デクのヒーローアカデミア 再履修!【完結】   作:くろわっさん

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今回、うっすーいカップリング要素的なものがあります。

苦手な方は注意してください!




恋せよ乙女!アット・レクリエーション!

僕は騎馬戦を綱引きに変えてぶっ壊し、その勝者はハチマキを最後まで掴んでいた17名に決定した。そのあと心操君と話し合いをして、彼を筋肉へと導くことができた。彼が将来どんな筋肉になるのか、いまから楽しみだ!

 

 

 

 

―――心操君と別れてから僕は食堂へと向かう、少し遅れたこともあって大変な混み具合だ。

僕はなんとか食事をゲットして、食べるための席を探す。

 

この人混みのなか、席なんて空いてるのか?立って食べようかな、いや…空気椅子もありだな!

 

そんなことを考えていると遠くから声をかけられる。

 

「おーい、デクさーん!こっちこっち、席とっといたよ!」

「麗日さん、ありがとう!それにかっちゃんと飯田君もありがとう!」

「おっせえんだよデク!メシが冷めちまうじゃねえか!」

「水臭いことをいうな、緑谷君!友達じゃないか!」

麗日さんとかっちゃんと飯田君が席をとって待っていてくれた、結構待たせたと思うのに…僕はいい友達を持ったな!!

 

そうして僕らは雑談をしながら昼御飯を食べ始めた、そしてそろそろみんな食べ終わろうかという頃に、あの人がやって来た。

 

「おお!筋肉の人!さっきは私のベイビー達が目立つのに一役買ってもらってありがとうございました!いやぁ企業の人達も私たちから目を離していられないくらい目立ってましたからね!!それにしてもスゴいですねぇ筋肉の人、個性もスゴいんですけど、私が気になるのはこの筋肉達ですよ!どうなるとあんなパワーになるんですかねぇ、気になりますねぇ!フフフフフ」

発目さんが突然現れて一気に喋りだし、そして興味津々に僕の身体に触れてくる。

 

「普通じゃないですよねぇ!この筋肉に私のベイビー達が加われば…!おお、いいですねえ、いいですねえ!私、楽しくなってきましたよぉ!!今度もっと詳しく見せてくださいよ、この筋肉!そして私のドッ可愛いベイビーが―――」

「ちょっとストーップ!べたべた触りすぎ、デクさん困ってんじゃん!―――そんなん…ずるいやん

発目さんは一人でどんどんとヒートアップしていき、僕の大腿筋や上腕二頭筋や大胸筋などさまざまな筋肉に触れてくる。そして麗日さんが叫びながらそれを止めた、最後にゴニョゴニョいっていたが、きっと発目さんへの文句だろう。

 

いいぞ!助かったよ麗日さん!筋肉を褒められるのは嫌いじゃないがあんなにベタベタと触られて寄られるとこっちが恥ずかしくなってしまう!!

 

「それは失礼しました!じゃあ続きは工房でお願いしますね、あれやこれやと調べたいんで!!それと……今度はゆっくり見せてくださいよ?」

発目さんは自分のペースで言いたいことを言ってくる、僕の都合はお構い無しって感じだ。でも首を少し傾げながら見上げてくる姿は、年頃の女の子って感じで可愛らしい…!

 

「そんときは私もいくから……いいね、デクさん…?」

「――っ!?はい!どうぞ!!」

麗日さんが僕の肩を掴み、冷たい視線を浴びせながら聞いてくる。僕は反射的に答えてしまった、僕がなにしたってんだよ……女の子ってわからない!

 

「あっ緑谷君じゃん!お疲れ~、やっぱり優勝宣言は伊達じゃないねぇ、最後のあれスゴすぎだよ!」

「拳藤さん、お疲れ様!そんなこと言いながらも拳藤さんも勝ち残ってたじゃないか、おめでとう!」

B組の拳藤さんが僕に話しかけてきた、僕は褒め言葉?を受け取りながら、拳藤さんを讃える。彼女は巨大な掌で最後までハチマキを掴んでいた、汎用性の高そうな個性だ!

