デクのヒーローアカデミア 再履修!【完結】   作:くろわっさん

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祝50回!別段変わったことはやりません…!






『相棒』

漢の祭典オールマイト杯、僕はデステゴロ、ギャングオルカ、そして修行生活のライバルだったルミリオンことミリオ先輩を破りオールマイトに挑戦する権利を掴んだ。

オールマイトと一対一でのガチバトル、憧れと緊張と喜びが入り乱れてどうにかなってしまいそうだ!!

 

 

 

 

 

 

僕とオールマイト、そして審判のサーナイトアイがリング上で互いの顔を見合う。

リングの周りには観客席から飛び出てきた今回の参加者であるプロヒーロー達がこの闘いを間近で見ようと集まっていた。

 

「本当にこの場に辿り着いたな…我が弟子よ!」

オールマイトが声を張ってあえて周りのヒーロー達に聞こえるように話す、この場にいる者達に僕の紹介をしているようだ。

 

「ここでひとつ皆に謝らせて欲しい。ここに立つヒーロー、オールライトは私の新たな相棒(サイドキック)で…そして私の弟子だ!まあ隠すつもりも無かったから皆気が付いてたとは思うけどね!!」

「でしょうね…」

「そして今回このタイミングでオールマイト杯を開催した理由、それはこのオールライトの実力を見定めるためだったのだ。

彼が一人でも凶悪なヴィランと闘えるほどの力があるのか、君達のような素晴らしいヒーロー達に肩を並べる存在足り得るのかを……

そんな個人的な理由で君達を招集してしまったことをここに詫びたい!すまなかった!!」

オールマイトは僕らを見上げるヒーロー達に頭を下げる、僕とサーナイトアイもそれに合わせて頭を下げて彼らに許しを乞う。

 

まさかこのためだけにオールマイトがこんな豪華な面子を集めてくれていたなんて……もう素直に感謝しかない。

 

「オールマイト、一つ聞かせてくれ。本当にその為だけに呼んだのか?いつものアレも含めて俺らを呼んだんじゃないのか?」

ヒーロー達を代表するようにギャングオルカがオールマイトに問う。いつものアレ……?

 

「えっ、ああ……正直そっちの方が大きかったんだよね…強いヒーローとガチバトルしたいっていう方が。その中で緑谷少年が勝ち残ったら嬉しいなぁーくらいの気持ちでいたんだ!ごめん緑谷少年!!」

「え、ええ……」

「なら俺らはそれで満足だ。きっかけはどうあれ俺らは拳を交えて充分分かった、オールマイトが確めたかったことの答は……彼がその場に立っているってことでな」

ギャングオルカはニヤリと笑いながらオールマイトに告げる。

 

正にその通りだろう、始まりは贔屓かもしれないが僕は闘ってきた人達に恥じることない闘いをしてきてここに立っているつもりだ、彼らに懸けてそれを否定することは出来ない。

 

「ありがとう皆!本当にありがとう、集まってくれて、闘いを見せてくれて……なら最後は私のこの拳で確かめるとしよう。

我が弟子、オールライト!皆に恥じない闘いをする準備は出来ているか!?」

「勿論ですよ!オールマイト!!」

「よろしい――――さあ始めようか!!」

僕とオールマイトは互いに拳を構えてその場に緊張が走り静寂が流れていく―――

 

 

 

 

―――がその静寂を破ったのは僕でもオールマイトでもましてやサーナイトアイでもなかった。

 

それはピロピロとした携帯電話の着信音だった。

 

「…すまない……俺だ」

そう言って申し訳なさそうな顔をしていたのはギャングオルカだ、先程まで綺麗に場を納めていただけにかなりバツが悪いだろう。

 

だがそれで終わりではなかった。電子音、バイブの振動音、様々な音が響いて次々とヒーロー達の携帯に連絡が入ってきたのだ。

ヒーロー達は顔を一瞬見合わせた後、それぞれ電話を手に取り通話してしていく。

 

なんだ!?いったいなにが起こってるんだ!!?嫌な予感がする……

 

「なに!?遂に奴等が動いた!?もう始まってんのか!!こいつは……やべえな」

「大規模なヴィランの集団が!?はあ?80名を超えてまだ増えてるだと!?」

「場所は――――なるほど……近い…」

 

僕の疑問に答えるようにヒーロー達の会話が聞こえてくる、僕はゆっくりとオールマイトの方を見るとその視線が合った。

 

