デクのヒーローアカデミア 再履修!【完結】   作:くろわっさん

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前回のラストで三人とも脳筋なのか?というコメントが多かったので、少し解説します。

結論から言えば、三人とも脳筋です、間違いありません。―――ですが種類が違うのです。

デクさんは全てを筋肉で解決しようとする普通の脳筋。
サーナイトアイは考えた結果筋肉で解決するのが最適だと判断した知的脳筋。
オールマイトは全てを筋肉と力で解決してきた究極完璧脳筋になります。

ね?よくみると全然違いますね!



走り抜け!限界突破マラソン!

オールマイトの紹介でサーナイトアイに出会った僕はサーナイトアイにオールマイトの弟子として認められる。さらにサーナイトアイの話によればオールマイトと僕は死んでしまう運命にあるらしい!しかし運命は筋肉で変えられる!そのために筋肉を鍛え上げるぞ!!

 

 

 

 

「さて、話もまとまったことだし、早速修行を始めようか!」

「はい!オールマイト!サーナイトアイ!よろしくお願いします!」

僕はオールマイトの言葉に元気よく返事をする、よーし!やるぞぉ!!

「まずは基礎トレーニングだ、何においても基礎は大切だからね!緑谷少年はすでに自分で鍛えてるようだし、そのメニューの改善から始めていこう!」

「緑谷出久、今の君のトレーニング内容を説明したまえ」

「はい、今のトレーニングはまず走り込みから――――」

僕はオールマイトとサーナイトアイに今までやって来た基礎トレーニングの内容を話す、オールマイトはいいね!とかなるほどね!とか言っていたがサーナイトアイは次第に怪訝な顔になっていった。

 

「―――以上です」

「なるほどね、そんな感じなのか!うんうん、よく鍛えてるね!でもなんというか…あれだな、合ってないよ!」

「えっ!?」

「オールマイトの言うとおりだ、貴様のトレーニングはその体格にまるで合っていない。そうだな…貴様よりふたまわりは体の小さい奴が行っているような…そんなメニューだ」

「ほらでも緑谷少年も成長期だし、そこまで可笑しなことではないんだけどね!けどこれからは改善したメニューでトレーニングをしてもらう、いいね?」

「はい、よろしくお願いします!」

そうして僕のトレーニングメニューの改善が行われ、その日は解散となった。今回はアメリカンドリームプランとか変な名前を言われなかったな!

 

その日から僕はオールマイト達が考案したトレーニングを行っていった、今までのものよりきついがこなせないレベルではない、流石はオールマイトだ、僕の筋肉に合わせたベストなラインがわかっている!

 

それを続けて二週間程の時が経ったある晩、オールマイトからの着信があった。

 

「もしもし緑谷少年?今度の三連休にちょっと特訓するから予定空けといてね!」

「特訓ですか?なにをやるんです?」

「それは当日のお楽しみさ!あと親御さんはナイトアイが説得してくれることになったよ、ほんとは私が行きたかったんだがナイトアイから止められてしまってね!」

「ナイトアイが家に来るんですか?」

「今後のことを考えてのことさ、これから帰るのが遅くなったり、帰れなかったりすることが出てくるからね、親御さんに話を通すのは筋ってもんだろ?」

「そうですね、ありがとうございます!僕も母さんを説得するために頑張ってみます!」

「よろしく頼むよ、じゃあ今度の金曜日にまた会おう!あ、ちゃんと動きやすい格好できてね!」

そうしてオールマイトとの電話は終わった。

 

次の日に早速サーナイトアイが家を訪ねてきた。母さんの説得は難航するかと思ったのだけれども、あっさり終わった。それどころが「出久は頑丈ですから、ガンガンしごいてやってくださいね、よろしくお願いします」といった感じで、サーナイトアイが面を食らっていた。

それだけじゃなく、母さんは「出久の夢への一歩が開けたんでしょ?母さんが反対するわけないじゃない…頑張ってね」と言ってくれた。なんだか気恥ずかしかったけど、嬉しかったなあ。

 

そうして無事に修行に打ち込める環境が出来た、そして金曜日の放課後になり、僕はオールマイトとの待ち合わせ場所に着いた。ちなみに僕の格好はジャージにランニングシューズだ、動きやすいぞ!

