デクのヒーローアカデミア 再履修!【完結】   作:くろわっさん

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今更ですが第五章はこれまで以上のコメディ展開で原作崩壊が加速していきます。ご了承下さい。


いいよ、こいよ。って方は続きをどうぞ!



全力全壊!騎馬戦バトルロイヤル!

雄英体育祭、第一種目は障害物競争だった。僕は数々の障害と轟君からみんなを救けながら走り抜き、無事に一位を獲得した。

そして第二種目の騎馬戦で僕に渡されたのは1000万ポイントの重圧と15mの超極長ハチマキだった、どうする?僕!!

 

 

 

 

 

「―――それでは早速、15分間のチーム決めの交渉タイムスタート!」

ミッドナイトのその言葉と同時に僕の周りから人が一斉に居なくなる。

 

そりゃそうだ、いくら障害物競争で一位を獲れる人間とはいえ1000万はリスキー過ぎる、それに加えてあのハチマキだ、誰も進んで組みたくはないだろう。だからこそ、僕は自分から動かなきゃいけないんだ!!

 

「障子君!砂藤君!口田君!僕と騎馬を組んでくれないか!?僕の身体を支えられる強力な騎馬を作れるのは君達だけなんだ!!」

僕は目当ての三人に一気に声をかける。筋肉同盟プラスアルファなら最強の騎馬が作れる!

 

「すまねえが、俺はお前と戦いたいてえんだ!一緒に組むことはできねぇ!!」

「俺も砂藤と同じ意見だ、雄英体育祭という絶好の機会、お前に挑ませてもらおう」

「そっそんな!?」

二人は僕の提案を断り、僕と戦う道を選んだ。筋肉同盟の鉄の絆が逆に彼らの対抗心に火をつけたらしい…!

 

「――――!――――……」

口田君も首を横に振り、拒否を示す。そんなに仲がいいわけでもないし、当然か……こんなことなら筋肉同盟に誘うなりすれば良かった…

 

まずいぞ……当初の計画が一気に崩れた!あと僕を支えられそうな人は―――――ハッ!いるじゃないか!誰かに獲られる前に早く誘わなきゃ!!

 

 

「おーい!麗日さーん!!」

「デクさん!?まさか―――」

「よかったまだ誰にも獲られてなかったんだね、僕と一緒に戦って欲しいんだ!!」

僕は麗日さんに声をかける、幸いにもまだ誰とも組んでいないようだ。

 

「とられてないって……私でいいの?あんまり役に立てんかもよ?」

「麗日さんじゃないとダメなんだ!僕には(騎馬を組むために)君が必要なんだ!!」

「じょ…情熱的だね…!そんな風に迫ってくるなんて……断れんやん…!」

麗日さんは頬に手を当てながら俯いている、断れないって言ってくれてたし、オッケーてことなんだろうか?今そんなに脅すような言い方してたかな…?

 

「麗日さん?本当に大丈夫?無理強いはしな―――」

「やります!折角デクさんから声をかけてくれたんだもん!……少しでも近くににいかんと勝てんよ!」

「う、うん。ありがとう!じゃあよろしくね、麗日さん!」

なんだか麗日さんは燃えている、どこにスイッチがあったんだ…?うーむ、女の子って難しいなぁ。

 

「ところでデクさん、私に声をかけてくれたのってそういうことだよね…?」

「ん?ああ、もしかしてわかってたのかな?いやぁ、恥ずかしいね!」

「やっぱり…!私の勘違いじゃなかったんだ…!それって私が―――」

「そう、麗日さんの個性なら僕を浮かして騎馬を組めるよね!」

「―――思ってたのとちがったーーー!!」

僕の発言にずっこける麗日さん、関西人の性分なのか!?というかわかって聞いてたんじゃなかったのか……一体なんだと思ってたんだろ…?

