ターゲットの暗殺教室   作:クローバー

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限界

暴力

その一文字

俺は一番嫌いだ

死ぬよりも恐ろしい言葉に今でも震えてしまう

子供の時に植えつけられたトラウマ

それはなによりも著しく残っている

失敗したのも

不機嫌なことも

全ては俺にぶつけて来る

謝ることもできない

謝っても許してくれない

母親も助けてくれない

殴って、蹴られて

涙が溢れてくる

やめてほしい

助けてほしい

でも佳奈に当たるから

俺が受け止めるしかない

他の誰かに当たるくらいなら

……俺が痛い思いをしたほうがマシなんだから

 

「……」

「…康太くんまたあの夢を見たの?」

俺はただ頷く。

最近じゃ夜中に吐き出すことが多くなっていた。

「大丈夫なの?」

「一応病院に行かせたいんだけど、戸籍も住民票も保険証もないし。」

『悪い。迷惑かけてしまって。』

「ううん。気にしないで。でもこれ以上ひどくなる前に。」

すると三人が頷く。

「でもどうして昔の夢を最近になって見始めるようになったの?」

『分からない。こんなこと本当に初めてで。』

「……もしかして私たちが住み始めたから?」

『いや。それはないと思う。それなら住み始めた時からこんなことになっているだろうし。』

「それならやっぱりシロっていう人が現れたのが原因なのかな?」

俺は少しだけ考える。

なんとなくだがそれは違うと思っていた。

いや、その件も絡んでいるだろう

大体もう予想できていた。

『多分怖いんだ。みんなが俺を殺すための囮として使われるのが怖い。』

「……」

震えながらも俺は書いていくでも伝えないといけない

『俺はみんなを失うことが怖いんだ。俺のせいで傷ついたり死んじゃうんじゃないかって思うのがすごく怖い。最近になって烏間先生に全部の体育を引き渡しただろ。でもちゃんと最後まで教えたかったんだ。逃げるってことを。本当に傷つけたくないんだ。でも離れたくない。みんなと一緒にいたい。』

「こうちゃん…」

もう限界だった。ストレスが溜まってる。嘔吐はその一つだ。涙もろくなってるし後ろ向きになってる。

なんで俺がこんな目にあわないといけないんだよ。

なんで普通の生活さえできないんだ

もうどうしようもない。

なみだが止まらなくなっている。

助けてということもできずに

 

はぁ。最近おかしい

よく夢を見るのだが虐待される夢をよく見る

なんだろうか?

「大丈夫ですか?羽川くん。」

死神が隣にくる

『大丈夫にみえるか?』

「いいえ。」

だろうな。みんなは気づいていないけど結構まずい

とにかく元気そうに見せてるのがとにかく辛い

「身体的にストレスや睡眠不足で顔色が悪いです。安全のチェックを律さんに任せ自分は寝ようとするけど全く寝られず最近は食事をしても悪夢を見続けると茅野さんたちから聞いてます。精神状態がかなり衰弱してると思われます。」

そんなん自分の体だから分かってる。

「だから早く治療を」

『頼む。もう少しだけ黙っていてくれ。』

「さすがに今回は見過ごせませんよ。」

『頼む。後少しで全て終わるんだ。後二日それが終わればそれで終わる。』

「えっ?」

そう、本当に全て終わるのだ。

『二日前内通者から政府のコンピューターから羽川建設が無実って証拠が見つかったって連絡がきた。その人が発表するのが明後日。さらに隠蔽している証拠も全部秘蔵ファイルの中に隠してあったらしいから二日乗り切ったらとりあえず一区切りつく。』

俺は苦しげにVの字を作る。

「……」

嬉しそうな死神。まぁ当たり前か。

結構本気でなんとかしようとしてくれたもんな。

『その後一旦烏間先生の紹介で精密検査を受けることになってるけど。記者とかに囲まれることになるから二週間はこっちで通常授業を受けることになってる。だから期末には俺は参加できないけど。』

二週間後期末テストは完全に無理だ。精密検査に一週間かけるため俺は

「えっとか烏間先生も協力してくれたのですか?」

『ってか今回の件は俺はほとんど何もしてない。いつのまにか決まってたんだよ。まぁ去年から浅野先生が動いてくれていたのが大きかった。』

俺は少し息を吐く

『だから後二日多分それが終わったら少しは楽になる。だから頼む。』

「……」

するとふぅとため息をつく。

「分かりました。ついでにこのことはみんなには。」

俺は首を横に振る

情報はどこで漏れるかわからない

多分死神も分かってるはずだ

「しかし学校を休むくらいのことはしたら。」

『普段通りしてないと怪しまれる。あっちだって慎重に行動するわけだし。』

たった一瞬でも気を抜いたら失敗する可能性がある

でも後二日っていうだけで気持ちは楽になった

『んじゃ少し体動かしてくる。さすがに今日は模擬戦だろうし少しくらい動かないとまずい。』

「え、ちょっと羽川くん。」

止めんなよ先生

案外あの人と手合わせするの楽しいんだから

 

「……強すぎるだろ。」

俺は一礼し座り込む。

「烏間先生が一度も当てられないって。」

「……羽川くん、ちょっといいか?」

『はい?』

「……いや、ちょっと気になることがあってだな、後から相談に乗ってくれないか?」

別に構わないので頷く。

「羽川って本当に戦闘面に限ったら化け物だよな。」

「勉強もできるし気遣いもできる。」

「なんだろう。全てにおいて負けてる気がする。」

あの、そういうことは俺がいないとこで行ってくれませんか?