 

「ありがと、まあ個性の相性が良かったからね。あっそうだ、障害物競争のときは助けてくれてありがとうね!じゃなきゃあそこで終わりだったし」

「ああ、そのことなんだけど……ごめん!どこで助けたのかいまいち覚えてないんだ!」

「ええっ!?そうなんだ……ザ・フォールのところだよ、綱から落っこちたとこを拾ってもらったんだけど…」

「ああ!あのときの焦り気味の!思い出したよ、忘れててごめんね……」

拳藤さんと僕の間になんとも言えない空気が流れる……お互いに困惑した顔で苦笑いを浮かべている。

 

どうしようこの空気、かっちゃんが騒いでくれれば流れが変わる―――ってかっちゃんいないじゃん!いつの間に居なくなったんだ!?くそっ頼みの綱が!!

 

「私、あんな風に男子に抱えてもらったのって初めてだったのにな…そっか」

「えっと、その…ごめん……」

再び僕と拳藤さんの間に気まずい空気が流れる……

 

「あ、私も抱き抱えて助けてもらいましたよー」

「えっ!?貴女もそうなの!?」

「へぇ、デクさんは障害物競争しながら……二人も女の子を抱いたんだね」

「言い方ぁ!!確かに二人とも両腕使って抱き抱えたけどさ!」

発目さんが拳藤さんに同調して言った言葉に、麗日さんが誤解を招くようなあらぬことを言い出す。間違ってないけど、それは間違っているよ!

 

「やりますねぇ筋肉の人!英雄色を好むってやつですね!」

「緑谷君ってそういうの盛んなんだな、私は全然だから……」

「いやいや!勘違いだから!!全然僕、そんなことないからね!」

私も抱き抱えて助けられたことあるし……負けてない、私も負けてない……

発目さんがその発言を掘り下げて、拳藤さんが乗っかる。僕はそれをすぐに否定するが、場は収まりそうにない。麗日さんもぶつぶつなにかを言って自分の世界に入ってしまっている…!

 

「ふーん、でもまあ女の子にあんなことしたんだから、責任とってもらおっかな?」

「ええ!?責任!?―――いやでも、確かに先生に助けろと言われてたとはいえ、ああいう形で女子に触れてしまったということは何らかの責任が発生するのか?つまりはそれを僕自身が選んだ行動の結果だから、これはプロになっても言えることかもしれない……なるほど、先生やオールマイトはそこまで考えて今回のハンデを言い渡していたのか……」

「あの、緑谷君?大丈夫?ジョーダンだからね?」

拳藤さんが言った責任という言葉に、僕は一人でぶつぶつと考え込む、すでに周りの声は聞こえなくなっていた。

 

「あの!緑谷君!!」

「――ハイ!僕にできる範囲で責任を取らせていただきます!!」

「いや…ジョーダンだから、なんかごめん。そこまで真面目なタイプだと思ってなくて」

「えっ、あ、ジョーダンね。ふぅ、かなり本気で考え込んじゃったよ。でも嫌な思いさせちゃったのはホントのことだし、僕にできることならなにかしたいんだけど……」

「いやいや、別に嫌な思いなんてしてないから!むしろ助けてもらってありがとうって感じだし、初めての経験で良かったていうかなんていうか……」

どうやら責任というのは冗談だったらしいが、納得がいかなかった僕は提案をする、拳藤さんは顔を少し赤くしながら僕の考えを否定してくる。お互いにやや俯きながらチラチラと目を合わせながら、またも微妙な空気が流れる…

 

うーん、嫌じゃなかったとは言ってくれたが顔が赤い。おそらく恥ずかしい思いをさせてしまったのだろう、なにせあの大衆の面前で人に助けてもらったのだから。なにかしらの埋め合わせはしたいんだけどなぁ……

 

「じゃあさ…今度戦い方を教えてくれない?緑谷君って近接格闘主体のスタイルじゃない?私も同じだから是非参考にしたいんだよ!」

「そんなことならいくらでも!」

「ホント!?やった!……あと迷惑じゃなきゃ他のB組連中もお願いしたいんだけど……」

「勿論いいよ!じゃあA組も何人か近接型がいるから、合同自主練といこうか!」

「お、なんだか面白そうですねぇ。私も一枚噛ましてもらっていいですか?インスピレーションの香りがぷんぷんしますよ、そういうの!」

「むむむ……近接格闘…私のスタイルじゃない……

拳藤さんの提案に僕は快諾して、トントン拍子で話が進んでいく。前世ではB組とあまり仲良くできなかったし、この機会に改善したいな!

