IS 鈴ちゃんなう!   作:キラ

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間隔が空いてしまいましたが、今年最後の投稿です。


第37話 ボールの行方は

『よろしくお願いしまーす!』

 

 現在時刻は午前10時。両チームともに整列して向かい合い、元気よく挨拶を行う。

 

「いいかみんな。ここ5戦、ウチは向こうのチームに負けっぱなしだ。今日は思わぬけが人も出てしまっているが、その分新戦力も加わってくれた。というわけで、今度こそ連敗を止めよう」

 

『うっす!』

 

 鈴の親父さんの言葉で気合いを入れた俺たちは、初回の守備に備えてそれぞれグラウンドの所定の位置に散らばっていく。こちらのチームは後攻なので、まずは相手の攻撃をきちんと凌がないとな。

 

「……えっと。1回の表、東地区チームの攻撃は……1番ライト、山口さん。……こ、こんな感じでいいんでしょうか」

 

「いいよいいよ、最高! 金髪の美人さんにウグイス嬢やってもらえるなんて夢にも思わなかったなあ」

 

「僕に打順が回った時もよろしく頼むよ、シャルロットちゃん」

 

「は、はい。頑張ります」

 

 成り行きでウグイス嬢に抜擢されたシャルロットが、メガホンを片手にバッターの名前を読み上げる。ただそれだけの行為でテンションが上がりまくってる敵チームの選手たちの気持ちはわからないでもない。美声だしな、あいつ。

 

「一夏、エラーするんじゃないわよ」

 

「無茶言うなよ。野球の試合なんて中3の体育以来だぞ? そもそも草野球なんだからエラーの1つや2つは大目に見てくれ」

 

「情けないわねえ。こういう時は見栄を張ってでも『任せとけ!』とか男らしいこと言えないの?」

 

「俺はできないことは口にしないリアリストなんだ」

 

「ヘタレ」

 

「なんとでも言え」

 

「巨乳巫女コス好き」

 

「お前見たのか!? 俺が念入りに隠していたあの本を見たのか!?」

 

「ほら、試合始まるからおしゃべりはここまで」

 

 ぐっ……かなり肝心なところで会話を切られた。弾から借りた分を含めて俺の部屋に封印された7冊のエロ本のうちどこまで発見されているのか非常に気にかかる……!

 

「プレイボール!」

 

「っと、いかんいかん。今は守備に集中しないと」

 

 審判の声に気を引き締められ、ピッチャー(鈴の親父さん)とバッターの動きに意識を集中する。……できれば、俺の方向にボールが来ませんように。

 

 

 

 

 

 

「1回の裏、西地区チームの攻撃は……1番センター、三浦さん」

 

 結局1回の表は三振、セカンドゴロ、センターフライの3者凡退で終了。幸いにもショートに打球は飛んでこなかった。

 そして今はうちのチームの攻撃。とりあえず先制点が欲しいところだが……

 

「球速いな、あのピッチャー。120キロ出てるんじゃないのか?」

 

「あら、120キロならわたくしバッティングセンターでそこそこ打てるようになりましたわよ?」

 

 ベンチに座って相手の投手のピッチングを観察しつつ、隣のセシリアと言葉を交わす。バッターボックスでは先頭バッターの三浦さん(27)がキャッチャーフライに倒れたところだ。入れ替わりで打席に立つのは、2番セカンド凰鈴音。

 

「それがだなセシリア。残念ながらバッティングセンターの120キロと――」

 

 キィン!

 

「……初球をヒットにしやがった」

 

 確かに真ん中あたりの甘いコースに入った球だったのだが、あの速球をいきなりライト前に弾き返せるのは鈴の思いきりの良さゆえなのだろうか。

 

「さすが鈴さんですわね」

 

 続いて3番の大村さんが一二塁間の深いところに転がるセカンドゴロを打ち、一塁ランナーの鈴はセカンドへ。ツーアウト二塁という先制のチャンスで、俺の初打席が回ってきた。

 

「4番ショート、織斑さん。……一夏、頑張ってね」

 

 ウグイス嬢からもエールをもらい、右のバッターボックスに足を踏み入れる。

 