 

「お待たせしました!」

「緑谷少年、学校お疲れさん!私もいま来たところだ!」

「それでこの時間から集合してやる特訓ってなんですか?」

僕はオールマイトに一番気になっていることを尋ねる。

 

「やる気満々だね!じゃあ先ずは説明といこうか!緑谷少年、君はフルマラソンって知っているかい?」

「フルマラソンですか?昔の主流の長距離走競技でしたよね?個性を使わないで42.195kmを走るっていう」

「その通り、大体二時間ほどでその距離を走るのさ!いまでは走るのに特化した個性の人も多くいるからね、すっかり人気は下火でね」

「もしかして僕にそのフルマラソンをやれと?」

僕はオールマイトに聞いてみた、いまさら42.195kmでへばるぼくじゃないんだけどな…

 

「惜しいね!君に挑戦してもらうのは…限界突破マラソンさ!」

「限界突破マラソン?なんですかそれ?」

「平たく言えば只のマラソンさ!…でも君にはこれから()()()()走り続けてもらう!!」

「―――!?」

僕はオールマイトの宣告に声がでなくなるほど驚いた。

 

「といってもずっと走るわけじゃあないんだけどね、フルマラソンのペースで72時間分の距離…つまりは約1500kmを三日三晩で走り抜いてもらう。もちろんヒーローになるための取り組みだから、走るためなら個性を使ってもいい、それはこちらで許可しよう。そして途中で休んでもいいし、歩いてもいい、三日後のこの時間に1500km以上移動してここに戻ってくればね!」

オールマイトはトントン拍子で話を進める、1500kmだって!?東京-沖縄間くらいあるぞ!!?

 

「じゃあこれ手首につけて、はいこのリュック背負って、あとこれ食費ね、大事に使うんだ!」

「えっ?なんですかこれ!?てかリュック重っ!!一万円が食費?」

「それのリストバンドはGPS搭載の時計だ、走行距離と現在時間が表示できる!リュックの中身は塩と砂糖、それに空のボトルだ、それで自由に水分補給するといい、日本はどこでも簡単に飲み水が手にはいるからね、いい国だ!食費はそのままの意味、それで食料を買うといい。1食につき千円も有れば余裕だろう!」

オールマイトが立て続けに説明をしていく、息つく暇すらない!

 

「じゃあ最後にルールの確認だ!!

1つ!1500km以上移動して72時間後にここに戻ってくること!ルートは自由だ、但し私有地などには入らないこと!

2つ!絶対に眠らないこと!休んでも歩いてもいいが睡眠だけはとってはいけない、限界を超えるためだ!

3つ!他人に迷惑を掛けてはいけない!ヒーローになるための修行で他人に迷惑を掛けていたら本末転倒だぞ!

以上三点だ!わかったかな?」

「あ、はい!わかりました、オールマイト!」

「よろしい!では出発だ!よーいスタート!!」

「えっ!?もう!?あっはい!いきまーす!」

そしてそのまま急かされるようにスタートを切った、オールマイトと会ってから3分も経ってないぞ!

 

―――30分後

ようやく少し冷静になってきた、これはその名の通り限界を突破するためのマラソンだろう、限界まで走り続けることで自分の力量と許容範囲を知れる、それに精神まで鍛えられる気もするな。急なスタートはヴィランの急襲などを想定してのことだろうか、ヒーローに準備時間など与えられないしな!

しかもこれはただ走るだけではない、休憩や食事をとるタイミングや走るペースの管理、単純に見えてやることは多い、それを三日三晩続けるんだ、かなりきついものになるだろう。しかし、オールマイトに与えられた試練だ!乗り越えて強くなってみせる!!

