ターゲットの暗殺教室   作:クローバー

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夢物語

「……で、結局こうなるのか。」

俺はダンボール箱を見てため息をつく。

「うん。これからお願いします。」

目の前には神崎先輩が立っている。

はぁ部屋がどんどんなくなっているな。

元々4LDKあったのはいいんだけど、なんでこんなことになった。

「……えっとなんで住むことになったんですか?」

「えっとね、昨日自分のお父さんと進路のことで大げんかしたんだけど、その時に家を追い出されちゃって。」

「……それであかりねぇから誘われたっと。なんだかすごく策略を感じるんだが。学費とかはどうするの?」

「お母さんが高校までは出してもらえるみたいだけど……」

「大学までは難しいと」

すると神崎先輩は頷く。まぁ俺も生活は厳しいしなぁ。まぁいいか

「そのお母さんは名義も貸してくれるのか?それだったら一応払えるけど?」

「えっ?」

「最近臨時収入があって5億手に入ったから1億ぐらいなら出せるけど。」

確か大学に行けるお金が文系だったら100万〜300万くらいなので十分足りるはずだ。

「えっと羽川くんなんでそんな大金?」

「防衛省からくすねとった。」

すると神崎先輩が絶句してる。

「修学旅行の案件あっただろ、あれで生徒の安全を考えずに暗殺を決行したなんてひろまれば防衛省どころか世界中から非難される。それをコネにして大金を貰った。」

「……」

「まぁ正直神崎先輩も分け前の半額は貰うべきだからもう5億は後から渡すつもりだけど。」

「えっと。羽川くん総計どれ位貰ったの?」

「まぁ理事長の分とあわせて15億。危険な目に合わせたからもっとたかろうと思えばたかれたけど烏間先生のことを考えてやめた。」

「……」

「ってか多分100億くらいなら日本政府から脅せば幾らでも手に入るし明日くる転校生を使えばもっと稼げる。」

ついでにマンションもこの一室は俺が買い取ったし、隠蔽費に理事長に一億払ったし当分の間は大丈夫だろう。

「……まぁそんな大金すぐに神崎先輩に渡したら大変なことになるしそれにちょっと暗殺教室で安全性を守る為に3億ほど使わないといけないから。自分の利益は少ないけど。」

「……えっとその3億って何になるの?」

「マットとか命綱そんな感じのものだよ。個人名義で買わないといけないからめちゃくちゃ高い。これから高度な訓練をしないといけないから安全性を兼ねてな。国家はそういうやつ結構払わないから俺に負担がくるんだよ。あと防犯カメラとか。殺し屋が授業の邪魔したらいい迷惑だろ。だから半径1kmと裏山全体に監視カメラ設置するんだよ。」

「……なんだか普通だね?」

「俺のことなんだと思っているんだよ。おかげで俺の利益50万しか残ってないんだぞ。あとPCももうメモリーがないし新しく買い換えないと。」

本当にお金があってもあってもすぐに消えていく。

安全性を考えるとしょうがないのだが

「なんかすごく大変そうだね。」

「まぁそれをあかりと桃花いないところでやってるからな。余計に大変なんだよ。」

「あかり?」

「あぁカエデのことだよ。あいつ諸事情あって偽名使ってるから。……ってか全部話さないといけないかな?」

「あっ?そのことなんだけど。私聞かないでいいかな?」

「……気にならないの?」

「ううん。気になるんだけど、でも今が大切だから。」

なるほどな。桃花とあかりは聞くって答えたけどそういう考えもあるか。

「了解。じゃあとりあえずあかりのことさえ黙ってくれたらいいから。一応バレたらかなり面倒くさいことになるし。」

「うん。わかった。」

「なら、片付け手伝える範囲で手伝うよ。さすがに女子だからあまり触らない方がいいものがあると思うけど。」

「うん。ありがとう。羽川くん。じゃあ、ゲームとかお願いしてもいいかな?」

「……家庭内ゲームはもってくるんですね。」

少し呆れてしまう。親の縁もいつかは修復させればいいか。

 

