デクのヒーローアカデミア 再履修!【完結】 作:くろわっさん
何故かまた日間ランキングに名を連ねることができました、皆様本当にありがとうございます!
無事に一ヶ月の無人島生活を送り、スランプから抜け出すことができた僕は、そこで出会った小さな友達と別れ、人の生活に戻った。そしてオールマイトに連れられて来た住宅街で岳山優ことMt.レディに絡まれたのだった。
「Mt.レディ!?岳山さんがあの人気急上昇中の大型新人ヒーローの!?」
なんでまたそんな人が僕なんかに声をかけてきたんだろう?
そんなことを考えていると彼女が話始めた――――
――― 岳山 side in ―――
私は岳山 優、まだ22歳の駆け出しヒーローよ 、突然だけどいまから私の半生を振り返ってみたいと思う。
ことの始まりは20年前、まだ私が2歳の頃だった、その年私は個性に目覚めた。
きっかけはお友達との些細な喧嘩、感情を爆発させた私は、個性を発現させて暴れまわった。ここまでならこの超常社会に有りがちなよくある出来事なのだけれども、私の場合は違った。
持っていた個性が強力すぎたのだ、体を19m程大きくする巨大化の個性。大きくなった私は感情のままに暴れたらしい、周りの大人はどころか、止めに来たヒーローですら私を止められなかったという話だ。
何故こんなに他人事みたいに話すかというと、私はまだ幼く当時の記憶が曖昧だからだ。覚えているのは友達だった子や大人たちの怯えるような目、まるで化け物をみているかのようだった、ということだけ。
それからというもの私はつま弾きにされた腫れ物だった、他の子からはデカ女だの怪獣だのと言われ、大人たちからは変に気を使われる。もう普通の子供ではなかったのだ、こんな個性いらない! と何度思ったことかわからない。
そんな私にひとつの転機が訪れた、ある日テレビで見た大勢の人々を救うヒーローのニュース。幼い私は思った、こんな風に誰かを助けることが出来れば、みんながわたしを怖がって避けることもなくなるんじゃないかなって。
それから私はヒーローを目指して生きることにした。
小学校を卒業して、中学に上がり、ヒーロー科を受験し合格して、高校生になった。その間も私は疎まれ続ける。
元々地頭は悪くなかったので勉強は辛くはなかった、それにこの個性があれば実技などはほとんど楽勝で、大した苦労もせずにトップレベルの成績で高校を卒業しプロヒーローの資格を得た。勿論ここでも私の踏み台になっていた人達から逆恨みされたりしたが、もうそんなことは気にもかけなくなっていた。
そして念願のヒーローになったとき、私の志はすっかり廃れたものになっていた……
上京して、中堅ヒーローの事務所に鳴り物入りでサイドキックとして入った、そこでも私を待っていたのは退屈な日々だ。
私の可愛い見た目に嫉妬した先輩からの陰湿な嫌がらせ、個性の特性故に増える街への被害による風当たりの強さ、しかしこの十数年ですっかり面の皮が分厚くなった私はそれらを一蹴した。
実力による評価と美貌による人気、このふたつを兼ね備えていた私は、あっというまに中堅事務所から独立して、自分の事務所を構えるまでになっていた。
独立して好きにやれるようになればなにかが変わると、少しは思っていたがなにも変わらなかった……
圧倒的なパワーの個性による破壊を含むヴィランとの戦闘、見た目だけに惹かれて集まる変わり者のファン達。
目立つのは嫌いではない、むしろちやほやされるのは大好物だ、ファンのことも勿論大切している……しかしなにかが違うだろうと、そう思い始めていた。
そんなある日だった、私はとある事件に遭遇した。
