とある魔術の仮想世界   作:小仏トンネル

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第51話 決意

 

「っ…ぅん…ん〜?」

 

「・・・よォ、目ェ覚めたか?」

 

 

ずっと気絶していた麦野が目を覚ました場所は最後に記憶のある闇夜の森ではなく、フカフカの布団を掛けられたベッドの上だった。まだ醒めきっていない頭の中を何とか起こし周囲を見渡す。するともう1人いるべきはずの者がいないことに気づく

 

 

「・・・第1位だけか」

 

「あァ」

 

「ここは?」

 

「俺らの家『だった』トコだ」

 

「そうか…そりゃ残念だったな」

 

「口先だけだったら何とでも言えンだろ。特にオマエの場合はな」

 

「・・・で?あのクソ天使は何だったわけ?」

 

「・・・あれが『ドラゴン』だ」

 

「なるほど…で、そのドラゴン天使は倒せたわけ?」

 

「この浮かねェテンション見てもそう思うのかよテメエは」

 

「それもそうか」

 

「全く歯が立たなかった…次元が違ェってなァあァいうのを言うンだってのがよく分かった…その気になりゃ一瞬で俺を殺せたのにも関わらず、手加減されて生かされた…ただボコボコにされるならともかく、ここまでコケにされたのは初めてだ…ムカつくぜ…」

 

「・・・まぁ相手が悪かったんだろ。垣根が言ってた通りの存在だったなら、ホストだった垣根も消されて当然だし、まともに相対出来るはずもねぇ。私に関しちゃ見ただけで気絶したんだしな」

 

「実際こンなもンさ…学園都市最強って言ってもそりゃ能力者の中だけの話だ…どこの馬の骨とも知れねェ三下に伸されるわ、ただの一端の研究者の銃弾だろうが拳だって喰らう…だが、それでもな」

 

 

一方通行は何かを決意したように項垂れた頭を上げ、その拳を握り締めた

 

 

「守りてェモンだってある、壊されたくねェモンがある。その為だったら最強なンて肩書きはいくらでも捨ててやるさ。だが何を引き換えにしてでも徹底的に殺す。ぶっ壊す。その為の能力だ、その為のこっから先だ」

 

「・・・へぇ、あの暗闇にいたアンタでも、そんな顔が出来るとはね」

 

「・・・第4位、頼みがある」

 

「何よ、改まって」

 

「俺をオマエのギルドに入れろ」

 

「はぁ?」

 

「オマエが自分で言ったろ、この世界の俺らの敵はモンスターじゃねェ。プレイヤーを含めたこの世界そのものだ。だったらテメエらのとこに身を置くのが1番の近道になンだろォが」

 

「・・・へぇ…」

 

「どォなんだ?」

 

「・・・まさかアンタと本格的に組むことになるとは思いもしなかったわ」

 

「決まりだな。だが言っとが下になるつもりはねェし、目的を達したらとっとと出て行く。もし組織の中で俺に逆らうヤツがいたら…」

 

「・・・いたら?」

 

「なりふり構わず全員殺す」

 

「・・・ハッ、それでいんだよ。元々ウチの組織はそういう組織だ」

 

「俺が関わるだけで増える恨みも敵も段違いだぞ」

 

「あら?此の期に及んで他人の心配?優しいのね。でも生憎だけど、んなもん怖がってたら人なんざどこでも殺せねぇよ」

 

「言っとくが俺に逆らって殺されンのはテメエも例外じゃねェぞ」

 

「何よ。今さらながらまるで入れるなとでも言いたげな口調ばかりじゃな〜い?もしかして怖気づいちゃったかにゃ〜ん?」

 

「死ぬまで言ってろ」

 

「はいはい、肝に命じておくよ。とりあえずは歓迎してやるよ。殺人ギルド『ラフィンコフィン』へようこそ」

 

スッ…

 

「よろしくなァ、せめて解散まで互いが死なねェことを祈ってやるよ」

 

ガシッ!

 

(・・・精々首を洗って待ってやがれ学園都市、エイワス、そしてアレイスター…。今はテメエらの思い通りになってるってのも癪だが、いつかはそれも全部ぶっ潰す。だからここで、もォ一度だけ誓ってやる…)

 

 

こうして彼らは出会い、同じギルドの仲間となった。彼ら以外の誰もが知り得ない物語はこれで終わり、そして始まる。学園都市の裏側で起こっていた血みどろの戦いは、奇しくもこのアインクラッドで…

 

 

(最も救いから遠い方法で何もかもを血みどろに救ってやるよ)

 

 

もう一度始まりを告げたのだった

 


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