「私達は―――“ヒーロー”だ!きっと皆が私達を待っている……さあ、いこうっ!!!」

「「「おう!!!」」」

 

オールマイトが先陣を切って会場を飛び出していき、皆がその後に続いていく。

 

 

「ヴィランの数が90名を超えたらしいぞ!」

「なら一人頭10人がノルマになるな…」

「楽勝だ!自信がないなら俺が余分に倒しておこうか?」

「フンッ…なにを、我とて楽勝だ!!」

 

ヒーロー達は互いを煽りながら現場に向かって駆けていく、幸運にも現場はすぐそばでもうすぐ到着するだろう。というかオールマイトはもう既に着いている筈だ。

 

「ハッ!?しまった……ヘルメットが壊れてるの忘れてた!!」

このままじゃ世間にはプロになるまで隠しきる予定だったオールライトの正体が……そんなことを言ってる暇はないな、救けることが最優先だ!!

 

「デク!これをつけとけよ!ほらっ!」

「助かります先輩!……でもいいんですか?」

「ああ、俺はもうインターンと雄英体育祭で大分正体が割れてるんだよね!だからそれは貸してやる、サーとオールマイトの考えを守れるなら問題ないよね!!」

 

ミリオ先輩が投げ渡してくれたコスチュームのバイザーを身に着けて僕は再びその正体を隠す。

 

ありがとうミリオ先輩!さあ、正体不明のオールマイトの相棒(サイドキック)、オールライト!出陣だ!!!――――

 

 

 

 

 

―――その場に駆けつけたオールマイトをはじめとした格闘系ヒーロー9名とサーナイトアイ。そしてなぜか現場近くにいたフレイムヒーローエンデヴァーの活躍により総勢93名にもなるヴィランの超大規模活動はその人数のわりに合わず小規模な物的被害が出ただけで鎮圧された。

 

巻き込まれた人びとにとっては奇跡、緻密に計画を練っていたであろうヴィランにとっては悪夢のような出来事だっただろう。

 

最も活躍したのはやはりオールマイトだ、一人で20名以上のヴィランを倒していたからね!

 

……だが大活躍のお陰で活動時間を使いきってしまったこと。そしてその事件が解決して警察関係者から解放されたのが日を跨ぐくらいの深夜になってしまったこと。それらのために僕とオールマイトの対決は有耶無耶になってしまった。

 

そして僕の実力を見定めるという目的は達成された、ということでオールマイト杯の再開は無しに成った。

 

これでいよいよオールマイトの相棒(サイドキック)生活が始まる―――っと思ったんだけど、そうは問屋が卸さない。

 

オールマイト杯に参加してくれたヒーロー達から僕を相棒(サイドキック)として貸し出してくれという声が多々上がったのだ。

個人的なお願いとして集まってもらった手前オールマイトも断りにくく、更にヒーロー達は僕にそれぞれの戦闘技術を伝授してくれるとまで言っていた。

 

僕が強くなるなら、とオールマイトは渋々貸し出しを許可。その日以降僕はオールマイトとオールマイト杯の参加ヒーロー6名、そしてMt.レディの計8名のプロヒーローの相棒(サイドキック)として目まぐるしく忙しい日々を送ることになったのだ。

 

でもその相棒(サイドキック)生活のお陰で僕は様々な戦闘スタイルを学習出来たし、多種多様なヴィランへの対処も学べた。僕が色んなプロヒーローと仲が良かったのも、格闘技全般が出来るようになってたのもこれの結果だね。

 

まさに良いこと尽くしだったんだけど、あまりの忙しさに3ヶ月の日々があっという間に感じたよ。

 

その後はみんなの知っての通り、雄英高校の一般入試の朝に繋がるってわけさ。

あ、そういえば推薦入試の当日に古くさい極道組織をミリオ先輩達とオールマイト達と一緒に叩き潰したって事件があったなぁ。まあそれは機会があったときにでも語るとしようか!――――――

 

 

 

 

 

 

 

――――――時は現在へと戻る。僕は期末試験の筆記テストを無事に終えて、これから始まる実技演習試験の説明をクラスメイトと共に相澤先生とその首元からひょっこり出てきた根津校長から受けているところだ。

 

「―――というわけで諸君らにはこれから二人一組(チームアップ)でここにいる教師一人と戦闘を行ってもらう!」

 

