「今だッ!麦野!一方通行ッ!」
「ッ!?」
ズドオオオッ!ビシャアアアン!!
上条がその名を叫ぶと、ヒースクリフを緑色に輝く光線と凄まじい爆風が襲うが、それはヒースクリフの周りに突如として発生した「見えない防御壁」によって阻まれた
「!?!?な、なんであいつらがこんなとこにいんのよ!?」
御坂美琴はコロシアムで突如起きた事態を見るなり、コロシアムの中心に向かって走り出した
「あっ!?み、ミコト様!?」
「チッ、やっぱり通んなかったか」
「当たり前だ。デュエル中も『不死属性』を解除しなかったタマ無し野郎がデュエルが終わってから解除するとでも思ってンのかァ?」
ザザンッ!と麦野沈利と一方通行がどこからともなくコロシアムのフィールドに現れた
「・・・上やん君、これは一体どういうつもりかな?」
「どういうつもりかどうか、一番分かってんのはここにいる他の誰でもない、アンタなんじゃないか?」
「はて?何のことだかさっぱりだな」
「おいおい、此の期に及んでシラ切ってんじゃねぇぞクソジジイ」
「オマエの頭上に浮いてる『ソレ』が全部物語ってンだろォが」
そう言って一方通行はヒースクリフの丁度頭の上に浮かんでいる「ある表示」を指差した
「ちょっとアンタ達!なんでこんなとこに来て……………え?」
その場に駆けつけた御坂美琴が何よりも疑問に思ったのは、目の前に現れた自分にとって因縁のある2人ではなく、ヒースクリフの頭上に浮かぶ「紫色の表示」だった。その表示にはこう記されていた
[immortal object]
「『システム的不死』…って…どういうことですか…?団長…」
「・・・なぜ気づいたのか、参考までに教えてもらえるかな?上やん君」
「俺は最初からずっと疑問に思ってただけだった。…『アイツ』は今、どこで俺たちのことを監視して、世界を調整してるんだろう…ってな。でも、俺が考えてたのはそこまでだ。大半の疑問を解き明かしたのは、ここにいる一方通行と麦野だ」
「ほぉ…では聞き手を変えようか、なぜ気づいたのかな?アクセラレータ君、PoH君」
「なァに、簡単な心理だ。俺もよォく分かるぜェ?ゲームみてェな遊びは見てるより自分でやる方がよっぽど面白ェってな。もっともここまでタチの悪い遊びも中々ねェがな」
「私は元々、アンタは臭えと思って疑ってたんだよ。『生ける伝説』だとか『最強ギルドの団長』だとか『ヒースクリフのHPバーが緑ゾーンを跨いだところを見た者はいない』とかな。鼻を高くしすぎなんだよ。少なくともアンタが何かしらのカラクリを持ってるのは間違いねぇと噂を聞いた時から思ってた」
「そしたら大当たりだ。アンタのHPは俺との最後のクロスカウンターでも減らなかった。あれは例え本当にアンタの剣が早かったとしても、デュエルが決着した後のフィールドが安全圏内に戻ろうが関係なく俺の右手が当たればアンタのHPは緑を跨ぐはずだ」
「なるほど…君の右手は安全圏内をも無効に出来るのだったな…」
「それに加え、アンタは安全圏内を無効にする俺の右手を握った状態で麦野と一方通行の奇襲を受けたのにHPが減らなかった。そのHPで減ってるとは流石に言わせねぇぞ」
「ちょ!ちょっと待ちなさいよアンタ達!何言ってるか全然分かんないわよ!?団長を疑ってるとか何とか大当たりとかって!それに、デュエルが終わったならここは安全圏内になるんだからそもそも何をどうしたってHPが減るわけが…!」
「それがあるんだよ美琴。俺の右手は安全圏内でもHPを減らすことが出来る。第1層でキバオウさんを殴ったとこ、お前も見てただろ?」
「え?……あっ………」
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『いいぜ…お前がそこまでβテスターが許せねぇってんなら…』
『まずは!その惨めな『幻想』をぶち殺す!!』
バキイイイイィィィ!!!
