デクのヒーローアカデミア 再履修!【完結】   作:くろわっさん

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今回も安定のキャラ改変があるのでご容赦ください。


不確定要因(イレギュラー)

 

合宿三日目。前世と同じく肝試しの時間になり、遂に現れたヴィラン連合。 でも前世と違い今の僕には力がある!

手の届く者は必ず救ける。そしてヴィラン連合…お前らは僕がこの手で必ず潰してやるっ!!

 

 

 

 

 

 

「ピクシーボブ、この二人のヴィランをお願いします! マンダレイ、みんなの避難を! 虎さん、急いでラグドールの下へ! ヴィランの数がわからない以上、単独行動は危険です!」

ヴィランの襲撃に備えていたため、余裕のあった僕は、ヴィランの急襲により動揺した三人へと指示を出す。

 

「それと虎さん……皆をお願いします。 ここでむざむざとやられるなんてさせられない。 出来る限りのことをさせたいんです、全力で皆が抗えるように―――」

「よい、我に任せておけ。全ての責は我が負う、お前はお前の力を全力で使うことを考えておけばいい」

覚悟を決めた僕と虎さんは多くの言葉は交わさなかった。 漢同士の約束はいま果たされるだろう。

 

「マンダレイよ、頼む…」

「虎……わかったわ」

虎さんとマンダレイの短いやり取り。 マンダレイもまた覚悟を決めたようで、この合宿施設全体に伝わるようなテレパスを発信する。

 

『“ヴィラン二名襲来!他にも複数いる可能性有り!動けるものは直ちに施設へ!!――そしてヴィランと遭遇した場合は、A組B組総員、プロヒーロー“ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ”の名に於いて、戦闘を許可する! 繰り返す、ヴィラン襲来。個性による戦闘を許可する!!”』

 

テレパスが僕の頭を駆け抜けていく。だがその内容は僕が想像していたものとは少し違っていた。

 

マンダレイの出した指示だと虎さんだけじゃなくてチームが戦闘を許可した形になってしまうんじゃないか!?

 

「マンダレイ!それでは我のだけの問題では―――」

「そうよ、貴方の抱える問題は貴方だけじゃなくチーム皆のものなんだから。 昨日三人で話し合って決めてたの。虎が覚悟を決めたなら私たちも……ってね!」

「すまぬ……そしてありがとう…」

ワイルドワイルドプッシーキャッツの団結は僕の想像なんて遥かに越えるくらい強かった。 そんな様子を見て僕は、相棒であるかっちゃんのことを思い出していた。

 

かっちゃんを救けなきゃ…きっと奴らの目的はかっちゃんだから―――でも今は先にやることがある。

 

「ありがとうございます!!僕は洸汰君の保護に向かいます!きっといつものところにいるので!!」

「オールライト、洸汰をお願い!!」

「任されました、必ず救けます!!!」

 

僕は洸汰君のいる崖道の秘密基地を目指して駆け出す。 その身体にワン・フォー・オールを全開にして纏わせながら―――

 

 

 

 

「…ふう、これでヒーロークビになったらどうしよっか?」

「その時は……若いツバメをいただくとしましょう?」

「それ、いいわね。じゃあ私はオールライトにしようかしら」

「ピクシーボブ……まあ、あのMt.レディから奪えるならそれも面白いかも知れぬな」

 

 

 

 

 

 

 

 

洸汰君のいる秘密基地までの道中には、先程作動した火災報知器の最初の二つの反応のうちの一つがあった場所を横切る形になる。 もしかしたらヴィランとかち合うかもしれないな。

 

などと考えながら駆け抜けていると正面の木の影からひとりの男が走って出てきた。

 

「げっ、緑谷出久…!」

「誰だ!?いや、奴らの仲間だな?」

「ちっ…俺の担当はお前じゃない。でも遭っちまったからには燃えてもらうっ!!」

不意に遭遇した顔面継ぎ接ぎのヴィランはその手から火炎を放ち、なんの躊躇(ためら)いもなく僕を炎で焼き殺そうとしてきた。

 

「僕もお前に構ってる暇はない!ネブラスカ・スマッシュ!!!」

僕は火炎をしゃがみこんで避けながらヴィランに接近して、その鳩尾にアッパーを叩き込む。だがその感触は相手の横隔膜や腹直筋を捉えたものではなく、なにか柔らかな水風船を殴ったようなものだった。