 

「じゃあさ―――」

「こういうのはどうかな―――」

「こんな感じのベイビーなら―――」

「それだ!―――」

「むむむ……」

僕と拳藤さんと発目さんは合同自主練について話が盛り上がっていき、段々と固まって話が始める。麗日さんはその横で唸っている、そして―――

 

「ずるーい!!」

「!?どうしたの麗日さん?」

「二人ばっかりいい思いして、ずるいやん!私だってデクさんにお姫様抱っこで優しくしてもらったのに!」

「言い方ぁ!確かに入試の時に()(かか)えて助けたけども!」

「麗日さん、どうした?落ち着こ?」

「どうしました?ベイビーの話続けましょうよ!」

突然麗日さんが騒ぎ、またも誤解を招くようなことをいう。拳藤さんが止めに入る、発目さんは平常運転だ、ぶれないなこの娘!てかいい思いってなんだ……

 

「私だってデクさんになんかしてもらいたい!ねっいいでしょ!デクさん!!」

「あ、うん。わかったよ、わかったから…」

「言ったね、言ったよねデクさん!絶対だよ!」

「はあ……こりゃ私の入る余地ないな……」

麗日さんは興奮しながら僕に言い寄ってくる、近い!近すぎるよ麗日さん!もっと距離感大切にしよっ!?あと拳藤さんはどうして諦めるんだそこでぇ!止めるの手伝ってくれてたんじゃないのか!?

 

「じゃあ、あの……その、私と……」

「ん?なにかな?麗日さん」

「私とデー―――」

「ピンポンパンポーン、午後の競技10分前になりました、選手の皆様は競技会場へ移動してください。繰り返します……」

麗日さんは顔を赤くしながら、僕になにかを言おうとするが、そのタイミングで昼休憩の終わりを告げる放送が流れた。どうやらチャイム(ゴング)に救われたようだ!

 

「さあ、いこうか!みんな!ほら麗日さんも」

「よし!午後の最終競技も頑張ろうっと!」

「フフフ、私のベイビー達のアピールタイムですよ…」

「あー、そんなぁ……」

みんなが立ち上がり、会場へと向かい始める。僕もなにか言いたげな麗日さんを呼んでから会場へ向かおうとする。

 

「そうだ、麗日さん。今度の休みに出掛けようか、さっきの話はそこでってことで!どうかな?」

「えっ!?いいの?」

「もちろん!麗日さんにはいつも助けてもらってるし!ダメかな…?」

「ダメなんてありえん!よろしくお願いします!……まさかデクさんからデートに誘ってくれるなんて…やった!

麗日さんも、情緒と機嫌を直してくれたみたいだ。女の子がなにか言いたげなときはお出掛けに誘いなさいっていう、あの人から前に聞いたアドバイスがうまく役に立ったぞ!

 

そうして、ご機嫌な麗日さんと共に会場へと向う。途中で麗日さんは1-A女子一同に呼ばれて別れた、先に行って待ってよう―――

 

 

 

 

―――最終種目の前にレクリエーションがあるため、ほとんどの生徒が会場へと集まる。そして最後に1-A女子一同が現れたのだが―――

 

「〝ん?アリャどうした!?A組女子!?〟」

「〝なにやってんだ…あいつら……〟」

プレゼントマイクが驚きの声をあげ、相澤生徒が呆れる。そう、1-A女子一同は今回もまんまと峰田君と上鳴君に騙され、チアリーダーの格好をしていた。八百万さんが抗議の声をあげているから間違いない、でもみんな似合ってるよ!

 

「〝ちょっとしたサプライズがあったが、気を取り直して……レクリエーションが終われば最終種目、勝ち残った17名からなるトーナメント形式の一対一のガチバトルだっ!!〟」

プレゼントマイクが最終種目を発表する。あれ?17名だとひとり余らないか?どうするんだろう…?

