メインキャラと同年代じゃないオリジナル主人公は間違っているだろうか?   作:反町龍騎

2 / 9
二話

 俺が次に訪れた場所は、とある道場だ。

 古き良き雰囲気のある道場だな。なんだろう、落ち着くぜ。

 石の階段を上り、道場の扉を開ける。

 

「たのもー――あっぶなっ!!」

 

 扉を開けた瞬間に、刀が横に薙ぎ払われた。

 あ、あぶねー。間一髪だぜ。

 今の俺は体を反っているためなんだか時でも止めそうな格好になっているぜ。

 

「おや、邪気を感じたから刀を振ってみれば、宗二君じゃないか」

 

 このいきなり俺を殺そうとしてきた、おっかなびっくりな黒髪長髪の巨乳美人さんは、ミカヤ・シェベル。インターミドル都市本戦常連者で、抜刀術天瞳流の師範代だ。

 

「あ、ああ、ミカヤさん。あなたの宗二さんに対して、随分な扱いですね」

 

「おや、いつから私たちはそんな関係になったのかな?」

 

「そうですね。あれは五年前、俺達の試合後からその関係は始まった⋯⋯」

 

「記憶の捏造は良くないな、宗二君。五年前私たちは戦わなかったはずだがね」

 

「おや、そうでしたっけ?いやぁ、最近物忘れが激しくて」

 

 よくあるよね。あれやっとこうって思って他事してたら、何しようとしてたか忘れちゃうみたいな。

 

「はぁ⋯⋯。それで?宗二君、君は何をしに来たのかな?」

 

「ああ、今日来たのはですね、今週末暇か聞く為なんですよ」

 

「ん?なんだ、そんな事か。それなら別に通信でも良かったんだよ?」

 

「ハハハ、ゴジョウダンヲ」

 

 そう言われたから、通信で済ました時、晴嵐を振り回して追いかけてきたのを俺は忘れない。忘れたくても忘れられない。

 

「今週末、だね。――うん、予定はないよ」

 

「そうですか。ならデートしましょう」

 

「ああ。待ち合わせはいつもの場所でいいのかな?」

 

「ええ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「⋯⋯ねえミカヤさん」

 

「どうしたんだい?宗二君」

 

「あのね、僕今動けないんだ。この状況説明してもらってもいいかな?」

 

 今俺は、服の上から荒縄で亀甲縛りされていた。

 ねぇこれ誰得なの?男の亀甲縛りとか需要ないよね?

 

「需要はあるさ。私は好きだよ?男の、⋯⋯いや、君の亀甲縛りは」

 

 ワーオ、ココロヨマレテーラ。

 それよりもだ。

 

「女の子が亀甲縛りなんて口にしちゃいけません!天瞳流の師範代ともあろうお方がはしたない」

 

「構わないよ、はしたなくて。君の前でなら、こんな私も見せられる」

 

 おいおいおいおいどうしたミカヤさん。何故にあなたは服を脱ぎ始めるの?

 道着がはだけて立派なお山が見えてますよ?

 

「そりゃあ、見せるためにやっている事だからね」

 

 ワーオ、マタココロヨマレテーラ。

 はっ!駄目だ!股間が熱く!

 いけない!このままではR指定がかかってしまう!

 

「ミカヤサン。ハヤクフクキテ、ソレカラナワホドイテ」

 

「ふっ、宗二君。言葉と感情が矛盾しているぞ」

 

 ちくせう!この状態は惜しい!実に惜しい!

 もう少しでミカヤさんはサラシを解こうとする。だがしかし!それでは駄目なのだ!初めては自分からと決めている!

 それにだ!

 

「そんな淫乱なミカヤさんは俺が好きなミカヤさんとは違うんだぁ!」

 

「あ、おい!」

 

 気づけば俺は走っていた。亀甲縛りのままで。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 畜生!酷い目にあったぞ!

 亀甲縛りがなかなか解けなかった所為で、道行く人々から白い目で見られちまったぞ。

 だがもう大丈夫だ!縄は解けた!

 

 

 

 おやここは河川敷。

 そうです、私はむやみやたらに走っていたわけではありません。

 もう一人、デートに誘わねばならない人が居るのです。

 ただその子ね?俺を避けてるの。まあ、二年前のあの事が原因なんだろうけど。

 あ、あの子のテントを発見。

 まったく、あの子は世の中の防犯システムに喧嘩を売る気ですかね?そう思いたくなるほど無防備なんだが。

 テントの入り口を開けてみる。案の定いない。

 ならば、とテント周辺を探してみる。こちらもいない。

 ふむ、草陰に隠れていやがる。

 バレないとでも思ったのかね。君のその長い髪が草陰からはみ出しているじゃないか。

 まあいい。ここは安心させるために、一度この場を去っておこう。

 

 

 

 

