デクのヒーローアカデミア 再履修!【完結】 作:くろわっさん
お待たせしてます、ゆっくりでも完結させるまでは頑張ります!
Mt.レディの
それはオールマイト
『さあ、数年ぶりの開催となったオールマイト杯、今回も審判を務めさせていただくことになりました、サーナイトアイです。私からルールを説明させていただきます』
オールマイトの宣言と入れ替わるように話始めたのは審判服姿のサーナイトアイだ、あなたもそっち側なのか…!
『近接格闘ヒーローナンバーワンを決めるこのオールマイト杯。真っ向から殴り合い、叩き潰して勝ち進む、まさに漢の闘いの祭典!故にルールは3つのみ!
ひとつ!己が肉体を持って相手を打ちのめすこと。遠距離攻撃などもっての他ァ!
ふたつ!リングから出ないこと。自ら離れることはおろか、相手に弾き出されるのも許されない!闘いの場に留まれない者に勝者の資格などありはなしない!
みっつ!降参を認めること。相手の力を認め、己の未熟さを認めることもまた漢ォ!相手の弱さを認められないものは漢に在らず!!』
サーナイトアイは普段とは違うテンションで声を張りながらルールを説明していく、なるほどこの催しの趣旨とルールはわかったぞ!問題はこの場に僕が呼ばれた理由なんだけど……
『そしてこの八名から勝ち上がった一名のみが―――最強にして最高!無敵の絶対王者オールマイトへの挑戦権を得ることが出来るのです!!
その頂上決戦を制す者……それはすなわち最強の近接格闘ヒーローとなるのです!
さあ血肉を沸かせろ!その力を示せ!今宵、最強に牙を突き立てる獣となれ!英雄を名乗る戦士達よ!!』
サーナイトアイは全身を使って感情を身ぶり手振りで爆発させながら言葉を締めくくった。
あれだな…サーナイトアイは役に入り込むととことんやりきるタイプだよな、いかにも日本人らしい。
僕がこの場にいる理由…皆に僕の強さを見せつけるというオールマイトの言葉……なんだ、超
勝ち残って示せばいいんだ、僕の強さを。この場の皆に、サーナイトアイに……そして闘って、示せばいいんですよね、オールマイトに!!
リングの設営のため僕たち挑戦者一同はがらがらの観客席へと移動する、こんな一大イベントだというのに観客と思わしき人は極僅か、テレビカメラも1台たりともない。
自他共に認めるオールマイトマニアの僕がこの激アツイベント知らなかったのはこの徹底した秘密主義が原因だったのか!だって10回もやっていたのに噂すら聞いたことがなかったんだ、この僕が!くそぅ…いつからやってるのか知らないけどもう一度過去に戻って最初から全部見たい…!!
「おい新人、大丈夫か?すげえ顔になってんぞ、緊張してんのかそれ?」
独りで思考の中で悔しがっていると隣に腰掛けてきたヒーローに話しかけられた、どうやらめちゃくちゃ顔に出ていたらしい…恥ずかしい!
「あっ、デステゴロ…さん。大丈夫です、ちょっとした持病みたいなものなので」
「そうか…大変だな…あー、確かMt.レディのとこの相棒だったよな?現場で何度か顔を合わせてたと思ったが、デステゴロだ。よろしくな」
「正確には相棒見習いですけどね、オールライトです。改めてよろしくお願いします」
僕は挨拶をしながらデステゴロと軽く握手をする、彼の言葉の通りだがMt.レディと活動地域が近いため互いに現場で見かけたことがあったのだ。
「ここにいるヒーロー達はどういう基準で集められてるんですかね?近接格闘ヒーローの上位陣…?とはまた違いそうですし」
「聞いた話だとオールマイトが闘ってみたいヒーローを独断で決めてるらしいぞ。前回は五年前だったか…?俺もまだ参加2回目だから偉そうなこと言えないが」
僕の疑問にデステゴロが飄々と答えてくれる、完全にオールマイトの趣味で開かれてるのかコレ…!だから収益を無視した運営してるんだな。
「Mt.レディは呼ばれてないんですね、期待の新人であんなに分かりやすい近接パワータイプなのに?」
「サーナイトアイが言ってたろ?漢の祭典だってな。それにあのリングはアイツには小さすぎるだろ」
デステゴロが軽く笑いながらそういって、小型の重機によって運ばれてきたリングを指差す。
運ばれてきたのは高さ1メートル ほど、4本のコーナーポストとそれを取り囲むロープが張られた定番のリングだ―――但し、大きさは15メートル四方で普通の倍くらいあるし、ロープはロープじゃなくてどうみても鉄柱だし、コーナーポストも金属剥き出しだし、
殴り合うには広すぎるが、僕たち個性を持った超人達にしてみればあのリングは確かに狭いな……それがMt.レディみたいな個性なら尚更ってわけだ。
「だから今回の新顔はお前とあと一人、あの金髪のバイザーのヤツだな。見たことねえが…お前、知ってるやつか?」
「ああ、よく知ってますよ彼は―――」
『お待たせ!対戦の組み合わせのくじ引きが終わったぞ!それではモニターをどうぞ!!』
デステゴロの質問に僕が自信ありげに答えようとした矢先、オールマイトの声が辺りに響き皆の視線がリングの上に吊るされた大型モニターへと移る。
もう一人の新顔、それはトーナメントで僕の真逆にいるルミリオン……ミリオ先輩だ。
先輩もここに呼ばれていたなんてな…勝ち残ってくれば準決勝で闘うことになるのか。いや気が早いな、まずは僕が一回戦を勝ち抜かないと!