 

そしてヴィランの腹が文字通り弾けとんで、その身を散らした。

 

「しまった!殺し―――」

「おいおい、無傷かつ一撃かよ。容赦ねえな…もう会いたくねえ、あばよ」

それだけ言い残すと、ヴィランの身体がドロリと溶けていき、黒いヘドロようなものが地面に残った。

 

さっきの炎が個性じゃないのか!?これは幻覚…?それとも液化か? それに複数の個性を持つなんて……

 

「復活する様子も、辺りに気配もない……別の奴の個性を使ったのか?」

暫くその場で警戒していた僕だったが、相手が現れないことからこの場は制圧したと考え、次の行動を起こす。

 

「洸汰君の元へ急ごうっ!!」

 

数十秒だが、明らかに時間を使ってしまった!無事でいてくれ…、洸汰君っ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― 相澤 side in ―――

 

 

「ブラド、ここを任せた。俺は生徒の保護に向かう!」

マンダレイからのテレパスを受けて、俺は即座に行動を開始する。

 

宿泊施設から外に出る。そこに広がっていた光景は、炎に包まれ明るく燃え上がる森だった。

 

ヴィランの襲撃…まさかホントに来るとは……今回の合宿では情報が漏れないように万全を期した。こんな襲撃があるはずがなかったというのに。

 

ここにヴィランが来てないことを考えると、奴らの狙いはやはり生徒達である可能性が高いか。

 

「……マズいな」

 

考えたくはないが、やはりいるのか?“内通者”が……

 

 

『今回の合宿中にヴィランの襲撃があったらどうします?』

 

 

まさか緑谷、お前が……いや、そんな筈はない。襲撃者の味方がわざわざそれを示唆することを言うのは合理的じゃない。

それに緑谷が敵になるとしたら、この状況は最悪過ぎる。さらにその師であるオールマイトですら敵に……そんなことになっているとしたら。

 

 

――――日本の超人社会の崩壊を意味する。

 

 

いや待て、度が過ぎる悪い方への想像は合理さを欠く。とりあえずは保留しとくべき考えだ。

 

今はとにかく行動を。生徒の保護とヴィランの掃討を優先すべきだな。それにマンダレイに接触して戦闘許可の権限を俺に移して貰わなければならない。

 

「……やるべきことが多い」

 

―――そうして俺は燃え上がる森へと向かっていった。

 

 

 

――― 相澤 side out ―――

 

 

 

 

 

 

 

マンダレイのテレパスから約2分後。僕は洸汰君の秘密基地がある崖の下へとたどり着いた。そして大きくその場で踏み込んでその崖の上へと跳躍していった。

 

そこで僕の目に飛び込んできたのは、いまにも洸汰君に襲いかかろうとしている黒衣の大男の姿だった。

 

「――っ! 洸汰君!!」

 

僕はその間に割り込み、左腕で振り下ろされたヴィランの腕を弾きながら、右腕で洸汰君を抱えて大きく右へと跳ねた。

 

「っ痛てえ!……てめえは緑谷出久…!」

僕に弾かれた腕をさすりながら僕を睨み付ける大男。被っていたフードは脱げていて、抉られた痕の残る顔が見える。

 

血狂いマスキュラー、洸汰君の両親の命を奪った凶悪なヴィランだ。

 

僕は洸汰君を地面に優しく下ろして、目線の高さを合わせて洸汰君へ語りかける。

 

「洸汰君大丈夫?怪我はない?急いで宿泊施設まで走って逃げるんだ」

「でもアイツが……」

「大丈夫……アイツは僕が倒すから…!」

 

僕はマスキュラーへと振り返り、力を込めて握りしめた拳を構えた。

 

「お前が俺を倒す? ちげえよ、俺が!お前を!殺すんだっ!!」

「走って!!」

洸汰君へ檄を飛ばしながら、襲い来るマスキュラーを迎え撃つ。

 

個性によって筋肉(偽物)を重ねて膨れ上がったマスキュラーの腕と個性を巡らせて強化された僕の腕が衝突し、辺りに衝撃波が走る。

 

吹き飛んだのはマスキュラーの方だった。腕だけで振るわれた一撃を、僕は全身の筋肉(本物)を使って、身体を地面から生える柱のようにして迎え撃ったため、揺るぐことなく力勝ちしたのだ。