通称ヘドロ事件、ヘドロで人を取り込む個性を持ったヴィランが、爆発系の個性を持った中学生を取り込んで暴れ回った事件だ。狭い商店街の中で暴れまわるヴィランに、私を含めたヒーロー達はうまく立ち回れず後手後手になっていた。
その現場に一人の学生が現れた、その男の子は火中に飛び込もうとしており、私はそれを止めた。なにもできないとはいえ巻き込まれて怪我をする人間が増える必要は無いだろうとそう思って。
しかし彼は私を力で振り払い、他のヒーローの制止も振り切って、危険な場所へと飛び込んでいった。あとから聞いた話によればヴィランに囚われていたのは彼の友人で、それを助ける為だけに駆け出していたそうだ。
自らの身を危険に晒し将来の夢も放棄する、自分を犠牲にしてでも誰かを助けようとするその姿は……私が憧れたヒーロー像そのものだった。
ただ資格があるから、なんとなく上手くやっていけているから、それだけでプロヒーローをやっている私なんかより、彼の方がよっぽどヒーローだろう。
私は成りたいものに成れなかった現実をそこで思い出す。
それからのヒーロー生活はなんだか苦痛だった、ヴィランを捕らえて、ファンに手を振りながらまるでアイドルのような扱いを受ける日々。理想と現実の違いに心のモヤモヤは溜まっていく一方だった……
それから数ヶ月、もうヒーローなんて辞めてしまおうか、そう思い始めた時に彼は再び私の前に姿を見せた。というより私が彼の姿を見て駆け寄ったのだが……
辞める前に一度でいいから彼と話してみたかった、聞いてみたかった、“ヒーロー”とはなんなのかということを。
私は公園のベンチで唸っている彼に声をかけた―――
――― 岳山 side out ―――
「私ね、あんたに聞きたいことがあったのよ」
「聞きたいことですか?」
僕は尋ねてきた岳山さんに尋ね返す、僕に聞きたいこと……前のヘドロ事件のことかな?
「あんたにとって“ヒーロー”ってどんなもの…?」
「ヒーローですか?結構漠然とした質問ですね…うーん、僕の将来の夢ですかねぇ」
漠然としたことを聞いてきた岳山さんにフワッとした回答をする僕、もっと上手く言えないものかな…うーん、クソナード!
「じゃああんたの成りたい“ヒーロー”って何?どんな人がヒーローなの!?」
「えっ、えーと…僕の成りたいヒーローってのはある人への憧れでして―――」
「その人って?どんな人?ヒーローなの?」
岳山さんは矢継ぎ早に質問攻めしてくる、なんか余裕がないって感じだけど…どうしたんだろう?
「僕の憧れの人はですね、どんなに困ってる人でも笑顔で
「…それは、立派な人なのね……」
「ええ、すごい人ですよ!僕はその人すらも救けられるようなヒーローに成りたい……そう思っていま努力してるんですよ」
僕は聞かれてもないことをベラベラと喋りだす、オールマイトへの想いとなると言えることはたくさんあるのだ。
「あなたはきっとそんな人に成れるわ……あなたの目には迷いがないもの」
「あはは、ありがとうございます。じゃあ岳山さんにとってのヒーローってなんですか?」
「それは……」
僕が照れながら質問すると、岳山さんは俯いて黙りこんでしまった。俯く前に一瞬見えた表情はとても悲しそうだった……
「……それが今、わからないのよ、私はヒーローという仕事をしてる。でも“ヒーロー”ってのがなんだかわからなくなってしまったの……」
岳山さんは暗い顔でそう語った、僕に何が出来るかわからないけど、この人を
岳山さんはなにか思い詰めてるみたいだ、そんな人を救けるのもヒーローなんじゃないか?―――そうですよね、オールマイト!!
