃダメだよ〜」

 

 やめてぇッ!バインドかけないでぇッ!まだ死にたくないのにぃッ!

 

「ほら早くセットアップして」

 

「うぅ⋯⋯。分かりましたよ」

 

 しょうがない。ここは死地に飛び込むしか無いようだ。

 俺は自分のデバイスである白虎を目の前で持つ。

 

「セットアップ」

 

 白と黒で構成されたバリアジャケットを着て、刀の柄を握る。

 

「では始めましょうか、お母さん」

 

「だからお母さんじゃないって!」

 

 おっと、また間違えた。おや?俺のお母さん発言を聞いた訓練生達がざわめき立つ。

「お母さんって?」「なのはさんの子供はヴィヴィオちゃんだけのはずだろ?」「まさか隠し子!?」「実の息子だったりして」「いやいや、なのはさんまだ二十三だよ?」「それに小鳥遊君は十五だ」「八歳差か」「八歳で産んだってことか」などなど。

 

「ちょっと待って!?ホントに宗二君とはそういうのじゃないからぁッ!」

 

 なのはさんが困っている。面白いからこのまま行こう。

 

「じゃあ行きますよお母さん!」

 

「だからお母さんじゃないってば!」

 

 俺の不意打ちの衝裂斬をレイジングハートで受けるなのはさん。流石はエース・オブ・エースだ、不意打ちを受けるとは。

 

「アクセルシューター」

 

 なのはさんの周りに桜色の球体が数十単位で出現する。さすがにあれを全て撃たれたら逃れられんな。向こうが来るより先にこっちが行く!

 

「シュート」

 

 という事でなのはさんの元へ肉薄している最中の俺に、数個のアクセルシューターが向かってきた。それを刀で切り落とし、なのはさんへ切りかかる。なのはさんはレイジングハートで防ぎ、アクセルシューターを放とうとする瞬間、なのはさんの顎を蹴り上げる――事は魔法陣に阻まれて出来なかった。

 

「シュート」

 

 蹴りを防がれたのでその場から飛び退いた俺に、なのはさんがアクセルシューターを十個ほど放ってきた。それをなんとか全て切り落とし、なのはさんに技を放つ。

 

「白虎裂斬一刀流 空の御霊ッ!」

 

 白虎裂斬一刀流空の御霊。この技は、純粋な剣技により斬撃を飛ばす技。ただこの技は、使い手の熟練度や技量だけでなく、得物によっても威力や飛距離が変わってくる。俺の使う白虎の場合、最長で二十メートル飛ばす事ができ、その斬撃は鋼をも切り裂く。試した事は無いが、防御魔法も切れる筈。

 

「――ッ!」

 

 案の定切れたようで、なのはさんは驚愕しもう一度防御魔法を使い、なんとか防ぐ。斬撃によって生じる隙を見逃さない俺。すかさずなのはさんへ詰め寄り突きを放つ。首を動かし避けたなのはさん。だが間に合わなかったのか、頬が少しだけ切れて血が流れている。

 突きをすれば刀を引く、と思ったらしくなのはさんは攻撃の体制に入る。その予想を裏切るように、俺はそのまま刀を振り下ろす。

 

「ッ!そんな!」

 

 間一髪レイジングハートで防いだなのはさんは、魔導師のメリットを活かし、俺にアクセルシューターを放つ。残りの全てだ。それをなのはさんから飛び退きながら切り落とし、衝裂斬で攻撃を仕掛ける。

 無論それは防がれ、反撃の砲撃魔法が放たれる。

 

「ディバイン、バスターッ!」

 

「チャージの時間どうしたのおおおぉぉぉッ!?」

 

 ギリギリで避けることが出来た。お、おかしい。あれは威力が大きい分チャージが長いはず。なのに何故?

 

「これはチャージの時間を短縮する事を目的とした魔法、ショートバスターだよ」

 

 俺の疑問を孕んだ絶叫に、可愛い笑顔で答えるなのはさん。それにしても、それをディバインバスターって言うのは卑怯だ。焦っちゃったじゃねぇか。

 

「なんという恐ろしいハッタリをかますんだお母さん」

 

「だからお母さんじゃないって言ってるじゃん!」

 

「酷い!俺なんか息子と認めない訳!?俺はお母さんの事、こんなにも愛しているというのに!」

 

 顔を両手で隠し、オロオロと泣いてみせる。その光景を見て訓練生達はまたざわめき立つ。

「やっぱり親子だったんだ」「ならなんで苗字違うの?」「それはあれだろ?なのはさんが小鳥遊君の事子供として認めてないんじゃ?」「え?なのはさんってそういう人なの?」「ファン辞めよっかな俺。今までゆかりんに声が似てるから高町なのはファンクラブに入ってたのに」

 

「ちょっ!だから違うってば!皆も宗二君の嘘に騙されないでぇ!」

 

 計画通りだ。俺の精神攻撃によりなのはさんは焦っている。しかし一人変な事言ってなかったか?

 

「俺はなのはさんの息子になりたいですよ」

 

「こんな言うこと聞かないおませな子供はお断りかな」

 

「じゃあ恋人で」

 

「もっと嫌かな」

 

「なら今週末デートしてください」

 

「絶対に嫌だよ」

 

 わあ、全て断られてしまった。僕泣いちゃう。

 目尻に涙を浮かべながら、なのはさんへ突っ込んでいく。

 斬って斬って斬りまくる。攻撃は最大の防御と言うだろう?それをしていると、なのはさんのバインドが来るんだよ。

 うわぁん忘れてた。俺の非力な腕じゃ、バインドを千切ることは出来ない。

 

「集え 星の輝き」

 

 なのはさんが手をかざすと、そこから桜色の魔力が勢いよく膨れ上がる。

 こ、これは、皆大好き愛と勇気と勝利の一撃、SLBさんやないですか!いや!駄目よそんなの!せめて距離を取ってよ!なんでこんな所でチャージを始める!?

 ない腕力で、必死にバインドをちぎろうとする俺に、なのはさんが無慈悲に告げる。

 

「スターライトブレイカーッ!」

 

「いやああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッッ!!!」

 

 目の前が桜色一色となり、俺の意識は途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺死んだかもしれん。




空の御霊(からのみたま)です

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