とある魔術の仮想世界   作:小仏トンネル

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第3話 悪夢の始まり

 

「さて、お次はユーザーネームか…」

 

 

ナーヴギアを使いSAOの世界に入り込んだ上条当麻はユーザーIDやパスワード、自分のアバターの初期設定を終え、最後にこの仮想世界での自分の名を指すユーザーネームを決める段階まで来ていた

 

 

「こういうのはアレだろ?やっぱ自分のリアルの名前をそのまま使うのはタブーなんだろ?ならまぁ、コレでいいか」

 

 

まだ慣れない手つきで英字のキーボードをタップし自分の名を入力する上条当麻。その手で入力する名は日頃の学校生活を共に送る友人の間での一種の自分の愛称のようなものだ

 

 

[『Kamiyan』でよろしいですか?]

 

 

「はは、まさかアイツらのつけたあだ名をこんな場面で自分から名乗ることになるとはな…Yesっと…」

 

 

[ Welcome to Sword Art Online!]

 

 

「おっと!?これで全部終わりですか!?じゃ!始めるとしますか!」

 

 

すると、上条当麻の身体はまばゆい光に包まれ見る見るうちに殺風景だった初期設定の背景に色がついていき、思わずまぶしさと鮮烈な背景の配色に上条は目を閉じてしまう。しかし、次に目を開けた瞬間、上条当麻は新たなる別世界の扉の前にいた

 

 

「おおおおお〜!!すげぇ!すげぇすげぇすげぇ!まるで本物の自分の身体みたいだぜ!」

 

 

上条は物珍しさからか自分の身体の感覚を確かめるようにその場でジャンプしたり、手を握ったり、走り回ったりしている。その様はまるで水を得た魚のようだ

 

 

「いやしっかし、これ本当に俺の身体なんじゃないか?右手の力もそのまんまだったして…『幻想殺し!』……なーんつってな!…って、あれ?」

 

 

自分の右手に宿る力の名を叫んで正拳突きを撃つ上条。しかし、その後の自分の行為の恥ずかしさから日常的な仕草をつい行った時、ある違和感に気づいてしまった。そう、「自分の頭を掻きむしった」瞬間に

 

 

「こ、これ?い、いやいや!そんなまさか!さっきだってアバター作った時にちゃんと……」

 

 

その違和感を確かめる為に上条は近くの噴水の水面に写る自分の顔を確認する。しかし、上条が抱いていた違和感はその行為を経てして確信へと変わるそう、現実世界の自分の容姿と瓜二つの「いつものツンツン頭な自分の顔」を見た時に

 

 

「う、嘘だろぉぉぉー!?さっきちゃんとアバター設定したのに!?普段の俺じゃ絶対にあり得ないサラサラヘアーにしたのに!男前な二枚目フェイスを作るのにも苦労したのに!顔も頭も元の俺のままじゃねーか!…ううっ、不幸だ…」

 

「ああっ!?ちょっとアンタ!やっと見つけたわよ!!今までどこ行ってたのよ!?おかげですっごい探しちゃったじゃない!」

 

「んぁ?お、おいお前!御坂か!?お前その顔、現実のお前の顔そのまんまじゃねえか!流石にそれはマズイだろ!リアルの知り合いがこれから増えたら色々と面倒だぞ!」

 

 

噴水の淵にもたれかかり落胆する上条に声をかけるのは、同じくSAOにログインした御坂美琴である。しかし、彼女の容姿もまた、上条と同じように現実の彼女の容姿と瓜二つだった

 

 

「……はぁ?この顔はみんながみんな現実のそのままに今さっきなっちゃったでしょうが。それに、今はそんなこと気にしてる暇じゃないわ、どうやってこの世界から脱出するか考えないと…」

 

「・・・はぁ?みんながみんな現実の顔になった?この世界から脱出?なんだ御坂、お前ナーヴギア被って頭おかしくなっちまったのか?」

 

「・・・は?な、何よアンタ!さっきの話聞いてなかったワケ!?」

 

「さっきの話も何も、俺は今この世界に来たばっかなんだ、まだチュートリアルも何も始まってねーよ」

 

「……あー、分かったわ。いい?これからする話は全部本当よ、嘘じゃないわ。その耳かっぽじってよく聞いてなさい」

 

「…?お、おう」

 

「まず自分のメインメニュー画面を開いて、ウィンドウを操作してログアウトしようとしてみなさい」

 

「え?今さっきSAOにログインしたのにもうログアウトすんのか?」

 

「いいから早くする!」

 

「うお!?わ、分かったよ…えっと、さっき読んだ取扱説明書通りなら…こうか?」

 

 

上条が右手を振り下ろすといくつもの項目に別れたメインメニュー画面が現れる、そしてそのタッチパネルを操作し、さきほどゲームの取扱説明書で読んだ通りにログアウトの手順をたどっていく

 

 

「えーと、確かここでログアウト……ってアレ!?ログアウトがねぇ!?どうなってんだ!?押しても何も反応しねぇ!バグか!?」

 

「やっぱり…さっきの話聞いてないどころかログインもしてないから聞けなかったのね…いいわ、勿体振る時間も惜しいし、要点だけ掻い摘んで説明するわ」

 

「・・・私たちは、このゲームの…このアインクラッドの100層を突破してゲームをクリアしない限り、このゲームからログアウト出来ないの」

 

「・・・・・はぁ?」

 

 


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