「あの!岳山さん、もしよかった貴女の悩み、僕に話してみませんか?話すだけでも楽になるかもしれません。僕に貴女を救けさせてくれないでしょうか?」
「ホントにヒーローみたいね、緑谷君は……」
僕の提案に岳山さんの少しだけ表情が明るくなった。
「じゃあ聞いてくれる?私の話を――――」
岳山さんは自らの過去と僕に会ってから抱いていた思いを話してくれた。僕はときどき相槌をうちながら話を聞いていく、岳山さんは段々と悲痛な表情になっていくが、僕は目を逸らさずそれに向き合っていった―――
「―――それで、自分が求めるヒーローってのがなんなのか、わかんなくなっちゃったのよ!」
「もう私はヒーローじゃないのかも知れない……もうヒーローでいられないわ……」
そう呟く岳山さんの目尻には涙が浮かんでいた。
話は全部聞いた、岳山さんは勘違いをしている!少なからず僕はそう思う、だって―――
「岳山さんはヒーローですよ、僕はそう思います」
「慰めなんていらないのよ!!だって私はただちやほやされたくて、いまさら辞められなくて、ヒーローって仕事をしているだけなんだからっ!!」
岳山さんが僕の言葉を否定して叫ぶ。
「いいじゃないですか?ちやほやされたくてヒーローやってても」
「………えっ?―――」
「僕はいいと思いますよ、そういうヒーローがいても!」
「それってどういう意味よ……」
岳山さんが涙目でこちらを睨みながら聞いてくる、別にバカにしている訳でもないのだけれども……
「僕はいろんなヒーローがいて当たり前だと思ってます、みんながみんな僕の求めるようなヒーローじゃないことくらいわかってますよ。
だって僕、ヒーロー大好きなんですよ、オタクって言われるくらいのヒーローマニアです。だから色んなヒーローがいること、知ってるんです」
「色んなヒーロー…?」
「ええ、正義を貫き通して平和の象徴となったヒーロー、そんな人に憧れて手助けをするヒーロー。
一番に成りたくて常に研鑽を重ね続けるヒーロー。
両親のためにお金が稼ぎたいって思える優しいヒーロー。
規則を重んじて人々を先導するヒーロー。
ホントにたくさんの思いを持ったヒーローが世の中にはいるんです!!」
僕は自分が求める知っているヒーロー達のイメージを上げていく。
「でもそんなたくさんのヒーロー達が絶対に思ってることがひとつだけあります、それさえあれば誰でもヒーローに成れる、僕はそう思うんですよね」
「…そのひとつって何?」
「誰かを救けたいって心ですよ!」
僕は不思議そうな顔をする岳山さんに言い切った。
「お金が稼ぎたいなら企業家に成ればいい、みんなに愛されたいならそれこそ本業のアイドルに成ればいい。強くなりたいだけならどこかで修業に明け暮れているだけでもいいでしょう。力を誇示したいだけで、暴れたいだけでヴィランになってしまう人だっている……」
「やっぱりそうなんじゃない……」
「でもヒーローは同じようなことを思っていても、その行動で人を救けたいって思ってることが前提じゃないですか!貴女は違いますか?」
僕は未だに俯いている岳山さんに尋ねる。
「そんなこと考えたこともなかったし……やっぱりよくわからないわ、私がヒーローなのか……」
「じゃあ僕が教えて上げます!岳山さんは、いやMt.レディは立派なヒーローですよ!」
僕は岳山さんに断言する、彼女はヒーローに違いないさ。
「だから慰めなんていらないって言って―――」
「だってヘドロ事件の時、僕を止めようと…救けようとしてくれたじゃないですか?それって見知らぬ誰かを救けたいって思ってやってることでしょ?」
「―――っ!!」
僕の言葉に岳山さんが声にならない声を出し、顔を上げる。その顔は歯をくいしばって、涙を必死に堪えているものだった。
「でも、私は!―――」
「岳山さんが自分自身を認められないなら、貴女が救けたひとを見てみてください、きっとみんな幸せそうな顔してると思いますよ?助けてくれてありがとうって言われたことありませんか?思い出して下さい!」
「でも!…でも!」
岳山さんは意固地になって自分を認めようとしない、きっと相当悩んできたのだろう、僕の想像もつかないくらいに…でも僕はそんな彼女を救いたい、そう思ってしまったのだから!
