とある魔術の仮想世界   作:小仏トンネル

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第53話 勧誘

 

「こちらへおかけ下さい」

 

「あぁ悪いね、失礼するよ」

 

 

美琴の部屋を訪れたヒースクリフは上条当麻が座る向かい側のソファーに座った

 

 

「今紅茶をお淹れします」

 

「あーいや気にしないでくれたまえ…いや、やはり貰っておこうかな。状況によっては話が長引きそうだ」

 

「・・・・・」

 

 

そう言いいながらヒースクリフは上条の顔を横目で見た

 

 

「どうぞ」

 

「うむ、悪いね。ありがとう」

 

 

スーッと飲む音を立てないように静かに紅茶を口にするヒースクリフ。そしてカップを置き直すとゆったりとした口調で話し始めた

 

 

「さて、上やん君。物は相談なんだがいいかね?」

 

「は、はあ…」

 

「ああ、ミコト君も気にせず座りたまえ。そんなところでの立ち話もなんだろう、上やん君の横でも私の隣でもどちらでも」

 

「いえ、私はこれで平気ですのでご心配なく」

 

「そうか、悪いね。さて…話を戻そうか上やん君」

 

「はい。何ですか?一体」

 

「血盟騎士団に入ってみる気はないかね?」

 

「・・・へ?」

 

 

ヒースクリフのあまりにも突拍子な提案につい素っ頓狂な声を上げてしまう美琴。そしてその提案に対して上条は一切の迷いなく告げた

 

 

「ありません」

 

「即答!?」

 

「ははは…そこまで明確に拒絶されると堪えるな…理由は何かあるのかな?」

 

「そちらこそ、急に俺を誘った理由はなんですか?」

 

「何、単純に優秀な仲間が欲しいだけさ。私の神聖剣に新しくユニークスキルを得たミコト君、そして上やん君の幻想殺しが揃えば血盟騎士団は名実共に最強ギルドだ。どうかね?ウチのギルドならやり方はいくらでもあるが…」

 

「いや、何もユニークスキルがあれば強いって訳じゃないでしょう?そもそも俺の幻想殺しは弱点だらけですし、ギルドやパーティーでやることにこだわりを感じないんで…唯一死ぬ確率がグンと上がるボス攻略でさえも挑むのは何人かのレイドな訳で…」

 

「だが、ミコト君は今回それでも苦戦をしいられ、少し前に取得し隠していたユニークスキルを使わざるを得ないまでに至った。違うかね?」

 

「・・・・・」

 

「上やん君。事態は我々が想像しているよりも遥かに良くない。今はより多くの戦力が必要なのだよ。確かに前線に出ることが増えることで危険は増えるかも知れないが、君が前線に出ることで救える人が増えるというのもまた事実だと思うのだが」

 

「・・・なら一つ試してみませんか?」

 

「試す?何をだね?」

 

「俺とデュエルしませんか?」

 

「なっ!?」

 

 

上条の提案に思わず美琴は仰天して声を上げた

 

 

「・・・ほぉ?」

 

「条件は無論1対1。団長と俺の『半減決着モード』のデュエルで」

 

「はぁ!?」

 

「・・・理由を尋ねてもいいかね?」

 

「いえ、簡単なことですよ。もし俺がギルドに入ったとしたら、前線に出る事が増えた時に俺を守ってくれるのは血盟騎士団の人達ですよね?だったら勿論のことその人達は俺より強くないと困る。それを試す為のデュエルです」

 

「なるほど…ではなぜ半減決着モードでのデュエルを望むのかな?」

 

「初撃決着じゃ単純に実力を見極め切れないと思ったからですよ」

 

「ふむ…だがデュエルまでするのに上やん君が勝った時の利益がないと思うのだが?」

 

「その時は、団長は俺からの『ある質問』について答えてもらいます」

 

「し、質問…?ちょっとアンタ、質問って何よ?別にそんなの今すればいいじゃない」

 

「いやいや美琴君、それこそ野暮というものだよ。せっかく上やん君の方からこうして対等に何かを賭けて戦える条件を提示してくれているんだ。私は甘んじてそれを受け入れる所存だよ」

 

「そりゃありがたい限りです。じゃあデュエルの場所はどうしますか?」

 

「最前線の75層の主街区『コリニア』の転移門前に大きめのコロシアムがある。そこならどうかな?」

 

「いいですよ」

 

「では今から1時間後、そこで待っているよ」

 

「わかりました。それじゃ」

 

 

そう言い残すと上条は美琴の煎れた紅茶もそのままに腰掛けていたソファーから立ち上がった

 

 

「ああ、楽しもうじゃないか。この一度きりの真剣勝負を」

 

「ちょ!ちょっと待ちなさいよアンタ!」

 

「じゃーなー美琴、紅茶美味しかったぞー。熱かったけどー」

 

「コラー!!」

 

ガチャ、バタン

 

 

そう言うと上条は部屋を出て行き、美琴は上条を目の敵のように見て歯ぎしりした。そしてヒースクリフは何故かその様子を見ながら不敵に笑っていた

 

 


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