デクのヒーローアカデミア 再履修!【完結】   作:くろわっさん

69 / 72
今回は独自設定祭りになります。真に受けて原作に持ち込まないようにお願いします!





007.だってアタシのヒーロー。

特異点に至った死柄木の一撃を受け、僕は意識を失った。倒れている暇なんてない!すぐに起きて皆を救けなきゃ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

視界が暗転する。暗闇が目一杯に広がり、僕を取り込んでいく。僕は闇の中に取り残された。

 

「どこだよ…ここ。なんでこんなに意識がはっきりしてるんだ?」

夢の中、というにはあまりにも意識が明瞭で、自分の手足もしっかりと見える。辺り一面真っ黒な闇の中だというのにも関わらず。

 

「誰かいますかー?……なんてね」

闇の中にひとり叫んでみる。返事などあるわけがないと思いながらもやってしまった。

 

「―――いるよ」

「ファ!!?だ、誰!?」

まさかの返事である。声の主を探そうと振り返るがそこには誰もいない。しかし、この暗闇の世界に僕以外の光が現れた。ふよふよとした人魂のようなものがいくつも浮かんできて漂ってくる。数えてみれば7つの人魂が僕の前に集まってきて、段々とその炎が大きくなっていった。

 

そして暫くすると人魂は人影のような形に変化したのだ。どれも見覚えのない人影だったが、一番端にいる人影は女の人のようにも見える。

 

「やあ」

「ど、どうも……」

一番前の中央にいる人影が気さくに声をかけながら握手を求めてくる。僕はおずおずと返事をして、その手をとった。すると人影がボウッと一気に燃え上がり、そして完全な人の姿になる。僕は思わず一歩後ろに跳ね退いて、身構えてしまった。

 

「驚かせてしまったかな? 初めまして十代目。僕は■■■■■■、始まりのワン・フォー・オール所有者だよ。一先ずは■■■■を止めてくれてありがとう……って言語化が不完全だな。1%の弊害かな…」

目元まで隠す乱れた長髪の痩せ細った男はひとりでトントンと話していき、自問自答して止まってしまった。

 

誰だよ。名前聞き取れないし……ってかここホントになんなんだ…?

 

「誰だって顔してるね。最初のワン・フォー・オール……初代とでも呼んでくれ。■■■■…君の知るところのオール・フォー・ワンの弟だ」

「オール・フォー・ワンの…あぁ、昔オールマイトが言ってた…! なるほど……それで初代さん、ここは何処なんですか?」

「理解が早くて助かるよ、八代目には感謝だな。ここは、そうだな…ワン・フォー・オールの意志の世界、とでもいったところかな。君の中の精神世界とも言える」

 

どうやら僕は精神世界に迷いこんでしまったらしい。

 

「どうしたらここから出られるんです? 早く戻らないと!」

「まあ慌てないでいいよ。ここでの時間は現実世界では流れてないからさ。たぶんね。だからちょっと話をしよう」

「え、ええ…」

困惑する僕を置いて初代は話を続けていく。

 

「僕らは君の中から全てを見てきた。チカラを受け継いだところから……勿論、再履修(やりなおし)をするとこもね。まさかワン・フォー・オールを変質させて、そんな姿に成れるとはね。君が八代目と協力してオール・フォー・ワンを追い詰めたところもしっかり見たよ。ちょっとばかりチカラを貸してあげたんだけど、少しは足しになったろう?」

「あのときのチカラの馴染む感じ…!」

「そうそう、そして追い詰めたけど……死柄木が覚醒してしまった。彼は特異点を超えたんだね。自分の策がここまでになるとはたぶん兄も思ってなかったろう。おそらく、兄にとっても賭けに近い行動だった筈さ。 おかげで七代目が責任を感じてしまって、さっきからだんまりなんだけど」

初代は親指で端にいる女性を指して、困ったような仕草をする。女性はこちらを見ることもなく、静かに立ち尽くしていた。

 

「八代目に喝を入れるときは君の身体を乗っ取るくらいの勢いで前に出てきてたってのにさ……とにかく、オール・フォー・ワンという巨悪を打倒したけど、新たなに更に巨大な悪が現れてしまったわけだ」