 

「そっかー、デクさんだもんね……そっかー」

「えっ?!麗日さん、顔が全然うららかじゃないよ!?」

麗日さんが面白い顔で遠くを見始める、一体なにがどうしたってんだ!?

 

「ていうか……ハァ……デクさんが騎馬になれば大体の人は騎手にできるんじゃないの……?……ハァ……」

「!?その発想はなかった…!」

麗日さんがなんかどっかで聞いたことあるようなため息を吐きながら進言してくれる。あまりにシンプルすぎて忘れていた、今の僕なら誰だって担げるし、強力な騎馬になれるじゃないか!バカだな僕は…過去にこだわり過ぎた…!

 

「つまり、デクさんは誰でもよかったってことね……」

「それは違うよ麗日さん!」

「えっ?―――」

「もし最初からそのことに気が付いてたら、真っ先に麗日さんを誘ってたと思う。だって麗日さんなら絶対に僕と一緒に戦ってくれるって、そう信じてるからね!!」

そうさ、麗日さんは前世でダメダメだった僕でも一緒に戦おうって、そう言ってくれたんだ!そんな麗日さんをこの騎馬戦で僕が蔑ろにするわけがない!!

 

「デクさん……本当に私でいいん?」

「勿論さ!麗日さんとならきっと勝てるよ!」

「デクさん…!私、頑張るよ!!デクさんの役に立ちたいもん!」

「ああ、改めてよろしくね、麗日さん!」

「うん!よろしく、デクさん!」

僕と麗日さんは固く握手を交わす、落ち込ませちゃったりしたけど、麗日さんとさらに仲よくなれた気がする。雨降って地固まるってやつだな!

 

そんなことを考えていると後ろから声をかけられる。

 

「見つけましたよ筋肉の人!私と組みましょう!!さあさあ!」

「うわっ!近っ!?発目さん?」

「あれ、ご存知でしたか?私、サポート科の発目 明を!先程はどうも助かりました、そこでその恩返しとして私と騎馬を組みましょう、そうすれば私のベイビー達によるカーンペキなサポート得ることができますよ!お得でしょう、もうこれは組むしかありませんね!そして一位の筋肉の人と組めば注目度は抜群中の抜群!!私のドッ可愛いベイビー達も目立ちに目立つわけですよ!!フフフフフ!まさに一石二鳥!いや三鳥四鳥くらいありますよ!!さあさあ組みましょう、いいですよね!?」

発目さんは振り乱した髪が当たるくらいの至近距離でマシンガントークを炸裂させて、僕に組むように迫ってくる。ちっ近い!近すぎる…!

 

「わかった!わかったからちょっと離れて!」

「ありがとうございまーす!フフフフフ、これで私のベイビー達も安心ですねぇ、フフフフフFFF……」

「凄い勢いの子や!私も見習おう…!」

「いや、麗日さんはそのままでいてっ!」

あまりの気迫に僕は押しきられて承諾してしまった、まあ悪い選択ではないからいいのだけれども……というか麗日さんは今のどこを見習うつもりだったんだ…!!

 

「さあさあ、私のベイビー達を見てください、これなんかおすすめですよ―――」

「これは!あのヒーローの―――」

「そうなんですよ!あれを私なりに改良しまして―――」

「おお!僕、あの感じが好きでさー!わかるわかる―――」

「……話に入っていけん……こんなはずじゃあなかったのにーー!―――」

 

――――そんなこんなで暫くの間、発目さんのサポートメカを見ながらついついヒーロ話に花が咲いてしまった。しまった、作戦が決まったのはいいけど、時間をかけすぎたかな?こうなったら前世と変わらないが、常闇君を誘わなきゃ!!

 

「おーい!常闇く―――」

「はい、終ーーー了!さてさて、みんなチームは出来たみたいね!」

しかし、その瞬間に時間となり、常闇君を誘うことが出来なかった……ていうかみんなチームが出来てるってことは常闇君は誰かと組んだのか!一体誰と……?