 

「さあ、組み合わせを決めのくじ引きを始めるわよ!あっ、緑谷君は特別シード枠だから引かなくていいわ!!」

「〝さっきの大暴れを考慮させてもらった、そのほうが合理的なトーナメントになるからな〟」

ミッドナイトと相澤先生がそう説明する。なるほど、確かにやり過ぎたとは思うし、そういう扱いになるのか…そこまで合理的か。

 

「―――さあ、みんな引いてもらったところで、組み合わせはこうなりました!」

今回は青臭いくだりもなく、淡々とくじ引きが進んで、最後にミッドナイトがモニターを鞭で指し示す。

 

 

 

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「「「特別シード枠、特別過ぎんだろ!!!」」」

みんなの声が重なった。

 

いくらなんでも特別過ぎやしないか!?いきなり決勝って!!やり過ぎだろ、どうなってんだ!??

 

「いくらなんでも優遇されすぎだろ!オイラ納得いかねーぞ!」

「そーだ!不公平すぎんだろ!逆に緑谷が可哀想だ!!」

峰田君と切島君が抗議の声をあげる。逆に可哀想ってなんだよ…

 

「〝じゃあ聞くが、一回戦からあの化け物(緑谷出久)と戦いたい奴はいるか?〟」

「「…………」」

「なんか言ってよ、みんな!!」

相澤先生の言葉にみんなが黙り込む、なんてこった!ここまで警戒されてたなんて…!

 

「〝というわけで緑谷。解説席に座って、最後まで大人しくしてろ。お前が入ると競技が壊れる、俺達の推測が甘かったせいだな、すまん〟」

「いやちょっとま―――」

「〝異論は認めん……理由は自分の行動を省みろ、わかったな?〟」

相澤先生に抗議しようとするも、目で殺される。なんでこの距離で威圧感を放てるんだ……これが抹消ヒーローの実力!

 

「爆豪君なら文句いいそうなのに、なんも言わなかったね」

「俺とデクがやるなら、そこが事実上の決勝戦だからな。シード枠で決勝でもなんの問題もねぇ」

「すごい自信だね…」

かっちゃんと麗日さんがそんな会話をしている。君たち一回戦から当たるのに普通に話すのね。

 

「〝さあ、組み合わせも決まったし、こっからはみんな楽しく競おう、レクリエーションの時間だ!!〟」

プレゼントマイクが告げるレクリエーションの開始、僕の抗議の時間も終わったよ、ちくしょう!

 

そうして、僕の抵抗もむなしく、レクリエーションが始まったのだった―――

 

 

 

 

「〝レクリエーション第一種目は大玉転がしだ!参加チームも出揃ったみたいだぞ!そして注目は勿論こいつら!緑谷率いるチーム筋肉同盟だぁ!!〟」

「〝緑谷、ほどほどにな〟」

プレゼントマイクが注目を集め、相澤先生が名指しで注意してくる。信頼ないなぁ…

 

「よし、いくよ。障子君!砂藤君!」

「ああ、見せてやろう!」

「俺達のコンビネーションってやつをな!!」

僕ら筋肉同盟は円陣を組んで気合いをいれる。僕らが来たってことを全国に知らしめてやるんだ!そう、筋肉の力を……!

 

「〝さあいくぜ!大玉転がしぃぃ!スタートォ!!!〟」

各チームが三人ないし四人係りで大玉を転がしていく。

 

「〝おーっと!緑谷チームはまだ動いていないぃ!?これはハンデか?それとも余裕なのかぁ!?〟」

「〝いや、よくみろ!障子と砂藤は玉を転がさずに走り出しているぞ〟」

相澤先生の解説通り、スタート位置には僕と大玉だけが残り、二人は持ち場に向かって走り出す。そして二人が位置についた、作戦開始だ!