「よし……」

 

 ここまでの投球内容から考えると、このピッチャーは球のスピードはあるけどコントロールがそこまでよくない。変化球としてカーブも投げているが、それも狙ったところに来ている印象は感じられない。

 

「ストライク! 2ボール2ストライク」

 

なら、基本的にはバットを振らず、真ん中に来たストレートを思い切り叩けばなんとか鈴をホームに帰せるか――

 

「ストライク、バッターアウト! チェンジ」

 

 ………。

 

「せめてバットを振りなさいよ」

 

「すまん」

 

 二塁からベンチに戻ってきた鈴に痛い一言を浴びながら、俺はグラブを手に取って2回表の守備につくのだった。

 

「バットを持つのが久しぶりだったとはいえ、1度くらいはスイングするべきだったか……」

 

 ――その後も、試合は着々と進行していき。

 

「な、なぜ? どうしてわたくしのバットはボールに掠りもしませんの?」

 

「セシリア。言い忘れていたが……バッティングセンターの120キロと人が投げる120キロは全然違うんだ」

 

「な、なんですって!?」

 

 ――3回裏のセシリアの第1打席の結果、空振り三振。

 

「うわ、しまった!」

 

 直後の4回表、ツーアウト三塁からのショートゴロを俺が弾いてしまい、痛恨のタイムリーエラーで1点を先制される。

 

「あちゃあ……でも今のは打球の勢いが強かったししょうがないわ。だからそんなに申し訳なさそうな顔するんじゃないの」

 

「鈴……サンキューな」

 

「まあこのまま負けたら点差のぶんだけ一夏の体をバットで叩くことになってるけど」

 

「どこのジャ○アンだよ!?」

 

 金属バットでそんなことされたら普通にシャレにならん。この世界はマンガじゃないんだぞ?

 

「……っと、ほいっ」

 

 続くバッターの打ったボールはセンター前へ抜けるかと思われたが、鈴が飛びついてグラブに収め、急いで二塁ベースに入った俺めがけてトスしてフォースアウト。打球を見てからの判断が速いからだろう、鈴の守備範囲は俺よりも相当広い。

 

「さすがだな」

 

「もっと褒めてもいいのよ?」

 

 ふふん、と得意げに鼻を鳴らす鈴を見ているとなんとなくからかいたい気分になった。

 

「可愛いな」

 

「んなっ……!? い、いきなり何言って」

 

「いや、あそこにいる三毛猫、無性に愛くるしいと思って」

 

「えっ……?」

 

 俺の言葉の真意に気づいた鈴の顔が、みるみるうちに照れと羞恥によって赤みを帯びていく。付き合い始めて3週間、ようやくうぶな俺でもこの手のジョークが飛ばせるようになって満足満足だ。

 

「あ、アンタわざとややこしい言い回ししたわね!」

 

「え、なんのことだ?」

 

「……後で覚えときなさいよ」

 

 ドスのきいた低い声を残してベンチに帰っていく鈴。少し仕返しが怖いが、多少のリスクをよしとしなければイタズラなんてものは行えないのだ。

 

 

 

 

 

 

「7回の裏、西地区チームの攻撃は……9番レフト、オルコットさん」

 

「気づけばもう最終回……そろそろわたくしも塁に出なければ」

 

 ルールによって試合は7回までとなっており、現在のスコアは3対1。この回の攻撃で2点以上取らなければこちらの負けが決まってしまうという厳しい状況だ。

 

「セシリア、とにかくバットに当てれば何か起きるわ!」

 

「頑張れセシリアちゃん!」

 

「先頭バッターが出るのは大きいぞー」

 

 ベンチの声援を受けながら左打席に入るセシリアの瞳は激しく燃えている……ような気がする。さっきの回に彼女の落球で相手に3点目を献上してしまったということもあり、絶対に打つという気合いが俺にまでひしひしと伝わってきていた。

 

「ふっ!」

 

 1ボール1ストライクからの3球目、セシリアの鋭いスイングが外角低めのストレートを捉えた。

 

「まずい」

 