 

「さあ早速始めるわよ~!騎馬を組んで散らばりなさーい!」

ミッドナイトの合図にみんなが散らばりながら騎馬を組んでいく。僕らも騎馬を組まなきゃ!

 

「頼むよ、麗日さん!」

「任しといて!私、頑張る!!」

「振り回されないように気をつけてね、発目さん!」

「了解です、フフフフフ」

僕らの騎馬は、騎手に麗日さん、前騎馬に僕、後騎馬に発目さんの構成だ。

といっても麗日さんは僕の左肩に乗っており、発目さんは麗日さんの個性とホバーブーツで浮きながらワイヤーを僕に絡み付けて引っ張られる形だ、ちなみに超極長ハチマキはホバーブーツの風で常にヒラヒラと舞っている。これを騎馬と呼んでいいかはもうわからないが、まあ中世の戦車(チャリオッツ)みたいなもんだろ!たぶん……

 

 

「〝いくぜ!残虐非道のバトルロイアル、カウントダウン―――〟」

プレゼントマイクの実況でカウントダウンが始まった、いよいよだ!

 

「〝10,9,8,―――〟」

「デクさん!ホントにこの位置取りでいいの!?」

「逃げ場がありませんねぇ、背水の陣ですか!目立ちますねぇ、フフフフフ」

麗日さんが動揺しながら聞いてくる、発目さんは……確かに言うとおりではあるが、もう好きにしてくれ!

 

「〝7,6,5,4,―――〟」

「下手に動き回ると死角からハチマキを掠め取られる可能性が高い!だからこそ、背後を場外にして―――」

 

「〝3,2,1―――〟」

「―――敵は全て正面から迎え撃つ!!僕を信じてくれ!」

「わかったよ、デクさん!私、信じてるから!!」

「頼みましたよ筋肉の人ー!出来るだけ私のドッ可愛いベイ―――」

誰ひとりとして僕のハチマキは奪わせない!一位になるのは僕らだっ!!!

 

「〝スターーーート!!!!〟」

 

「実質一位のハチマキ(1000万ポイント)の奪い合いだっ!よこせや!!」

「はっはー!いただくよー緑谷君ー!!」

スタートと同時に鉄哲チームと葉隠チームが仕掛けてくる、口田君に砂藤君、君達は組むのかよ!!

 

「〝さあ開幕から王者緑谷に2チームが襲いかかるぅ!〟」

 

「絶対に渡さないよ!スマァッシュ!!」

僕は腕を薙ぎ払い、暴風を発生させて牽制する。

 

「きゃあ!?飛ばされちゃう!支えて男子達!!」

「うおお!?空振りでこの威力ってマジかよ!俺じゃなきゃ踏ん張れねぇぞ!!」

「まだまだぁ!スマッシュ!スマァァッシュ!!」

二組とも耐えるが、僕は牽制をやめずにさらに風を舞い起こす。

 

「あーー!!ハチマキ飛ばされたー!!バックバッーク!!」

葉隠さんのハチマキを吹き飛ばして、まず一組撃退!よし!

 

「〝緑谷の巻き起こす暴風で早速葉隠チームがやられたぁ!〟」

 

「骨抜!足場崩せ、まずはケズんぞっ!!」

「了解、鉄哲!おらっ、くらえええ!! 」

鉄哲君の指示で骨抜君が個性を発動する、そして僕の足元が泥のように変化し、僕の足は地面へと沈み始めた。

 

好き勝手はさせないってか?でも好きにやらせてもらうよ!

 

「アリゾナァァ!スマッシュ!! 」

僕は震脚で緩んだ地面を踏み抜く、しかし今度は手加減なしの一撃。緩んだ地面はその勢いに押し出されて吹き飛び、その下の硬い地面も一気に陥没する。僕は周囲に土塊を撒き散らしながらクレーターへと沈んでいった、その衝撃と土塊で鉄哲チームも吹き飛んでいく、これで二組撃退!

