デクのヒーローアカデミア 再履修!【完結】 作:くろわっさん
ついに始まったオールマイトの修行、僕はオールマイトに呼び出され三連休を使って特訓することになった、その名も限界突破マラソン!僕は挫けそうになりながらも限界を超えて気合いで走った、でもゴールに着いてオールマイトを見たら安心して気絶してしまった…!
「―――っは!ここは!?」
どうやらゴールして気絶してしまったようだ、僕は身体を起こして辺りを見渡す。長机にソファー、観葉植物に大量の書類のある棚……
「どこかの事務所?ソファーに寝かせられていたのか…」
どこなのか考えているうちに、ドアの開く音がした。
「おお!目が覚めたのかい緑谷少年!」
オールマイトがドアから現れる、なんだかすごい驚いているようだ。
「ご迷惑お掛けしました、オールマイト。それでここはどこなんです?」
「ああ、気にしなくていいよ、ここは私の支部の1つでね、君が気を失ったからとりあえず連れてきたんだよ」
「そうだったんですね、ありが―――」
「気がついたか緑谷出久」
ドアから今度はサーナイトアイが出てきた、ふたりともいたのかホントに面目ないな……
「ナイトアイ、御心配お掛けしました…」
「限界を超えたんだ、気絶くらいするだろう。それよりだ―――」
当然といった顔のサーナイトアイ、しかし急に表情が固くなった。
「その身体について、説明してもらおうか?緑谷出久よ」
「身体?―――」
僕は自分の身体を見る。いつもより小さな手、薄くなった胸板、慌てて立ち上がるも低くなっている視界。
窓ガラスに反射して写る、見慣れていたはずの自分の姿―――
―――そこに写っていたのは前世と同じ姿をした僕だった。
「ハァー……ハァー……」
呼吸が荒くなっていくのがわかる、そして悪夢が甦ってくる―――――
『オールマイトォ!!』
貫かれたオールマイト、力なく倒れていくあの光景
『スマァァッシュ!! 』
うすら笑う宿敵、貫かれる自らの身体
『オールマイト……オールマイト…』
無力な自分、血を流すオールマイトの姿、甦る甦る甦る……記憶
『……ゃ……少年』
力のないオールマイトの声、消え入りそうな声。声。声。
そして終わりを告げる憧れ―――
『緑谷少年……ほんとうに…すまない…』
「うわああああぁぁぁぁぁああ!!!」
僕は叫びだした。
何もできなかったあの頃に戻ってしまう!オールマイトを
救えない、救われない、無力な自分じゃないか!力が、力がたりない、無くなってしまった。奪われてしまう、あの男に、オールマイトを、命を、未来を、希望を、全てを。
ダメだ駄目だダメだダメだ、ダメダメダメダメダメダメ―――
―――こんな身体じゃ、こんな僕じゃ、オールマイトを救けられない!!
「あああぁあぁぁぁ!!オールマイト!オールマイトォォオ!!!」
僕は叫び続ける、絶望にのまれもがくように。
「あぁ!こんな身体じゃ戦えない!!救けれない!!あああぁぁ――――ッハ!?」
叫び続けるなか―――強烈な勢いで肩を叩かれた。
「落ち着け!しっかりするんだ!!
マッスルフォームのオールマイトが僕の両肩を掴んで叫ぶ。
僕はその声に促されるまま、
「…ハァハァ……ハァハァ……フゥー」
力の鎧を身に纏い、だんだんと心が落ち着いていき、呼吸が少しずつ整っていく。
「落ち着いたか?緑谷少年?」
煙をたててトゥルーフォームに戻ったオールマイトが僕に聞いてくる。
「…はい、すみません…」
「目が覚めたと思えば、パニックを起こすとは…騒がしいな貴様は」
サーナイトアイが冷静に僕に言葉を投げかける。
「ホントにすみません…」
「まあいい、では落ち着いたのなら説明してもらおうか、先程までのあの姿と、貴様の現状について……詳しくな」
「はい、少し長くなるかも知れないですけど、全部話します」
サーナイトアイの問いかけに肯定して、僕は話始める。
「まず、さっきの姿は……前世での僕の姿です。見てもらった通りの力のない今とは違う柔な身体でした」
「前世ではずっとあの姿だったということかね?」
「そうです、その結果は……以前お話しした通りです…」
僕はオールマイトの問いかけに肯定する。
「そうして過去に戻った僕は、あのままではいけないと思い、幼い頃から鍛え始めました。しかし身体を鍛え続けるだけでは限界がくることがわかりました。そう、僕の身体はそのままではあの姿以上に大きくならないということです」
