ターゲットの暗殺教室   作:クローバー

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ありがとう

俺がアメリカ軍の訓練を受けていたとき

俺を狙った暗殺者がいた

それは医者に紛れていて俺が精神的に元から弱かったのでよく不眠症の治療に行っていたところを狙ったらしい。

確かに正しいことだ。俺が薬学にも詳しくなかったらの話だが。

俺はすぐにその薬が渡された薬ではないと気づいた。

俺はその時に取り乱してしまった。その時はまだ佳奈が殺されたと分かってすぐだったので当然だった。

その病院は政府と内密で応対も良く安心できると言われていた。なのでアメリカ全土でも知れ渡るような病院だ。

でもそれは俺が来ただけで変わった。

その時は各国で保護命令が出されてると知っており多分一番警戒されていた時期だったと思う

薬を渡した暗殺者は目の前で射殺され、その後その時病院にいた全員を殺した。

その時の報道は人気病院で起こったテロ事件と解釈されていた。

その報道を見た時俺は泣き悔やんだ。

自分のせいで数百人の命が失われたのだ

たった一人の命

でもその価値はそこにいる数百人の命より重いと言われたんだ

俺さえいなければ救えた命

それがたった数時間で亡くなった

しかもそれは俺の頭脳が欲しいだけで誰も俺自体を気遣ってくれることもなかった。

頭脳がお金になる。

そんな考えのやつばっかりと出会ってきた

国の利権や自分の出世ばかり考えている人ばっかりで気持ち悪かった

いつしか俺は殺し屋の対処とその対応に慣れてしまった

その間に何千人との犠牲者が出た。

だから俺はいつしか人は物だと、そう思い始めていた。

全部思い通りになる物だと思っていた。

暗殺者も全て思考が丸見えで面白みがなかった

でもたった一人の暗殺者が変えてくれた

死神

そう呼ばれた殺し屋が

唯一俺に致命傷を負わせた殺し屋だった。

確かに油断も慢心もしていた

でも致命傷を負わしてくれた

その時始めてそいつに会ってみたいと、話してみたいと思った

俺はこっそり死神の拠点を割り出し会いに行った。

その時、始めてあったときにバカなんですかって言われたっけ?