 

「〝地面をぶち抜き鉄哲チームも撃退ー!しっかしなんてパワーだぁ!?やはりここでも緑谷の独壇場と化してしまうのか!?〟」

 

「二人とも大丈夫!?」

「大丈夫ー!」

「オッケイですよぉフフ、早くから目立ってますよぉこれは…」

元気に返事をする麗日さんと、ぶれない発目さん。そこまでいくとすごいな、もう!

 

「ここは流石に不利すぎる、一旦飛んで脱出するよ!麗日さん、ハチマキ飛ばされないようにね。発目さんは敵襲に備えて警戒っ!」

「オッケーデクさん!絶対に離さないから!!」

「了解ですーさあさあぶっ飛んじゃってくださいよおお!私のドッ可愛いベイビ――――「せーのっ!!!」――いぃいいいい!!!」

僕は二人に注意して、話続ける発目さんを気にせず一気に踏み込んでクレーターから跳びだし、バックパックを使いながら上空へと脱出した。

 

「〝緑谷チームここで空を飛んだー!!なんでもありかよ、すげぇな!開始1分から既に大暴れだぞ!!〟」

 

ここまで飛べば誰もこれないだろ!少しは安心―――

 

「下からひとり来てますよ!」

発目さんがそう叫ぶ。んなバカな、高度20mはあるぞ?

 

 

「こぅらぁ!!デクゥウウウウ!!」

「なに!?かっちゃん!!?」

空に逃げても、かっちゃんが爆破を使って飛びながら迫ってくる!読んでたのか、マジかよ!?

 

「〝ここで空にも刺客が現れるぅ!1-A爆豪、緑谷に空中戦を仕掛けたぁ!!てか騎馬組んでねぇけどいいのかあれ!?〟」

「〝地面につかなきゃセーフってことだろ〟」

 

「てめぇ!なんで俺を誘いにこねぇんだよ!ずっと待ってたってのによぉおお!!」

「なんだって!?待ってたの!?」

「ったりめえだろうが!お前と組むなら俺しかいねぇだろって!そう思ってたのに裏切りやがってえええ!!」

完全な逆恨みだが、盲点だった!まさかあのかっちゃんが僕と組む気でいたなんて!でも、確かに丸くなってわかりあえたかっちゃんならそう思っていても可笑しくない、ていうかそれなら誘ってくれれば……いやかっちゃんはかなりめんどくさいツンデレだ、腐れ縁を遥かに超越した幼なじみの僕としたことが忘れていた!!

 

「ぶっ飛ばしてやるぅぅうう!!デクゥウ―――」

「ごめんよかっちゃん!埋め合わせはっ!また今度っとぉ!!」

「―――ゥウ ウウウゥゥゥゥ―――」

ハチマキなどには目もくれず、一直線に僕を狙うかっちゃん。僕はその腕を軽く弾き、そのままかっちゃんの胸の辺りを踏んで、下へと叩き落とした。下のほうでテープが伸びているのが見えるな、おそらく瀬呂君がかっちゃんを回収するのだろう。

普段の冷静なかっちゃんならこんな風に簡単にはいかなかったが、興奮していて周りが見えていなくて逆に助かった。

 

かっちゃんを蹴ったお陰で高度と対空時間が増えた!このまま空中に少しでも留まるか?いや、青山君のレーザーみたいな対空攻撃が飛んでこないとも限らないな、ここは地上戦に徹しよう!!

 

「着地いくよ!衝撃に備えてえええ!!!―――――」

「目立ってます!目立ってますよおおぉぉぉ――――」

そして僕らは重力に引っ張られて地面へと落下していく。

 

「――――んしょっとぉ!!!」

着地の瞬間に地面を蹴り込み、落下の衝撃を相殺しつつ、辺りに土塊を撒き散らして牽制しながら、僕らは地上に舞い戻る。

 

「〝周りを巻き込んでの派手な着地!魅せるねぇ緑谷!!〟」

周りを見てみると、二組の騎馬がそれに巻き込まれて吹き飛んでいた。

これで五組撃退!ごめんよB組の人達の二チーム!