 

「やっぱり強っええな!ならこっから先は本気の義眼で―――ぐふぅっ!??」

吹き飛んでいったマスキュラーが体勢を立て直しながら、義眼を交換しようとポケットに手を突っ込む。僕はその隙を逃さず、がら空きの顔面にフックを食らわせた。

 

マスキュラーが大きく仰け反ると共に填めていた義眼が外れて飛んで行く。

 

「お前の遊びに付き合ってやる理由はない……次で終わりにしてやる」

「がぁっ!くっそ強ええ…もっと遊んでいたかったが……」

ダメージが重なり片膝を着くマスキュラー。僕は止めの一撃を食らわせるために、拳を引きながら踏み込んでいく。

 

「100%!DELAWARE―――」

「――やれっ!!!」

 

最後の一撃を放とうとしたその瞬間、マスキュラーの叫び声と共に僕の背中にまるで()()()()()()()()()()()かのような衝撃が加わり、崖の壁面へと吹き飛ばされた。

 

「くっそ!なにが……っ!!」

衝撃で崖に埋め込まれた僕だったが、直ぐ様抜け出して戦闘体勢をとる。しかしそこにいる筈もない人物の姿に思わず言葉を失った。

 

 

「どーよ緑谷ぁ、痛えか。これが死柄木から貰った俺の玩具……脳無だ」

そこに居たのはUSJ襲撃事件で僕が取り逃した、オールマイトを殺すためのヴィラン連合の切り札“脳無”だった。

 

こんなの予想してないぞ…!オールマイトすら倒せるかもしれない奴とマスキュラーのタッグ、勝てるのか?

 

「いや、やるしかない!!スマァッシュ!!!」

僕は脳無の胸板に拳を叩き込む。だがその衝撃は脳無の個性“ショック吸収”によって無力化されてしまった。

 

脳無が反撃の拳を僕の顔に向かって振り抜くが、僕は身体を少し捻ってそれを躱した。

 

やはり生半可な一撃じゃ通用しない、もっと速さとパワーがいる!僕はここでコイツらを倒して洸汰君を……しまった!

 

考えを巡らせて洸汰君の方へと振り向いた時にはもう遅かった。

 

「洸汰君!!」

「遅せえよ、ガキならもう()()だぜ?」

マスキュラーが片腕で洸汰君を脇から抱え上げて捕らえていたのだ。

 

「放せ!放せよ!!パパとママを殺したクソヤロー!!」

「うるせえガキだなぁ……今すぐぶっ殺してやる!!」

「ひっ……」

「……と言いたい所だが、今のお前は人質ってヤツだ。さあ緑谷、このガキを殺されたくなかったら動くな!ってなぁ!ハハハッ!!」

僕を嘲笑うマスキュラーの声が木霊する。洸汰君を人質に取られてしまい、今の僕に出来るのは奴を睨み付けることぐらいだ。

 

「おお、怖い怖い。目線だけで殺されちまいそうだ。でもお前は動けない……ヒーローだもんなぁ?ハハッ!」

「くっ!!」

「さて、動くなよ緑谷。ってもスグに壊れちゃ面白くねえな……じゃあ防御だけはしてもいい。但し、反撃をしようもんならこのガキの首と身体が離ればなれになっちまうぜ?わかったか?わかったよなぁ!!!?―――やれ、脳無」

マスキュラーの言葉を受けて脳無が動き出してくる。僕は両腕を身体の前で固めて防御の姿勢をとった。

 

 

 

――――そして、脳無から繰り出される殴打の嵐を、サンドバッグのようにこの一身に受け続けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

――― Dark side in ―――

 

 

ヴィラン連合“開闢行動隊”が合宿施設を襲撃した、その同時刻、ヴィラン連合の隠れ家であるBARでは、死柄木と黒霧がその襲撃について話をしていた。

 

「配置については計画通りに……」

「一先ずは完璧だ。作戦が成功するかどうかはあんまり重要じゃない。この襲撃自体が起こったという事実が重要なんだよ」

「ではやはり……彼らは捨て駒ですか?」

「バカ言え、俺がそんなに薄情な奴に見えるか?」

黒霧は「見えます」と思わず言いそうになるのを堪えて死柄木の話の続きを待った。

 

