とある魔術の仮想世界   作:小仏トンネル

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第62話 激戦

 

「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラオラァァァァァ!!!」

 

ズドドドドドドドドッッッ!!!!

 

「ちょっと原子崩し!撃つならもっとちゃんと狙って撃ちなさいよ!」

 

「うっせぇなぁ!照準ならちゃんと合わせてんだよ!!じゃねぇとアタシの能力はそもそも危険なんだっつの!っつーかアイツに当たっても碌にダメージ通らねぇどころか本当に当たってるかどうかも分からねんだからもうとりあえず撃つしかねーだろうが!!」

 

「五月蝿い羽虫だ」

 

「ああもうっ!だったらこれでどうだってのよぉっ!!」

 

 

御坂美琴は自分のメニューを表示しアイテムストレージを開くとストレージ内の全ての武器をオブジェクト化した

 

 

「超電磁砲!こっちも使え!!!」

 

「こンなモン俺には元から必要ねェ!!遠慮せずに全部ぶっ放せ!操作は全部俺がやる!!」

 

「任せなさいっ!アンタらの武器全部もらい受けるわよっ!!」

 

バチバチバチバチバチッ!!

 

 

麦野と一方通行も美琴と同じように自分が所持していた武器をオブジェクト化させた。そして美琴が全ての武器を自らの電気が発する磁力で自身の支配下に置く。剣を始めとし、短剣、斧、片手斧、槍などの無数の武器の刃がエイワスを囲い込んだ

 

 

「ふむ、『剣の舞』と言ったところか…なんともこの世界らしいがな」

 

「それだけじゃないわよ!全部残さず当てなさいよ一方通行!」

 

「偉そうに俺に指図してンじゃねェ!いいからとっとと撃てってンだよォ!後先のことばっか考えてねェでぶちかませェェェ!!!」

 

「いっくわよぉぉぉぉぉ!!喰らいなさい!!!!!」

 

ドゴオオオオオオオォォォォ!!!!

 

美琴が自分の目の前にある一本の片手剣を己の電撃で撃ち出す。彼女の能力名であり、真骨頂の「超電磁砲」である

 

「ついでに全部もらっとけクソッタレがァァァァァ!!!」

 

バリバリバリバリ!!!ズドオオオオオオオオオォォォォォォ!!!!

 

 

さしずめ『方位型超電磁砲』と呼ぶのが相応しいだろうか。美琴が放った超電磁砲の磁場と電力の向きを一方通行が変換することで、エイワスを包囲した全ての武器へと美琴の放った雷電を伝達させ、全ての武器が超電磁砲の弾丸となって火を噴き、エイワスに襲いかかった

 

 

「なるほど、これでは確かに逃げ場がないな……だが……」

 

 

バオオオオオオオォォォォッッ!!!

 

 

「「「!!?!?!?」」」

 

「それでも今の君たちは私の足下には届かない」

 

 

エイワスの背中から生えている青ざめたプラチナに輝く両翼が横一文字に薙ぎ払われる。それだけで己を取り囲んだ全ての超電磁砲をかき消し、美琴に向けて莫大な衝撃波が襲いかかった

 

 

「きゃあああああっ!!?」

 

「ッ!?超電磁砲!!!」

 

「チイッ!!」

 

 

一方通行がエイワスの引き起こした衝撃波で起こった風の向きを操作する。おかげで美琴の身体は段々と失速していきダメージは最小限で済んだ

 

 

「あ、ありがと……」

 

「礼なンて一々言ってる暇はねェぞ。このままじゃ十中八九こっちのジリ貧だ。ヤツは多分まだ本気の半分の力も出してねぇ」

 

「その癖して第1位の反射をくぐり抜けるわ、私と超電磁砲の攻撃を喰らってもHPが本当に減ってるのかも分からねぇわ…何より今の包囲型超電磁砲は今までの中で最高の攻撃って言って差し支えねぇだろ。それをあんな簡単に台無しにしてくれやがって…これ本当に私らで勝てんのか…?」

 

「どうした?もう終わりかな?」

 

「・・・あの余裕綽々の態度を見る限り本当にアイツは本気でやってないみたいね…参ったわね…こっちはもう最初っから本気の全開でやってるって言うのに……」

 

「おい第1位、テメエの『黒いアレ』ならどうなんだよ」

 

「オマエと垣根がいた時のヤツとの戦いで叩き込ンではみたが一瞬で吹っ飛ばされた。それを考えっと今やったとこで結果は多分同じだ」

 

 

75層のコロシアムでは一方通行、麦野沈利、御坂美琴とエイワスによる激闘が繰り広げられていた。しかし、戦況は明らかにエイワスの優勢。エイワスのHPバーは依然として満タンを保っているのに対し、美琴達はみな回復結晶や回復ポーションをフル活用してやっとのことで相対していた

 

 

「原子崩し、今アンタ回復結晶いくつ残ってる?」

 

「ポーションはまだ何個かあるが…結晶はさっき使ったのでスッカラカンだ…テメエはどうなんだ?超電磁砲」

 

「後2つ…でも私はポーションがもうほとんどないわ……一方通行は?」

 

