デクのヒーローアカデミア 再履修!【完結】 作:くろわっさん
朝早くから余裕をもって出発するも、道中で事件を立て続けに解決してしまい、救助訓練への遅刻が確定してしまった僕とオールマイト。みんなが危ないかもしれない、急がなきゃ!!
まずいぞ、このままだと遅刻が確定してしまう、なにか方法は―――そうか、これなら!
「オールマイト!このまま電車で向かうとなると遅刻確定です!」
「なんだと!?ならばタクシーを使うか?」
僕の言葉にオールマイトが問いかけてくる。
「僕に考えがあるんです、まずはトゥルーフォームに戻ってください」
「そうか、なら試そうではないか!」
そう言ってオールマイトがボフっと煙をたててトゥルーフォームになる。
「ありがとうございます、じゃあちょっと失礼して――っと!」
「ぬわぁーー!!緑谷少年!?」
僕はオールマイトを肩に担ぎ上げる。
「このまま全力でショートカットしながら走ります!そうすれば授業に間に合います!!」
僕はオールマイトにそう告げて走り出す、その速度は並の車より速い、そして最短距離をいける。名案だ!やはり持つべきものは筋肉だな!
「うおおおおおーーー !!」
「ぬわぁああああーーーーー!!」
僕とオールマイトの声だけが街にこだましていった―――
――― 爆豪 side in ―――
「くそがぁぁ!!」
俺はモヤに飲み込まれたあと、すぐに吐き出された。着地して直ぐに周りから視線を感じた。俺はすぐに体勢を整え辺りを見渡す。
「お、出てきた……なんだひとりかよ」
「ゲートから爆発が出てきたときは焦ったけど、こいつが原因だな」
「おい、ベラベラと喋るな。さっさと片付けるぞ」
そこにはヴィランが待ち構えていた、俺を囲むようにして喋り出す。ざっと10人はいそうだな…少し数が多い、やりづれぇな。
「あぁ!?誰が!」BOOM!
俺はやつらが動き出すまえに、爆破の牽制攻撃を仕掛ける。
「誰を片付けるってぇ!?」BOOM!!BOOM!!
そして一気に近付いて続けざまに二発の爆破を放つ。
ちいっ!ひとり避けられたか!!だがこれで残り8ぃ!!!
「このクソガキ!」
「死ねぇえ!!」
「当たるかよ!」BOOM!!
やつらのうち二人が同時に攻撃を仕掛けてくる、俺はそれを躱し爆破を放つ。だが浅い、戦闘不能には追い込めなかった。
「トドメだ―――っとぉ!?っぶねぇ!!」BOO――
追撃に移ろうとした瞬間に別の奴から遠距離攻撃がくる、なんとか躱せた!
この人数差、一撃だけでももらってしまうと立て続けにくらって動けなくなるか?ならいまは回避に専念して状況の打破を―――
俺はヴィランの猛攻をすべて避けながら辺りを観察する。ここは倒壊ゾーンの廃ビルの中のようだ、わざわざピンポイントでこの部屋に送られたのだ、おそらく敵はほぼ全員この一室にいるだろう。
―――よし見つけた!反撃開始だ、もうおしまいにしてやるよぉ!!!
「オラァ!オラァ!オラァ!」BOOM!BOOM!BOOM!
「どこに撃ってんだよ、下手くそが!」
「ヒャハハ!あいつ疲れてやがるぜ! 」
俺は狙いを定めて爆破を撒き散らす。あとはあれだけだな、いけるはずだ…!
「じゃあくそどもっ!!運がよけりゃあいいな!!」BOOOOOM!!!
俺は大爆破を放ちながら、勢いに身体を乗せて窓から飛び出す。
「アホか、追われることとか着地とか考えてねぇのか!! 」
ヴィランがなにやら俺に向かって叫ぶ、まああいつもここまでだな―――
次の瞬間には廃ビルの一室が潰れてなくなった、俺が柱を爆破して回ったからである。かなり上層階だったようで、ビル自体は倒壊を免れたが奴らは全滅だろう。まあヴィランなんてのはしぶとい生き物だし死んじゃいねぇだろ!
「一丁上がりぃ…!」BBBBOOM!...