でも始めて俺が依頼をした

俺を殺してくれって

殺してくれたら稼いだ1億ドル全てやるって

その代わり逃げ切ったときは友達になってくれって

そしてあんたは笑いながら了承した

一億ドルなんかいらないといいながら

だから死神が降参って言うまで全力を使って逃げ続けた。

一週間の間に何度殺されそうになったことか

でも逃げ切った

そして会いに行き降参と言う2文字を聞いた時始めて思った

生きていてよかったと

こいつに会えてよかったと

そして二年経ち

俺と死神は教師と生徒という関係になった

あんたを慕ってくれる生徒がいて、俺をちゃんと羽川康太として見てくれるクラスメイトがいる

でも俺は今、あんたの一人の教え子を危険にさらそうにしてる

俺が勝手な行動をしたせいで危険にさらそうとしてる

相手は軍人

こちらはたった三ヶ月の初心者だ。

もしちゃんとした状態なら、渚は80%の確率で寸止めにいけると見ている

でももしそれが誤っているとしたら

それにあったとしてその20%に当てはまってしまったら

本当に俺は

すると誰かが手を掴まれる。

「羽川くん。」

その声が死神の声だと認識する

「大丈夫です。私でもあの条件ならば渚くんを指名してます。」

でも死神、俺はあんたの生徒を、渚を危険に

「君は本当に優しい。自分のことを考えず他人の心配ばかり気にしてる。でも本当は自分のことを大切に思うことです。」

俺は首を横に振る

そんな価値なんていらない

もう何人も俺のために死んだり殺されてきた

でも本当はそんな価値はないんだ

俺だって一人の人間だ

天才とかそんな価値はいらないんだ

たった一人の人間

俺のために死んだり殺された人たちと同じなんだ

特別扱いなんかされたくない

普通の中学生だ

俺だって普通の人間で

死んだ人と同じ命なんだ

それを俺一人が生きるために

俺が生きてしまったために

「羽川くん。」

大きな声で名前を呼ばれる

「……君は誰よりも命の重さ、平和という意味を理解していると思います。でも後ろ向きになってはいけません。生きないといけません。君には大事な人がいるのでしょう。」

でも

「……大丈夫です。勝負は一瞬で決まります。君も見ないといけません。君が信じた渚くんのことを。」

すると渚がナイフを構えて立っている。

そして向こうは鷹岡。やっぱりナイフ相手の格闘に慣れているらしいが油断している。

怖いが見るしかない

俺ができないことを自分から頼んだのは始めてだった

それもその人の身をかけた暗殺

見たくない

でも初めて頼ったんだ

前にあかりと桃花に言ったこととは違う

自分の安否をかけたことをお願いしたんだ

断ってもおかしくない

でも引き受けてくれた

だから前を向こう

渚を信じてみよう

するとナイフを見ていた渚が笑った。

そして歩き出す。普通の少年のようにただ通学路に歩いている男の子のように

ナイフを振る。練習と同じく綺麗なフォームで

そして鷹岡が体勢を崩したので、服を引っ張り鷹岡を転ばせ

後ろから回り込み

仕留める

練習通りみたいな俺にはない才能

本番に物怖じしない才能

俺が暗殺の才能で唯一足りてないもの

それが渚にはあることは見抜いていた

だけど本当は気づいていたのだ。

それは俺と同じ自己犠牲からくるものだと

でも俺は臆病だからその才能はない

みんなが歓声をあげる。

俺はその姿をただ見ていた。

でも本当に良かった

渚が無事で

俺も近付く。本当に嘘みたいだった

俺は震えた字で聞く

『渚、怪我はないですか?』

思考が安定しないでも不安で押しつぶされそうになる。

「えっと、羽川何て書いてるんだ?」

杉野が聞いてくる。でも

「うん。大丈夫だよ。」

笑顔で答える渚。すると自然と涙が出てくる。

ごめんなさい。

ごめんなさい。

怖い思いを

危険な目に合わせてしまって本当にごめんなさい。

「羽川くん?」

力が抜けて座りこんでしまう

もう何度も迷惑をかけてしまった

もう何度も我儘に付き合わせてしまった

「……怖かったんだ。羽川。」

俺は首を横に振る。怖い思いをしたのは渚だ。今回俺は何もしてない。

「……ごめんな。いつも助けてもらって。」

違う。違う。俺が助けてもらってるんだ。

俺のせいでみんなが

「そうだよね。羽川が一番怖いんだよね。」

「ううん。多分こうちゃんは違う。迷惑かけてるのはこうちゃんだと思ってると思うよ。」

「……そっか。そういえばずっと言ってなかったよな。守られるのが、安全に暮らせるのは全部羽川が頑張ってくれてたんだから。」

「そうだよね。羽川。いつも守ってくれて」

 

 

 

 

「「「「ありがとう(な)」」」」

 

 

 

 

その一言が聞こえたとたんとても嬉しくなる。

涙が止まらない。

もうどうしたらいいのかわからなかった。

でも伝えたい。

感謝の気持ちを

本当は声に出して伝えたい。

でも

伝えられない

口で何度も言おうとするが

何度も息を声を出そうとするが出てこない

だからせめて

ちゃんとメモに書けているかわからない

だけど伝えたい

 

 

 

『こちらこそ助けてもらってありがとうございます』

 

 

