とある魔術の仮想世界   作:小仏トンネル

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第40話 白竜

 

「へっくしょん!」

 

 

上条当麻とリズベットが訪れているここは第55層の西の山。例えどんな季節だろうとこの層から雪がなくなることはなく、所によっては年間通して猛吹雪が吹き荒れている氷雪地帯だ。気温は氷点下に至ることはもはや当たり前で、生半可な装備ではその寒さを凌ぐことは出来なかった

 

 

「うう〜、フィールドがまるごと氷雪地帯だなんて聞いてないわよ…あぁ〜寒ぅ〜…」

 

「おーい?大丈夫かーリズベット?」

 

「大丈夫よ!それと呼ぶなら『リズ』だけでいいわよ!みんなそう呼んでるしその方が慣れてんの!」

 

「はいはい分かったよリズ」

 

「調子に乗るなぁ!」

 

(う〜でもやっぱ寒ぅ〜…)

 

(・・・ったく本当に素直じゃねーな〜…エギルの言ってた通りだぜ…寒いなら寒いって素直に言えばいいのに)

 

 

リズベットを見ながらそんな風に思い、上条は自分のメニューを開きウインドウを操作し毛皮のコートを取り出してそれをリズベットに向けて投げ渡した

 

 

「わぷっ!?」

 

「それ着とけよ。少しは寒くなくなると思うぞ」

 

「あ、アンタは大丈夫なの?」

 

「大丈夫だよ。いいから早く着とけ。ここでお前に凍えられても後で俺が困っちまうんだよ」

 

(ったく…コイツ一体どこの御坂さんなんですかね…何で上条さんの周りにはこう素直じゃない子ばっかり集まるんですかね〜はぁ〜不幸だ…)

 

「・・・暖かいなぁ」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「わあぁぁぁ〜!きれ〜〜!」

 

 

かくして上条とリズベットの2人は山の頂上にたどり着き噂のドラゴンが現れる場所にたどり着いていた。2人を出迎えたのは一面を覆い尽くさんばかりのクリスタルだった

 

 

「あはははっ!はははっ!」

 

 

リズベットは水晶に反射して写る自分の顔が面白いのか、水晶で遊んでばかりだった

 

 

「おいなぁ、リズ」

 

「ん〜?な〜に〜?」

 

「転移結晶の準備しとけよ」

 

「・・・もう、分かってるわよ」

 

 

リズベットはむすっとした表情をしながらもその手に転移結晶を持った

 

「それと、敵が来たらどこかその辺の水晶に隠れて出てくるなよ。分かったか?」

 

「なによ!あたしだって素人じゃないんだから手伝うわよ!大体アンタ!何考えてるか知らないけどそんな初期の武器で勝てると思ってんの!?」

 

「・・・はぁ、俺の闘い方はそもそも誰かとコンビネーション組むのに向いてねぇんだよ。まぁこの後見てりゃ分かるさ。見てからでも遅くねえからどうしても不安だったら出て来い」

 

「・・・分かったわよ。じゃあとくと見せてもらおうかしら?そのアンタの闘い方ってやつを。もっともどうせその武器じゃあっという間にやられてあたしに頼らざるを得なくなるでしょうけどね!」

 

「分かった分かった。分かったからとりあえずその辺の水晶に隠れとけ」

 

「はいはい!精々頑張りなさい!」

 

 

そう言って辺りの水晶の裏に隠れるリズベット。それを見届けると上条は自分のメニューを開きウインドウを操作し盾を取り出す

 

 

「ま、とりあえずは前まで使ってたコイツでいいか…念の為残しておいて良かったな…」

 

<グオオオオオオォォォ…

 

「「!!!」」

 

「上やん!来るわよ!」

 

「よく響くいい鳴き声してやがるぜ…ちゃんと隠れて出て来るなよリズ!」

 

「分かったわよ!」

 

バサッ!バサバサッ!!

 

「ギャオオオオオオオオ!!!」

 

 

上条の前に凄まじい咆哮と共に、身体のほとんどが水晶で覆われた白いドラゴンが現れた。そしてまるで挨拶と言わんばかりにブレス攻撃の構えを取る

 

 

「ブレスよ!避けて!」

 

ゴゴゴゴゴゴォォォ!!!

 

「なんだこういう攻撃か。なら楽勝だな」

 

 

そう言うと上条は盾を構えた左手を降ろし、右手の平を目の前に突き出す。すると彼の右手に触れた瞬間、白竜のブレスが消え去った

 

 

パキイィィィン!!!

 

「・・・え?」

 

(元々ブレス系攻撃はスキルに分類されるからな。この右手で触れれば打ち消せない訳じゃない。さて、じゃあ次はこっちからいきますかね…)

 

「オラァァァ!!」

 

バッゴオォォン!!

 

「ギャオオオオォォォ!?」

 

 

あくまでも肉弾戦で白竜と渡り合う上条。物理攻撃は盾で防ぎ、ブレスは右手で打ち消しながら、敵の隙を見つけては右手の拳を叩き込む。もはや白竜は上条に手も足も出せず、上条のワンサイドゲームである事は火を見るよりも明らかだった

 

 

(戦ってる…あんな大きいドラゴンと…素手で?すごい…まるで無駄も隙もない洗練された立ち回りも…あの重い一撃を盾で防ぐ筋力も…ブレスを打ち消しながらパンチを打つあの右手も…)

 

「よっしゃ!後もうちょっとだ!」

 

 

そうこうしている内にもうドラゴンのHPは残りわずか。後もう何発か上条の攻撃が決まれば倒せるという段階まで来ていた

 

 

「ほら!さっさとカタを付けちゃいなさいよ!」

 

「ッ!?ばっ、バカ!まだ出て来るなリズ!」

 

「何よ!もう終わりじゃn…」

 

 

水晶の影から出て来たリズに気づいた白竜の目が赤くひかり、ターゲットの対象を上条からリズベットへと変更した

 

 

「ギオオオオオオオオ!!」

 

ゴオオオォォォォォ!!!

 

「!?きゃああああああああ!!」

 

 

白竜が翼をはためかせるとリズベットに烈風が襲いかかる。リズベットの軽い体はあっという間に烈風に流され、その先の下にぽっかりと空いていた穴へと吸い込まれていく

 

 

「リズ!!!!!」

 

「うそ!?うそぉぉぉぉ!!!」

 

「リズ!俺に掴まれ!!!」

 

「きゃああああああああああ!!」

 

「うわああああああああああ!?」

 

 

上条がリズベットの元へと走り、穴の中に飛び込んでリズベットの体を辛うじてキャッチし離さないようにキツく抱き締める。そして2人は悲鳴と共に底の見えない穴の闇へと消えていった

 

 


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