 

―――2時間後

ここまでですでに80kmを走り終えた、ワンフォーオールを使えば原付程度の速度で走るのは楽勝だ。このペースを暫く維持するか、それともペースを落として体力を温存するか…悩みどころだ!

 

―――6時間後

全体の1/12の時が経った、走行距離は250km、かなりのハイペースだがまだまだ余裕だな!この際だから1500kmといわず3000kmくらい走ってしまおうか!―――おっと油断はよくないな、ここらで食事をとりながら歩こう。余裕はたっぷりとあるしね!

 

―――9時間後

時刻は深夜、人通りも少なく気温も下がってきた、でもまあ走りやすくなっていいかな!未成年がこんな時間に出歩いて補導されないのかって?この超人社会だ、昼夜逆転の個性を持つ人なんて山ほどいる、そんな古くさいこという人はもういないだろうな。

 

―――12時間後

スタートから半日が経過して500kmは走ったぞ!やはり楽勝だな、ちょっと疲れてきたけど少し休めば大丈夫!さあ今日中に1000kmくらい走っちゃうか!!

 

―――24時間後

750km程走れた、もう半分走ったのか。でもやばい、見通しが甘かった…ペースが落ちてきている…すこし長目に休憩をして一気に体力回復だ!そしてそのあとにまたペースを上げよう!!

 

―――36時間後

きつい…!脚が重くなってきた、ペースも落ち続けている …眠気もかなり出てきた、立ち止まったら眠ってしまいそうだ…!いやオールマイトとの約束だ、絶対に寝ないぞ!!

 

―――42時間後

なんだか眠気がなくなって、気分も上がってきたぞ!!どこまでも行ける気がする!!なんだこの万能感は!!よっしゃ!いくぞおお!!ヒャッハー!!

 

―――48時間後

走行距離は1300kmを超えた、このままならあと一日で走りきれるだろう、しかしもう脚が棒のようだ、歩いては走りまた歩く、体力の限界が近い…!だがここからが本番だ!僕は諦めないぞ!!

 

―――54時間後

また眠気が襲ってきた、ヤバイヤバイヤバイ!意識を強く持って走らないと気絶しそうだ…!体はとうに限界を超えただろう、お腹も空かないし、どこも痛くない、というか感覚が鈍いのかな?

よくわからなくなってきた……

 

―――60時間後

あたまがまわらない、かんがえがまとまらない…いまどこだ?あとなんキロだ?わからない……でもはしることだけはやめないぞ!

 

―――66時間後

筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋肉筋筋筋筋――――

 

―――70時間後

辛いきつい、やめたい…なんで走ってるんだっけ?なんでこんなに頑張ってるんだ?―――――!!オールマイトを(たす)けるためだろ、忘れるな!救けるんだ!強くなるんだよ!!

 

―――7■時間後

頭のなかが真っ白だ、なにも感じなくなった、距離も時間もわからない、でも体を動かす、オールマイトのために、オールマイト…オールマイト……

 

 

 

―――ついに遠くの方にオールマイトが見えた、幻覚まで見るようになったらしい、でも嬉しい幻覚だな……オールマイト、救けてみせるんだ……

 

「――や少年!!もう少――!頑――れ!!!」

 

声まで聞こえてくるとは豪華な幻覚だ、僕ちゃんと走ってるよな?実は夢でしたとか笑えないぞ。なんか不思議と足だけは動くんだな、笑える。

 

「――緑谷少年!!こっちだぞ!!」

 

ああ、オールマイト今行きますよ……というか段々と声が近付いてるな……

 

「緑谷少年!よくやったぞ!!」

 

オールマイトのもとに辿り着けた、脚が止まった、もう動けないかも……ここまでか……

 

「ゴールだ!!ホントによく頑張ったよ!!」

 

ゴール?……ああゴールね、はいはい……ってなんだこれ、現実か!?いつの間にかゴールしていたのか―――

 