試験内容は前世と変わらず教師陣との戦闘演習、発表されていく生徒の組み合わせも同じくだ……ということは僕の相方は彼になり、そして対戦相手は―――

 

「―――最後、緑谷と爆豪がチームだ。で…相手は―――」

「――私がする!」

「まあ、緑谷がいる以上オールマイト以外はあり得ん。頑張れよ爆豪」

 

やる気に満ちたオールマイトとダルそうにかっちゃんを労う相澤先生、対極的な二人によって僕らの試験が決定した。

 

半年越しについに実現したオールマイトとのガチバトルの機会、喜びと気合いに満ち溢れた僕だがその頭の中にはこの闘いにかっちゃんを巻き込んで良いものなんだろうかという考えが過っていた。

 

「しゃあ!デク、やんぞ!俺らの力を見せてやろうぜ!!」

隣ではしゃぐかっちゃんを尻目に僕はそんなことを考えながら演習場までの移動バスに乗り込む。

 

僕らの演習場は校舎や市街地から最も遠い場所になるらしい、おそらく僕とオールマイトの激しい戦闘を考慮してのことだろう。

 

このバスが演習場に着く頃には他の皆の試験は始まってるだろうし、もしかすると早い人は終わってるかもしれない。

 

そういえば一緒に期末試験対策をした彼らは無事に試験を突破できるんだろうか?―――――

 

 

 

 

 

 

 

――― 飯田 side in ―――

 

 

俺は今、期末試験の実技試験で尾白君と共にパワーローダー先生に立ち向かっている。

 

パワーローダー先生の個性のせいで既に地面は大小様々な穴が空いており、非常に動きづらい状況になっている。

 

だが今の俺にはそこまで大きな問題ではない、なぜなら俺には緑谷塾で発目少女に開発してもらったこの“V3スーツ”があるのだから!

詳細は省くが以前のものより遥かに軽く丈夫な材質と改良された冷却機能(ラジエーター)により俺の個性 (エンジン)の出力は倍増した。

 

よってこのような悪路でも問題なく走り抜けられるのだが、問題が一点……このスーツの開発に発目少女と共に関わっていたのは他の誰でもないパワーローダー先生なのだ。このスーツの性能もそれに俺の個性を加えた性能(スペック)もすべて把握済みだ。

 

故にこの試験に合格するためには相方である尾白君の―――

 

「あれ!?尾白君!?どこだ!!?」

 

いかん!尾白君の姿が見当たらない!!……まさかもう既に先生にやられてしまったのか!?

 

「いやずっと隣にいたよ!!」

「おお、尾白君!もう()()()()()()()

「まだ使ったつもりは無かったんだけど……」

 

緑谷塾で尾白君が特訓の末に身に付けた新技“ミスディレクション”。視線誘導など用いて人の判断力を狂わして誤認識させる、手品などで使われる技法だ。

 

『影が薄いならさ、むしろそれを極めたらいいよね!』

通形先輩のそんな一言が尾白君を前に進ませた。

 

緑谷君いわくカウンターの専門家である通形先輩は尾白君に視線誘導やブラフの散らし方などの極意を教えた。それらを元にして尾白君は絶え間ない訓練の果てに―――自らの存在を消した。いや正確には消えたと錯覚させる技術を身に付けたのだ。

 

手合わせをしたがあれは凄かった、目の前で闘っているはずなのに尻尾以外見えなくなるのだ。また尾白君の姿が見えたと思えば今度は尻尾が見えなくなる、それが彼の“ミスディレクション”だ。

 

「尾白君!俺が先生を撹乱する、君はその隙に止めを頼む!」

「了解!いこう、飯田君!」

俺と尾白は軽く掌を合わせてから散開する。

 

「うおおおおおっーーー!!レシプロバースト・V3!!」

俺は全力で駆け出しながら必殺技を発動する。V3スーツにより持続時間と馬力が強化されたレシプロで荒れた戦場に大きな砂埃を巻き上げながらド派手に走り回る、並の人間なら目で捉えるのがやっとな速さだろう。

 

「力と技の融合、V3。スバラシイ速さだ…だがそのスーツを誰が造ったとオモッている?()()()()()()()、飯田…」

 

パワーローダー先生はしっかりと俺を注視して捉えている…流石だ―――だがしっかり釣れた!!