「岳山さんが認めないなら……僕が認めます!貴女はヒーローだ!!世界中の誰もが貴女をヒーローと認めなかったとしましょう、それでも、たった一人でも僕は!……貴女がヒーローだって叫び続けますよ!!だって誰かのために手を差しのべられる、貴女はそんなヒーローなんだから!!」
僕は心の底からそう思っている、それを言葉にして、岳山さんに真っ直ぐぶつける。
「私…ヒーローでいていいの…?」
「勿論ですよ、Mt.レディ。貴女は立派なヒーローです。胸を張って名乗っていいと思いますよ」
瞳から大粒の涙を流しながら尋ねてきた岳山さんに僕は笑顔で答える。
「まだまだ駆け出しで半端者な私でも……ヒーローを続けててもいいの?」
「いいんですよ、誰だって最初は駆け出しで半端者です!これから成りたいヒーローに成っていけばいいじゃないですか!」
僕だってまだまだ道半ばだ、でもヒーローに成るために前に進むのは間違っていないことくらいわかる。
「でも私、途中で諦めちゃうかもしれないわ……」
「そうですね……じゃあ岳山さんが倒れそうなその時は―――」
「その時は?」
「―――その時は僕が必ず貴女を救けますよ!だって僕もヒーローに成りたいですから、貴女のヒーローにだってなってみせますよ!!」
僕はポロポロと涙を流す岳山さんの手を握りながら、力強く宣言した。救けてみせる、いまそう決めた!
「わたし、私は…う、うわあぁぁぁあんっ!!」
岳山さんが遂に堪えきれずに子供のように泣き出す、僕はあやすようにその頭を優しく撫でた。
「あ゛ぁぁあ゛ぁああ゛――――」
岳山さんはいっそう強く泣き出して、僕の胸に顔を埋めた。そうして暫くの間泣き続けた、これまでの悩みや不安を吐き出すように。僕はそれを許すように頭を撫で続けた、少しでも彼女が楽になれるように……助けになれるように。
僕が泣き出してしまったときにオールマイトも同じようにしてくれたな…あのときのオールマイトもこんな気持ちだったのかもしれない。
―――少し時間が経った後、岳山さんは泣き止んでこちらを見上げてきた。
「もう大丈夫ですか?少しはすっきりしたならいいんですけど……」
「――っー!あの、その……ホントにごめんなさい!」
岳山さんは顔を真っ赤にしながら僕に謝ってくる、気にすることなんてないのにな。
ははーん、さては僕が年下でその胸を借りて泣いてしまったものだから、申し訳なさを感じているんだな!お見通しさ!
「いえいえ、僕が勝手にやったことですから、ホントに気にしなくていいんですよ!」
僕は岳山さんに笑顔で告げる、気にすることはないと。
「いやいや、でも君みたいな年下にこんなの恥ずかし――私ホントそういうんじゃなくて、いやそうじゃないのかと言われるとそうでもないっていうか―――じゃなくて、その、あの違くないかも知れないけど、違うのよ!!!」
岳山さんは顔を茹で蛸のように真っ赤にしながら支離滅裂に言葉を発し続ける、半分以上意味不明、つまり……どういうことだ?
まあそれほどまでに年下に泣きついたことが恥ずかしかったのだろう。でも岳山さん安心してください、僕はこう見えても精神年齢で言えば26歳、恐らく貴女よりも年上です、気にすることなどなんにもないんですよ…!
「岳山さん、僕が年下だってことを気にしてるならそれこそ大丈夫!たぶん貴女が思っているより(精神的に)年を重ねてますから!」
「えっ、どういうこと……?緑谷君、三年生よね?」
「ええ、(中学)三年ですよ、もう(精神的には)大人に近いですね」
僕は岳山さんに事実をぼかして伝える、岳山さんは顎に手を当てながら考え込んでいる。元気が出てきたようでよかった!