「まさか初っぱなからお前と当たるなんてな、知った顔だからって手加減はしねえぞ?」
「まさか、僕だって全力でいきますよ!よろしくお願いしますね、デステゴロさん」
隣に座るデステゴロは不敵な笑みで話し掛けてくるが僕も負けじと笑顔で挨拶を返した。負けるわけにはいかない、僕はオールマイトに挑まねばらないのだから!!
『さあ早速、一回戦第一試合を始めると致しましょう!
今回初参戦、その実力はいかに!?ナイトアイ事務所所属、ルミリオォォォンッ!!
オールマイトのアナウンスにより二人がリングへと向かう、いきなり先輩の出番か…この試合が祭りの始まりを飾る。
『さあさあ両者揃いました!それではいきましょう!!レディィィイ!―――』
「待ったぁぁぁあ!!!」
リングに選手が揃い、サーナイトアイが開始を告げようとした瞬間、闘技場の大扉が蹴り開かれて待ったがかけられた。
「オールマイトォ!なぜ今回も俺…いや私を呼ばないのだ!!貴様を倒すのはこの私以外いないだろうが!!!」
現れたのは黒を基調とした炎柄の覆面を被った身長190センチオーバーの筋肉質の大男だ、ちなみにマスクやコスチュームの端々から炎が漏れている。
あれは!?―――
「えっ!?エンデ「このマスクド・ファイアが今回こそ貴様に挑むのだ!!」…は?」
そういいながらマスクド・ファイアを名乗る乱入者はリングに上がっていった。
「いやいや!どうみたってエン――」
『マスクド・ファイア!また君か!!呼んでもないのに現れて…毎回いったいどこから情報を仕入れてくるのやら…』
「オールマイトまで!?」
オールマイトすらその覆面男をマスクド・ファイアだと認識していた、一体なにが起きているんだ…!?
「いきなり乱入とか出端を挫かれたよね…」
「ふん!こんな新顔が出場しているなら私の方が適任ではないか!」
「なかなか言うよね」
マスクド・ファイアはミリオ先輩を指差しながら悪態をつく、ミリオ先輩もいつもの笑顔はなりをひそめて明らかに困った顔をしていた。
『言ってくれるなマスクド・ファイア、ならば倒してみるがいい…私が育て上げたルミリオンをな!』
「こいつは貴様の弟子だったか……しかしいいのかな?大怪我をしてしまうだろうよ。なにせオールマイトの雑務をやるために相棒に成ったヤツの弟子だからなぁ…事務作業でもしてたほうが身のためだぞ?」
マスクド・ファイアはサーナイトアイとミリオ先輩を嘲笑する、チラリとミリオ先輩の方を見てみると明らかに怒っているといった具合で拳を握りしめていた。
「言いたい放題言ってくれるじゃないか、だったらその身体に分からせてやるからさっさとかかってきなよ!この闘いのルールは知ってるな?まあ俺としてはあんたがルールを守らなくても全然構わないけどね!!」
「小僧…俺が誰か分からないのは仕方ないが、あまり調子に乗るなよ!!」
「いいからさっさとかかってこいよ、ビビってるのか?」
ミリオ先輩は苛立ちを隠さずマスクド・ファイアに突っかかっていく、おまけに挑発も添えて。
「ナメるなぁ!!!」
ミリオ先輩の挑発によってマスクド・ファイアは頭に血が昇ったようで、苛立ちを声に乗せながらミリオ先輩へと向かっていく。
「痛いでは済まさん!燃え尽きろっ!!!」
マスクド・ファイアは律儀にルールを守りながらも拳に灼熱を宿しながらミリオ先輩のみぞおちめがけて殴りかかった。
普段のように遠距離から牽制しつつ炎を出していればなんとでもなっただろうが…個性不明の相手に自らの個性を見せながら、しかも得意ではない接近戦など愚の骨頂。その結果は火を見るよりあきらかだ。
