ターゲットの暗殺教室 作:クローバー
なんでだろうか
結果が全てだと思っていたのに
勝てればいい
そんなふうに考えていたのに
最近じゃ違うんじゃないかと考えている
「康太くんどうしたの?なんか悩み事?」
すると桃花が話してくる。有希子とあかりは球技大会の打ち上げに行っているけど俺はどうしても気分が乗らず断ったのだ。
『まぁ、ちょっとな。』
「もし、よかったら私が話聞こうか?」
……少しだけ聞いてもらおうかな?最近溜めすぎてあんなことが起こったわけだし
『気持ち悪かったんだよ』
「えっ?」
『なんか今日の試合見てたらなんかつまらなかったっていうかみんなが喜んでいるのが気持ち悪かった。なんかいつも見ていたみんなと違う気がしたんだ。どんな手を使っても勝とうとしたのは分かったんだけど、なんだろうそれが嫌だったのかな?』
うまく伝わりづらい
『今日の試合両方とも勝つことが目的だったんだけど、俺今日初めて負けたいって思ったんだよ。何かが違う。でも、相手を見てるとそれもまた気持ちが悪いし何かが違うって。』
「……康太くん、もしかして間違ってたら違うって言って欲しいんだけど、もしかして今回の殺せんせーのやり方が嫌だったんじゃないのかな?」
『どういうこと?』
「私ね。野球部の姿を見て思ったの。康太くんがシロとイトナくんが来たときに似てるって。」
……えっ?
「狂気で本当の気持ちを理解してないって。多分だけど康太くんは多分好きなことを弱いものを殺す道具として使ったことが嫌だったのじゃないかな?」
俺はハッとしてしまう。
「私たちのクラスのことも気持ち悪いと思ったのはそのことに便乗して野球で強いものを潰そうとしたからじゃないのかな?多分だけど康太くんは普通の策略じゃなくて戦略で勝ちたかったんじゃないのかな?」
『どういうことだ?』
「つまり先生たちに使われる駒として動くことが嫌だったんじゃないかな?」
俺は少しだけ思う。
今日俺がしたのはホームランを最初に打った時はとても嬉しかった。
それはキャッチャーとピッチャーが配球をきめ舐められたとはいえ自分たちで決めたからだ。
しかし二打席目に打った時は理事長先生が配球を決めていた。
……そっかそれが嫌だったのか。
人を物扱いされるってこういう気分になるんだ
それで改めて気づく
俺なんてこと言ったんだろう
あの一言でどれだけの人を傷つけたんだ
信じてくれたのに
たった一言
それだけで俺は信用がなくなった
でもそれは当然の事なんだ。
そしたら気になった
『なんで桃花たちは俺を信じてくれるの?』
すると桃花はクスリと笑う
「だって康太くんが裏で何をしてるのか私たちはちゃんと知ってるから。」
俺は首を傾げる。すると桃花は俺の頭を撫でてくる。
「康太くんがみんなのことを気遣ってるのは多分クラス全員が気づいてるんじゃないかな?だって一番私たちの安全を考えているのも分かってるよ。最近殺し屋がクラスに近寄らないようになったのは学校の周りにトラップを仕掛けに夜中に家を抜けだしたり、警備ロボットを作ってるからだよね?」
……バレてるし
「それにこの逃走中に使ってるコースって土が軟らかく毒性の植物も元から生えてないところでしょ?烏間先生が驚いてたよ。でもみんなは少しだけ怖いんだよ。やっぱりどこかで裏切られるんじゃないかって。私だって少しは思ったもん。」
だよな。じゃあどうして
「でもね。私はそれだったらそれでいいと思ってるの?」
その言葉に驚く
「私は康太くんの過去をみんなより少しだけ知ってる。それでまだ康太くんが苦しみ続けていることも。康太くん時々寝ながら泣いてるんだよ。もしそれが嘘の康太くんならショックだけど、でも私はそうだとは思わない。確かにあの言葉は私は嫌だったよ。本当は泣きたかった。でも信じたかったんだ。康太くんを。だって好きな人の言葉なんだもん。」
桃花が手を握ってくる。
「多分ね。康太くんがみんなのことを信頼してないことも私のこともまだ怖がっていることも全部わかってる。今までそういう生活をしてきたんだもん。でもね、私のことを今じゃなくてもいいから信じて。私は康太くんの味方だから。でも間違っていると思ったときは止めるけど。でももう守られっぱなしは嫌なの。私だって康太くんを守りたい。だって私は康太くんの彼女なんだよ。少しくらい背負わせてよ。」
すると泣き始める桃花。
……そうか。
桃花も見て欲しかったのか
自分は見ていると思っていた。
でも本当は見えてなかった。
そっか見るってこんなに難しいことなんだな
それに話せないので慰めることも謝ることもできない
いや。でもここは謝るところじゃないのかもしれない
感謝の気持ちを伝えたい
俺は桃花を泣き止むまで頭を撫で続ける
声を無くしたことがこの一週間でどれだけ辛いのかわかった。
本当に伝えたいことが伝えられない
でも何度も桃花には救われてきた
弱いところも全部見られてきた
弟の看病もあるっていうのに
凄い女だよ。
三人の中で一番忙しいのが桃花だ。
家事に勉強に家のこと
全てちゃんとこなしてる
本当にもったいないよな俺には。
でも好きって言ってくれる
どれだけしんどいのか、どれだけ大変なのか知らないけど
少しは俺も力になりたいな
本当に好きになってくれてありがとう
大好きです