「……だから、僕がアイツを止めないといけないんです。早く戻して下さい…!」

「まあそう慌てないで。今戻ったところで、さっきみたいに何も対抗できずやられてしまうんじゃないかい?」

「それは…… 」

初代の正論が胸に突き刺さる。事実、僕は傷ひとつつけられないままやられてしまったのだから。

 

「そのためのチカラがワン・フォー・オールだ。君はこのチカラがどんなものか分かるかい?」

「受け継がれてきたチカラと正義の意志の結晶……ですよね」

「だいたい合ってるよ。正義の意志ってのはここのことさ。意志の無い者には皆チカラを貸さない。まあそんな人は歴代にいなかったけどね。そしてチカラとは何か……これは分かるかな?」

「ワン・フォー・オールの超パワーの源……わかりません…」

僕は考えあぐねて根を上げてしまう。チカラを制御することはこれまでずっと考えてきたが、それが何なのかなど、考えたこともなかった。

 

「それはね、個性因子だよ」

「それは…分かりますよ。個性を司る源、個性因子。体内の個性因子の働きで人は超常を得て、今の社会が出来上がったんですよね」

「そうなんだけど、そうじゃあない。ワン・フォー・オールは個性因子そのものなんだ。個性因子の力で火を出すわけでも、空を飛ぶわけでもなく、ただ純粋なチカラの塊としての個性因子。それがワン・フォー・オール、僕の《譲渡》と兄に植え付けられた《蓄積》が混ざりあった結果だ」

「……? つまりなんにでも成れると?」

「それは少し違うかな。色で例えるなら火を出す個性は赤、水なら青といったように、個性因子にはその人それぞれの色が出る。でもワン・フォー・オールは違う。透明なんだ。何にも染まらず、なにとも反発しない。チカラの塊としてあるだけなんだ。だから他の個性を持った者に受け継がれても、オール・フォー・ワンみたいに拒絶反応が起きないわけさ」

少しずつワン・フォー・オールの実体が見えてきたが、それがどう繋がるのかが僕にはまだわからない。

 

「ちなみに譲渡されるときはその透明な個性因子のみが受け継がれる。その人が本来持っている色つきの個性因子を置き去りにしてね。そしてここからが本題だ」

「長い前置きでしたね…」

「ごめんよ、人と話すのは久しぶりで饒舌なんだ。それで、個性因子ってのは身体の何処にあると思う?」

「全身…? いや、人それぞれの個性が発現する部位、ですかね」

「その通り!ならばワン・フォー・オールが何処に発現するのか、何処にその因子が蓄えられるのか。 純粋無垢な個性因子、それは人間の一番の欲求を満たすために働く! では人間の一番の欲求とは?――種を残すこと?違う!寝ること?違う!!食べること?それも違う!!生きることだ!すべてはその副産物に過ぎない!!」

「生きること…!!」

「そうだ!生きること!それが何かということに君は既に一度辿り着いているはずだ。生きるとは何か!ワン・フォー・オールの全てはそこにある!それは―――」

 

生きる。命を紡ぐ。その根幹はもう僕の中にあった。

 

 

 

 

 

「「――筋肉だ」」

 

 

 

 

 

「そう!ワン・フォー・オールは筋肉に宿る!君はなに一つ間違っていなかったんだ!僕はそこに気付くまでに百年近くかけてしまったけどね!」

「僕は……筋肉は裏切らなかった……よかった…!」

「ついでに言うと発動前のワン・フォー・オールは圧縮された状態で筋肉に収まっている。発動と解放が同期してるのさ。ちなみに譲渡されたときにこの圧縮状態でも収まり切らなかった場合……速やかに四肢が爆発四散します」

「あれホントだったんですね!?」

急に真顔になる初代に思わず突っ込んでしまった。

 

でも、これ以上の筋肉は急にはつけられない。僕は贋筋を付けられないし……やっぱり筋肉じゃ死柄木には……

 

「大丈夫。筋肉があればワン・フォー・オールの可能性は無限大だ。そのためにここがあり、ここに来てもらった」

「それは…つまり?」

「僕は、僕らは死柄木に勝つために、最後のひと押しをしにきたんだよ、十代目!」

初代は爽やかに笑いながら僕へと告げる。僕らが信じた筋肉はなに一つ間違ってないことに心から喜びが込み上げた。

 

「そうだろう?八代目?」

「オール…マイト…!」

闇の中からひとつの人影が浮かび上がる。揺らいではいたもののそれは紛れもなくオールマイトの姿だった。

 