 訂正。捉えたというより当たっただけだ。バットに弾かれたボールは勢いを失い、三塁線上をボテボテと転がっていく。

 

「走れセシリア! 全速力だ!」

 

「言われずとも!」

 

 一瞬打ち取られたかに見えた当たりだったが、弱いゴロになったのが幸いした。サードが急いで捕球して一塁に送球するも、それよりわずかに速くセシリアの足がベースを踏んでいたため、見事内野安打で出塁成功だ。

 

「一塁に近いところに立っていたのが勝因だな」

 

 ウグイス嬢のシャルロットの隣で腕を組んでいるラウラの言う通り、今のはセシリアが左打席にいたのが大きかった。もし彼女が右バッターだったらベースから遠い分一塁到達が遅れてしまい、アウトになっていただろう。

 ……などということを考えているうちに、次のバッターの三浦さんが三振に倒れていた。相手のピッチャー、ランナー出してからが強いんだよな。事実、ここまでのイニングもチャンスを作るところまではできても結局点が取れないという展開が大半を占めている。

 

「2番セカンド、凰鈴音さん」

 

 一死一塁で迎える打者は、今日2打数1安打1四球と調子のよい鈴。ここであいつがチャンスを広げるようなことがあると、いい場面でクリーンナップに打順がまわることになる。……とはいえ、4番が大穴の俺なのが問題だが。

 

「くそっ……」

 

 2ストライクからファールで粘る鈴に対し、投手の息遣いが荒くなっていく。ランナーを出してるぶん球数は多くなってるし、そろそろスタミナが切れてきたのだと思う。

 

「ボール! フォアボール!」

 

「よしっ」

 

 審判の判定に小さくガッツポーズをとり、鈴は一塁へと小走りで到達する。これで同点のランナーが塁に出たことになった。

 このまま3番の大村さんがホームランでも打ってくれれば逆転サヨナラだが、おそらくそううまくはいかないだろう。結局、チャンスで俺に打順がまわってくるのはほぼ間違いない。

 

「これまでの3打席である程度は球を見られるようになりはしたが……」

 

 今までの自分のスイングと投手の球筋を思い返す。全打席凡退してはいるが、回を重ねるごとに内容は良くなっていると言えるはずだ。

 

「うおっ!?」

 

 ピッチャーの投じたカーブがすっぽ抜け、キャッチャーミットのはるか上を通過する。このワイルドピッチの間にランナーがそれぞれ進塁し、一死二、三塁という一打同点の大チャンスを迎えた。

 

「それでも投手交代はなしか」

 

 向こうはエースと心中するつもりらしく、この局面でも続投する様子。正直ここで見たこともない投手に代えられると打てる気がしないのでこちらとしてもありがたい限りだ。

 

 キィン!

 

『おおっ!』

 

 大村さんのバットから響いた快音に一同ざわめくが、打球はもうひと伸びがなくライトの深いところでキャッチされてしまう。

 それでも三塁ランナーのセシリアがタッチアップで本塁へ突入し1点追加、さらに二塁ランナーの鈴も好スタートを切った甲斐あって三塁を陥れた。

 

「一夏くん」

 

 大きく息をついてから打席に向かおうとした時、5番バッターである鈴の親父さんに声をかけられた。

 

「下手にフォアボール狙いなんて真似はしなくていい。自分が決めるという気持ちで思い切り振ってこい」

 

「俺が決めるって……それ、ホームラン打てってことですか」

 

「そうだ。ウチの娘とつきあうつもりならそのくらいやってもらわないと困る」

 

「……気づいてたんですか」

 

「見ればわかるさ」

 

 にべもなく答えるおじさんの口ぶりから、本当に俺たち2人の関係は一目で看破できるくらいわかりやすいものだったのだと理解する。確かに、クラスのみんなにもバレバレだったしな……。

 

「まあ、やれるだけはやってみます」

 

 そう言って俺は背を向け、右バッターボックスに歩いていく。

 

「4番ショート、織斑くん」

 

「打て一夏! 全打席ヒットなしでは情けないぞ!」

 

「この前テレビで見た140キロに比べれば120キロなどわけないはずだ」

 

