とある魔術の仮想世界   作:小仏トンネル

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第52話 暴露

 

「大変ダ大変ダ大変ダ大変ダ大変ダ大変大変大変大変大変ダ〜〜〜!!!」

 

 

SAOがデスゲームと化してから2年以上が経過した。ここはアインクラッド第50層主街区アルゲード。全100層あるアインクラッドの丁度折り返し地点であるこの層も最前線だったのはもう半年以上も前のこと。街は人が行き交い、様々な物が溢れる豊かな街。そんな街の喧騒を無視してある店を目指して一目散に街を駆け抜ける者が1人。SAOでは確かな情報屋として多くのプレイヤーから信頼を寄せる「鼠のアルゴ」だ。そんな彼女は目的地の店に着いた瞬間、その入り口のドアを勢い良く開け放った

 

 

バァン!!!!

 

「大変だゾ!上やん!!!」

 

「いらっしゃい!今日は何の用だい!?」

 

「チッ!エギルだけかクソッ!!」

 

「そりゃあねえだろ!?」

 

「この際エギルでもいい!上やんがどこにいるか知らないカ!?情報をくれるなら金を払ってやってもいい!」

 

「お、マジか?」

 

「知ってるんだナ!?教えロ!」

 

「じゃあ500コルで、先払い」

 

「チッ!流石商人同士侮れないナ!ほら!さぁ早く教えロ!」

 

「まいど!それで、上やんならもうそろそろこの店に来るぞ」

 

「なっ!?何ぃ〜!?詐欺だ詐欺!私の500コル返セ!」

 

「やなこった。お?ほら、そうしているうちにお出ましだぞ」

 

「ムッ!?」

 

「おーっすエギルー!…と…アルゴ?珍しいな、こんなゴミ溜めに顔出すなんて」

 

「どこがゴミ溜めだ!?」

 

「そんなことより上やん!大変なんだゾ大変なんだゾ大変なんだゾ!!」

 

「落ち着け落ち着け、インデックスさんかお前は。で、どした?」

 

「み、みこっちゃんガ!みこっちゃんが新たにユニークスキルを取得したって公言したんだゾ!!」

 

「「!!!!!」」

 

 

アルゴが口にした話を聞いた途端、上条とエギルは驚愕の表情を見せた

 

 

「お〜…ミコトも遂にユニークスキル持ちか!流石は血盟騎士団の副団長、『閃光のミコト』様ってとこか?」

 

 

そんな呑気なことを言うエギルとは裏腹に上条は血相を変えてアルゴの肩に勢いよく掴みかかった

 

 

「お、おいアルゴ!!お前それ本当なのか!?す、スキルの名前!そのスキルの名前なんだ!?」

 

「い、痛い痛い上やん!一応オネーサンだって女の子なんだからもっと優しくしてくれヨ!」

 

「あ…す、すまん…そ、それでそのスキルの名前は…!?」

 

「た、確かスキルの名前は…れ、レース…?」

 

「ッ!?レールガン!『超電磁砲』なのか!?」

 

「あ、ああそれダ!『超電磁砲』!…あれ?でもなんで上やんがそれ知ってるんダ?」

 

「ちきしょう!何考えてんだ美琴のヤツ!」

 

 

勢いの落ちない口調のまま上条はメニューを開き、フレンド欄から美琴の現在地を調べる

 

 

「えっとここは…血盟騎士団の本部か!転移!グランザム!」

 

シュン!

 

「あ!ちょ!上やん情報料!…行っちゃっタ…でも知ってたからお金取れないのカ?」

 

「お、おい上やん!『ラグーラビットの肉』売ってくれるんじゃねぇのk…行っちまった…」

 

 

良いのか悪いのか、上条当麻は今日も人気者である事にあまり変わりはないようだ

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

第55層 グランザム 血盟騎士団本部

 

 

「美琴に会いたんですけど!通してもらってもいいですか!?」

 

「ただ今、ミコト様は普段よりも多くの来客がある為、ご本人の許可を得ているかそういった証拠がない限りはお通し出来ません」

 

「上やんだ!俺の名前で確認とれば分かるハズだ!」

 

「・・・ご本人に確認を取りますので少々お待ち下さい」

 

 

上条は55層にある血盟騎士団本部に来るなり、受付嬢にエギルの店の時の勢いそのままに問いただし、上条の切羽詰まった顔を一瞥すると、本人に確認を取る為に受付のカウンターに設置されているギルド内直通電話で美琴に連絡を取った

 

 

「もしもし失礼致しますミコト様。上やんと名乗るお方が面会を希望しておられます。いかが致しましょうか?…はい…はい…承知いたしました。では失礼します」

 

「上やんさん、ミコト様に確認が取れました。お通ししてよろしいそうです。ミコト様のお部屋はそちらを真っ直ぐに行って右手にあります突き当たりにございます」

 

「ありがとうございます!」

 

 

受付嬢の言葉を聞くなり、上条は美琴の部屋へと駆け足で向かい、美琴の部屋にたどり着くとその部屋の戸をノックした

 

 

コンコン!

 

<どうぞー

 

ガチャ!バタン!