やっぱりオールマイトもこの中にいたんだ!姿が見えず不思議だったが、こういうことだったのか! でも待てよ…オールマイトが八代目ということはその後の僕は九代目になるんじゃないのか…?初代の数え間違いだろうか。

 

僕は揺らぐオールマイトにゆっくりと手を伸ばしていく。オールマイトの影もまた、僕に向かって手を伸ばしていた。そしてその手が触れあう。

 

と思われたが、僕の手を横から誰かが掴み、僕はオールマイトに触れることができなかった。

 

「――オールマイトに触るな…!」

僕に触れたことで人影だった腕がはげしく燃え上がり、輪郭を得る。僕の手を掴んだのは、緑色の癖毛を揺らす小柄な少年だった。

 

「やっと出て来たんだね、九代目……」

「初代、こいつには死柄木を倒すことなんて出来やしませんよ。救いたいものを救えず、自らすら救えない。()()()()にはなにも出来ないんだ」

怒りにも悲しみにも憎しみにも似た負の感情を乗せた瞳で僕を射抜く少年。それはトゥルーフォームの……否、前世の緑谷出久(ボク)だった。

 

「君は……」

「見れば分かるだろ?すっとぼけた振りして。 僕はお前だ、緑谷出久。自分の過ちによってオールマイトを殺して、無様に命を散らした愚か者だよ」

「そんな…!僕はただオールマイトを――」

「――救けたかったていうのか? その結果があの惨状だろ!それに再履修(やりなおし)なんて反則じみたことをして、チカラを付けたところで、今の現状を思い返してみろ! 無闇に状況を掻き乱して、オール・フォー・ワンを追い詰めて、死柄木を覚醒させてしまった。今度は自分とオールマイトだけじゃない。日本全て……いや、全世界の人間を危険に晒してんだぞ!バカ野郎!!」

ボクは怒り狂ったように僕に向かって怒鳴散らす。その全てが事実で、ボクは僕をよく理解していた。それも当たり前だろう…僕らは同じ人間なのだから。

 

本当は僕だってわかっていた。これまでだって、再履修(やりなおし)によって状況が悪くなっていたこともあったことを。それが僕のせいだってことも。

 

ボクから放たれる負の感情に世界が染まっていく。僕も例外ではなかった。

 

「僕が何かしようとするから良くないことが起こるんだ。僕みたいな奴は物語の隅っこで大人しく端役をやっているべきだったんだよ! 何時だってそうだったろ…僕が引き寄せる運命なんてのはあっちゃいけないものだったんだ!再履修(やりなおし)なんてするべきじゃなかった!僕はあの夜、あの場所で死ぬべきだったんだっ!!!」

ボクの叫びが響く。僕も初代も、歴代の継承者も皆黙って聞いているしか出来なかった。

 

ボクの言う通りなのかもしれない。というより、僕自身がなによりもボクの意見をなに一つ否定できない。あの場所でオールマイトと共に散っていれば……こんなことにはならなかったのか。

 

「だからさ…何もせず、このままここで死んでいけよ。オールマイトだって見捨てたろ?お前は……僕はそんな程度の人間さ。居なくなったって何も問題ない。むしろ、その方が世界の為になる……僕は僕がこの手で殺す…!」

ボクの細腕がゆっくりと伸びてきて、小さなその手が僕の首を真綿のようにゆっくりと締め上げていく。僕は膝から崩れて、抵抗ひとつせずにボクを見上げた。

 

息が出来なくなり、ゆっくりと苦しみが込み上げてくる。そしてじんわりと意識が遠退いていく。命の鼓動が弱まっていく。

 

これで良いのだろう。僕が居なくなればきっと世界はうまくいく。だからここで、僕の中で、ボクによって、誰にももう迷惑をかけずに死んでいけたら、それでいい。

 

ごめん、皆。ごめんなさい、オールマイト。僕は貴方を救けられな―――

 

 

 

 

「―――諦めてしまうのか?」

 

オールマイトの声が聴こえる。

 

「―――闘うことを止めてしまうのか?」

 

再びオールマイトの声が聴こえてくる。

 

「―――救えず終わってしまうのか?」

 

三度(みたび)オールマイトの声が聴こえてきた。

 