「おう、あんだけ黄色い声援もらってるんだから絶対打てよ坊主!」

 

 箒やラウラ、チームメイトのおじさんやお兄さんたちから応援(多少嫉妬が混じっているような気がしたが)を受けながら、2回だけ素振りを行い、スイングの感触を確かめる。

 

「ストライク!」

 

 1球目は低めギリギリのストレート。コントロールが乱れて偶然いいところに入ったのか、それとも――

 

「ボール!」

 

 2球目もストレートで、内角高めに外れて判定はボール。

 

「ただ、いいコースだったよな……」

 

 最終回にきて衰えていたボールの球威も戻っているし、コントロールも普通にいい。あとひとつアウトをとればあちらの勝ちという状況。おそらく残っている底力を俺との勝負に出し切るつもりなのだろう。

 

「ファール!」

 

 3球目は高めのボール球に手が出てしまい、打球は一塁ベースの右側を抜けていく。

 これで1ボール2ストライク、追い込まれた形になる。……だが、不思議と焦りはない。

 

「ファール!」

 

 4球目は予想通り、俺が1度もバットに当てていないカーブで決めに来た。それをなんとかカットし、ゲームセットまで時間を引き延ばす。

 

「ファール!」

 

 正直ストライクとボールの判定に自信がないので、ここからは明らかに外れたボール以外にはすべて手を出すつもりだ。その中で、甘いコースに来た球をかっ飛ばせれば文句なし。

 

「ファール!」

 

「ふう……」

 

 ここまで粘れているのは、もちろん投げられたボールに対しての反応が研ぎ澄まされてきているからだと思う。野球をわりと頻繁にやっていた時ですら、ここまで鋭い感覚は感じられなかった。

 こういう場面で成果が出るのはなんとも言えないが、これは今年に入ってからのISの訓練の賜物なのだろう。セシリアの複数のビットによる容赦ない攻撃やらシャルロットの多彩な射撃に曝されてきたことで、物を目で追う力が高められたのは確かだろう。

 

「ま、なんでもいいか」

 

 理由や要因はこの際関係ない。今この打席で結果を出すことができればそれでいい。なにせ……

 

 ――キイィン!!

 

 親父さんにあんなこと言われて、ホームラン打たないわけにはいかないからな。

 

 

 

 

 

 

「……涼しいな」

 

 雲ひとつない夜空では、半月のほかにたくさんの星々がおのおのの輝きを見せていた。真夏なだけあって気温自体は高いものの、夜風が心地よい程度に強く吹いているので問題はない。

 

「そういや、中学の時に天体観測やったよなあ。……確か、あの辺にあるのが夏の大三角だったか」

 

「アンタどっち向いてんのよ。夏の大三角形はあっちでしょ」

 

「勝手に現れて人の独り言に割って入るなよ」

 

「だったらツッコミどころのある独り言を口にしないでよ」

 

 いつの間にか俺と同じく店の外に出てきていた鈴と、いつものように他愛もない会話を繰り広げる。

背後の中華料理店の中では今日の試合の祝勝パーティーと称してチームのメンバー+応援メンバーによるどんちゃん騒ぎが続けられているだろうが、少しの間だけそこから抜け出したくなったというわけだ。

 

「もっとテンション上げたらどう? ちゃんとあの場面で打てたんだから」

 

「打ったには打ったが運のいいポテンヒットって結果じゃなあ。結局試合を決めたのは次のおじさんのホームランだし。俺も同点打を放ちはしたけど、その前のエラーで余計に失った1点分でプラマイゼロだろ」

 

「何言ってんの。そんなわけないじゃない」

 

 俺の言葉を聞いた鈴は、ニヤリと笑みを浮かべてそれを否定する。

 

「第1打席と第3打席でチャンス潰したぶん、評価はマイナス方向に行ってるに決まってるでしょ」

 

「ああ……そうかよ」

 

 一瞬だけ褒めてくれるのかと期待した俺が馬鹿だった。

 

「ひょっとして今、あたしが褒めてくれるのかもとか思ってた?」

 

「流れ的にそうかなと思いはした」

 

「そ。じゃあ、昼にからかわれた件に関しての仕返しは一応成功かしらね」

 

