とある魔術の仮想世界   作:小仏トンネル

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第49話 『ドラゴン』

 

「なるほど…暗部に精通してるどころか暗部の中でもさらに深いところにいたようですね…」

 

「まぁ今もやってることは変わんねぇよ。殺人ギルド『ラフィンコフィン』のリーダー『PoH』ってのも私のことだ」

 

「なるほど…では今私たちに向かって来たのもラフィンコフィンのメンバー…ということですか」

 

「はっ、そういう事だ。どうだ第1位?さっきから何も言ってねぇようだが、驚きすぎて声も出ねぇか?」

 

 

麦野が一方通行に聞くと、彼は一呼吸置き、首に片手を当てると関節をコキコキと鳴らしてからその口を開いた

 

 

「・・・誰?オマエ」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

「・・・なぁ、誰なn…」

 

「はあああああぁぁぁぁぁぁ!!?」

 

「うっせェないきなり…今は音遮断してねェンだからもっと小せェ声で話せよオバさン」

 

「おま、お前だって暗部にいただろうが!?なんで知らねぇんだよ!?言っとくけど暗部なだけじゃなくてアンタと同じレベル5だぞ!?顔ぐらい見た事あんだろ!?」

 

「・・・あァ〜、そういや何か一回土御門の野郎が写真とで見せてきた事があったっけなァ…実写で見るのは初めてだけどなァ」

 

「実写とか言ってんじゃねぇよ!こちとら映画じゃねぇんだぞ!?」

 

「この世界を実写と表現していいかは果たして謎ですけどね…」

 

「うっせぇな!ぶっ殺すぞ!」

 

「・・・でェ?その第4位様も俺らにケンカ売るつもりかァ?言っとくがこの状況でオマエに勝ち目はねェと思うぜェ?」

 

「私も同意見ですが、どう致しますか?麦野さん」

 

「ああ、ああ。分かってるっつーの、さっきの見てただけでも分かった。いつもならムカついて今すぐにでも殺してぇところだが、今の私じゃアンタらには勝てねーよ」

 

「往生際が良くていいことだなァ。その度量を評価してHP−10000で勘弁してやンよ」

 

「それがそうは行かないのよ。アンタらはこれから私と一緒に行動を共にしてもらうわ」

 

「あァ?何を根拠にンなことぬかしてやがンだ?」

 

「これを見な、今朝私のとこに届いたメールだ」

 

 

そう言うと麦野は自分のメニューを開きメールを開くと、そのウインドウを一方通行と垣根に見せた

 

 

「・・・これは…要するに内容としては一方通行さんの暗殺…と言う事ですか?」

 

「そういうことだ。でもまさかその第1位のすぐそばに第2位までいるとは大誤算だ。とりあえず部下だけ特攻させて実力を見たが無理そうだって分かったわよ」

 

「・・・人の命を軽く見るところは相変わらずですね」

 

「テメエらだって似たようなもんだろ。それより現実世界で私が見聞きして知った第2位と大分差があるようだがどうなってんだ?」

 

「色々あったんですよ」

 

「あァ、こいつの場合は色々ありすぎて説明すンのが一々面倒だ」

 

「あっそ…まぁいいわ。とりあえず本題に移るわ」

 

 

そう言うと麦野はメールのウインドウを2、3回指で小突く

 

 

「この暗殺依頼のメールの差し出し人は不明だ。名前も名乗らなかった。だがコイツは間違いなく私の素性とアンタの素性も知ってる上でメールしてきたハズだ」

 

「・・・つまりこのメールの差し出し人は…」

 

「学園都市の人間…それも上層に関わる方の人間か…恐らく統括理事会レベルの」

 

「あぁ。アンタらもどうせこの世界に来たのは何かしらの命令なんだろ?」

 

「『も』ってこたァオマエもか?」

 

「まぁな。ナーヴギアとSAOの発売日にアジトにその二つと手紙が入ってた荷物が届きやがった。手紙にはただ一言しか書いてなかったがな」

 

「『このゲームを一度プレイしろ。それが今回の仕事だ』ってな。そしたらまんまと嵌められた。って話だ」

 

「なるほど…招かれざるして招かれた…と言う事ですね」

 

「だから私は元から考えてたのさ。『この世界に私を送り込んだ誰かしらがこの世界に跡を残してるハズだ』ってな。だったら話は簡単だ。100層までクリアするなんつー目標は二の次だ。10000人のプレイヤーの中にこのゲームの真の目的を知ってる誰かがいるか、その情報、データの在り拠がこの世界のどっかにある」

 