「つまりは、じゅ…歳……ギリギリセーフってことに……いやでもまだ学生だし…それに年下は……いやありかもって思えてきたわ、将来性的には
岳山さんはブツブツと呟きながらさらに考え込んでいるようだ。
言葉の断片から察するにやはり年下の僕に慰められたことを気にしているのだろうな!岳山は一度決めるとなかなか頑固なタイプみたいだ!
「岳山さん!年のことなら気にしなくていいんですよ、僕は(精神的に年上なんで)気にしないですから!」
「えっ、緑谷君……それってつまり…そういうことなのよね?いいのね?」
「ん?ええ、いいですよ!というか(精神的には)あんまり年も離れていないと思うし…」
何かが噛み合っていないような気もするけど、会話は成立してるし、たぶん大丈夫だろう。
「そう、そうなのね!えーと、貴方の名前、緑谷…デク君で良かったかしら?」
「ああ、デクって書いていずくって読みます、緑谷出久です。デクってのはあだ名ですね、でもデクって呼んでくれてもオッケーです!好きなあだ名なんで!」
僕は名前を聞かれたので、訂正をしつつ答えた。デクもいいあだ名だと本気で思ってるしね!
「じゃあデク君って呼ぶわね、私のことは優でいいわ!」
「いやいきなり名前呼びはハードルが高いですよ、岳や―――」
「優よ!」
岳山さんが未だに真っ赤な顔をずいっと近づけて訂正を求める。なんか目が血走っているし、おかしなテンションじゃないか!?
「じゃ、じゃあ優…さん…」
「まあ、それでよしとしましょう!それでさっきの言葉に嘘はないわね!?」
「はい!?さっきと言いますと!?」
「年上でも気にしないってやつよ!言わせないでよ恥ずかしい!いやでも恥ずかしいのは私だし―――でもここまできたなら…よしいっちゃえ私!」
僕は優さんの気迫に押されてたじろぐ、彼女はまたもブツブツと呟き考え込み始める。
意外とこういう感じの人なのか!?でもなんだかそんなとこは僕と似てるかも…!つまり、人のこと言えないな!ここは聞きに徹しておこう……
「で!?どうなの!?」
「はい!さっきまでの言葉全てに嘘はありません!」
僕は思わず直立姿勢で答えてしまった、まさにたじたじってやつだ!
「よろしい…よし、じゃあ言ってしまうわ!ええ!いましかない気がするものね!」
優さんの目がぐるぐると回っているのが見てとれる、明らかにおかしな状態だが僕は抵抗ができない!
ホントにこと女性関係は耐性がない、そんなにぐいぐい来られると、なにもできなくなってしまうじゃないか!
こんな時に筋肉も
あー意識したらドキドキしてきてしまった、なんか距離感近いし、いい匂いもする……って考えたら更にだめじゃないか!!
この状況から抜け出したい…!誰か、誰か助けてくれ!助けてヒーロー!!
「緑谷出久君、いえデク君!」
「ひゃい!」
「私ね……貴方のことが、す―――」
「おーい!緑谷少年ーー!お待たせー!」
「きゃあ!?」
優さんがなにか言いかけたところでオールマイトの声が飛び込んできた。
助けにきてくれたんですね、流石は
「あれ、緑谷少年、お取り込み中?そちらは誰だい?」
「えっとこちらは岳山優さん、あのMt.レディですよ、オー……」
僕はオールマイトの名前を言いかけたところで止まる、今のオールマイトの姿はトゥルーフォームだ、この事実を優さんに勝手に教える訳にはいかない…!オ、お、おじさん……いやオールマイトはおじさんじゃない!だからえっと、えーと……そうだ!!
「おー、えーと、
「叔父貴!?いったいどういうことなの!?」
咄嗟に出てきた僕の誤魔化しに優さんが驚く、なんだよ叔父貴ってヤーサンじゃないんだぞ!!
「あの…緑谷少年、普通に八木でいいから…ね?」
「すいません、八木さん……」
オールマイトに呆れられ、平謝りする僕。ほんと面目ない!