俺は爆破を放ちながら着地する。ここにもう用はない、あの黒モヤをぶっ飛ばしに行こう。
そうして俺は広場の方へと爆破を放ちながら駆け出した――――
――― 爆豪 side out ―――
僕は走りながら前世での今回の事件のことを思い出していた。
確か僕と先生達以外はわりと無傷で終わってたってことは、相澤先生がやられるまえにUSJにつけば、ほぼセーフといったところになるのか。先生達は生徒を守るために矢面に立って戦っていたからやられたわけだし、僕は戦闘で自爆しただけだ。峰田君と蛙吹さんがいなければあのときはダメだっただろうな。
―――ん?ちょっと待てよ。前世で僕と一緒に峰田君と蛙吹さんはギリギリであの状況を退けた、そしてその僕は今ここにいる。つまり……つまり!!―――
「峰田君と蛙吹さんが危ない!!急ぎましょうオールマイト!」
「どうした急に…!ギリギリで間に合うのでないのか!」
「状況が変わりました、消耗覚悟で急ぎます!喋ってると舌を噛みますよ!!!」
88%フルカウル――!全身に今までより大量のチカラがみなぎる。
そうしてビルの上を跳び跳ねながら一気に雄英を目指す。遠くの方にはすでに校舎が見えていた―――――
――― 峰田 side in ―――
オイラたちは黒モヤのヴィランの個性で水難ゾーンに飛ばされてしまった、そしていま敵に囲まれた船の上にいる。オイラたちってのは―――
「本当にまずい状況になったわね峰田ちゃん」
先程水の中からオイラを救助してくれた蛙吹だ、蛙のくせになかなかおっぱいがあった、しかし今のオイラにそれを楽しむ余裕はなかった。
「まずいってレベルじゃねーよ!オールマイトを殺せる連中に囲まれてんだぞ!!しんじまうよぉ…」
「だからこそどうするか考えなくちゃいけないじゃない?」
「でもよぉー!無理だってぇ!!」
オイラたちはさっきからこんな会話を繰り返していた。オールマイトを殺す算段がある奴らになぶり殺し宣言されたんだぜ!生きて帰れねぇよ!!ああせめてヤオロッパイにひとタッチしたかった―――
「うわぁあああ!!」
船底から強い衝撃が走る、そうして船が沈み始めた。ヤバいよこれ!しんじまう!
「……うん、決めたわ。峰田ちゃん、今からあなたを私の舌を使って岸辺まで投げるわ。陸地についたらそのまま走って応援を呼んできてちょうだい」
「えっ?お前何を――」
「私はそれまでここで持ちこたえてみせるわ。それじゃあ!頼んだわよ!!―――」
「うわぁあああああぁーーー!!」
蛙吹がどんどんと話を進めていき、ついにオイラを掴んで勝手に岸までぶん投げた。
「ぐぇえ!?――蛙吹のやつ無茶しやがる…!」
オイラは地面に身体を打ち付けて着地する、蛙吹に悪態つくが、船の沈んだ辺りで水柱が上がっているのが見えた。
蛙吹が頑張ってる!オイラも急いで応援を呼びに行こう!―――
走りながら辺りを見渡す、どうやら暴風大雨ゾーンのドームの外側に近いようだ、遠目にセントラル広場が見える。
しかし助かったぜ、このまま応援を呼べばオイラたちはなんとか助かるな!―――
――――まてよ、助かる?応援??――応援って誰を呼べばいいんだ!?大雨ゾーンに誰がいるのかもわからない、セントラル広場では相澤先生がひとりでヴィランを相手している、こっちこれるわけないじゃないか!!
助かるって、助かったのはオイラだけじゃないか……オイラが怯えて喚いていたから蛙吹はオイラを助けてくれたんじゃないのか?まるでヒーローみたいに…!
それじゃあ蛙吹はどうなっちゃうんだよ!!
オイラは来た道を戻って水辺に向かった。そこには静かな水辺にだけがあった、先程のような激しい戦闘の様子はない。
突然、水飛沫が上がった。オイラは慌てて近くの茂みに隠れる。
「いやー手こずったぜ、何人やられた?」
「二人かな」
「いや、三人だ」
気絶した仲間を抱えたヴィランが岸に上がってきた、さらにザバッという音と共に次々と出てくる。何人いるんだよ…!というか蛙吹はどうなったんだ…!
「さてこいつ、どうしてくれようか」
そして蛙吹を抱えたヴィランが上がってきた、岸に投げ出された蛙吹は小さな唸り声をあげながら動かない。
やられちまったのか!?蛙吹、オイラを助けるために…すまねぇ、すまねぇ…でも敵もあんなに大勢いるし、オイラの個性は戦闘向きじゃねぇし…どうしようもねぇじゃねぇか!!
ついこの間まで中学生だったガキのオイラになにが出来るってんだよ!!ちくしょう…すまねぇ蛙吹、オイラここで隠れてることしか――――
「折角捕らえたJKだぜ、殺すまえにちょっとぐらいお楽しみしてもいいだろう?フヒヒ」
「シャハハ!ちげぇねぇ!散々やられたんだ、御返ししてやろうぜぇ…」
ヴィラン達の下衆な会話が聞こえた、その瞬間頭のなかが真っ白になり、オイラは気がつけば茂みから飛び出していた。
「やめろおおお!!」
オイラは精一杯叫ぶ、その声は震えていた。
「てめぇ!さっきのチビじゃねえか!そんなとこに隠れてたのか!」
「何しにわざわざ出てきた?声も体も震えまくってるじゃねぇか!シャハハ!」
ヴィラン達がオイラを見ながら小バカにしてくる。
「女の子はなぁ…女の子はなあ!たくさんの喜びがつまったオイラの宝物なんだよぉおおお!!――――」
自分に何ができるかもわからない、いやなにもできやしないだろう、それでもオイラは心の叫びを口にしていく。
「いいか下衆ども!女の子の胸には夢がつまってんだよ!そのお尻には希望が溢れてるんだよ!その笑顔からは無限の勇気が涌き出てくんだよ!!」
「それをお前らみたいな下衆どもが好き勝手していい訳がない!!そんなのオイラが絶対に許さない!!」
そうだ、オイラは女の子にモテたくてヒーローを目指してるんだ……世界中の女の子を守れるようなヒーローに成りたいんだ!!