 

 

「―――俺は見えてましたか?先生?」

 

気配を消し去っていた尾白君がパワーローダー先生の背後に既に立っていた。

そして首をトンッってやるやつを先生の首にトンッっと当ててその意識を絶つ。

 

「尾白…いつの間に……でもアマいな!俺も雄英教師、プロヒーローなんだよ。この程度で気を失ったりはしない…!」

 

パワーローダー先生は首をトンッってやるやつを受けてなお健在だ。流石は雄英教師…!感心するがこれはまずい!

 

「先生、これもブラフです……ほら()()

俺の焦燥をよそに尾白君は冷静にそう言いながらパワーローダー先生の手首を指差す。

 

先生の手首には試験前に配布された拘束用のハンドカフスがしっかりと嵌まっていた。

 

「なるほど…スバラシイ。派手な飯田の動きも鋭い手刀も全てがこのためのブラフか……くけけ、飯田・尾白組文句無しの合格だ」

 

先生が合格を告げる、俺は駆け足で尾白君の下へと向かう。

 

「やったぞ尾白君!合格だ!君の影の薄さのおかげだよ!!」

「くけけ、尾白の影の薄さは尋常ではなかったぞ」

「誉められてんだよな、これ……」

 

 

――――俺達は実技試験に合格した、他の塾生は大丈夫だろうか?いや彼らならきっと乗り越えられるはずさ!!

 

 

――― 飯田 side out ―――

 

 

 

 

――― 切島 side in ―――

 

 

「うおお!やべえよこれ!壊しても壊してもきりがねーよこの壁ェ!!!」

 

俺と砂藤はセメントス先生との試験に挑むが苦境に立たされていた。

 

「ああそうだな、この生え続ける壁をチマチマ削ったところでラチがあかねえだろうな……」

「だったらお前も見てねーで手伝ってくれよっ!!!」

俺は何故か傍観をしている砂藤に文句を言いながら壁を殴り続ける。

 

そして次の文句を言おうとした時―――砂藤の雰囲気が変わった。

 

「だからよお……俺の最大火力(フルパワー)で砕ききるぜ…!!」

「はぁ?おまえ何言って―――」

「シュガードープ――濃縮還元(フロムコンセントレイト)!!!」

砂藤が個性を発動しその身体にパワーが滾る、だがそのオーラは普段の砂藤の比にならないほど強烈なものに見えた。

 

これ……緑谷の“くらっちゃいけないやつ”の時に似てる!!!

 

「おいおいおい、なんだよそれ!大丈夫なのか!?」

「シュガードープの制限時間を3分から1分に濃縮したっ……糖分の消費が半端ねえがパワーは15倍になる、俺の新必殺技だ…!!」

砂藤はかなりきつそうな表情で俺に説明する、要するに短期決戦型の新技か!

 

「シュガァァア!パウンドッッ!!!!」

「――んな!?」

超パワーを蓄えた砂藤の拳が目の前の障害を一撃で粉々にぶち破る、その砕けたコンクリの壁の先でセメントス先生が驚愕の顔を浮かべていた。

 

「ゴールまでぶん投げるぞ切島っ!!お前ならきっと耐えられる!いけるか!?」

「おまえがそこまでやってくれたんだ!俺だってなんだって耐える、漢気見せるぜ砂藤ォ!!!」

「いいぜ切島―――いっけえええええ!!!!」

 

砂藤が俺を掴んで力任せに射出、先程のパンチにも劣らないパワーが俺の全身に加わった。

 

「――ッ!行かせないよ!!」

それに気付いたセメントス先生は咄嗟に俺の行く手を阻む障壁を造り上げていく。

 

「この壁は―――“耐えられるやつ”っ!!!」

俺は全身を個性でガチガチに硬化させてその壁へとぶち当たる、そしてその壁を突き破ってゴールへと一直線に飛んでいき―――そのままゴール前へと着弾した。

 

激しい衝撃が全身を襲うが硬化した俺の肉体は砕けることなく五体満足のままだ。

 

「うお…お…こりゃ確かに俺か鉄哲じゃなきゃ耐えられないかもな…!でも最高だったぜ砂藤、これで試験クリアーだっ!!」

 

俺はボロボロに成りながらもゴールゲートを抜ける、ゲートに描かれた根津校長の吹き出しが「がんばれ!!」から「よくぞ!!」へと変わった。

 

「これで合格……だよな?だぁー疲れたぁ!!」

ゴールした安心感からか疲労が込み上げて、俺はその場に大の字に寝そべる。

 

砂藤の超パワーに俺の硬化……どっちが欠けても突破できねえ試験だった。砂藤ひとりじゃ時間切れを起こしてただろうし、俺ひとりじゃ壁に呑まれて終わってた……流石は雄英、よく考えて出来てる試験だわ。

 

しっかし、やっててよかった緑谷塾。キツかったけど得るものはでかかったぜ!