「だからオマエはそれを目的として標的をプレイヤーに絞った殺人ギルドを結成した。って事か」

 

「そう。人を殺せば人の依頼、そして人の情報が入る。それがどんどん派生すればいつか何かに辿り着く。それに賭けた」

 

「そして今まさに辿り着いた。というわけですね?」

 

「あぁ、このメールの発信者こそがその鍵だと私は思ってる」

 

「それで、ソイツを探して殺すのに協力しろって事かァ?」

 

「そうよ。当然やるでしょ?アイツらの思惑にハマりっぱなしで良いのかにゃ〜ん?第1位様?」

 

「・・・面白ェ」

 

「話は決まったわね。ならまずはメールの差出人を探さないと…」

 

「垣根、出来るか?」

 

「もちろんです、一方通行さん」

 

「なら早速やれ」

 

「はい」

 

「な、なんだお前ら主語も無しに会話しやがって…マジでもう言葉にしなくても通じ合ってるとかそういう関係なわけ?」

 

「失礼ですが麦野さん。そのメールを私に転送してもらえませんか?こちらが私のIDです」

 

「あぁ?アンタに?…まぁ別に転送ぐらいなら構わないけど本当にメッセージ以外なにも載ってないから差出人は分かんないわよ?」

 

 

そう言いながら麦野はウインドウを操作し、件のメールを垣根のIDにメールを転送した

 

 

「いいんですよ、もうこれで全部分かりますから」

 

 

すると垣根はメールとは別のウインドウを何枚も開き、それらを同時に操作し始めた

 

 

ピッピッピッピッピッピッ…

 

「アクセスコード…Dark Matter。システム始動。探知プログラム…起動。SAO内全メールストレージの探知、開始します」

 

「・・・なぁ第1位、第2位は一体何なんだ?あれもアイツの能力の内か?」

 

「アイツはホストなンだよ」

 

「・・・はぁ?」

 

「俺もその全貌は未だに分からねぇが、SAOの世界を構築するコンピューターの一部のデータの一括管理、制御、演算がヤツの脳を介して行われてる」

 

「・・・なるほど、ホストってのはホストコンピュータってことか」

 

「だが、実際には情報量は一部どころじゃねェ。ヤツの管理するデータに少しでも触れたり、アクセスした履歴さえあればその情報を元手に辿ることが出来る。まぁ分かりやすく言えば逆探知みてェなもンだ」

 

「あんたも大概すごいやつと一緒に生活してたわね」

 

「難癖は数え切れねェよ。まぁだからアイツにかかりゃメールの差出人の逆探ぐらい朝飯前だろ。詰まる所、電子のやり取りであるメールは必ずこの世界のコンピューターを一度は通る。ならその履歴を辿れば…」

 

「見つけました。後は辿るだけです」

 

「ほら、本人もあァ言ってンだろ?」

 

「こりゃ捗るわね…ウチのギルドにぜひ欲しい…あっとごめん、もう第1位のモノだったわね」

 

「マジでやめろ気色悪ィ」

 

「メールを差し出したサーバー、及びプレイヤーを発見しました!」

 

「よくやった。ンで、結果は?」

 

「サーバーは私という存在の構造と似通っています。まず間違いなく学園都市の差し金でしょう」

 

「やっぱりね…」

 

「そして、差出人は……ッ!?!?」

 

 

垣根は自分が探し出したメールの差出人のデータの名前を見るなり、その白い顔からさらに血の気が引いていったような表情をしていた

 

 

「?おい、どうした垣根、一体何があった?」

 

「・・・『ドラゴン』…」

 

「ドラゴン?んなもんこの世界じゃちっとも珍しくないじゃない」

 

「ちっ、違うんです…この『ドラゴン』というのは…」

 

「あァ?何だってンださっさと答えろ垣根」

 

「ある日、SAOの膨大なデータ量の中から、この名を見つけました。しかし、この世界のホストを務める私でもその詳細を知ることは許されなかった…学園都市の最重要機密…もはや名前だけでも知っていれば良い方です…恐らくその詳細を知り得るのは統括理事会クラスの最高幹部のみ……」

 

「!!やっぱり統括理事会が絡んでやがったか…!」

 

「もはや誰かを指す名前なのか、作戦コードなのか、組織の名前なのかすらも分かりません…ですが、これだけは言えます…」

 

「学園都市が隠す真相の謎を紐解く存在であり…このSAOという世界の…根源的な何かに関わっている物であるということに間違いはありません」

 

「この世界の根源だァ?」

 

『左様』

 

 

その瞬間、一方通行達の背後に新たな月夜を照らす使者が舞い降りた

 


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