「それに虎の子の切り札(脳無)を二枚も切ったんだ。ある程度は成功して貰わなきゃ困るってもんだ」

「作戦の成功は、マスキュラーと対オールマイトの最高性能(ハイエンド)脳無がどこまで緑谷出久に通用するかにかかってるわけですね」

「そうだ、その他のプロヒーローなんて脳無に比べればカス同然。奴を抑えればこの闘いは勝てるんだよ」

自慢げに語りながら死柄木は左手で右手を咥えこむジェスチャーをする。

 

「まあ()()()もまだ安定してないし、ここはアイツらの頑張りに期待して待ってるとするよ」

「……そうですか」

他人事みたいに語る死柄木に、このあと彼らを迎えに行く仕事を思い出した黒霧は、何とも言えない気持ちになる。

 

その場にいない彼らに知る由はなかったが、連合の立てた作戦は死柄木が想定したよりも遥かに巧く機能していた。

 

 

 

同時刻、合宿施設では―――

 

 

「全然足りてねえぞ荼毘!もっと燃やせ! いや、十分だ!最高だぜ荼毘!!」

「「二人も自分がいるってのは変な気分になるな」」

トゥワイスが増やした荼毘と本体の二人が森林を個性で燃やし続け、辺りを火の海にしていた。

 

「雄英のエリートども…!死ね!死ねっ!僕のガスに呑まれて死んでしまえ!!」

マスタードが発生させた有毒ガスは既に広範囲に広がり、その脅威を満遍なく発揮する。

 

「ネホヒャン!ネホヒャン!」

「こやつ……強い…!!」

もう一体の脳無はラグドールと虎に相対(あいたい)しており、奇襲によりラグドールに深傷を与えていた。

 

「二人ともカァイイね。麗日さんと蛙吹さん!」

トガヒミコは麗日と蛙吹に襲いかかり、敵対していた。その手には麗日の血のついたナイフを構えながら。

 

「ああぁ、綺麗だ……綺麗だよ。もう仕事しなくていいかな……」

脱獄死刑囚ムーンフィッシュは(うずくま)りながら囁いていた、地面に転がる誰のものとも分からぬ切り落とされた腕を眺めて。

 

「さあて、目的の彼はいったいどこにいるのかな?」

Mr.コンプレスは闇夜の森を跳ねながら標的を探し続けている。それすら楽しみに変えて、この最高のショーを成功させようとしていた。

 

スピナーとマグネは既に出久の手によってやられてしまっていたが、その出久はマスキュラーと脳無によって追い詰められている。

 

本来、オールマイトの弟子として実力を付けた出久が、マスキュラーと脳無の二人を相手にしても、苦戦することは有れど遅れを取ることはなかっただろう。 黒霧の予想通りに時間稼ぎにしかならなかった筈だった。

 

しかし出水洸汰という、死柄木達にとって予想外の不確定要因(イレギュラー)が、出久にとっては最悪、マスキュラーにとっては最高の形で作用していたのだ。

 

 

 

――――際限のない悪意が蔓延り、絶望がヒーローたちを呑み込もうとその口を大きく開けて待ち構えていた。

 

 

 

――― Dark side out ―――

 

 

 

 

――― 出水 side in ―――

 

 

「気分はどうだ緑谷?だいぶボロボロになってきたなあ!いいぜもっと血ぃ見せろや!」

「ぐっ…!」

「この脳無はお前をぶっ殺すってことを条件に死柄木に貰った玩具なんだ。 いいぜぇこいつ。 好きなだけ殴っても壊れないでスグ直るし、うだうだと小言も言わねえしな!」

僕を捕まえたヴィラン、パパとママを殺した犯人、マスキュラーは笑い続けてる。 あのマッチョは僕のせいで動けないで殴られ続けてるのに……

 

「なんでだよ!なんで逃げないんだよ!」

「ハハッ!ホントだよなくそガキ。アイツは強え、俺よりもかなり強えよ。他人なんて見捨てて逃げるなんて楽勝だろうし、その気になりゃぶっとばせるのにな!損な性格してるぜまったくよお!!」

マスキュラーが僕に同調するようにアイツを嘲笑う。どうして、どうして何にも知らないくせに…僕なんかを……

 

そして殴られまくったマッチョはついに地面に膝を着いてしまう。

 

「……うぶ…」

「あぁ!?なんだって!?」

「……大丈夫!…必ず救けるよ…洸汰君」

全身ボロボロの血塗れになりながら、それでもアイツは僕に向かって満面の笑顔でそう言った。

 

なんで…!そんなになってまで…!僕を救けるなんて言えるんだよ!おかしい、おかしいよ!!