 

そういえば緑谷と爆豪はあのオールマイトが相手だったな……いくら緑谷とはいえオールマイトは……いやアイツならきっといける!なんてったって俺らの塾長だもんな!――――

 

 

 

――― 切島 side out ―――

 

 

 

 

 

 

 

―――僕とかっちゃんそしてオールマイトは未だに演習場へと向かうバスに揺られていた。

 

「おいデク、大丈夫か?さっきからずーっと黙ったまんまだけどよお」

「ああ、ごめんかっちゃん。ちょっと考え事してた」

隣に座るかっちゃんが肩を揺すってきたことで僕はハッとして返事をする、心配されるほど考え込んじゃってたのか。

 

僕が先程から考え込んでいたのはこの闘いにかっちゃんを巻き込んでいいものか?ということだ。

 

僕とオールマイトの闘い……きっとこれまでで最強の相手、そして最大級の規模の闘いになるだろう。その余波は辺りを破壊し尽くしてまう、そんな危険な場所にかっちゃんを……やっぱりダメだ、ここは僕から言ってかっちゃんを止めよう。

 

「あのねかっちゃん、さっきからずっと考えてたんだけど―――」

「さあついたぞ!演習場だ!!」

僕がかっちゃんに話しかけようとした瞬間、バスは目的地である演習場に到着してしまった。

 

「さあ、やるぜデク!!」

やる気満々のかっちゃんはスタスタと先にいってしまい話が出来ない。このままじゃまずいのに…!

 

「さあ集まってくれ!試験内容の説明をするぞ!」

オールマイトに呼び出され僕とかっちゃんはその前に並ぶ。ヤバいってオールマイト、わかってますよね?

 

「っと思ったんだがな……悪いが期末試験は無しだ」

「えっ!?」「はあ!?」

「おっと、今からちゃんと説明するから慌てなさんな、お二人さん」

オールマイトの発言に口が出そうになる僕らだったが、オールマイトは手でそれを止める。

 

「まずぶっちゃけちゃうとね緑谷少年には期末の()()試験なんてのは必要ないんだ。これまで色々あったお陰で緑谷少年には既にプロヒーロー並の戦闘能力や判断力、行動原理が備わっている。これは身内贔屓なんかじゃなくて客観的な事実だ。

でも私としては緑谷少年がどこまで出来るのか確認がしたいんだ、そう……あの日出来なかった闘いの続きとしてね!

だからこのハンドカフスも…サポート科謹製超圧縮重りも……無しだ!私は私の全力で緑谷少年と闘う!!」

オールマイトが話ながら小物を投げ捨てて威圧感を放つ、でもこの会話はまるで……

 

「日本のトップヒーローである私とその最強の弟子である緑谷少年の全力のぶつかり合いだ、この演習場は日本一危険な戦場にたちまち変わってしまうだろう……そんな危ない場所にいち高校生である爆豪少年を巻き込む訳にはいくまい……

そこでだ!爆豪少年には速やかに再試の場を用意する、もちろんこの今回の試験が赤点になるわけではないので安心して―――」

「―――ちょっと待てオールマイト!なんだそりゃ、ふざけんな!!」

興奮気味のかっちゃんはオールマイトの話に割って入る、オールマイトは僕の考えなどお見通しだったのか。

 

「ああ、爆豪少年…まあ嘗められてるみたいで納得いかないよな。だが本当に危険なんだ!君の身を案じて言っているんだ、別に嫌がらせをしたいわけじゃない。

それに君に対してだけ手加減を加えて戦えば緑谷少年が全力の私と戦うのは無理だろう?それは明らかな私の隙になる、それを見逃すほど甘い修行はしてきてないんだよ、私の弟子は……

――おっ!じゃあこうしよう!この日本一危険な戦場を駆け抜けてゴールへと辿り着ければ君は合格だ!これなら元の試験のルールにも則ってるし、君がゴールした後、私と緑谷少年はガチでやればいいしな!我ながらナイスアイデアだ!」

「そういうことじゃねえんだよオールマイト!!」

かっちゃんはまたしてもオールマイトの話を遮り叫ぶ、プライドが高いのは知っていたけどあの丸くなったかっちゃんがここまで食い下がるのは珍しい…この危険性を理解してないはずがないのに。

