御坂美琴の額から手を離し、再びエイワスと一方通行は向き直ると、その身体をゆっくりと浮かび上がらせた
「・・・悪くねェモンだな」
「そうかね」
一方通行の劇的な変化にも、エイワスは一切の動揺を見せなかった。それどころかまるで新しい楽しみを見つけたかのようにその表情は嬉々の色に満ちていた
「これでようやく君は…この世界を肯定し得るピースになった訳か…」
「ンだよ、もォ少しぐらい驚いてもいいンじゃねェか?」
「元々『人間』でない私に人間味を求める方がナンセンスというものさ」
「・・・まぁやっとこさっとこだが、テメエの言う『徹底的に鍛え上げた鋭い刃を持つ剣』ってのに俺もたどり着いた」
「ふむ…ここまで来ると『ソードアート・オンライン』とは名ばかりだな…まぁ一筋に馬鹿に出来んが…」
「ハッ………」
「フッ………」
バサッッッッ!!!!!
純白の翼と青ざめたプラチナの翼が一瞬で100メートル以上に広がった。両翼の羽根が舞い散り、その輝きが反射し合い、万華鏡のように光彩が移り変わり、終劇の舞台を飾る
(来るっ!!!!!)
垣根帝督はそう直感し、御坂美琴の盾となるように彼女の身体を抱え込み衝撃に備えた
ドゴオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォッッッ!!!!
爆ぜた。両者の激突に一切の言葉はなかった。翼と翼がぶつかり合った莫大な衝撃の余波でアインクラッド全体が激震した
「オラアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!」
ドゴオオオオオオオオオォォォ!!!
「アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!」
ドゴオオオオオオオオオォォォ!!!
一方通行が吼える。しかし、今度はエイワスも吼えた。その出で立ちには不釣り合いな程に豪快な咆哮だった。そして二度、三度とお互いの翼を叩きつけた。それは、どんな天災さえも可愛く見えるほど凄まじい光景だった
(すごい…すごすぎます…!!私には入り込む隙がまるでない…!でも、それでもこの場を支配しているのは………)
(エイワス!!)
「・・・終わりだ。一方通行」
エイワスのプラチナの翼が横薙ぎに振るわれた。エイワスが司る『ありとあらゆる物理法則』の全てを無に帰す終末の一撃。もはやその滅びの一撃から逃れる術はない。しかし……
ギイイイイィィィィンッッ!!!!
「?????」
エイワスが抱いたのは疑問だった。気づけば自分の翼が一方通行の純白の翼によって軽々と弾き返されていた
「『解析完了』だ。クソッタレ」
「ばッ…!バカな!?『反射』だと!?一体どうやって…未元物質には既に対応しているハズ…これ以上私の攻撃をやり過ごす術など…!!」
「簡単な話だ。要はただの言葉遊びなンだよ」
「言葉…遊び…?」
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「・・・やっとこさっとこだが、テメエの言う『徹底的に鍛え上げた鋭い刃のを持つ剣』ってのに俺もたどり着いた」
「ふむ…ここまで来ると『ソードアート・オンライン』とは名ばかりだな…まぁ一筋に馬鹿には出来んが…」
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「テメエはこン時、俺の言葉を否定しなかった。つーこたァそれは俺の力がテメエの力とほぼ『同質』の次元にたどり着いてるって事に他ならねェ」
「そうと分かりゃ後は単純作業だ。テメエの力がどう動いてるのか理屈はよく分からねェが、俺の力を解析した後にテメエと俺の力を横並びに見て、足りねェ所を解析して反射が適用されるよォに再演算するだけだ」
「・・・なるほど…翼がぶつかり合う度に君の能力の精度が上がり…何もかも全て君の思惑通りになったという訳か…君を利用するつもりだったこちらがまんまと取って食われるとはな…」
「テメエはもうどンなに足掻こうと俺には1ミリも触れられねェよ」
「・・・認めよう、私の完敗だ。君は正真正銘の『ヒーロー』であり、紛う事なき『最強』だ」
「ゲヒャハァ!今さら分かっても遅ェンだっつの!歯ァ食いしばりやがれクソ天使!」
「俺の『最強』はちっとばっか響くぜェェェェェェェ!!!!』」
バゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォッッッッッッッッッッッッッッッッッッ!!!!!!!!
一方通行の純白の翼が叩きつけられると轟音が炸裂した。エイワスのHPバーは完全になくなり、轟音の中にオブジェクト破砕音を混ぜながら、まるでこの仮想世界に溶け込むように、終わりを告げる閃光となって消えた