 

「いまだっ!」

「なに!?――スマッシュ! 」

動き出そうとした時、なにかがハチマキを掠め取ろうと伸びてきていた、僕はそれを反射的に暴風で薙ぎ払う。そして伸びているピンクのもの、ついでに黒っぽいボールを振り払った。

 

「流石に一筋縄ではいかないか」

「障子君!ってことは峰田君と蛙吹さんもいるな!?」

「ばれてるわよ、峰田ちゃん。あと梅雨ちゃんと呼んで」

「なんでオイラたちがわかるんだよ!しっかり隠れてるのに!」

「個性を見れば丸わかりじゃないか!!」

峰田チームが仕掛けてくる、障子君の背中に峰田君と蛙吹さんが乗ってそれを複腕と皮膜で覆う、相変わらずいい作戦だ!

 

「〝戦場は既に大混戦!あちらこちらでハチマキの奪い合いだぁ!そんな地上に降りた緑谷にも峰田チームが襲いかかっているぅ!!〟」

 

「でもその作戦の穴はわかったよ、まず攻撃が軽すぎるってこと!スマッシュ!」

僕はそう言いながら、風で再び舌とモギモギを薙ぎ払う。よし、これで守りきれるな!

 

「そして、防御が障子君の肉体強度頼りってことさ!スッマァァッシュ!!」

地面を浅く蹴り抜き、強烈な勢いで土塊を障子君へと飛ばす。彼の腕は塞がっている、そして障子君の身体の大きさなら避けきれまい!よし、六組目撃――――

 

「防げ!黒影(ダークシャドウ)!!」

「アイヨォォオオ゛゛!!!」

その土塊は障子君の後ろから伸びる巨大な影によって防がれる。そんな…!この個性は―――

 

「常闇君!?そんなバカな!?まさか君まで背中に乗ってるのか…!!?」

「正解だ緑谷、俺の背中には峰田、蛙吹、そして常闇が乗っている!!」

僕の驚愕に障子君が答える。防御面で優秀な常闇君の黒影まで揃えてきたのか、峰田君……君ってやつは、敵にまわすと厄介すぎるな!

 

「でも待ってよ!完全にキャパオーバーじゃないか!?」

「フッ、確かに以前の俺なら無理だっただろう……しかし筋肉同盟でお前と鍛え上げ続けた日々が俺を成長させたんだよ、わかるか?」

「っ!!膨れ上がったハムストリングと大腿四頭筋!鉄のような広背筋と腹直筋が姿勢を崩さず支え続けている!君はやはり筋肉同盟の名に恥じない筋肉だ!!まさに筋肉の重戦車と呼ぶに相応しいよ!!」

障子君が前世と比べてここまで強くなっているなんて!やはり筋肉の可能性は無限大だ!!

 

「ここで相手にするのはまずい!一旦端まで離れるよ!!」

「逃がすか!追えー障子ー!!完璧峰田戦車(パーフェクトミネタンク)の力をみせてやれ!!」

「調子に乗ってるわね、峰田ちゃん」

「追われし者の運命(さだめ)だ…!」

僕は障子君から距離をとって端を目指す。峰田君たちは騒ぎながら追ってきていた、なんだかんだでいいチームだな!

 

障子君の腕の中で闇を増した黒影と二人の遠距離攻撃で手一杯のところに他の騎馬まで合流したら目も当てられない!一旦距離を離して端を背にして、遠距離攻撃合戦に持ち込もう!!