そうメモを見せようとすると背中になにか重い衝撃がぶつかり前に吹き飛ばされる

「「「羽川(くん)」」」

「てめぇ。よくもガキの分際で。」

どうやらさっきのが鷹岡の攻撃だと気づくでも正直痛みも何も感じない。

今までずっと助けられた

ずっと困らせてきた

でもその度助けられた

さっきだって俺のことを助けてくれた。

守ってくれた。

そのことが嬉しかった。

だからもう俺はこの先輩たちを信じよう。

困った時はいつでも助けてくれるって

だから俺もできる限りのことはする。

命をかけてみんなを全員を守るんだ。

だから一旦泣き止んでみんなを鷹岡から守る

「このガキ」

俺は立ち上がり鷹岡に向かい飛び蹴りをする。その奥では烏間先生が肘を鷹岡の顔面にぶつける。

「「「烏間先生」」」

「「「羽川」」」

そんな声が聞こえる。

「俺の身内が…迷惑かけてすまなかった。」

『みなさんご心配かけてすいませんでした。』

メモに俺は書く。

「羽川くん大丈夫か?」

俺は頷く。もう俺のことよりそいつを追い出すことに集中してもらおう。

「後のことは心配するな。俺一人で君達の教官を務められるよう上と相談する。いざとなれば銃でも脅して許可をもらうさ。」

「その必要はありませんよ。」

すると浅野先生がやってくる。あ、そういえばカメラ回してるんだった。

「羽川くん大丈夫ですか?」

『まぁ。でも一応解雇する証拠はちゃんと撮れましたよ。』

俺は小型カメラを投げる。

「羽川くんいつのまに?」

『授業中ずっとです。本当は先生方以外に伝えていたんですが。』

「そういえば。」

「カメラ回すって磯貝がそう言ってたわ。」

まぁ俺も痛みで忘れてたし人のこと言えないけど

『完全に忘れてたらしいですね。だから渚、断ってくれてもよかったんですが。』

「ごめん。ちょっと血が上ってしまって。」

『いえ。正直嬉しかったです。改めてありがとうございました。助けていただいて。』

「ううん。どういたしまして。」

するとクスリと浅野先生が笑ったような顔をしたが

「……鷹岡先生、あなたの授業はつまらなかった。教育に恐怖は必要です。が、暴力でしか恐怖を与えられないのなら…その教師は三流以下だ。自分より弱い暴力に負けた時点でそれの説得力は完全に失う。」

と解雇通知を書き、倒れている鷹岡の口に入れる。

「解雇通知です。以後あなたはここで教えることは出来ない。」

上手いなやっぱり恐怖を操るのは

「椚ヶ丘中の教師の任命権は防衛省側にはない。全て私の支配下であることをお忘れなく。あぁ、それと」

俺の方を見て

「お疲れ様。羽川くん。六年間頑張ったね。そしておめでとう。」

……えっ?

「……どういうことだ?」

みんな不思議そうにしてると

俺は少し考えてから

一つだけ思い浮かぶことがあった。

俺は急いで教室に戻る。

「康太くん?」

もしかしてあの先生

俺は教室に着くと急いでノートを書き妖精の律に見せる

『律、テレビ中継どこでもいい繋いでくれ。』

「えっ?」

こういう時話せないのがもどかしい

『いいから。』

「は、はい。」

すると妖精姿の律は渚の机につきその後本体を起動する。そしたら

「……えっ?」

インターネットに接続したのだろう律が驚きの表情をしてる。

「……今すぐつなぎます。」

すると律の表示が衛生放送のニュース番組に繋がる。

そこには

内閣総理大臣の会見で

政府職員不正内部告発

とだけ書かれていた。そしてテレビの中の総理大臣が

「なお、羽川康太くんが生存していることを隠蔽していたことおよび、政府関係者の卑劣な行為により命を狙われていたことを謝罪します。申し訳ありませんでした。」

「……康太くん」

テレビの音がかき消されてるように桃花の声が聞こえる。

クラスのみんなが集まってくる。

ただ全員が俺を見つめている。

俺はずっと待ち望んできた。

たったずっと待ち続けていたのに

表現したらいいんだろう

ただ、

「こうちゃん。」

あかりの声が聞こえる。

長かった

「お疲れさま。」

その言葉が聞きたかった。

その声がずっと聞きたかった。

もう声が出せないけど

ただいま。

そう言ったつもりだった。

すると笑って

「おかえりなさい。こうちゃん。」

涙目のあかりが抱きついてくる。

もういい。

やっと終わった。

全部終わったんだ。

よかった。

心配かけた。でもまだ油断はできない日が少しの間続く。

俺はみんなの方を見る。すると優しく微笑みかけてくる。

でもすこしだけ今日だけでいいから

思いっきり泣こうか。


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