「人間の成長の限界は決まっている…それがやり直しなら当然わかるということか…」
「そうです。ワンフォーオールは自らの肉体の強度で許容上限が変わるんです、前世の姿では5%程度でした。ですがそれ以外にも個性が身体に馴染むと許容上限が増えることがわかったんです。それで僕は個性を馴染ませる鍛練を行ったんです、小さく小さく力を身体に巡らせてひたすらにワンフォーオールを身体に馴染ませました」
僕は息継ぎをしてさらに話を続ける。
「それでもオールマイトの力を充分に扱えなかった、正確には肉体の限度で扱えないことが感覚的にわかったってところですが…」
「ではなぜいまの姿に?」
「そこがこの話の本題です!」
サーナイトアイが本質を引き出す質問を投げてくる、流石に話が早い。
「僕は肉体の強度を増すためになにが出来るか考えました、そこで思い出したのが、オールマイトのマッスルフォームとトゥルーフォームのことです。オールマイトは傷ついて弱体化した肉体を個性で無理やり全盛期の姿にしていますよね?」
「ああ、そうだがそれがどう繋がるのかね?」
「僕はその逆転の発想をしたんです、あの健康でひ弱な前世の肉体を弱体化した状態と仮定すれば、個性で無理やり身体を大きく出来るのではないか、とね。結論から言えばそれは成功しました、ここまでが第一段階です」
僕は一旦話を区切り、そしてまた続けた。
「個性で身体を大きくすることは出来たのですが、2つの問題点があったんです。ひとつはオールマイトと同じくその姿になっているだけで消耗してしまうこと。もうひとつは元々筋骨隆々な身体をしていたオールマイトと違い僕はひ弱でしたから身体を大きくしてもひ弱なままだったんです、これではまともにワンフォーオールを使いこなせない」
「ふむ、それでどうしたのかね?その問題は?」
「はい、まずは持続時間を伸ばすことから始めました。使い続けることで馴染むことは分かってましたからひたすら変身し続けました、最初は1分、10分、そして1時間…少しずつ変身時間は伸びましたが、それでも気を抜くと変身が解けてしまったんです。
そこで参考にしたのが異形型や常時発動型の個性です、それらの個性持ちは当たり前のようにその姿を保っていますよね、そして使いたいときにその力を強めて使っている。
個性ってのは身体機能の一部、僕も変身した姿が本来の姿だと自分に思い込ませて変身を使い続けました。そして数年の歳月をへて、息をするように、変身した姿の維持が当たり前になったんです。
それこそ寝てるときでも変身していたので、もうここ四年くらいは解けたことが一度も有りませんでした、たぶん個性が常時発動型か異形型のようなものに進化したのかと思います」
「それが今回の特訓により限界を超えたことで、変身が解けた。ということだね」
「おそらくはそうでしょう。なにせいままで自分から解除しようとしたことがなかったもので、確証はないんですが」
僕はわからないことを素直にオールマイトに伝えた。わからないことはわからないのだ。
「ではその筋肉は―――」
「この筋肉は完全に自前です、個性に関係なく単純に長い年月をかけて鍛え続けただけで、普通の人と同じように筋トレをして、栄養を取り込み、筋肉を増大させる。筋肉を育てるにはこれしかありませんよね?筋肉は嘘をつかないし、筋肉に嘘はつけない…!」
「それを聞いて安心したよ、個性に胡座をかいた偽筋かと疑ってしまったよ!すまない!」
「いえいえ、筋肉は筋肉、個性は個性ですから、安心してください。まあ筋肉のおかげでワンフォーオールの許容上限も増えていって、ようやく5割の力を使いこなせるようになったんですけどね!」
そう言いながら僕とオールマイトはお互いの肩をバシバシ叩きあう。
「なるほど、つまり貴様の話をまとめるとこうか、
一つ目、個性を使って身体を大きく変身させる。
二つ目、変身を維持させ続けた結果、個性が進化。
三つ目、筋肉を鍛え上げてワンフォーオールを使いこなす。
それが貴様のマッスルフォームの真実というわけか」
「まあ正確にはいまの姿が
「わかりにくいからマッスルフォームとトゥルーフォームで統一させてもらう、こちらの都合だがな。つまり貴様の個性はワンフォーオール異形型亜種とも言えるものになったということだ」
サーナイトアイが僕の長々とした話をまとめてくれた、分かりやすくなったかな?