 

「いくよ!障子君!スッマァァッシュ!!!」

僕はそう叫んで、カーブの前で待ち構える障子君へ大玉を吹き飛ばす。

 

「〝緑谷、大玉を超パワーでぶっ飛ばしたぁ!その先にいるのはチームメイトの障子だ!どうするつもりだぁ!?〟」

 

「任せろ緑谷!うおおおお!!いけぇ!!」

障子君は僕から高速で転がされてきた大玉を六本の腕を巧みに使って、勢いを殺さないまま絶妙な回転を加える。そして回転を加えられた大玉は―――

 

「〝なんとお!障子が触れた大玉がひとりでにカーブを曲がっていくぅ!!なんという絶妙な回転だーー!他のチームをごぼう抜きにしていくぞ!〟」

きれいにカーブに沿って進んでいく僕らの大玉、そしてそのカーブの終わりには砂藤君が待ち受ける。

 

「しゃあ!シュガー・ドーーープッ!!」

砂藤君は個性を全開で発動し、高速かつ超回転の大玉をがっつりと抱え込む。そして残りの直線を猛スピードで大玉を転がしていく。

 

「〝チーム筋肉同盟砂藤!独走状態でいまゴール!!なんと蓋を開けてみれば筋肉野郎どもの力押しが圧倒的な差で一位を獲得したぁ!!〟」

「〝緑谷ぁ…いや今回はチームだし、多目に見てやるか…〟」

 

「やったぁ!!すごいよ二人とも!」

「よくやったぞ!砂藤!緑谷!」

「やったぜ!二人とも!」

「「「ナイス・マッスル!!」」」

僕らは互いを讃え合い、最後に三人で決めポージングを決める。筋肉最高!!

 

こうして僕ら筋肉同盟は全国にその名を刻んだのだった。その後も競技はどんどんと進んでいく―――

 

 

第二種目、玉入れ―――

 

「〝おおお!緑谷、早く動きすぎて残像が見えるぞ!しかもそれら全部が玉を投げていやがるぅ!〟」

「〝ついでに投げた玉は全部籠に入ってるな、コントロールも正確だ〟」

「緑谷の近くに玉がねえぞ!更地になっちまった!」

「玉入れって響きがなんかエr――あべしっ!」

「汚らわしいわ、峰田ちゃん」

 

 

 

第三種目、大綱引き―――

 

「〝えー、運営委員会からの通達だ!1-A緑谷出久は出場を禁止する。とのことだ!みんな安心して、ドシドシ参加してくれよな!〟」

「ちくしょう!だめだったか!!」

「〝当たり前だろ緑谷……なんでいけると思ったんだ〟」

 

 

そして第四種目、借り物競争―――

 

「よし、これには出場できたぞ!」

「よかったな、緑谷!」

「オイラも頑張るぜ!女子のなんか身に付けてるものとか借りたいなぁ……」

「最高にイカれてんな、峰田」

そんな会話をクラスメイトとしながら、スタート位置につく。

 

「〝それでは借り物競争、最終レース!よーい、スタート!!〟」

プレゼントマイクの合図でみんな一斉に走り出す、一番乗りでお題箱に辿り着いたのは僕だ!

 

「なにが出るかな―――っと、こっ…このお題は!?」

僕はカードを一枚とってお題を確認する、そしてその内容に驚愕したのだった。

 

「これに当てはまるのは一人しか僕は知らないぞ!急がなきゃ負けてしまう!!」

僕はそう言いながら、会場の外へと飛び出した―――

 

 

 

――― Mt.レディ side in ―――

 

「あーあ、私もデクくんの頑張ってる姿見たかったなぁ」

「まだいってんのか、警備で来てる以上はしょうがねぇだろ?」

「我もスカウトに勤しみたいのを押さえているのだ、我慢せよ」

私の愚痴に、デステゴロとシンリンカムイが正論をぶつけてくる。そういうのが聞きたいんじゃないのよ、只の愚痴なんだから!