「……ぬ?」
「サーをバカにしたことは許せない……歯ぁ食いしばれっ!」
マスクド・ファイアの拳はミリオ先輩の腹に文字通り突き刺さり、透過によって貫通していた。ミリオ先輩は拳に力を貯めて引いており、既にマスクド・ファイアに逃げ場はなかった。
「POWERRR!!!!!!」
ミリオ先輩の拳がマスクド・ファイアの顎を撃ち抜き、そしてそのまま場外へとブッ飛ばしていった。
場外に落ちたマスクド・ファイアはすぐに立ち上がり明確な敵意を瞳にのせてミリオ先輩を射ぬく。だがその場に緊張は走らなかった、何故なら……
「貴様ぁ!俺が本気を出せば今のようにはいかな―――!!!」
彼は声を荒げながら掌をミリオ先輩にむける、しかしそこであることに気がついた。
そう、彼のマスクが先程のミリオ先輩のパンチによってほぼ脱げかけており、湧き出る炎のせいでその正体がバレそうになっていたのだ。まあ…バレバレなんだけど。
「くっ!覚えておけルミリオン!!この借りは次のオールマイト杯で必ず返す!!さらばだっ!!」
彼はそれだけ言い残すと素早くマスクを被り直しながら豪快に扉を蹴り開けて去っていった。
マスクド・ファイア……一体何デヴァーだったんだ……
騒動がひとしきり片付いた後、直ぐに第一試合は開始したのだが、決着はすぐに着いた。
「勝者、ルミリオン!」
審判であるサーナイトアイのコールが響く、リングに立っているのは息を切らしながらも無傷のミリオ先輩だけだ。
一流ヒーローのガンヘッドをもってしても、ミリオ先輩の透過を捉えることができなかった。無論ガンヘッドが弱いわけではない。
ガンヘッド個性“ガトリング”は攻撃的だが防御には転用し難い、それに今回のルールは遠距離攻撃禁止…すでに長所を潰された状態で挑んでいたのだから仕方ないと言えるだろう。
ダメージを負わないミリオ先輩とあの筋肉に殴られながら透過を攻略しなければならないガンヘッド、その結果は攻略前に力尽きてしまったと言うわけだ。
しかしガトリングをパイルバンガーのように撃ち込むあの必殺技、ヒーロー活動ではみたことなかったけどかっこよかったなぁ!
相手が無敵の防御を持つミリオ先輩でなければかなり強力な技だった、僕だって無傷では済まないだろう。
「アイツの個性は無敵に近いな…といっても万能じゃ無さそうだし、研鑽の結果だろうな。サーナイトアイも恐ろしい弟子を育てたもんだぜ」
デステゴロがミリオ先輩を見ながら呟く、流石にプロは鋭いな。僕なんか最初見たときは絶対無敵の個性だと思っていたのに…
そうこうしているあいだに第二試合が始まっていた、対戦カードは四つ腕の任侠ヒーロー・フォースカインド 対 関西で活躍中のBMIヒーロー・ファットガムだ。
この闘いの決着もあっさりとしたものだった、一言で言うなら…相性が悪かったのだ。
明晰な頭脳でヴィランを追い詰めて4本の豪腕で仕留めるフォースカインドの戦闘スタイルがこの闘いでは全く通用しない、そして相手はあの近接格闘殺しのファットガムだ。
迂闊に手を出せないフォースカインドだったが、手を出さなければ闘いにならない。攻めに転じた瞬間、ファットガムの個性の脂肪吸着に腕が一本ずつ捕まっていき……ファットガムの勝利となった。
僕だったらどうするかな……うーん、とりあえず脂肪のほぼない関節や額に狙いを絞って高速移動してからの連打とかなら攻略できるかな?
