ターゲットの暗殺教室 作:クローバー
六時間目
死神はずっと授業を続け俺たちはずっとその授業を聞く。
「お題にそって短歌を作ってみましょう。最後の七文字を触手なりけりで締めて下さい。書けた人は先生のところでまで持って来なさい。できたものから帰ってよし。」
時間は国語でどちらかと言うと高校の授業内容に近い。椚ヶ丘は中高一貫の進学校なので別におかしくはないのだが、それは本校舎の生徒だけだ。このE組はその過程から外され、一般受験での入試になる。だから本当は別の授業を組み入れないといけないのだが、ある条件のためにE組も本校舎の授業ペースでしないといけない。
本当に捨て駒みたいな扱い方だ。
俺はこのクラスを見てそう感じる。
だからこうなることは予想がついていた。
「その前にちょっといいか?」
「はい?なんでしょうか羽川くん?」
「いや、ちょっとさっきから気になっていたんだけどさっきから火薬の匂いがして集中できないんだけど。」
「えっ?」
全員が騒めき出す。すると4人が違う反応をしているのに気づく。
「にゅや?」
「たぶんだけど、どこぞの女の子みたいな先輩が、自爆テロをどこぞの不良もどきの3人の先輩に脅されてるのか知らないけど計画してるのかなぁって。」
するとクラス全員が女の子みたいな先輩を見る。
「……えっと。なんで?」
「さっきから言ってるだろ。俺は殺される側だから聴覚や嗅覚、視覚は普通の人間より優れてるんだよ。特に銃器の弾丸に含まれる火薬や薬品の匂いには特にだ。それにさっき昼休み前にはなかった首元に何かかけてあるだろ。多分かけてある物の大きさからおもちゃの手榴弾、嗅覚からかすかに火薬の匂い、そして後ろの3人が女みたいな先輩のことをさっきから見続けている。多分その一番ボスみたいなやつが朝に隠し持っていたから昼休みに呼び出したときに渡したんだろ。よって3人が…確か潮田先輩でしたよね?潮田先輩に多分対先生特殊弾を詰めたおもちゃの手榴弾。まぁ威力を火薬で底上げしてあるものを渡して自爆テロを決行するつもりだったんだろうけど。間違っていたなら、その手榴弾の使い道教えてくれませんか?」
クラスの全員が俺の方をみる。それに気にせず俺はカッターをポケットから取り出しその先輩の方にむかい、首元にかけてある糸を切ろうとしたが後ろから殺気を感じる。
軽く舌打ちして潮田先輩の首元から手榴弾を取り出し自分の制服で包む。その瞬間、手榴弾が爆発した。
「こうくん!?渚!?」
「寺坂。お前!」
「うるせ〜よ。どうせそのチビも100億の賞金首だろ。そんなやつ殺したって。」
「……だれが死んだって?」
にっこりと笑うとクラス全員がこっちを見る。
「……えっ?」
「潮田先輩怪我はありませんか?」
潮田先輩の方を見ると薄い膜に覆われている。
「なるほど。余計なお世話だったかな?とりあえず、まぁチビって言われたことも事実なんで何も言いませんけど、やっと本性を現しましたね。先輩。」
にっこりと笑うと腹が痛む。多分火傷を負ってるはずだ。
「いや〜先生の油断をついてずっとこのタイミングを待っていたんだと思うけど俺に怒りで使ったんだからもうこの暗殺はできないですね。」
「…羽川くん怪我は?」
「大丈夫。制服が焦げて使い物にならなくなったくらい。あとは軽い火傷かな。全治一週間もかからないと思う。」
死神の言葉に笑う。実際制服の下に防弾服を着ているので痛みはあるが火傷くらいで済んでいる。
「さってと、犯人がわかったしちょっと警告でもしとこうかな。潮田先輩。」
「えっ?」
「歯を食いしばってください。」
俺は潮田先輩をその膜の上から蹴飛ばす。すると身軽な潮田先輩は簡単に吹き飛ばされて後ろの壁に衝突した。
「ちょっと羽川くん何を?」
「それ、多分先生の月一で使える脱皮の皮だろ。それが被っている以上核爆弾でも傷一つつかないよ。まぁ痛みはあると思うけど自業自得だと思ってください。それで」