「それで、なんか話途中みたいだったけど、続きはいいのかい?」
「あっはい!大丈夫です!緑谷君お借りしました!」
「…いいんだ、まあそういうことならいいんだけどね」
オールマイトの質問に慌てながら答える優さん、それでもさっきよりは落ち着いてきているようだ。
「じゃあいこうか、緑谷少年」
「あっはい、八木さん。それじゃ優さん僕らはここらで失礼します!」
「あ、うん、ありがとうね、デク君!そういえばデク君の学校ってどこ?」
「折寺中学校です!ここから一時間くらいのところですね、じゃあ失礼しまーす!」
ぎこちなく別れの挨拶をして、なにやら驚く優さんを尻目に僕とオールマイトはその場を後にした―――
――― 岳山 side in ―――
私はデク君と別れて家路についた、少し歩いて直ぐに部屋に着く。
それにしても自宅のあんな近くで出会うとは……とんだ偶然もあったものね。
「それよりもおおおお!!なにやってんのさ私ぃいい!!」
部屋に帰って直ぐにベッドに飛び込む、そして枕を抱き締めながら叫ぶ。
「あんな年下の子の胸でわんわん泣いちゃって!なによ折寺中って、まだ中三じゃないの!?しかも…しかもそんな子に―――」
『私ね……貴方のことが、す―――』
「わあああああ!!なに言おうとしてたのよ!ショタコンか私は!!!」
先程の出来事がフラッシュバックしてまたも叫びだす。
「ハァー、ハァー……でも
私は息を整えて、少し冷静になってから再び思い返す。
「また会いたいな…今度は大人の余裕を見せなきゃね!……でもいつになるやら―――」
その時の私はまだ知らなかった、再会の機会はわりとすぐだということに――――
――― 岳山 side out ―――
「ところで話をつけてくるとか言ってましたけど、なんの話だったんですか?」
「ああ、そのことか。もう話はまとまったよ、それでなんだが―――」
僕はオールマイトに今日呼び出された原因の話について尋ねると、オールマイトは神妙な面持ちで答えた。
「今日から家を出てこの街に住んでもらうから、そのつもりでよろしく!!」
オールマイトの言葉は僕の予想の斜め上を通りすぎ、もはや意味不明なものに感じられた――――
「―――というわけで、その次の日から僕は家を出て暮らすことになったんだ!」
「おー、中学ですでに家を出て修行とかやっぱすげえな!」
僕の話に切島君が興奮ぎみに相槌を打つ。八百万さんちでの僕の話はまだ続いていた。
オールマイトの秘密とワンフォーオールの秘密はぼかして話してたけど、結構話したな。
「それでそれで!そのあとはどうなったの!?」
「中学の途中で通学路が変わったのってそういうことだったのかよ!」
麗日さんとかっちゃんが、それぞれ言いたいことを言っている。僕は話の続きをする前に時計をちらりと見る。
「もういい時間だし、そろそろ帰ろうかみんな!」
時計の針は既に人様の家に入り浸っていい時間を通り過ぎていた。
「えー、気になるー!教えてよ緑谷ー!!」
「そーだそーだ!気になるじゃねえか!」
芦戸さんと瀬呂君がぶーたれている、でもこれ以上は八百万さんの家の人に迷惑だろう。
「ヒーローが他人に迷惑かけちゃだめだろ?続きは今度話すからさ!」
「まあそれもそうだな、迷惑かけたな八百万―――」
「いえいえ、私も楽しい時間でしたわ―――」
「ありがとね、八百万ちゃん―――」
「じゃあ帰ろう―――」
――――――僕らはそれぞれの家路についた、明日からはまた学校も再開して、ヒーローアカデミアでの生活が始まる。
それとさっきも言ったようにこの話の続きは……また今度だ。
これで第四章も終了となります!
タグに「Mt.レディがヒロイン?」を追加しました。
次の章は番外編を一回挟んでから、みんな大好きなあの祭りの話になります!
ひとまず、ここまで読んでいただき本当にありがとうございました!
これからも応援よろしくお願いします!