 

「女の子の愚痴に正論とか、二人ともモテませんよ」

「そういうこといってんじゃねぇんだけどな」

「そうだったのか…だから我は女性人気がないのか……」

デステゴロは大して気にしてないようだが、シンリンカムイには刺さったらしい、ざまあないわね!レディの扱いを少しは覚えてほしいものね。

 

「しっかし、暇ですね。こんだけ厳重警戒で攻めてくるヴィランなんて―――」

そんなことを私が言ったその直後、上からなにかが落ちてきて地面が派手に土煙を立てる。

 

「敵襲!?」

「構えろ、二人とも!!」

「先制必縛!ウルシさ―――」

「ちょっとまって!!僕ですよ!!」

敵襲に構えをとったところで、煙の中から聞き覚えのある声がする。この声は―――

 

「デクくん!?」「デクか!?」

「なにやってんだ!?競技中だろ?」

「いやあ、借り物競争のお題でちょっとMt.レディに来て貰いたいんです!お借りしますね!」

目の前に現れたのはデクくんだった。デクくんは立て続けに話すと、私の手を引いて走り出した。私がお題?どういうことなの!?

 

「急にすいません、優さん。でも貴女しかいないんですよ!」

「私としては構わないんだけど、警備の方はいいのかしら……」

「たぶん大丈夫―――」

「〝さあ、B組拳藤、さらにA組瀬呂!お題のものをゲットしたようで、ゴールに向かって走り出す!!〟」

デクくんが更になにか話そうとしたところで、プレゼントマイクの実況が聞こえてくる。

 

「まずい!このままじゃ、負けてしまう!!優さんすいません!ちょっと失礼っ!よいっしょおおおおお!!!―――」

「えっ!?―――きゃあああああ!!!―――」

デクくんは焦った声を出すと、次の瞬間私を両手で抱き抱えて飛び立った。

 

 

「〝あん?上からなにか降ってくるぞぉ!?あれは―――〟」

「〝緑谷!?なんで空から降ってくるんだ……〟」

「〝誰か抱えてるみたいだぞ!そして着地だぁ!!ド派手ぇ!〟」

デクくんは私を抱えたままひとっ飛びで会場まで戻り、そしてそのまま駆け出した。なにこれ!?状況が、さっぱりだわ!?

 

「〝おーっと!緑谷がお姫様抱っこしてんのは、警備で来ているMt.レディだぁ!まあ、盛り上がってるし運営的にはオールオッケーだけどな!!〟」

「〝ほんとあいつは、なにやるかわからねえな〟」

プレゼントマイクの実況と共に会場全体の注目の的となる私達、巨大なモニターには、デクくんにお姫様抱っこされている私の姿が映し出されていた。

 

なにこれ!?デクくんにお姫様抱っこされてるのはスッゴい嬉しいし、目立つのも超好きなんだけど、こんな、こんなのって―――

 

「恥ずかし過ぎるわっ!!!!」

「〝あーー!!Mt.レディがここで巨大化ぁ!!そして文字通り緑谷を尻に敷いたーー!!!……てかこれ緑谷死んだんじゃね?〟」

私はあまりの恥ずかしさから、感情が昂って個性が発動し、巨大化してしまう。そして、デクくんをお尻で押し潰してしまった。デクくん!?死んでないよね!?

 

「〝んん!?Mt.レディが尻だけで移動しているぞぉ!?某お下品アニメのあれか?あれを習得していたのかぁー!?〟」

「〝いや、あれは違うぞ!〟」

「死んでませえええええん!!!うおおおお!!」

巨大化した私の身体が少しだけ浮いて、そのまま進みだす。そして下からデクくんの叫び声が響く。

 

「〝緑谷生きてたー!!てか巨大化したMt.レディを持ち上げてそのままゴールへ向かううう!!なんてパワーなんだぁ!〟」

「〝まったく、どこまでも規格外な奴だな、ホント〟」

「ええっ!?ええ?」

私は混乱して、動けないまま運ばれていく。

 

「〝巨大化したMt.レディの身体がコースを埋め尽くして、他の選手は先に進めてねえ!そして緑谷そのままゴール!!なんつー馬鹿げた作戦だぁ!〟」

「〝偶然だとは思うが、妨害とパワーの合わせ技。かなり合理的な作戦と言えるだろう〟」

なんとデクくんはそのまま私を持ち上げたままゴールしてしまった。

 

「あの、Mt.レディ……そろそろ戻ってもらいたいんですどぉ――おお!」

「あっ!ごめんね!―――きゃあ!」

デクくんの言葉に我に帰った私は、個性を解除して小さくなる、そしてすっぽりとデクくんの腕の中に収まった。

 

「Mt.レディのおかげで、一位を獲れましたよ!ありがとうございます!」

「そう、それはよかったわね……ところでお題ってなんだったの?」

私はまだ少しだけ呆然としながら、デクくんに尋ねる。

 

なんだろう、もしかして気になる人とか?それとも好きな人とかー?きゃあー!どうしよー!!