「ここまではわかった、ではなぜトゥルーフォームになったときにパニックを起こしてしまったのかね?」
「それが僕にもよくわからないんですよ、戻ったこと自体久々でしたが、以前変身が解けた時はあんなことにはならなかったんです。ただ急に嫌な記憶が甦ってきて絶望と恐怖を感じたんですよ」
僕はオールマイトの問に答えられなかった。自分でもおかしな現象だと思う。
「あれは
「PTSD!?」
「しかし以前は発症しなかったのだろう?それがなぜいまになって……」
「それはオールマイト、貴方が原因ですよ」
「「えっ!?」」
サーナイトアイの答えた意外な理由に僕とオールマイトの声が重なる。オールマイトが原因…?どういうことだ…?
「シンプルなことです。なにかを得られないことよりなにかを失うことの方がよっぽど辛いんですよ…つまりは緑谷出久はオールマイトと再び出会ったことによって、同時に失う恐怖を抱いてしまったんです。緑谷出久、心当たりはないか?」
「あります…僕はこの10年間オールマイトに会いたくても会えなかった…僕はいつしかオールマイトに会うことを諦めていたんです、この世界では会えないんじゃないかってね。
でもがむしゃらに鍛えることだけはやめませんでした、これはかっちゃん、僕の幼馴染がいてくれたから出来たことなんですけどね。いつの間にか強くなる目標が入れ替わっていたのかも知れません。
それで初めてオールマイトと出会ったあの日のことまで忘れてしまっていたんです、覚えていればあんなに動揺しなかったでしょうね、その喜びが恐怖につながるなんて……」
「なるほど…そういうことか…」
原因がわかったところで、僕ら三人は暫く黙り込んだ。
「しかし今の緑谷少年なら限界を超えることなんて早々ないだろうし、そこまで大きな問題ではないだろう!弱点やリスクを持っているヒーローだってたくさんいる、かくいう私もその一人だ!」
「オールマイト…」
オールマイトが静寂を破ってそう言った。でもそれじゃあ……
「だから今は個性を伸ばして更なる強さを得る訓練を―――」
「それじゃ、ダメなんですよ!!平和の象徴ってのは!!」
オールマイトの言葉を遮ってサーナイトアイが叫んだ。
「確かにリスクを抱えるヒーローは数多くいるでしょう、それで行動不能になるものもね。でも平和の象徴がそれじゃあダメなんだ、そうでしょうオールマイト?貴方は変身が解けたからって戦うことを…救うことを諦めますか?」
「それは……ないだろうな…」
「でしょう?つまり平和の象徴にはどんな姿になっても戦い続ける不屈の精神が必要不可欠なんだ!故に緑谷出久、今の貴様はオールマイトの後継者に相応しくない!!」
「……っ!」
サーナイトアイの正論に僕は返す言葉がない、このままじゃダメだ!
「サーナイトアイ!僕はオールマイトの後継者です!このトラウマからだって逃げ出したりしません…!だって僕は……オールマイトみたいな最高のヒーローに成るのだから!!」
「緑谷少年……!」
「よく言い切った緑谷出久!なら私が責任をもって貴様の腐った根性を叩き直してやる。よし―――明日の夜この場所に来い、わかったか?」
サーナイトアイは僕に一枚のメモを渡してきた、どうやら地図のようだ。
「はい!必ず行きます!」
「いいだろう、あとオールマイトは来ないで下さい、この件は私がなんとかしてみせます」
「わかった……よろしく頼む!」
「では今日はもう帰れ、緑谷出久」
僕はサーナイトアイに宣言をしたあと、指示にしたがってその場を後にした。家に帰ると疲れがどっと出て来て僕は泥のように眠った。次の日の朝、僕は久々に学校に遅刻したのだった―――
―――夜になり、サーナイトアイが指定した場所へと向かった、どうやら闘技場のようなところみたいだ。
中へとはいるとそこには闘技場の真ん中で一人で立っている胴着姿のサーナイトアイがいた。
「お待たせしました、サーナイトアイ!その格好は…?」
僕はサーナイトアイの元に駆け寄りいつもとは違う装いについて尋ねる。
「来たか、緑谷出久……今回は荒療治だ!貴様のトラウマを克服させるため、決闘を行う!!」
「はい!?」
僕はサーナイトアイのあまりにも脳筋な解決方法に驚きが口から漏れてしまう。
「足腰立たなくなるまでボコボコにしてやるから覚悟しろ!!」
サーナイトアイはビシッと僕を指差してそう宣言した。
――――こうして僕はトラウマを乗り越えるため、サーナイトアイと決闘を行うことになったのだった。
言っただろう、サーナイトアイも脳筋だとな!
んなわけねーだろ!って方には申し訳ないです……
タグに「オリジナル設定」と「異形型(筋肉)」を追加しました。
UAがついに九万を超えました、皆様には感謝感激です!十万目指して頑張ります!