 

「オッカシイぜお前!!必ず救ける?そんなぼろ雑巾みてえになって何言ってんだ?もうすぐ死ぬんだぞ!!?あぁ!!?ハハハッ!!」

「笑うなぁぁあ!!お前みたいな奴が、パパとママを殺したお前が!」

「お前の方こそなに言ってんだよって感じだぜ、くそガキ」

僕はがむしゃらにマスキュラーの腕の中で(もが)く。だけど腕は固く閉ざされてて、全く抜け出せる感じがしなかった。

 

僕がこいつから逃げられれば、きっとマッチョが自由に動ける。だからどうにかしてこいつの不意をつければ……

 

「さて、そろそろ終わりにしてやっかな。そんだけズタボロならもう勝てんだろうし。 止まれ、脳無」

マスキュラーは余裕の笑みを浮かべて、アイツへと歩き始める。

 

「抑えとけ脳無。これでオシマイだ!じゃあな緑谷!!―――」

マスキュラーがアイツに止めを刺そうと筋肉だらけになった腕を大きく振りかぶった。

 

「止めろぉぉおお!!!」

僕はマスキュラーの顔に目掛けて、個性で掌から水流を出した。

 

「あ?」

水を浴びせられたマスキュラーは、不意の出来事に対応できず、一瞬動きが止まった。

 

「うおおおおおぉぉ!!!」

その隙を逃さずアイツは立ち上がり、もうひとりの化け物を投げ倒してから、僕に向かって必死に手を伸ばす。

 

 

 

 

でもその手は届かない。化け物が倒れながらもアイツの足をしっかりと掴んでいたからだった。

 

 

「あー残念。届かなかったな? しかし、いろいろ合点がいったぜ、その個性…ウォーターホースか」

「ひいっ…」

「緑谷も約束破って動いちまったし……そろそろお前も殺すか」

マスキュラーは僕の首根っこを掴みながらまるでイタズラした仔猫を叱るような態度で、命を終わらせようとする。

 

「精々あの世でパパとママに甘えるんだな、くそガキぃ!!――――」

マスキュラーは僕を軽く真上に放り投げると、その下で僕を殺すための拳を構えた。

 

「や、め、ろおおおぉぉ!!」

アイツは必死に化け物を振り払おうとするが抜け出せない。そのまま倒れ込みながら、ギリギリ届いたマスキュラーの足を掴むけど、マスキュラーの拳は少しずれただけで変わらず僕を捉えていた。

 

死ぬ。死んじゃう。殺されちゃう。

 

絶対に死ぬってわかっているのに、僕はそれでも最期のお願いをしてしまう。

 

「―――誰か、救けて…」

 

僕は心の底から思った気持ちを、祈るように呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そこから先はなにが起こったか、僕にはよく分からなかった。

 

僕はまだ生きていて、気がつけば暖かくて力強い腕と大好きなお菓子のような甘い香りに包まれていた。

 

僕を抱き上げる人の顔を見上げて確かめる。

 

「……お菓子マン?」

「おう、救けに来たぜ、洸汰」

にっこりと優しく笑うお菓子マン。僕はその腕の中で泣き出していた。

 

僕は昔にマンダレイに言われた言葉を思い出す。

 

『――あんたもいつかきっと出会う時がくる』

 

ボロボロになりながら立ち上がり、僕を救けると言ってくれたアイツ……

 

『―――命を賭して、あんたを救う』

 

僕の願いを叶えて、救けてくれたお菓子マン……

 

『―――あんたにとっての……』

 

僕の――――……

 

 

 

――――――僕のヒーロー達。

 

 

 

――― 出水 side out ―――

 

 

 

 




偽筋から洸汰君を救いだすのは本物の筋肉達!―――――


最近は暑すぎて食欲が湧きませんが、なぜか創作意欲は湧いてきましたよ。近いうちに続きを書けそうです!

次回もよろしくお願いします!

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