 

「まだ諦めるには早いぞ!緑谷少年!!」

逞しい腕がボクの腕を掴み、僕の首から引き離した。 僕は激しくむせかえりながらぜーぜーと再び呼吸を始める。荒い息のまま見上げると、そこには凛と輝くオールマイトの姿があった。

 

「オール…マイト……?」

「そうだ!私が――君の中の来た! っておいおい、なんだいこの辛気くさい感じは?とても正義の意志の集まりとは思えないほど暗いぞ!」

オールマイトはいつもの笑顔でこの陰気な雰囲気を吹き飛ばしていく。それは僕の憧れた、何時だって笑顔で皆を救けるヒーローの姿だった。

 

「見てないで止めろよ、こっちの私!君の弟子だろ!」

オールマイトは揺らぐオールマイトの背中を叩き、こっちのオールマイトは大きくよろける。

 

「お師匠…なんて顔してるんですか。辛いときこそ笑顔でいなければ! 笑顔でいるやつが一番強い。ですよね!HAHAHA!!」

次に端にいる7代目に近寄り、頬を指で吊り上げて大きく笑う。オールマイトの登場によって世界が明るくなっていった。

 

「待ってたよ、こっちの八代目。そしてこっちの僕たち」

「はじめましてって…どちら様だい?」

「ワン・フォー・オールの初代所有者だ。君は継承したその時から100%チカラを使いこなす天才だったから僕らは会ったことがないんだね」

「HAHAHA!天才だなんて、照れるな。ということは私の中にも貴方たちがいるのか。なるほど…っと、私のことはどうでもいいな!さあ、緑谷少年!」

初代と話をしていたオールマイトは何かに納得すると、ぐるりと此方に振り向き、僕を指差す。

 

「闘いはまだ終わってないぞ!チカラを渡してすぐにやられるとは思っても見なかったが…君は立ち上がれる筈だ」

「でもオールマイト…また死柄木にやられてしまうだけじゃ……」

「大丈夫!そのためのチカラがここにある…!」

オールマイトはドンッと胸を叩いて背筋を伸ばす。その為のチカラ……もうひとりのオールマイトの中のワン・フォー・オールのことだろうか。

 

「まだ何も為してないうちから諦められてしまったら私の立つ瀬がない。私は師匠として君を導き、このチカラを託したいんだ。そして巨悪を砕いて欲しい。 闘ってくれ、緑谷少年…!!」

「オールマイト…僕は……」

「それに、君を待っているのは私だけではない」

オールマイトは上を向いて笑う。どういう意味かと尋ねようかと思ったとき、声が聞こえてきた。

 

 

『―――絶対に…渡さない…!死んだって離さないわ…!!――』

 

 

「優さん…?」

「きっと倒れた君を救けるために、戦っているのだろう。他にも先生やエンデヴァーの声も聞こえてた。皆、闘っている」

 

僕は燻っている場合じゃない。皆が闘っているなら、僕も行かないと。皆を救けにいかなければ…!

 

そう決意した時、目の前のオールマイトが手を差し伸べてくる。

 

「私も共に闘おう。この手をとってヒーローに成れ、緑谷少年……我が後継、オールライト」

「――はいっ!」

オールマイトの手をとると、莫大なチカラが僕の中に流れ込み、オールマイトの身体が僕の中へと吸い込まれていった。暖かくなった胸に手を当ててみる。

 

わかる。僕の中にオールマイトがいる…!チカラが溢れてくる…!!

 

「僕らも連れていってくれ、十代目。忘れないで…悪を打ち砕くために、正義の意志はここにある」

揺らいでいた歴代の人影が初代に重なり、薄ぼんやりと光輝く。そして初代の拳が僕の胸に押し当てられて、そのまま僕の中に消えていった。胸に揺るぎない正義の心が熱く燃え盛る。

 

暗闇だった世界に一筋の光が射し込む。そして僕の身体がゆっくりと光に向かって浮かんでいく。なんとなく、それが外の世界へと繋がっていると感じることが出来た。

 

「一緒にこいよ!!ボク!」

僕はオールマイトの登場からずっと俯いていたボクへと声をかけて手を伸ばす。

 