俺は全力で走りその勢いのまま首謀者の3人の先輩の腹をぶん殴った。するとうめき声が聞こえてくる。
死神は何も言わない。多分俺にも怒ってるのだろう。でも怒れない。なぜなら俺の境遇を知っているのだから
「とりあえず最初にいっておくけど別に俺を殺そうとしたことには怒ってないんだよ。まぁこんなチビが100億円って言われたらあんな怪物よりも俺を狙って仕方ないだろうしな。ただな、俺が気に食わないのはてめーらが他人の安全を簡単に扱ったことだよ。」
俺はうなだれているボスらしき先輩の襟元を掴む
「いいか。俺らみたいな殺し屋のターゲットになるやつらのほとんどは自分が望んでもいないのに力を手に入れ、他人の利益のために殺されるんだ。まぁ本当にゲスなやつらはいるけどな。でも殺される側はずっと思ってるんだよ。死にたくないってな。だから力を使い自分の身を守ろうとする。そして、生き延びたらまた狙われる。それが死ぬまでずっと繰り返されるんだよ。」
俺は殺される立場として何度も死地を繰り抜けてきた。その中で殺し屋と話し色んなことを聞いてきた。でも
「だけども俺も、誰も死にたいとか思ったらことないぞ。生きるために自分に力を使わざるを得ないんだよ。どんなに嫌なことでも。」
そして俺はがたいのでかい生徒を睨み。
「いいか。あの先生はいくつか国と条件を結んでいるらしく、生徒には手出しはできないって言ってるから、俺もなるべくは危害を加えない。だけどもお前らの命を守るってことが契約なんだ。だからてめーらが危険に陥った場合その原因は俺が潰す。」
俺先輩を投げる。すると重そうな先輩は簡単に吹っ飛ばされる。いや、多分実際は重いんだろう。
それなのに今の俺には重いという感覚は感じない。
…やっぱり俺はもう人間じゃない
「いいか?やろうと思えば俺はこの国くらいは簡単に潰せるしそ1年あればこのタコぐらいなら簡単に殺せる。正直、お前らの思っている以上に強いぞ。殺し屋という世界にも、殺される側にしろあのタコよりも今は詳しい。伊達に5年間ずっと逃げ回ってきたわけじゃないんだ。毎日を命がけで生きているんだ。たとえ、知り合いや家族が死んでもな。そんな中で平和な日本で自爆テロを計画して実行しようとする奴がいると、本気でむかつくんだよ。それが自分じゃなくて他人にさせようとするならなおさらだ。」
俺は先輩を睨みつけ
「あんたらは暗殺する以前に命について考えた方がいいと思うぞ。そうしないと将来絶対に後悔する羽目になるしな。もし、あの暗殺方で地球が救われたとしても多分誰もお前らを認めないだろうな。100億も実行した潮田先輩が手に入るだろうしあんたらはクラスメイトに自爆テロをやらせたことで法で裁かれるんじゃないか?」
「……」
「それに、このタコは生徒はと言ってたけど、てめーらの家族や身近な人の安全は保護してなかったぞ。多分あんなやり方で殺そうとたくらんだら…こうなると思いますよ。」
俺はカッターナイフに少しだけ力をいれる。すると粉々に砕け散る。するとひっと恐怖に怯える先輩がいた。
「まぁ。最終的にどうなろうが知らないけど。こんなこと二度とすんじゃねーぞ。わかったな?」
これは正直脅しに近いが仕方ないだろう。
そうしないとまた同じことを繰り返してしまう。
するとクラス中が黙りこむ。
俺は適当に短歌を書く。一応言ってあった条件は満たしてるので大丈夫だろう。
「んじゃ。課題終わったから帰る。多分ちゃんとしてるから。」
「ちょっと待ってください。羽川くん。」
「言いたいことなら、うちで聞く。今日の一件はあんたの依頼に反するしな。でもまずは冷静にさせてくれ。でないとあんたを殺してしまう。」
「……」
すると諦めたようにする死神。
「じゃあまた後で。先生」
内心謝りつつ俺はたった一言だけ言って去っていった。