けど正直なところもう隠しとおせる気がしないんだよな

クラスメイトの前では平気な顔しているが結構まずい

後二日

いやもう一年は警戒しないといけないだろう

「それまで!今日の体育は終了。」

烏間先生の号令で授業が終わる。

「こうちゃん。大丈夫?」

すぐにかけてくるあかりに俺は頷くとりあえず今日の授業はこれで終わったのでひとまず安心だろう。

でもあかりの肩に少し体重を置く

結構歩くだけでもしんどかった。空腹と睡眠不足でかなりフラフラだった。

「……やっぱり無茶してるよね。」

頷く。さすがに結構堪えていた

筆も重いがメモ帳に少しだけ書く

『烏間先生の相談が終わったらちょっと一緒に帰ってくれないか?さすがにちょっとやばい。』

「無理して体育するからでしょ。ほら。」

素直に肩を借り教室付近まで歩く。

本当に悪いな

……でも

なんか嫌な予感がする

いや、絶対にこの後に何かある

自分の経験がそう言っていた

着替えてみんなが戻ってこないので校庭を見に行く

するとみんなが大量の甘い物のまわりで集まっていた

不思議に思いながらも近づいてみると

「おう、君が羽川か」

その声を聞いた瞬間わかってしまう

今まで見てた夢

ずっと感じていた嫌な予感

そしてこの温かそうで冷たい声

「や、俺の名前は鷹岡明今日から烏間の補佐としてここで働く。よろしくな。」

そうかこの人は

俺の父さんと同じタイプの人間だ

そう思ったとたん警戒しようとすると

どこからか声が聞こえてくる

 

 

まだやるつもりなのか

 

 

もちろんだと頷く

 

 

お前はもう限界だ

 

 

 

それはどっちの意味だよ

つい問いかけてしまう

 

 

自分で分かってるんだろどっちもだよ

 

 

 

誰かが答える

それももう分かっていた

 

 

でもお前は変わった

 

 

誰かが言う

 

 

自分のためから人のために、人の願いから自分のために力を使うようになった

 

 

我は最初は弱くなったと認識した

 

 

だがそれは逆だった

 

 

誰か、いやもう何かなんて分かってる

その逆だろ

人は守られるほど強くなり

守りたいものがあるほど強くなる

 

 

 

あぁその通りだ

 

 

もし裏切られたなら

 

 

その時はその時だろ

お前だってもう気づいてるんだろ

死んだ命よりも今ある命

もう過去は取り戻せないことも

だから力を貸せお前は今の俺いやこれから先絶対に俺には勝てない

 

 

絶対なんてないんじゃないのか?

 

 

絶対なんてないに決まってるだろうでも

お前は俺に勝てると思ってるのか?

今まで苦痛も苦しさも全部耐え抜いてきた

何度も負けそうになってきた

でも、助けてくれた人がいる

好きになって、薬も何も使わずお前の意志に勝ってる

それでもなおお前は俺に勝てると言うのか?

お前が表に出た時助けてくれた女の子を見てもお前はそう言えるのか?

今の俺を見てもそう言えるのか?

弱くなったんじゃない。

弱さを受け入れて、補ってくれる人を見つけたんだ

だから確かに俺自身は弱くなったのかもしれん

まぁお前に頼みこんでるくらいだしな

でもまだやれる

その一歩を烏間先生と浅野先生が作ってくれた

まだ立てる

まだ生きているんだ

最後まで全員揃って卒業するんだ

だから力を貸せ

もうお前には負けない

負けても

彼女が

仲間が

先生が

親友が

俺を守ってくれる

だからお前も俺を助けてくれ

五年も俺の体の中にいたんだからわかるんだろう

俺がもう限界だってことを

今誰が俺の操作をしてくれてるかは知らない

でもお前は見えてるんだろ

全部俺の願いは

恨んでいる

今でも確かに恨んでいる

でも

もう負けない

逃げつつけていたターゲット生活ももう終わる

あとは残党線だ

もう数年はずっと狙われ続ける

でも

もう一人の命じゃないんだ

今でも確かに俺は強い

でももっと強くなりたい

あかりを桃花を有希子を

浅野先生を烏間先生をイリーナを

先輩方を

死神を

そしてこれから出会う縁を

全てを守れる力を

 

 

はぁ、最初は威勢のいいガキだと思っていたのに立派になりあがって

 

 

悪いな

 

 

 

では力を、生きて全てを守る力を置いていく

 

 

 

どう使うかはお前次第だが

 

 

 

大丈夫さちゃんとうまく使うさ

俺は笑う。もう声は聞こえなくなっていた

そしたら体の中が光に包まれると少しずつ光が粒となり自分の体から出ていくのを感じる

それは一度見たことがあった

触手細胞が役目を終え分解されたとき

そっか

役目を終えたのか

そして視界が晴れていく

するとさっきと同じ景色

たった数秒のことだったのだろうか

鷹岡、先輩方の姿が見える

死神の姿も

後ろにはイリーナと烏間先生

みんなの表情

みんなの感情

全てが見える

そうだ

俺は全てを守り抜くんだ

でもそれはみんなを傷づける結末は望まない

まぁでもとりあえず

俺はポケットからペンとメモを取り出し俺は鷹岡に見せる。

『その強化外骨格みたいなつらやめてくれませんか?気持ち悪くて反吐が出そうです。』

この敵からみんなを守ろう。


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