デクのヒーローアカデミア 再履修!【完結】 作:くろわっさん
初投稿です、よろしくお願いします。
少年の物語の終わり
それはたったひとつの小さな過ちだった。
少年は心のままに駆け出してしまった、その道が終わりへと向かうものとも知らずに。
「 UNITED STATES OF SMAASH !! 」
顔のない男の"顔"に拳が突き刺さる。
それは平和の象徴《オールマイト》の揺るぎなき信念の一撃だった。
「僕の敗けか…」
顔のない男、オールフォーワンが呟く。
その言葉とは裏腹に彼の"眼"はまだ死んでいなかった。
「だが僕だけではない…君の未来への希望だけでも一緒につれていこうじゃないか…」
そういうとオールフォーワンは枝にも槍にもみえるようなものに腕を作り替え、ひとりの少年のもとへと猛烈な勢いで伸ばす。
その少年は本来そこにいるはずのないものだった。
しかし心に駆り立てられた少年はそこに来てしまったのだ、皮肉なことにその心にはヒーローとしての素質を持っていたから。
"考えるより先に、身体が動いていた"
少年が憧れの存在によって認められ、大切にしていた素質が、少年を終わりへと導いていく。
「くっ!!」
オールマイトが気がつくも、一瞬遅れてしまった。
その一瞬の間にオールフォーワンの腕は少年が避けることのできないところまで伸びていた。
狂気を宿したその腕は肉を食い破り、腸をかきみだし、温かな血を辺り一帯にぶちまけた。
「オールマイトォ!!」
少年の悲痛な声が響く。
腕は少年とオールフォーワンの間にはいったオールマイトの左胸を貫いていた。
目に入ったその光景に目の前が白くなりそうになった、しかし少年はすぐに跳ね飛び、オールマイトを越えてオールフォーワンに肉薄する。
「スマァァァッシュッ!!」
雄叫びとともに振り抜いた少年の拳がオールフォーワンを捉え、その身体をくの字に折り曲げながら大きく吹き飛ばす。
同時にオールマイトを貫いていた腕が抜け、巨躯が地面に沈んでいく。
爆発的な力に耐えきれず、ボロボロになる少年の全身、そんな痛みなど少年は気にもとめない。
身体を引き摺りながらオールマイトのもとへと近づいていく。
そう、少年は気にもとめない。自らの腹から背中にかけてポッカリと空いている穴のことさえも。
「オールマイト……オールマイト…」
少年が絞り出すように、名前を呼ぶ。何度も呼ぶ。
そうして少年は倒れ伏したオールマイトまでたどり着く。
「……ゃ…少年…」
普段のオールマイトからは想像もつかないほどの消え入りそうな声が少年の耳に届く。
「緑谷少年……ほんとうに…すまない…」
そう言うとオールマイトの身体から力が抜けていく。平和の象徴が消え行く。その言葉が少年に届いたかどうかは、もう彼にはわからない。
「オールマイト!待って!おいていかないでよ!」
緑谷と呼ばれる少年はオールマイトへボロボロになった腕を伸ばす。
「平和の象徴…そして次世代の希望の旗……その両方を僕の手で折ることが出来るなんてなぁ」
瓦礫のなかで醜悪な笑みを浮かべながら、オールフォーワンが呟く。
「これからは混沌の時代がやってくるぞ…楽しくなるなぁ」
指ひとつ動かせないほど満身創痍のオールフォーワンは、ないはずの"顔"で勝ち誇った表情をしていた。
「オールマイト…ごめんなさい…ごめんなさい……」
少年は動かなくなったオールマイトの手を掴みながら、うわ言のように届くことのない謝罪を繰り返す。
「必ず…必ず
少年の命の鼓動が弱まっていく、それでもその手はオールマイトを強く掴んで離さない。
「…だから……また…」
少年の口から言葉の続きが出ることはなかった。
受け継がれてきた希望の灯が消えていく、少年はもう動かない。
たったひとつの小さな過ちによって狂った歯車は戻らない。
ここでひとつの小さな世界が終わる。
少年、緑谷出久が最高のヒーローになるための物語はーーー
ここで終わりを告げる。
シリアスな感じで始まりましたが、基本的にはゆるーいギャグテイストでやってきたいと思います。