 

「〝さあ王者はここで逃げの一手に出た!しかぁし、それを許さないのがこの騎馬戦だぁーー!!〟」

僕は駆け出すが、ここは戦場だった。すぐに正面から別の騎馬がそれに襲いかかってきた。

 

「さっきは助けてもらったけどそのポイントいただくよ!緑谷君!!」

「えっ!?B組の人!?えっと―――」

B組の巨大な拳の持ち主の女の子がそう言いながら突っ込んでくる。名前なんだったけ……助けたって障害物競争のときか?どこで助けたっけな……

 

「拳藤よっ!恩を仇で返すかたちになるけど、これって戦いだからね!」

「ごめんね拳藤さん!よく覚えてないや…!いま忙しいからまたあとでねっ!!!」

僕は襲いかかってきた拳藤さんの拳を掻い潜り、デコピンで小さな風の砲弾を飛ばしてピンポイントにハチマキだけを吹き飛ばす。

 

「いまだっ!蛙吹、あのハチマキをとっちまえ!」

「けろっ!!」

「あー!アタシのハチマキを!!待てー!!」

後ろから迫ってきていた峰田チームが拳藤チームのハチマキを奪い去る。そして峰田チームを拳藤チームが追いかけ始めた。

 

「緑谷ぁ!さっきはよくも―――」

「どいてどいてー!スマッシュ!! 」

「ぐわぁーー!!?」

更に復帰した鉄哲チームが立ちはだかってきたが、後ろから峰田チームが来ている以上、いまは相手にしていられない。拳を振るい騎馬ごとハチマキぶっ飛ばす。

 

「あれもいただきだ!」

「けろけろっ!」

「A組このやろう!!ぜってー逃がさねぇぞ! !」

峰田チームはついでと言わんばかりに、鉄哲チームのハチマキを回収して走り去る。そしてそのあとを鉄哲チームが追う。

 

「〝緑谷チームを追う峰田チームを更に追う拳藤チームと鉄哲チーム!!なんと峰田チーム大健闘ぅ!この活躍を誰が予想出来たのかぁ!?〟」

 

逃げ回る僕らの目の前に、ついに一番の強敵と考えられる彼らが現れる。

 

「っ!轟君!!」

「―――緑谷……!!」

「来るなら来いっ!!でもそこは通してもらうよ…!スマッ―――」

轟君に威圧感を浴びせながら、牽制の拳を放とうとする。しかし轟君の行動は僕の予想を裏切るものだった。

 

「――っ!あんな長いハチマキ持ってちゃ、身動きとれなくなっちまうぞ!離れろ、回避だ飯田!あれを狙うのは最後でいい!!」

轟君の騎馬は急速で僕らから離れていく、そういう判断もうまいな!

 

「〝おっーとぉ!?轟チームここで緑谷を避ける!〟」

「〝自分達の持ち点と残り時間を考えて冷静な判断を下したな〟」

「〝なるほどぉ!頭もクールに冴えてるぜアイスマンっ!!さあさあ、残り時間も半分を切ってきたぁ!一位を狙うものと勝ち残りを意識してその他を狙うもの、両極端に別れてあちこちで熱い闘いが繰り広げられるぅ!!〟」

 

―――それからも僕らは峰田チームから逃げながらも立ちはだかる他の騎馬を蹴散らしながら進み続けた。追う峰田チームは僕が蹴散らしたチームのハチマキをかっさらい続けて、どんどんとヘイトをためて、気がつけば僕を狙う騎馬より峰田チームを狙う騎馬のほうが多くなってたくらいだ。

 

しかし峰田チームのコンビネーションは凄まじく、蛙吹の舌で牽制し、常闇君の黒影が鉄壁の防御を見せ、峰田君のモギモギが足を殺す。そのためほとんどのポイントを保有したままだった。

そんな状態で残り時間は刻一刻と過ぎ去り―――

 

「〝さあ!残り時間は一分を切ったぞ!ラストスパートだ、全員ケツに火ぃつけて駆け回れぇ!!〟」

 

「うおおおらぁ!デクゥ!!モノマネ野郎も潰したし、最後はてめえの処刑の時間だぜぇぇ!!!」

「げぇ!?かっちゃん!!」

僕の目の前にかっちゃんの騎馬が飛び込んできた、おそらくみんなの個性をうまく使って超加速をしてきたのだろう…!これはまずいぞ…

 

「あとちょっとなんだ!ここは逃げさせて―――」

僕はかっちゃんを避けるため、横へ大きく跳ぶために踏み込む。―――その瞬間僕の横を氷の壁が覆い尽くす。くっそ!この氷は!?