 スッキリしたあ、とつぶやく鈴の表情は本当にうれしそうで、ずっと俺に報復するタイミングを見計らっていたであろうことが容易に想像できた。……こんな小さな仕返しにそこまで気合いを入れていたのかと考えると、なんだか無性にこいつが可愛いやつに思えてきた。

 

「さっき、お前の父さんに釘を刺された」

 

「お父さんに? なんて?」

 

「ポテンヒットはぎりぎり及第点。交際は許可するが、娘を泣かせたら二度と朝日を拝めると思うなと脅された」

 

「……あたしのお父さん、そんなに過激な人だったかな」

 

「愛されてる証拠だろ。素直に喜んどけ」

 

 互いに苦笑を浮かべながらも、きちんと俺たちの関係を許してもらえたことに安心する。節度さえ守れば、今後も反対されはしないだろう。

 

「………」

 

 悩みの種がひとつ消えたと感じると同時に、いまだ解決の糸口が見えてこない別の悩みが改めて頭の中で持ち上がってきた。それについて考え込んでいるうちに、自然と俺の口から言葉が出てこなくなってしまう。

 

「どうしたの? 浮かない顔して」

 

 そんな俺の様子を見て、鈴が心配そうに声をかけてくる。……その優しさを帯びた声色を聞いたことで、少しだけ彼女に甘えたくなってしまった。

 

「ちょっとだけ、つまらない話につきあってくれるか」

 

 軽く前置きをしてから、今まで心の中で溜めこんでいた思いを少しずつ吐露していく。

 

「銀の福音の暴走騒ぎがあった時、俺がよくわからないやつが乗ったサイレント・ゼフィルスにやられたって話は覚えてるか?」

 

「ええ、もちろん」

 

「そいつの容赦ない攻撃を食らって、死ぬほどの痛みっていうのを生まれて初めて感じた気がする。……それで思ったんだ。俺が操縦しているISという代物は、こんな風に他人に大きな傷を負わせることができてしまう。……下手すりゃ人の命だって奪いかねない、とんでもない力を持ったものなんだって」

 

 今さらな話なんだけどな、と補足して、もう少しだけ言葉を続けることにする。

 

「スポーツの範囲内で試合を行うだけなら全然大丈夫だ。だけど、もしまたこの間のような実戦になった時……迷わずに全力の攻撃を相手に叩き込めるのか、正直よくわからない」

 

 福音との戦いの時は、途中で頭がスパークしたせいでそこまで考えが回らなかった。ただ必死に刀を振ることだけに集中し続け、気づけば作戦は終了していたのだ。……だからその日の夜、再び自分が振るった力について思案せずにはいられなかった。

 

「……怖いんだろうな、俺は」

 

 目的語が欠けた発言を最後に、語りを止めて夜空を見上げる。先ほど鈴が教えてくれた方角に目を向けると、なるほど確かに本物の夏の大三角形がそこに存在していた。

 

「………」

 

 俺を見つめたまま、鈴は難しい顔をして押し黙ったままでいる。急に暗い話をしてしまって、さぞかし迷惑をかけてしまったことだろうと今さらながらに反省する。

 

「店に戻ろうぜ。あんまり長い間抜けてると怪しまれるかもしれない」

 

「……わかった」

 

 空気を変えるために祝勝パーティーの中へ再び身を投じることを選択した俺は、足早に店内へと歩を進める。鈴は俺に向かって何か言おうとしていたようだが、結局こくんとうなずいて俺の後に続いて歩き始めるのだった。

 




本当はもっと野球の描写を凝ろうかと思っていたのですが、プロ野球が終了してから時間が経ちすぎたせいでモチベーションが低下、結果このような中途半端な出来になってしまいました。

ちなみにいろいろ考えた結果、この作品は残り14話でエピローグまでいくことになりました。その後番外編みたいな話は入りますが、とりあえず51話で最終回の予定です。

そういえば、IS再起動計画なるものが進行中のようですね。最新刊が出るのなら非常にうれしいです。新しいイラストにも徐々に慣れていきたいと思います。

では、来年もよろしくお願いします。

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