「・・・結晶は1つ、ポーションはもォほとンどないとか言うレベルじゃなく数字的な0だ」

 

「・・・っかぁ…絶望だな……」

 

「正直、ここまで強いとは予想してなかったわ……」

 

 

圧倒的な力の差を見せつけられ、三人の表情、精神から段々と疲れと絶望感が顔を出す。勝利を諦めてはいえないと分かってはいてもどうにも勝ち目が見えてこない。そうなれば後はモチベーションが低くなっていく一方であることは自明の事だった。そんな中、一方通行が2人より一歩前に出て言葉を切り出した

 

 

「・・・オマエらはこっから逃げろ」

 

「・・・あぁ?」

 

「コイツは俺が殺る。だからオマエらは転移結晶使ってどっか適当な場所に逃げろ。恐らくだがあのヒーローがアレイスターをぶっ飛ばせばこの世界は終わる。それまでオマエらはどっかに隠れとけ」

 

「なっ…何言ってんのよ!アンタだけでコイツに勝てるハズないじゃない!それに此の期に及んで逃げられる訳ないじゃない!!アンタだってもう回復結晶1つしかないのよ!?」

 

「・・・テメエと同じよォな顔したヤツを1万人も殺した殺人鬼を今度は庇ってくれるとはねェ……どんだけおめでたい頭してンだよ、オマエ。俺のこと許してねェンじゃなかったのかよ」

 

「そっ!それは今は関係ないでしょ!私が今言ってるのは…!!」

 

「関係なくねェよ。こういう仕事にゃ俺が一番向いてるって言ってンだよ。いいからとっとと……」

 

バッチィィィン!!!

 

「「!?!?!?」」

 

 

一方通行の頬を突然に平手打ちが襲った。彼はエイワスに反射が効かないと分かった瞬間から反射を切っていたため平手打ちをマトモに喰らってしまった。しかしその平手打ちはエイワスのものではなかった。それは彼の隣に躍り出ていた麦野沈理によるものだった

 

 

「さっきから黙って聞いてりゃあよぉ……ふざけた事言うのも大概にしろってんだテメエ!!!」

 

「原子…崩し…?」

 

 

呆然とする一方通行なんぞお構いなしに麦野は彼の襟首を両手で掴みかかり、続けてなお一方通行に向けて怒号を飛ばした

 

 

「何が『こういう仕事にゃ俺が一番向いてる』だ!アホかテメエは!!まるっきり逆なんだよ!いいかよく聞けクソボケ!『この場において』その役割はテメエに一番向いてねぇよ!!」

 

「!!!!!」

 

「テメエにはあんだろ!?他でもねぇ帰りたい場所と守りたいヤツが!今までの行いについてこの騒動が収まったら話し合うって超電磁砲と今さっき決めたばっかなんだろうが!1人でカッコつけてんじゃねぇ!自分の事ばっか後回しにしてんじゃねぇぞ!!!」

 

 

己の内にある感情を全て吐き出し終えると、麦野は掴んだ襟首ごと乱雑に一方通行を投げ飛ばした。予期せぬ衝撃にたまらず一方通行は尻餅をついて倒れた

 

 

「ヅッ!!」

 

「ちょっ!ちょっと原子崩し!!」

 

「おやおや、仲間割れかな?見っともない」

 

「ああ゛!?うっせぇぞクソ天使!今からテメエの目にもの見せつけてやっからその目かっ開いてよく見とけ!」

 

そう言うと麦野は一方通行と美琴を見向きもせずに、エイワスの目の前へと1人歩み寄った

 

「ほぉ?君1人でやると言うのかね?まさかまだ君と私との力の差を認知していないとしたらそれはどうにも救えないぞ?」

 

「ムカつくがその通りだよ、私がこのままやってもテメエには永遠に勝てねぇだろうな」

 

「では、なぜk」

 

「あくまで『このまま』やればな」

 

「・・・ほぉ?」

 

(あーーーー…ったく…よりにもよってこんな方法しか思いつかねぇとはな…あ〜あ、私らしくねぇなぁ…いつだって自分の事を第一に最優先して、他のヤツなんかお構いなしって…そういうキャラだろうが…私はよぉ……)

 

「ちょっと…原子崩し…アンタ何する気?」

 

「・・・第1位、悪いがテメエの『守りてえヤツ』の面倒までは見切れねぇからな、ちゃんと反射の膜は使っとけ。こっから先は何が起こっか分かんねぇからな…」

 

「お、おいテメエ原子崩し!まさかアレやるつもりじゃねェだろうな!?ッザケンじゃねェぞ!テメエの方こそそれじゃ言ってる事とやろうとしてる事が違ェンだよ!それにアイツにゃそもそも通用しねぇかもしれねェンだぞ!?」

 

「んーなもんやってみなきゃ分からんでしょうが。少なくとも、さっき元から勝つつもりもなく啖呵切ったどっかの白うさぎよりはずっとマシだと私は思うけどね」

 

(・・・ああ、そういや何かいつかクラディールが言ってたわね……)

 

そう心の中で呟きながら、麦野沈利は自分の記憶の中へと思いを飛ばした

 


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