 

「逃がさねぇぞ緑谷…!そろそろ…獲るぞ…!!」

「轟君っ!!そう、うまくはいかないか!」

「ああっ!私のドッ可愛いベイビーが氷漬けにぃぃい!!!」

睨み合う僕と轟君、そこに発目さんの悲鳴が飛び込む、ホバーブーツを凍らされてしまったようだ。

 

マジか!?このタイミングで仕掛けてきて、こっちの足まで奪うとか、完璧過ぎるだろ…才能マンめ!!

 

「二人とも迎え撃つしかないか…!スマァァッ―――」

僕は二人を吹き飛ばすため大きく構えて、スマッシュを放とうとした。しかしその拳を放つすぐに余裕はなくなる。

 

「いただきだぜ!!ひゃっはー!!」

「デクさんごめん!ハチマキ持ってかれた!!」

「なにぃぃーーー!?峰田君っ!!!」

そこには蛙吹さんの舌を身体に巻き付けて、僕のハチマキの端を握っている峰田君の姿があった。こっちに飛び込んできていたようだ、まったく気がつかなかった!!

 

「渡すかぁあああ!!」

僕はハチマキの反対側を掴んで引っ張る、極長ハチマキのせいでとられたが、そのお陰で取り返すこともできそうだ!

 

「させるか!」

「いけっ黒影(ダークシャドウ)っ!!」「アイヨォ!!」

障子君と黒影がハチマキ掴んで引っ張り返してくる。しかし渡してやるわけにはいかない、僕は更に力を込めてハチマキ引っ張る。これくらいならまだ僕に分があるぞっ!!

 

「1000万ポイントは俺のモンだぁぁ!!」

「緑谷!お前には!!―――」

かっちゃんと轟君の騎馬も乱入してきて、僕からハチマキを奪うためにハチマキを引いてくる。これはヤバい!このままだと―――

 

「〝おお!峰田、爆豪、轟チームの協力プレイによって、ここで緑谷がハチマキを奪われそうだ!王者陥落なるかぁ!?〟」

 

「緑谷からハチマキを奪えーー!!」

「逆襲の時間だ!ラスボスを落とせ!!」

「あいつが居なくなれば次の種目も勝てる!」

「1000万ポイントあれば一発逆転できるぞ!いけー!! 」

他の騎馬も続々と集まって僕からハチマキを取り上げようと全力で引っ張られる。ハチマキは伸びきって既に30m近い長さになっている、よく切れないなこれ!相澤クオリティってやつなのか!!?

 

「〝なんだなんだこの状況はーー!?緑谷のハチマキをほぼ全員の騎馬が引いているぅ!それに一人で対抗する緑谷ぁ!!気づけば綱引きが始まってんぞおいっ!!〟」

「〝おい、騎馬戦やれよ〟」

 

 

「負けるかぁぁあああ!!」

僕は力いっぱいハチマキを引くも、数の力に負けて足がずりずりと引き摺られ始める。このままだと奪われてしまう…!ダメだ、一番になるんだ!オールマイトと約束したんだからっ!!