「よかっ……た――――」

 

 

 

―――安堵し、限界を超えた反動が襲ってきて僕の意識は途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――― サーナイトアイ side in ―――

 

「そろそろ戻ってきますね、オールマイト」

私は発信器から送られてくる情報を見ながらオールマイトに告げる。

 

「そうか、しかし本当にこれで良かったのだろうか?」

オールマイトが心配そうな顔をして聞いてくる。

 

「限界を超えたその先へと至る、そこでようやくその人の本質が見えてくる、彼の本質が正義のものなのか、平和の象徴として足り得るのか。そのための限界突破マラソンですよ」

「それはそうなのだかな、流石に過酷な目にあわせすぎではないか?緑谷少年の弟子入りからまだ二週間だ、心が折れてしまうかもしれん……」

オールマイトは緑谷出久の精神を心配しているようだった。

 

「これで折れるならその程度の人間だったってことですよ、それでは貴方の後継者としては相応しくない。それに、貴方が最初に提案した"とりあえず足腰立たなくなるまでボコボコにして限界を超えさせる"っていうプランよりかは平和的でいいと思いますけどね」

「それは言わないでくれ……つい自分の経験と重ねてしまったのだ…」

「いいですよ、そのために二人で計画を練っているのですからね」

オールマイトがやや落ち込んでいる。オールマイトのそういったところをフォローするのが私の役割だ、プラスのオールマイトにマイナスの私、そうやって昔はやっていたのだ。再び二人で何かを出来るなんて夢のようじゃないか!

 

「60時間経過したあたりからペースが変わっていない、とっくに限界は超えているようですね、おそらくいまは気力だけで走り続けている……大した精神力してますよ、彼は」

「うむ、前世での経験で得た尋常ではない精神力と14歳には見えない屈強な肉体。彼こそが私の後継者に相応しいと、そう心から思うよ」

オールマイトは緑谷出久をかなり高く買っている。確かに逸材だ、あれほどの人物はそういないだろう。しかし、彼の原動力はいったいなんだ?オールマイトか?なんにせよそれが崩れたとき、彼は平和の象徴に成れるのか……杞憂だといいのだがな。

 

「姿が見えてきたぞ!!おーい!!」

「ちょっと待ってくださいオールマイト、貴方が迎えにいってどうするんです……ここで彼のゴールを見届けなければ」

「ああ、すまない!」

緑谷出久の姿が見えた途端に走り出そうとしたオールマイトを止める。

 

「緑谷少年!!もう少しだ!頑張れ!!」

今度は声援を送り始めた、オールマイトも必死だ。

 

「おーい!緑谷少年!こっちだぞ!!」

彼はフラフラとオールマイトに近付き走ってくる。そしてついに辿り着いた、そのとき彼の脚が止まった。

 

「緑谷少年!よくやったぞ!!」

「ゴールだ!ホントによく頑張ったよ!!」

オールマイトが彼を激励する、その姿は本当に嬉しそうだった。

 

「よかっ……た……」

彼はオールマイトの顔をみると、そう呟いてその場に倒れた、どうやら気絶したようだ。

 

「大丈夫か!?緑谷少ね―――」

オールマイトが彼に近付いた瞬間、その身体から煙が吹き出した。

 

緑谷出久の姿が煙で見えなくなる、これは―――――

 

 

 

――――――煙が晴れた。その場に倒れていたのは……身長160cmほど、鍛えられてはいるが細い腕、だぼついたジャージに身体を包み、まだ幼さの残る顔立ちをした緑色の髪の少年だった。

 

「これは……まさか!?」

オールマイトが動揺している。私も同じだ、この現象は……

 

「緑谷出久……これが貴様の本来の姿(トゥルーフォーム)か―――」

 

 

――― サーナイトアイ side out ―――

 

 

 




今回は筋肉成分控えめでお送りしました!

次回も応援よろしくお願いします!

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