とある魔術の仮想世界   作:小仏トンネル

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第37話 結末

 

「何よ…アレ…」

 

 

御坂美琴は彼らの戦いの一部始終を見ていた。一度は自分達も含めて辺り一帯を覆った一方通行の黒い翼も、上条当麻の肩口から飛び出した「何か」も

 

 

(分からない…何も見えない…けど…でも、感じる…多分『アレ』はあの時のものと同質のもの…大覇星祭の時の私の暴走を最後に止めた『何か』と…)

 

「アイツは一体…なんなの…?」

 

「・・・アイツの事でテメエが知らねぇ事を…私が知るわけねぇだろうが」

 

 

麦野も自分の戦いの手を止めて彼らを見入ってしまっていた。目の前には憎らしくて仕方ない美琴がいるはずなのに、彼らを見ずにはいられなかった。それほどまでに異質だった。一方通行の黒翼が。そしてそれを超えるほど凄まじいと感じた。上条当麻の中から出てきた「何か」が

 

 

ドサリ…

 

 

そして2人が倒れた。上条当麻が最後の一撃を放ってうつ伏せに。一方通行が上条の一撃を食らって仰向けに。まるで、以前自分と瓜二つの顔をした妹を最後まで守り抜いた時と同じように

 

 

「!?ヤバい!!」

 

 

倒れた上条を助け出す為、美琴が彼の元へと全速力で駆け出した

 

 

「!?チッ!みすみす逃すと思ってんのかよぉ!!」

 

ドゥン!!!!

 

 

彼らに気を取られていた麦野の敵意が美琴に戻る。緑の閃光が美琴に向けて放たれた

 

 

「邪魔すんじゃないわよ!!!」

 

バヂッ!!!!!!

 

 

だが美琴が電撃でその軌道を逸らした。そしてベルトポーチから転移結晶を素早く取り出し、上条当麻の体に触れた

 

 

「転移!マーテン!!」

 

シュン!!

 

「ッ!チッ!!クソがっ!!」

 

 

麦野が怒りに身を任せて地面を蹴ると枯葉が寂しく舞った。そして少し周りを見渡してから一方通行に近寄った

 

 

「おい、第1位。テメエはいつから天体観測なんかが趣味になったんだ?」

 

「・・・・・」

 

「・・・ったく、せめてHPぐらいは回復しとけ。今のテメエの残りじゃ小石に蹴つまずいただけであの世行きだぞ」

 

「・・・・・」

 

「おい、せめて返事ぐらいしろっつの。死にたきゃ死ぬでさっさとしろ」

 

「・・・おいババア」

 

「あぁ?」

 

「俺は正真正銘負けたんだぞ?何も言わねェのか」

 

「別に。そもそも私なんざ超電磁砲とやり合って勝ち目がねぇとアンタを呼んだんだ。それに私があの男とやり合っても多分結果は同じだ。今さら何も言う気にはなれねぇよ」

 

「・・・そォか」

 

「・・・だがありゃ一体なんだ?私にも見えなかったぞ。テメエの翼の時もそれなりに面食らったが、ありゃもう人間の出来る範疇を超えてる。そういう意味じゃ、あのクソッタレないつかの『天使』と同じだ」

 

「アイツのアレに関しちゃ俺にも分からねェ…ヤツとは一度、学園都市でも闘りあったがあンなのは出てこなかった」

 

「ったく、本当に学園都市の奴らはどんだけの事を隠してやがんだよ…」

 

 

そう言って麦野は呆れたようにため息混じりに自分の頭を掻きむしった

 

 

「・・・テメエは俺に貸しを作らせてやると言ったな」

 

「あぁ、言ったわね」

 

「なら今その貸りを返せ」

 

「どうやって?」

 

「俺はこの組織を抜ける」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

「はん。まぁそんなとこだろうと思ったわ」

 

「止めねェのか?」

 

「何?止めて欲しかったわけ?ま、お生憎様だけど組織を辞めようと思ってる人間をいつまでも置いておけるほど私はお人好しじゃねーんだよ。そういう奴が1人いるだけでそれは組織全体の士気に影響すんだよ」

 

「・・・あァ」

 

「それに、ウチの組織は元々『そういう組織』だ。心に一抹の迷いでもあれば成り立ねぇんだよ」

 

「そォか」

 

「・・・アンタも見つけられると良いわね、自分の守りたいモンが」

 

「あァ?」

 

「ったく、こんなん私のガラじゃねーっつの…」

 

「・・・・・」

 

「まぁとりあえず、アンタはアンタでやるべき事があんだろ?だったら精々頑張りな」

 

「・・・テメエにはあンのか?守りてぇモンが」

 

「さぁ?あったとしてもとっくに忘れちまってるよ。そんなもん」

 

「・・・・・」

 

「それじゃ、精々頑張んなさい」

 

スタスタスタスタ…

 

 

麦野のはそう言い残すと、ゆっくりと歩きながら十字の丘から姿を消した。もう彼女が振り返ることはなかった。それはもう彼女と一方通行の歩む道が別々の物だと理解するのが容易い事だったからだろう

 

 

「・・・とりあえず回復だなァ…」

 

 

そう言うと一方通行は自分のアイテムストレージから回復アイテムを取り出して飲む

 

 

ゴクッゴクッ…

 

「・・・ッハァ。…なァ、クソガキ」

 

 

一方通行は月に右手を伸ばし、現実世界で自分が守り抜くと誓った小さな少女を思い浮かべる

 

 

「俺なンかが…アイツを守るって誓っていいのかよ…アイツにはもう…アイツを守れるだけの力を持った野郎がいンじゃねェか…」

 

「俺は…テメエだから一緒にいてェって思えたのかよ…なァ…打ち止め…」

 

 


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