 

「発目さん!麗日さん!これから本気を出す!!両腕使うから僕の身体にしがみついといてくれっ!!!」

僕は全力を出すために二人に指示を出す。

 

「了解です!やっちゃってください、そして更に私のベイビーが目立つのです!!フフフフフ」

そう言って発目さんは僕の首に手を回して背中にしがみつく。おっふ!背中に柔らかい感触が…!ってそんなこと言ってる場合じゃ―――

 

「発目さん大胆…!よーし、私も!!えいっ!」

今度は麗日さんが正面から首に腕を回して抱きついてきた、麗日さんは照れながらも力強く抱き付いている。もっと掴まるところあったんじゃ!?顔が近い!そして前と後ろから柔らかさといい香りのコンボがガガガガガ――――

 

「〝ワァオ!!緑谷が女子にサンドイッチにされているぞぉ!!?そりゃ一体なんのパフォーマンスだぁ!?羨ましいいいい!!〟」

「〝なにふざけてんだ緑谷……それとマイク…お前あとでちょっとこい〟」

 

「ふざけんなぁぁああ!オイラと変われ!!」

「あいつをころせぇええー!!」

「あんなやつに負けられっかよおおお!!」

峰田君を中心とした男子の心に火がつき、引く力が一気に強くなり、ハチマキを持っていかれそうになる。

 

惚けてる場合じゃない!!心を無にして乗り切れよ、僕っ!!

 

「フルカウルっ!!88%ォォオオ!!!」

ワンフォーオールが身体中の筋肉に行き渡り、僕に力を与える。そして僕とその他全員の引き合う力が拮抗する。

 

「〝劣勢だった緑谷、ここで踏みとどまったぁ!!残り時間30秒!さあさあ綱引きの行方はどうなるー!!〟」

「〝いやだから、騎馬戦しろよ〟」

 

互角じゃダメなんだ!僕は勝つんだ!絶対に!!限界を超えて、Plus Ultra(更に向こうへ)!!

 

「がぁぁああっ!!―――フルカウルゥウ!()()%()ォオ゛!!」

僕は限界を超えた力でハチマキを上に振り上げた、そしてハチマキを引っ張っていた全員の身体がほんの少しだけ浮く。今だっ!!

 

「――オクラホマァァァ!!ミキサァァァァアア!!!」

全力全開のワンフォーオールを全身に迸らせ、ハチマキを引きながら振り回し、そのまま回転する。そして回転数どんどんと上げていく。

 

「〝なんと緑谷、全員が掴まったままの綱を振り回すぅうう!!なんというパワー!なんという筋肉!いったいなんなんだこいつはぁ!!!〟」

「〝残り15秒だ、もはや騎馬戦ではないな〟」

 

「きゃあああああ!!―――」

「目立ってるぅううフフフフフ―――」

麗日さんと発目さんの叫びが聞こえるが止まるわけにはいかない!!

 

「〝残り10秒!筋肉大回転によるハリケーン!吹き荒れる嵐の中で生き残るのは誰だぁ!!〟」

 

「うおおおお!!!―――」「ぎゃあああああ!―――」「くそがァァァ!!―――」

 

阿鼻叫喚の渦のなか僕は回り続ける、勝つために!一番に成るために!!

 

「〝―――3,2,1,終―――――――了!!!!さあこの綱引きの勝者はいったい誰にぃ!!?〟」

「〝……騎馬戦だったはずなんだが〟」

 

終了の合図とともに僕は回転をやめ、静寂の中、次第に風と砂埃が収まっていく―――

 

 

―――生徒たちが倒れ伏し、死屍累々の中、僕はひとりハチマキを手にしたまま、二人の女子を抱えて立ち尽くす……

 

 

――――ハンデを背負わされながらも全力で挑んだ、ハチマキ争奪の騎馬戦バトルロイヤル……

 

 

 

―――――全てが終わった後、ハチマキを身に付けている者は、()()()()としていなかった……

 

 

 

 

――――――僕の全力の必殺技は、騎馬戦という競技そのものを破壊し尽くしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 




バランスブレイカー緑谷出久、本領発揮―――!


今回ついに1話一万文字を超えました、区切りのいいとこまで書いたら長くなっちゃいましたね。

祝!評価pt3500超え!皆様応援ほんとうにありがとうございます、これからも頑張ります!

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