「あれ?第二試合もう終わっちゃったの?」
「えっ!?ガンヘッド!!?」
「おう、一歩遅かったなぁ。たった今終わっちまったぜ」
僕らの後ろからひょっこり顔を出したのは先程まで傷を負っていたはずのガンヘッドだ、しかもほとんど無傷の状態で。
「怪我は大丈夫ですか!?かなり殴られてたはず……?」
「ああ、君は新顔の…オールライト君だね。なら知らなくて当然か、この大会では敗者は直ぐに治療してもらえるんだよ。
リカバリーガールって知ってる?あの修繕寺一族の中に格闘ヒーローマニアがいてね、この大会を観戦するために治療を一手に引き受けてくれてるんだ。
だから僕は今こうしてピンピンしてて、ここに戻ってきたわけなんだね」
ガンヘッドはピースサインを作りながら軽い口調で説明をしてくれた、てか喋り方かわいいな!意外なプロヒーローの一面だ。
「あれ?でも試合も終わったのにどうしてここに?」
「この場にいるならわかるんじゃない?見たいでしょ、ここにいるヒーロー同士のガチンコ!
だから僕らは参加するし闘う、それでこうして他の人と話ながら熱い闘いを観る!最高だよ、オールマイト杯は…!」
ガンヘッドは少し興奮ぎみに語る、そりゃそうだよな…こんな最高の大会に出られるし観れるんだから、そこはみんなも僕も変わらないじゃないか!!
「それもそうですよね……失礼しました!変なこと聞いてすみませんでした…」
「いいよ、君も緊張してそこまで余裕ないんだろし。でも来た以上は全力で闘って、全力で楽しんだ方がいいよ。先輩からの老婆心と思って聞いといて…っと、さあ次の試合が始まるよ」
僕はガンヘッドに謝ってから促されてリングの方へ共に視線を移した。
「第三試合!ワイルド・ワイルド・プッシーキャッツ所属、闘う漢女ぇ!虎ぁ!!!!VS 本年度ヴィランっぽいヒーローランキング第三位!そして今大会の優勝候補、ギャンーーーグッ!オルカァ!!!」
舞台に上がった両者をサーナイトアイがアナウンスし、闘いの火蓋が切られた。
個性“軟体”を持つ虎と個性“鯱”を持つギャングオルカ、地上と海の虎の対決はまさに技と力の応酬。近接格闘ヒーローが集うオールマイト杯を象徴する闘いだった。
そして“柔”と“剛”のぶつかり合いを制したのは――――
「勝者、ギャングオルカ!」
―――剛の方だ。闘いの前に水を大量に浴びたギャングオルカはそれはそれは強かった、ナンバーテンヒーローの名は伊達ではない。
超音波という最大の武器を封印してもなお脅威だったのはあのタフネスだろう、鯱の特性である分厚い脂肪が打撃の威力を霧散させていくのだ。
それに加えて野生の獰猛さを持っている、僕も身をもって知ってるが…あれは恐ろしいものだ。
そしてギャングオルカが勝ち進んだということは…次は僕が闘う番だ。
「一回戦最終試合!警戒色の鉄腕は相手への警告、筋骨隆々のパワーヒーロー!デステゴロォォ!! VS 新進気鋭!正体不明のニュービー相棒、オーールライトォ!」
サーナイトアイのコールが響くなか僕らはリングの上で向き合った。
「さあ、あのパワーを俺に見せてみろよ新顔!」
「いきますよ、デステゴロ!」
デステゴロの煽りに対してファイティングポーズで返事をする僕、互いに準備万端だ。
「レディィィイ!!ファイ!!」
サーナイトアイの合図と共に駆け出す僕とデステゴロ、互いの個性は既に単純な増強系というのは割れているため正面からかち合うのみだ。
まずは様子見だな…それに一回戦で消耗し過ぎると後が辛くなるだろう……ならば!
ワン・フォー・オール・フルカウル―――55%!!
「スマァッシュ!!」
僕は姿勢を落としながら右手で振りかぶるように拳を放った。
しかしその拳はデステゴロの大きな左掌に握り込まれて止められてしまった。この握力…尋常じゃないぞ!?
「なめてんじゃねぇぞ!新人!ここは漢の闘いの場ってんだ!!」
デステゴロはそのまま左腕を振り下ろす、それに振り回されて僕は体勢を大きく崩してしまった。なんてパワーだ!これがデステゴロの個性による力なのか!?