「――ふう、やっと行ってくれた。合わせる顔が無いって言うたのに」

 

「やっと会えたねジークぅぅぅ!!!」

 

 俺はジークにダイビングハグをかましてやった。俺がヴィクターにされたダイビングハグの比ではない。

 しかもそれを、腹部目掛けてしたのだ。

 

「グハァ」

 

 勿論ジークはくの字に折れて再起不能だ。

 

 

 

「さてと、ジーク。理由を聞こうか。俺から逃げていた理由を」

 

「えっと、その前に縄解いて?」

 

「断る。縄を解いたらお前、逃げるだろ?」

 

「ううっ⋯⋯」

 

 今、俺の目の前で、縄でぐるぐる巻きにされて目元に涙を浮かべている黒髪ツインテールの少女は、ジークリンデ・エレミア。

 彼女もインターミドルの選手であり、過去に俺を破って世界戦優勝を果たしたこともある、格闘技の世界王者だ。

 しかし、彼女は俺から逃げる逃げる。

 詳しい理由はまた語るとして、今はジークの言い分を聞こう。

 

「で?なんで俺から逃げる?」

 

「⋯⋯だって、あの時宗二に酷い事したもん。宗二に合わせる顔、無いやんか」

 

「――ていっ」

 

「あたっ!」

 

 俺はジークにチョップをした。

 

「ずっと言ってただろ。あれはお前が手加減できなかったから起こった、言ってみりゃ事故みたいなもんで、お前が気に病む必要はない」

 

「でもっ――」

 

「それに、お前のその力は、呪いなんかじゃない。お前の先祖たちが積み上げて、子孫のお前に託されたギフトなんだ。その力は誇るべきものであって、忌むべきものじゃない」

 

「でもっ、この力の所為で、怪我させたんは事実やし」

 

 チッ、うるせぇな。いつまでもくよくよと、過去の失敗引きずりやがって。

 

「でももだっても聞きたくねぇ。あの時、お前が俺に全力を使ってくれたから、俺は清々しく負けることが出来たんだ。もしお前が、あの場所で手加減して俺に負けてたら、俺はお前と、距離を置いてたかもしれねぇよ」

 

 それはそうだろう。真剣勝負の場で手加減されてたなんて、侮辱もいいところだ。

 

「⋯⋯」

 

「それに、だ。お前があの時、あの力でもって俺を倒したからこそ、俺は胸を張れるんだぜ?」

 

「え?」

 

「俺が一度倒した相手は、俺を二度も倒した相手は、こんなに強い奴なんだぜってな」

 

「――宗二」

 

 ジークは一粒の涙を零し、その後、満面の笑みを見せた。

 

「ありがとう、宗二!」

 

「おう」

 

 俺はジークの縄を解く。するとジークが抱き付いて来た。

 

「宗二ー、宗二ー!」

 

 俺に頬を擦り付けるジーク。可愛い。ジーク可愛い。

 そう言えば、本題を忘れていたな。

 

「なあ、ジーク」

 

「ん?どないしたん?」

 

「今週末って暇か?」

 

「勿論暇やで」

 

 勿論ってなんだよ。

 

「そっか。ならその日、俺とデートしよう」

 

「うん!ええよ!」

 

 またも満面の笑みで笑うジーク。可愛い。ジーク可愛い。

 

「じゃあ、いつもの場所でな」

 

「うん!⋯⋯あ、そや。なあ宗二」

 

「ん?」

 

「今日からしばらく宗二の家に泊まってもええか?」

 

「ダメに決まってんだろ」

 

「そんなっ!?」

 

 ガガーンッ。という効果音が似合いそうなほどにがっくりと項垂れるジーク。

 だってさあ、男女が一つ屋根の下で暮らすって、危ないだろ。主に俺の貞操が。

 怖いんだよ、この子達。人のベッドに忍び込んでは人の貞操奪おうとすんの。

 やだよ。こんな子達と一緒に暮らすの。

 はじめてはちゃんとしないといけないでしょ。

 

「じゃあ、俺は帰るから」

 

「え?もう帰るん?もっと一緒におってや。⋯⋯やっぱり、ウチは嫌いなん?」

 

 涙目で俯いちゃったよ。まったく、ジークはこのガラス・ハートをなんとかしないといけないな。

 

「嫌いなわけないだろ?もう暗くなってきたから帰るだけだ」

 

「なら!ここで一緒に!」

 

「⋯⋯テントで一夜は勘弁してくれ。また明日来るから、な?」

 

 言ってジークの頭を撫でる。ジークの髪サラサラしてる。

 

「⋯⋯約束、やで?」

 

「おう」

 

 ジークとも約束を交わし、河川敷を去る。

 ジークの頭を撫でた手を一嗅ぎ。うん、いい匂いだ。

 聞こえない、聞こえない。気持ち悪いなんて聞こえない。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。