「そういえば、神崎先輩。名前どうしますか?」

「えっ?」

「いや、有希子って呼んだ方がいいですか?それとも神崎先輩って呼んだ方がいいですか?」

あの二人の時は少し文句言われたし先に決めといた方がいいだろう。

「え、えっと。」

すると顔が真っ赤になる

「……名前で呼んでほしいな。」

……なるほど、全く違うタイプの人だな。

あかりも桃花もどちらかというと恋愛には積極的だからな。

「……わかりました。でも俺はどっちでもいいので有希子のペースで大丈夫です。」

「うん。」

「後この家毎食イリーナが遊びにくるのでそれにも気をつけてください。基本猥談ばっかなので。」

「……」

すると顔を真っ赤にする神崎先輩。そういえばこの人イリーナの授業顔真っ赤にしてるもんな。

……なんか可愛いな

なんかすごく守ってあげたいと思う。

「……そういえば茅野さんと矢田さんは?」

「イリーナと買い物。あの先生ブランドものしか持ってないから安物をコーディネートしにいってる。」

なんか本当に仲良くなったよなあいつら。

少し嬉しく感じる。

「まぁ、晩飯食ってくるって言ってたから遅くなるんじゃねーの?多分気遣ってるだと思うけど。」

「……えっと。ってことは。」

「一応二人きりになる……」

すると黙り込んでしまう。なんかすごく意識してしまうんだけど。

「……」

「……」

お互い黙り込んでしまう。正直俺もあまり恋愛ごとには弱いんだよな。

有希子の方みると顔真っ赤だしでもなんか

「有希子」

「あ、なにかな?」

「抱きしめていいか?」

「えっ?」

驚いてる有希子にさすがにいきなりすぎたかと頭を掻いてしまう

「えっと、なんていうかちょっと可愛すぎた。」

少し顔を背けてしまう。杉野や男子から人気なのかわかった気がする。

清楚でおしとやかで美人でそして照れ屋な女の子

……やばい普通に可愛い。

「えっ?あっ?」

なんかもうすごく顔が赤くなっている。

「……無理しないでいいぞ。別に」

「え、ううん。ちょっと急で驚いただけ。うん。もちろんいいよ。」

「な、なら。」

少しだけ前から抱きついてみる。

すると軽くて簡単に引き寄せられた。

「あっ」

耳元でそんな声がする。

とても柔らかく強く抱きしめると壊してしまいそうで怖い。甘くていい香りもするし。

それにすごく暖かい。

なんか人の温かさってあまり経験がない。

だからだろうか。

恥ずかしいけどずっとこうしていたい

すると今度は有希子の方も手を後ろに回してくる。

弱々しくても確かにある手

やばい。超幸せだ。

何分抱きついていたのだろうか

すると有希子から離してくる。俺も名残惜しいが有希子を手放す。

有希子の方を見るとお互いに顔が真っ赤になっている。

「そういえばご飯どうしよっか?」

「あ〜俺作れないんだけど、有希子は?」

「簡単な物なら。私もあまり。」

「そっか。……じゃあどうしようかな?」

「……」

すると不思議そうにこっちを見る有希子

「どうした?」

「えっといつも料理が出来ないって意外って言われてたから。」

「そうか?苦手なもの一つや二つくらいあるだろ。それにあかりだって桃花だってやっぱり苦手なことはあるし。俺なんか一番有希子たちに最低な関係を持ってるんだぞ。それに完璧な人間なんて普通いないんだ。人前では完璧な人間でもやっぱり欠点は存在する。でもさ欠点は他の人に補って貰えばいいんだよ。今すぐに料理が出来なくったていいんだ。ってか俺はもう任せることにした。……正直ってか料理だけは本当に無理。色々細かい工程が多すぎる。」

「……そうなの?」

「あぁ。味付けとか調味料の種類とか多すぎて。……って話脱線したな。とにかく俺が言いたいのはそういう弱いところはカバーしあっていけばいいんだよ。正直最低だけど人が集まれば弱いところも補えるだろ。別に意外だとかそういうことはあって当たり前のことだよ。俺だって二人と住み始めてから意外なとことか結構見つけてる。お互いに嫌なとこだってあるし実際喧嘩も結構する。でもなそれが当たり前なんだ。全部が好きなことなんてない。理想や想像と全く違う結果になったりもする。でも大事なのはそれが幸せなのかって話だよ。一緒にいたくて他人に気遣うことがなく言いたいことはちゃんと言える。そんな家族を俺は作りたいと思ってる。」

昔の俺が出来なかったこと。正直今まではずっと不幸だった。

でもこいつらとならなんでもできる気がする。苦しいことや悲しいこと、嫌なとこだって絶対にある。

でもそこを乗り越えて行けると思う。俺が幸せになるには一つ一つのピースが一つでも失われたら叶わなくなる。

でも、それだから幸せになりたい。

ずっとそばにいたい。

「……まぁ、理想で夢物語だけどな。でも、どれほど最低で世間に嫌われようがなんて言われようが構わないけど。絶対に有希子は幸せにしてみせる。絶対に殺されないし守ってみせる。これだけは守ってみせる。」

「……」

「だから、俺がもし困ったら助けてくれると嬉しいかな。もう一人で抱え込むことはしないから。」

人に頼ること

ずっと俺がしてこなかったこと

助けを求めて人を人だと思ってなかったあの頃

失敗し続けてきた

失敗しかしてこなかった

でもこの教室でしてきたことは絶対に成功だと思いたい。

そのためにも俺は俺にしか出来ないことをしたい。

「じゃあ、本当にどうしようかな?桃花が帰ってくるまで待とうかな?」

「康太くん。」

すると有希子が抱きついてくる。

「うぉ。なんだよ。」

「私康太くんのこと好きになって本当によかった。」

その時の有希子はとても綺麗でとても素敵な女の子だった。


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