『どわああああああっ!!!!』
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「だけど、『システム的不死』は純粋なこのゲームのオブジェクトだから壊すことは出来ない。石とか木とか窓の淵とかな」
「・・・圏内事件のヨルコさんが窓から落ちた時!!」
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『ッ!!!クソッ!!!!』
ダンッ!! [Immortal Object]
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「そうだ。記憶力が良くて助かるよ」
「だから俺達はオマエが完全に油断してコイツの手を取った瞬間を狙って奇襲をかけた。だがオマエのHPは1ダメージも減ることなくオマエの頭上には『システム的不死』が表示された…って訳だァ。簡単だろ?」
「つまり、アンタのHPバーはどうなっても黄色ゾーンまで落ちないようにシステム的に保護されてた。そういうことだろ?団長さん」
「なるほど…見事な連携と推察だ。賞賛に値するよ。だが、そんな確証もないことをよくもまぁ実行出来たじゃないか。ヘタをすれば君達はこのゲーム内では罪人か永遠の嫌われ者だぞ?」
「確証なら最初からあったぜェ?」
一方通行がヒースクリフを嘲笑うかのような目線と口調で言った
「なに?」
「団長さんよぉ…このゲームの管理人であるアンタなら、この私がラフィンコフィンのリーダーだって当然知ってるよなぁ?」
「・・・あぁ、存じ上げているよ」
「私は疑ったヤツは無罪潔白証明するまでとことん疑う性格でね。悪いけどちょっと前からアンタんとこのギルドにウチの組織のネズミを忍びこまさせてもらったわ」
「なんだと?」
「ほら、そこのヤツだよ。折角だし紹介してやるわ」
ザッザッザッ…
「・・・PoH様、お勤めご苦労様です」
「え、えええええっ!?」
「ああ、そういや今は超電磁砲の護衛やってるとか言ってたな。まぁその辺含めて、表向きは血盟騎士団の団員、しかしその裏はラフィンコフィンの優秀なスパイ…『クラディール』だ」
「えええええぇぇぇ!?く、クラディールさんってラフコフのメンバーだったの!?」
「お褒めに預かり光栄でございます」
そう言ってクラディールは手袋を捲り自分の腕に刻まれている『笑う棺桶』の刺青を見せた
「!?笑う棺桶…ラフィンコフィンのトレードマークの刺青!!」
「はっはっは!参ったな…まさか身内に既にスパイがいたとはな…組織が大きすぎるというのも考えものかな」
「言っておくが、テメエのミスはそれだけじゃねェンだぜェ?」
「超電磁砲の護衛をしながらもクラディールはアンタの身辺の監視を怠らなかった。そしたらつい1週間くらい前の夜に、クラディールはアンタを団長室の窓から監視してたところ、ある場面を見ちまったのさ」
「ヒースクリフ。アンタが自分のメニューを開いてこの世界から『ログアウト』するところをなぁ!!」
上条がヒースクリフに向けて強い口調で言い放った
「ろ、ログアウトって…!どういうことですか団長!?」
「・・・なるほど…誰にも見られないよう常に気を配っていたのだが見られてしまったのか…それはこちら側の落ち度と反省するしかないな」
「もう遅ェよバァカ。いい加減全部話してくれませんかねェ?『茅場晶彦』さァン?」
「はっはっは、そこまでバレてしまっているとは。もうこれでは隠していても仕方がないな」
「確かに私は『茅場晶彦』だ。付け加えるなら、最上層で君達を待つハズだった最終ボスでもある」
!?!?…ザワザワザワザワザワ…
ようやくフィールドにいる上条達の話の全貌を理解出来たコロシアムの観客達も、その事態にどよめきを隠すことが出来なかった
「そ、そんな…だ、団長が…このゲームの創設者の茅場晶彦…?」
「分かっちゃいたけど趣味悪いわねぇアンタ。最強のプレイヤーが一転、最悪のラスボスって訳か」
「中々いいシナリオだろう?ついでに言えば私も学園都市の人間だ。だから君達の素性も知っているし、向こうではこれまでにどういう事があったのかも全て知っている」
「やっぱりかクソッタレ。俺もこの世界に来る直前まではアンタを追ってたンだぜェ?もっとも、最終的な目標だったデータは既に訳の分かンねェ花女の手元に渡ってたンだけどなァ」
「はっはっは!初春君のことかな?確かに彼女には何か惹かれる物があってね。つい彼女にデータを渡したくなってしまったのだよ。まぁそんな日ももう遠い昔のことに感じるね…なにせもう2年も経ってしまっているわけだ」
「ッ!?初春さんまでっ…!」
御坂美琴は自分の知らないところで友人が巻き込まれてしまっていたことに対して、自分が助けられなかった不甲斐なさと、目の前の男に対する怒りでその身を震わせていた
「最終的に私の目の前に立つのも君達だと予想していた。だが教えてくれないか?なぜこの段階で君達はそこまで分かり合えているのかね?私の覚えでは君達の間にはとても割り切れる因縁はなかったと思うのだが」
「はん、私だって最初はそこのツンツン頭が来るとは思ってなかったわよ。最初に誘ったのは第1位だけだ。1人でこの規模の計画をやれるとは思わなかったし、コイツの腹の内は前から見えてたからな」
「ほほう…」
「ところがその第1位に全てを話したら、どうしてもそこの『ヒーロー』が必要だって言って聞かなくてな。だからそこは第1位の自由にさせてやったわ」
「ケッ…」
「そうかそうか…ならば上やん君。その誘いを受けたのは何故かな?」
「それはな…………」
そう言って上条当麻は今日ここに至るまでの経緯を話し始めた