「それに前から個人的に気にくわねえことがある―――」
デステゴロの右手が僕の頭をヘルメット越しに鷲掴みにして自らの方へと引き寄せる、その凄まじいパワーの前に体勢を崩した僕は
「―――
そしてデステゴロのヘッドバッドが炸裂した、僕の
衝突によって生み出された衝撃は弱い方へと流れていく…つまり僕の方だ。
ブッ飛ばされていった僕は鋼鉄のポールに直撃して背中を打ちながら止まった。
くそっ…頭がフラフラする……視界もひび割れたバイザーで見えにくいし、ヘルメットも今のでかなり歪んでしまった。
だが今のは僕が悪い、様子見だとか後のことを考えてとか言って自分の力をセーブしてしまったからだ。
「どうした、もう終わりか?それともソイツが壊れちゃ闘えねえか!?」
「まだ…終わりませんよ…!今度はちゃんと見せますよ、僕の本気のパワーを!!」
デステゴロに煽られながら僕は立ち上がる、そう手を抜いてはいけなかったんだ。これは漢の闘いなのだから…!
ワン・フォー・オール、フルカウル―――85%!!!
「なら――やってみろよ!」
「言われ――なくともぉ!!」
既に僕に迫っていたデステゴロは両腕を広げて僕を捉えるために振り下ろしてくる、恐らく得意の掴み技に持っていくためだろう。
だが僕も負けじと両腕を広げて正面からデステゴロの掌を掌で受け止めて組み合う形になった、ここからはパワーとパワーのぶつけ合いだ!!
85%の力を持ってもデステゴロをねじ伏せることが出来ない、それほどにデステゴロのパワーも強大なのだ。身体一つ、拳を武器にこの業界を生き抜いているプロヒーローはやはり強い。
ならば他の手を出すべきだが、生憎両腕はうまってしまっている。かといって蹴りを放つために脚を浮かそうものなら重心が崩れてまたやりたい放題されてしまうだろう。
―――なら頭を使うしかないよな!!
「その面、拝ませてもらうぜ新顔!!」
僕が頭を振りかぶると同時にデステゴロもその頭を振りかぶっていた、考えることは同じだったようだ。
振り下ろされた互いの頭と頭がアメリカンクラッカーのようにかちあたり、弾けた。
衝撃でバイザーはバリバリにひび割れて最早前が見えない、しかしやることは変わらない。
正面からデステゴロを打ち破る!!
「バーモントォ!スマァァッシュ!!!」
全身のすべての力を頭に、いや額に乗せて振り下ろす、それに合わせてデステゴロのヘッドバッドも迫る。
三度の衝突、ついにヘルメットが耐えきれずに砕けて割れる。だが僕のヘッドバッドは止まらない。
額と鋼鉄のヘッドギアがぶつかり甲高い音をたてる、その正面衝突の軍配は僕に上がった。
デステゴロのヘッドギアが真っ二つに割れ、額から血が滲むが僕はまだ止まらない。
僕の額とデステゴロのさらけ出された額がかちあたり、それが最後の衝突となって僕は遂に止まった。
「てめえは…ヘドロ事件……の―――」
デステゴロはヘルメットが割れて露になった僕の顔を見て驚愕しながらその場に崩れ落ちていく、そしてリングに立っているファイターは僕だけとなった。
「デステゴロ、ダウン!勝者、オールライト!!」
サーナイトアイのジャッジが下されて右手を掴まれたときにようやく自分が勝ったことを実感した。
勝った…勝ったぞ!プロヒーローに、あのデステゴロにだ!よし……先ずはひとつ目の関門突破だ!!
僕が勝利を噛み締めていると、リングの上のモニターにマイクを持ったオールマイトが映し出される。
『一回戦の全ての試合が終了、今回も熱い闘いが繰り広げられて…あぁ私も早く闘いたくてウズウズしてきたぁ!
二回戦に勝ち進んだのはルミリオン、ファットガム、ギャングオルカ、オールライトの四名だぁ!さあさあ私の対戦相手は誰に成るのか!?』
オールマイトは選手一同に目を向けながら話していく、そんなオールマイトを見つめているとモニターの中のオールマイトと目があった気がした。
『勝ち残って私の元にきたまえ――――』
オールマイトがそう言い残すと、モニターの映像は消えてオールマイトの姿が見えなくなる。
あれは……僕に対する言葉で間違いないだろう。
了解、オールマイト。僕のこれまでの鍛え上げた力をこの場にいる全ての人に…そしてなにより貴方に見せて、勝ち残って―――闘いましょう。
闘いは二回戦へと加速していく!―――
待っていて下さりありがとうございます。
マイペースな拙作ですが、よかったらこれからもお付き合いのほどよろしくお願いします!