「でも、僕は…諦めて……僕なんかにはなにも…!」

「諦めてなんかいなかったじゃないか!無意識でも個性を使って再履修(やりなおし)っていう奇跡を起こして。そして僕にワン・フォー・オールを譲渡したじゃないか!!それはボクがオールマイトを救いたいって、諦めたくないって、そう思っていた何よりの証拠だろ!?」

「――それは…!」

「だからいこう!まだ終わってない。僕がオールマイトを…皆を救けるんだ!!」

ゆっくりと上昇していく身体を捩り、上下逆さまになりながらも手を伸ばし続ける。ボクは呆気にとられた表情をしたあと頭を大きく振ってから、僕を見据え大きく眼を見開いた。

 

「必ず……救けよう――…!!」

ボクは大きく跳ねて僕の手をとる。ボクの身体が光の粒になって僕の掌から身体中に染み込んでいった。

 

―――了解、緑谷出久。 諦めないでいてくれて、ありがとう。

 

 

すべてのチカラを託された僕はぐんぐんと速度を上げて光に向かって突き進む。身体中にチカラが巡り、今も尚増大し続けていく。

 

光が近づくにつれて、外からの音が大きくなる。同時に耳鳴りも始まり、この世界の終わりを予感させた。

 

 

『―――んなさい、デクくん。貴方の――護ってあげ――なかっ―――』

 

 

優さん……ありがとう。僕はもう何度なく貴方に護られて、救われて来ました。今度は…僕の番です。

 

 

光が視界を包み、甲高い耳鳴りが鼓膜を支配する。そんな中でも声は聞こえてくる。

 

 

『―――きよデクく――大―き…――してる――…」

 

―――ええ…優さん。僕もですよ。

 

 

そして僕は暖かな光に呑み込まれた―――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

光に呑み込まれ、現実世界に回帰した僕の目の前にはまたしても光の塊が待ち受けていた。直感でそれが危険なものだと悟る。

 

バッと跳ね起きると、後ろから優さんの驚きの声が聴こえるが今は目の前の脅威が最優先だ。

 

皆から託されたこのチカラで打ち砕いてみせる――――ワン・フォー・オール!プルスウルトラ!!!!

 

全身に今までに感じたことのないような膨大で莫大な量のチカラが駆け巡る。全身の筋肉から湧き出るチカラの奔流は体内のみならず僕の体表面にも溢れだしてくる。迸るチカラは稲妻のような形で身体をバリバリと弾けながら走り、それでも噴出を続けるチカラは炎の揺らぎのように全身を包み込む。

 

僕は拳を握りしめ、大きく振り絞る。チカラを籠めた腕から更にチカラが溢れだして、腕に纏わりついていった。

 

「DETROITTT!!SMAASH――――!!!」

迫りくる巨大な光球に向かって、右腕を振り抜くと、僕の一撃は強大な暴風を巻き起こしていく。右腕に集まっていたチカラが暴風に混じり合うように射出され、チカラを内包した竜巻が白く輝く光球と衝突した。チカラの塊と光球は激しい音を発てながら削り合うが、竜巻が光球を呑み込んで押し返し、余波を生み出しながら対消滅していった。 消し去った光球の向こう側。宙に浮き、目を見開いて驚く死柄木の姿が見えた。

 

僕は振り向いて優さんに笑いかける。もう大丈夫、という想いを籠めて。

 

「デクくん…生きてた…!」

「ええ、戻ってきましたよ。護ってくれてありがとうございます、優さん」

「私には何も出来なかった。それにまたデクくんに救けてもらっ―――」

会話する優さんと僕に向かって死柄木は重くのし掛かるような殺気を放つ。優さんがその殺気に呑まれ、言葉を発することも出来ず震えていく。

 

僕は優さんを庇うように前に立ちはだかり、威圧感を全開にして死柄木を睨み付ける。殺気と威圧感がバチバチと交差して打ち消しあっていった。

 

「何度だって――」

 

僕は背中に控える優さんへ言葉を紡いでいく。伝えたいことがあるんだ。僕はそのためにここに戻ってきた。

 

 

 

「――――何度だって救けますよ!だって僕はあなたのヒーローなんだから!!」

 

 

 

 

 

 

007.だってアタシのヒーロー。

 

 

 

 




最高のフィナーレを刻んでみてよ―――――


筋肉がワン・フォー・オールでワン・フォー・オールが筋肉。これが答えです。


次回もよろしくお願いします!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。