 

「ああ、これですよ!“自分より大きな異性”、いやあMt.レディがいなかったらダメでしたよー、ハハハ!」

「それはよかったわね……おめでとう…」

 

先程までの恥ずかしさの反動と、あまりにもデクくん過ぎる対応へのショックからそこからの記憶は曖昧になっている―――

 

 

 

――― Mt.レディ side out ―――

 

 

 

 

 

「〝レクリエーションもこれでおしまい!みんなで楽しく踊ろう、フォークダンスの時間だぞ!全員自由に踊りまくれぇ!!〟」

プレゼントマイクの合図でみんな一斉に男女でペアを作り始める。そして僕の周りには話したこともないような女子が物珍しさで集まっていた。

 

「ねえ、緑谷君私と踊ろうよ!」「学年最強の男と是非ー!」「ウチもウチも!」「ワイもワイも!」

「いや、あの、その僕は……」

僕は女の子たちに囲まれてどうしていいから分からなくなる、一体なにを基準に誰と踊ればいいんだ!てかひとり野郎がいなかったか!?

 

そうして僕が女の子にたじたじになっていると、救いの声がかかる。

 

「デクさん!私と踊らない!?」

「麗日さん!―――うん!よろこんで!それじゃそういうことだから、ごめんねみんな!」

麗日さんが困っていた僕を誘って助け出してくれた。ありがとう、こんな状況打破できるなんて麗日さんは天使だ!

 

「しかし最強無敵のデクさんがまさか女の子が弱点だなんてねえ」

「ハハハ、僕は()()最強でも無敵でもないよ」

「その言い方だと、いずれ成るみたいな言い方だね」

「なるよ、この雄英でも、プロになっても、僕は必ず一番上に立つんだ。それが目標で約束だからね!」

麗日さんの目を見つめながら、力強く僕は宣言する。オールマイトを超えて彼を救けるんだ、それくらい成らないとダメなんだよ!

 

「そっか、じゃあその時に私もデクさんに対して恥ずかしくないヒーローになるように頑張るよ!」

「麗日さんならきっと成れるよ!」

「ありがとう、その時は……少しでも側に居させてね

「えっ?最後なんていったの?」

「ふふ、なんでもないっ!さあ踊ろ、デクさん!」

そう言って麗日さんは、可愛らしい笑顔を浮かべながら僕の手を引く、そして僕らはぎこちないながらも、二人でつかの間のフォークダンスを楽しんだ―――

 

 

 

 

 

――― 峰田 side in ―――

 

「誰もオイラと踊ってくれる女子がいねえ……こんなはずじゃあ……」

オイラはフォークダンスの時間なのにひとり寂しくふらついていた。さっきからいろんな女子に声をかけるも全戦全敗だ。

 

『峰田さんと踊るのはちょっと……身長も合いませんし、先ほど騙されたこと、私まだ怒ってますのよ!』

『ないわー、まーたエッチなことしようと企んでるんでしょ!』

『えっ?私ー?尾白君と踊るからーごめんね!』

 

ちくしょう!どいつもこいつも!!オイラだって四六時中エッチなこと考えてる訳じゃ……いや否定はできねえな。

 

オイラはいじけて会場の隅の方へしゃがみこむ。暫くの間、全世界のリア充が爆発するように呪いを放っていると、そこへ人影が現れてオイラに話しかける。

 

「こんなとこでなにしてるの?峰田ちゃん」

「蛙吹…オイラを笑いに来たのか?フォークダンスの相手すらまともにみつけらんねえオイラを……」

「まあそんなことだろうとおもってたわ、だから私は峰田ちゃんをダンスに誘いにきたのよ?」

「えっ!?」

蛙吹がオイラをダンスに?なんでだ?さっぱりわからねぇ

 