 

「俺はな―――」

「かっちゃん、もうやめよう。実は僕もオールマイトと同じ事を考えてたんだ、この闘いはかっちゃんには危険すぎる。もしかしたら怪我じゃすまない、命を落とすことだってあるかもしれないんだ!僕はかっちゃんを―――」

「――デク!!てめえもなのか!?わかっちゃいねえよお前も、オールマイトも!!」

僕がオールマイトに賛同してかっちゃんを止めようとするも、かっちゃんはそれにすら突っかかってくる。

 

どうしたんだよかっちゃん…こんなに言ってるのにどうして。なにがかっちゃんをそこまで意固地にしてるんだ?

 

「ホントにわかってねえな……俺だってなぁこの闘いがやべぇってことぐらい理解してるよ!」

「でもそれならなんで……」

「なんで?なんでだと、てめえ!!俺は!お前の相棒(サイドキック)だろうが!!俺はあの時あの校舎前で決めたんだよ!それは()()()じゃなくて()()()から俺はお前の相棒(サイドキック)になったんだ!!」

かっちゃんはキレながら僕の胸ぐらを掴んで話を続ける。

 

「一緒に闘えば命が危ない?当たり前だろうが!俺らが成るのはヒーローの頂点だ、命のやり取りだって何度となくやることだろうよ。でもなあ俺はこの試験の…いやこの雄英で過ごすことだっておんなじ覚悟でやってきてんだよ!

それにてめえが俺に教えてくれたんだろうが!“ヒーローはいつだって命懸け”ってなぁ!ちげえかデク!!?」

かっちゃんの言葉に僕とオールマイトは目を見開く。

 

ヒーローはいつだって命懸け、それは僕がオールマイトから受け継いだ教えだった。

 

かっちゃんは僕を軽く突き飛ばして胸ぐらから手を離した。そしてすぐに僕の手を握る。

 

「なあデク、俺の手は震えてるか?俺がビビっちまってて闘えねえように見えるか!?あの時から俺はずっと…!お前となら死ぬ覚悟だってできてんだ!!」

汗ばんだかっちゃんの掌から伝わってくるのは熱い情熱、そして強い強い意志だった。

 

「俺はオールライトの相棒(サイドキック)、ダイナマイトだ!やろうぜデク!二人でオールマイトに勝つんだっ!!」

かっちゃんは僕の目を見据えて真剣な眼差しで訴えてくる。

 

「ごめん……かっちゃん――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――僕が間違ってたよ、危ないからって理由で君と一緒に闘わないのは違うね。かっちゃんは僕の相棒(サイドキック)なんだから…一緒にやろう!!」

「デクぅ!」

「オールマイト……」

僕は拳を合わせたあと、オールマイトの方へと二人して向き直る。

 

「HAHAHA!!……すまなかったな爆豪少年!私は君の覚悟とその想いを軽く見ていたようだ、これでは教育者としてはまだまだ三流だな!いいよ、二人で私を倒しに来るといい。

―――但し…やるからには私も本気でやる、手加減も余力も一切無しで全力で君達を倒しにいくから……そのつもりでかかってこいよ!未来のトップヒーロー達!!」

オールマイトは威圧感を全開にして宣戦布告する、だがそれに呑まれる僕たちじゃない。

 

「いこう、かっちゃん!」

「ああ、いくぜデク!」

「「―――二人でオールマイトに勝つッ!!」」

 

 

 

―――僕らは前世と変わらず二人でオールマイトに挑む。でも前世とは違い、僕らにはヒーローと相棒(サイドキック)という確かな絆を持っていた。

 

 

 

 

 

――――そういえば前に本で読んだことがある。超常黎明期よりも遥か昔、ヒーローがまだ空想の存在だった頃の話。

 

その頃の相棒(サイドキック)ってのは今のプロヒーローの部下みたいな意味合いじゃなくて、主人公(ヒーロー)と対等な関係で肩を並べて立つ―――相棒(パートナー)だったらしい。

 

 

 

 

 




二人で立ち向かう、オールマイトに!!―――


もう50回も投稿してたんですね、長いようなあっという間だったような。
ここまで読んでこのSSを読んでくださりありがとうございます!お楽しみいただけましたか?僕は書いてて楽しかったです!!

次回もよろしくお願いします!

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