「なんだこいつ?恐怖でとちくるちまったか?」
「欲まみれじゃねぇか!それでもヒーロー志望なのか?シャハハ!」
ヴィラン達がオイラを嘲笑う、笑えばいいさ!それでもオイラは―――
「オイラは女の子を守るんだ!!うわぁぁぁ!!」
オイラは自らの個性のブヨブヨを手当たり次第投げまくる。
「うお!?なんだ!」
「うげっ!くっついた!なんだこれとれねぇじゃねぇか!!」
何発かは命中したが、ほとんど避けられてしまった。
「てめえ!なにしやがんだ!オラァ!」
「おい、バカまだどんな個性か―――」
「――っぐへぇ!!!」
オイラは怒ったヴィランに蹴飛ばされて、地面を転がる。ちくしょう、いてぇ…
「なんだこいつぅ!全然大したことねぇじゃねぇか!!」
「杞憂だったか、ならば!とうっ!!」
転がっているところをさらに蹴飛ばされる。
「まだだ…!オイラが守るんだ……!」
身体中が痛い、辛い、苦しい。でもオイラは立ち上がる、守りたいから!!
「なんだよこの雑魚はよぉ!!」
「サンドバッグにしてやるぜぇ!シャハハ!」
また蹴飛ばされて転がる。でも立ち上がる。再び蹴飛ばされる、それでも立ち上がる。
―――そんなことを繰り返し続けた
「…まもる……おいらが……まも―――」
「いい加減しつけえんだよ!ぶっ倒れろ雑魚!!」
助走をつけたヴィランの蹴りが腹に突き刺さり、オイラの体は大きく地面を跳ね、倒れている蛙吹の近くに転がる。
左手の感覚がない、右まぶたは腫れ上がり目が開けられない、鼻血がとまらねぇ、視界が霞む。全身がもうズタボロだ…もう流石に立ち上がれない……限界だ―――
「すまねぇ、蛙吹…おいらは……もう…」
傷だらけの蛙吹を見つめて、自分の力のなさにうちひしがれた。そのとき蛙吹が目が開き、お互いの視線が合う。
「…みね…ちゃん…にげ……」
蛙吹は自身が動けないにも関わらず、オイラに逃げろと言ってきた。オイラの中でなにかが切れる感じがした―――
―――左がダメなら右がある!開けられる目を見開け!動かない身体を無理矢理にでも動かすんだよ!!限界を超えろ!超えろ!超えろおおお!!!ここで立てなきゃいつ立つんだ!オイラはまだ……立ち上がれる!!!
「あああぁぁぁぁぁ!!」
オイラは足を引きずり、左手をたらしながらも、右目を大きく開け、叫びながら立ち上がった。
「蛙吹には…!もう指一本触れさせねぇ!!オイラが相手だ!来いヴィランども!!オイラはまだ死んでないぞ!!!」
ボロボロになった右手で指を指しながら叫ぶ。オイラは絶対に諦めない、だってオイラは女の子を守るヒーローになるんだから。
「その死に体でそこまで吠えるか…根性だけは認めてやろう。だが時間をかけすぎた、そろそろ死んでもらおう」
リーダー格のヴィランがそう言う。たしかこいつは船を沈めた奴だ、その力がオイラに向けられ高まっていく。
「オイラは…蛙吹を守るんだ、死んでやれないぞ…」
蛙吹を庇うようにオイラは立ちはだかる。
「そうか……では死ね」
奴の力が高まりきった、おそらくあれをくらえばオイラは死ぬ。だが不思議と怖くはなかった、蛙吹を守ると思えば思うほど心の底から暖かいものが溢れてくる、最期の気持ちとしては…悪くないかな―――
―――ヴィランの一撃が放たれようとしたその瞬間に鉄板をハンマーで叩いたような甲高く大きな音がUSJ中に響いた。
「なにが起きた!?―――うおっ!?」
驚いたことで奴の力が消える、そのとき大きななにかが水面へと飛んできて特大の水柱が上がった。
「いったいなんだ!?―――またかっ!」
続いてオイラたちとヴィラン達の間になにかが降ってきた。
「もう大丈夫!」
―――それはオイラたちにとっての希望…
「僕が来た!!」
―――ヴィランどもにとっては絶望…
「助けに来たよ、峰田君!蛙吹さん!」
――――
――― 峰田 side out ―――
僕ね、峰田君、好きなんすよ(唐突な告白)
追記:蛙吹さんの名前を蛙水さんと誤ってしまいました。全国の蛙吹さんファン、梅雨ちゃんファン、FROPPYファンの皆様誠に申し訳ありませんでした。
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