 

「おい美琴!お前能力のこと打ち明けちまっていいのかよ!?今まで隠してきたんだろ!?」

 

「もー何よ。珍しくアンタの方から来てくれたと思ったらアンタまでスキルの話?それ話してからホームの方にまで情報屋とかが押しかけて来て大変なんだから。今お茶煎れるからとりあえずそこ座んなさいよ」

 

「んな呑気なこと言ってる場合か!」

 

「いいから早く座れこのバカ!!」

 

「は、はいぃぃぃぃ!!!」

 

 

夫婦喧k…もとい口喧嘩の勝敗は一瞬にして決した。結果は美琴の圧勝である。それを機にようやっと上条は落ち着きを取り戻し、平常心に戻り、美琴の部屋にある応接の為のフカフカのソファーに腰掛けた

 

 

「うわ、すっげぇ…フカフカだ…」

 

「はい、紅茶」

 

「あ、スマン」

 

 

美琴が差し出した紅茶を飲む上条。豊かな香りが鼻腔をくすぐり、スッキリとした口当たりの中に味わい深い紅茶本来のコクが口の中に広が…

 

 

「熱っつう!?何だこれ熱っ!?」

 

「あら?そうかしら?同じポットで注いだ私の紅茶は普通の温度なのに…バグかしら?」

 

「お前絶対わざとやってるだろ!」

 

「さぁ〜?何のことやら?」

 

「かぁ〜!ムカつく!!」

 

「あっはっは!…で?何で今さらになって能力公開したのか?って感じかしら?」

 

「そうだよ!何で今さら!?詳しくは知らねえけどやっぱ知られたくねぇもんじゃなかったのか!?」

 

「それがもうそうも言ってらんないとこまで来てんのよ。周りの人から嫉妬の目で見られるとかそういうこと抜きにしないと、正直こっから先はなおさらキツいわよ」

 

「・・・へ?」

 

「・・・アンタはこの前の74層のボス攻略の時いなかったわね。ボスの名前は『The Gleam Eyes』。両手剣を持ったデカイ悪魔型のモンスターだったわ。クラインさん達のギルドと軍の人と攻略に当たったんだけど、そこは結晶無効化エリアだったのよ」

 

「なっ!?ぼっ、ボス部屋がまるごと結晶無効化エリアなのか!?」

 

「そうよ。その時そこにいる人達も少し覗いて様子見るくらいの感覚だったから面食らったなんてもんじゃないわ。人数も満足にいなかったからかなり苦戦したわ。だから使ったのよ、多分あのままだったら死者も出たわ」

 

「そ、そんなに強かったのか…」

 

「まぁ正直前々から火力不足は痛感してたわ。レベルを上げても、レイピアの性能を上げても、ソードスキルを鍛えても現状はあまり変わらない。もう出し惜しみしてる暇はないわ。もはや能力を使ってもボスは中々倒れなかった。最後なんかレイピア一本まるごと犠牲にした超電磁砲まで撃ったのよ?」

 

「そ、そうか…」

 

「だからもう素直に公開したわ。少し前から気づかない内にスキル項目の中に追加されてた。ってね。嘘は言ってないでしょ?」

 

「お前…その少し前ってどうせ最初っからだろ……」

 

「まぁそこは置いといて。クラインさんも何となく分かってくれたからアンタと同じようにユニークスキルとして一介の情報屋に話した。って訳よ」

 

「なるほどな…まぁ心強いよ。これからはお前も一切の加減がない全力で戦えるってんだからな!」

 

「心強いかどうかはまだ分かんないわよ。確かに火力不足は補えたけど、ボスが強いのは変わりない訳だし。まぁボスと同じくらい規格外なのは団長もだけどね」

 

「あぁ…あの人も中々すごいよな。アレは俺らみたいな現実の能力じゃなくて、本当にこの世界オリジナルのユニークスキルなんだろうけど」

 

「団長が扱う攻防自在のユニークスキル『神聖剣』。剣術もさることながら圧倒的なのはあの防御力。ギルドの中ではおろか、全プレイヤーの中で団長のHPバーが緑を跨いだところを見たことがある人はいないとまで言われてるからね」

 

「あの人の盾は俺と違って防御専門の盾だからな…それに引き換え俺のスキルは右手だけ…とほほ…」

 

「そんなこと言って、全スキルを無効化出来るだけアンタの右手だって重宝してるわよ。純粋な攻撃で押してくる敵には意味ないけど」

 

「それに、敵でも人でもソードスキルは打ち消せてもその剣は消せねぇからダメージはどっちにしろ受けるからな…弱点だらけなのは変わんねぇよ…」

 

コンコン!

 

 

2人の会話を遮るように美琴のドアをノックする音が部屋に響いた

 

 

「誰かしら?…はーい!どちら様ですかー?」

 

<私だミコト君。失礼だが上げてもらってもいいかね?上やん君も来ているんだろう?

 

「だ、団長!?すいません今開けます!」

 

ガチャ!

 

「どうぞ!」

 

「どうも失礼するよ。やぁ、こうして攻略会議以外で顔を合わせるのは初めてだったかな?上やん君」

 

「・・・ヒースクリフさん…」

 

 

突如として2人の前に現れたのはSAO最強プレイヤーの呼び声高い、最強ギルド血盟騎士団の団長「ヒースクリフ」だった

 

 


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