「なんでオイラなんかを誘ってくれんだよ、蛙吹?」

「私はUSJで緑谷ちゃんだけじゃなく、峰田ちゃん。貴方にも助けられたのよ、これでもかなり感謝してるわ」

「蛙吹……オイラちゃんとお前を助けられなかったし、んでもって―――」

「私が感謝してるって思ってるからそれでいいのよ。で、峰田ちゃんは私と踊ってくれないの?」

「踊ります!踊らせていただきます、蛙吹様!!」

「梅雨ちゃんと呼んでちょうだい、ケロッ!」

そうしてオイラと蛙吹は周りからは滑稽に見えるだろうダンスを踊り始める。それでもオイラは充実感に包まれていた、理由は……よくわかんねえな!

 

 

――― 峰田 side out ―――

 

 

 

 

曲が変わり、パートナー交代の時間となる。そこに来たのは発目さんだった。

 

「やあやあ、筋肉の人!私の開発したベイビー、ダンスサポーターのテストに付き合ってもらえませんか!?いいですよね!?」

「発目さんはホントぶれないよね、もちろんいいよ。踊ろうか!」

そうして、ぶれない発目さんと一曲踊り始める。ちなみにダンスサポーターの矯正効果は抜群で、発目さんはハイレベルなフォークダンスを披露していた。

 

次のパートナー交代で僕を誘ってくれたのは拳藤さん、ちょっと意外だ。

 

「私とも踊って下さる?」

「拳藤さんそんなキャラじゃないでしょ?この短期間でも分かるよ」

「はっは、バレてたか。まあ折角だし踊ろうよ!」

「こちらこそ、よろしくね!」

僕と拳藤さんはそうして踊り始める、僕も三回目ということもあって、なかなか落ち着いて踊れた。それと拳藤さんの長い髪が回転するたび美しく(なび)き、その姿はとてもキレイだった。

 

そしてフォークダンスも終盤、最後の曲になる。最後くらいは自分で誰かを誘おう。そうして僕は視界の遠くに見える人に声をかけるため、小走りで向かっていく。

 

「僕と踊ってくれませんか?」

「――!私!?私は警備で……ってデクくんじゃない、まだ競技の途中でしょ?」

「ええ、だから貴女を誘いにきたんですよ、Mt.レディ?」

僕は会場の端でボーッとしていたMt.レディに声をかける。

 

「でも私仕事が―――」

「自分で連れ出しといてあれですけど、今さらじゃないですか?それにプレゼントマイクもさっきああいってましたし。それで僕と一曲どうですか?」

「んー、じゃあ。楽しみましょっか!エスコートしてくださいな、紳士(ジェントルマン)?」

「よろこんで、淑女(レディ)

Mt.レディは僕の誘いをなんとか承諾してくれて、二人してキザにおどけてみせる。そして最後の曲が始まり、僕らはゆっくりと踊り始める。

 

「まさか体育祭でデクくんと踊ることになるとはね~」

「僕もこんな風に踊ることがあるなんて、想像もしなかったですよ」

「ふふ、そうね。私もあと七年若ければ、デクくんと一緒に学校に通えたのになぁ」

「Mt.レディは若くてキレイで、それに大人っぽくてステキですよ―――」

「あら、見ないうちにお世辞が上手くなったのね。誰に仕込まれたのかしら―――」

「さあ、誰でしょう?ヒントは灯台もと暗しで―――」

「言うわね――――」

 

 

 

―――僕らは喧騒の中踊っていた。片やオールマイトの弟子で今大会の注目の選手、片や期待の大型新人プロヒーロー、そんなこともその時だけは忘れて。愉しく二人で踊り続けた。

 

 

 

 

――――そして楽しいレクリエーションの時間は終わり、最終種目の準備が始まる。

 

 

 

 

 

 

―――――この体育祭の王者を決める一対一のガチバトル、ついに決戦の時が訪れる。

 

 

 

 

 

 

 

 




フォークダンスをやったことない人間がイメージで書くとこうなります、雄英は自由さが売りなので許してください!なんでもしますから!(なんでもするとはいってない)


総合評価が3929ptを超えました!サンキュー筋肉!これからも更新頑張りますので、応援よろしくお願いします!

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