とある魔術の仮想世界   作:小仏トンネル

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第35話 世界の法則

 

「一方通行…!」

 

「・・・オリジナルと…あん時の…」

 

「まさかお前までこっちに来てるなんて…」

 

 

麦野がコールで呼び出したのは学園都市最強の男、一方通行だった。御坂美琴はその男の顔を見るだけで怒りが頂点に達しているかのような表情を浮かべ、上条当麻は真剣な瞳で一方通行の赤い眼を見据える

 

 

「でェ?ババア、俺ァこれからどうすりゃいいンだ?」

 

「・・・相変わらずクソムカつく野郎だなテメエは…まぁいい、そこはこの際後回しだ。そっちのツンツン頭を殺れ。手段は問わねぇ。私は超電磁砲の相手をする」

 

「・・・殺すのか?」

 

「当然だ」

 

「・・・・・」

 

 

麦野の言葉に数秒黙り込む一方通行。その胸の中には何があるのか、躊躇なのか、迷いなのか、それとも狂気なのか。それを知る者は一方通行のみだ

 

 

「・・・なら条件が1つある」

 

「条件?んだよ」

 

「2人とも俺にも殺させろ」

 

「「!?」」

 

「おいおいマジかよ、2人とも自分で殺してぇだなんて随分な悪党だなテメエも」

 

「オマエの目的はあくまで超電磁砲を痛ぶることなンだろ?だったら別にそれは止めやしねェが、殺しは俺にやらせろ。その条件が飲めねェンなら俺は降りる」

 

「・・・しゃーねぇがそれでいいだろう。じゃあ私はお前があの男を殺るまでの間、超電磁砲の相手をする」

 

「あァ」

 

そう言うと一方通行は片足をほんの少しだけ上げる

 

「ッ!!ヤベェ!美琴!来るぞ!」

 

「分かってるわよ!死ぬんじゃないわよ!互いに!」

 

「ほらよォ!!!」

 

ゴパアアアアアァァァ!!!

 

 

地面が音を立てて割れる。一方通行が足の爪先で地面を軽く小突いただけで。コレこそが学園都市最強である彼の能力。ありとあらゆる力の向きを変える能力「ベクトル操作」である。地面を分けた衝撃が上条と美琴を分断させる。そして2人の前にそれぞれの相手が正面に立つ

 

 

「ほぉらぁ!ちゃんと回復したし第2ラウンドと行くこうぜぇ!?超電磁砲!」

 

「ちっ!来なさい!」

 

「言っとくけど、さっきはあんな風に話してたけど私、アンタを痛ぶる気はあっても、あいつに殺しを譲る気はないからな」

 

「なっ!?」

 

「テメエが私を見下してる時点で、テメエはブ・チ・コ・ロ・シ確定なんだよクソがァァァ!!」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「クソッ!!持ってて当然だとは思っちゃいたけど、やっぱりアイツもちゃんと自分の能力をユニークスキルで再現してんのかよっ!」

 

「よォ三下ァ。テメエと闘り合うのは『アイツら』ン時以来かァ?っつーこたァ1年ぶりだなぁ…お前も少しは強くなってンのか?一丁前に盾なんか構えちまってよォ」

 

「この世界のシステムでならお前に負けない強さを持ってるつもりだ!…ん?待てよ?お前『も』?ってことは…!?」

 

「まぁ流石にいきなり切り札は出したりしねェがよォ…どうせ闘うンなら楽しもうぜェ?まぁもっとも、あン時みてェなヘマは二度としねェけどなァ!三下ァ!!」

 

ダンッ!!ギュンッッ!!!!

 

「ッ!!早っ!?」

 

「ウルアアアァァァ!!!!」

 

バゴンッッ!!!!

 

(ッ〜〜〜!?ちゃんと盾で防いだのにパンチの衝撃がっ!?)

 

「ゲヒャハァ!今のは辛うじて盾で防いだか…だけど次は気をつけろよォ?この世界は血流や生体電気なんてもンがねェからそうゆう殺しは出来ねェが…ベクトル操作したパンチは死ぬほど痛ェぞォ?それこそ一発でテメエのHP削りきっちまうかもなァ!?」

 

ゴウッッッッ!!!!

 

「どわっ!?」

 

 

次いで上条を襲うのは一方通行が操作した烈風。風速40mは超えているであろう烈風にたまらず上条の身体は紙切れのように後ろに吹き飛ばされ、HPを削られながら尻もちをつく

 

 

「オラオラどしたァ!?この世界のシステムでなら俺に負けねえ強さを持ってんだろォ!?だったら見してくれよその強さをよォ!」

 

「ッ!!オラァッ!!」

 

ブンッ!!

 

ギィィン!!

 

 

上条は自分の盾の持ち手から左手を引き抜くと、一方通行に向けて投げ飛ばすが、一方通行の誇る「反射」の前に呆気なく弾き飛ばされた

 

 

「遅っせェなァ!!そんなの当たるわけねェだろうがァ!!」

 

ドゴッッッ!!!

 

「!?!?ガハッ!?」

 

「盾に気を取られすぎだ。『あっち』じゃそうも行かなかったが、『こっち』じゃ早さなんてスキルが上がればでどうとでもなるんだよ、最強」

 

 

敏捷力にモノを言わせたスピードで一方通行の懐に飛び込む上条。そしてその右ボディブローが一方通行の反射を潜り抜け、脇腹に突き刺さりHPを半分ほど減らす

 

 

「チッ!クソがッ!!ウネウネ動いてんじゃねェ!!」

 

ガボンッ!!!!

 

「うおぉっ!?」

 

 

一方通行の足が地面を踏みつけると地面が爆散し辺りに大量の土煙が上がり、辺り一帯が見えなくなる。確かにここのフィールドには土と枯葉ばかりで殺傷力のある石はないが、一方通行のベクトル操作ならばなにも石などで直接の攻撃を狙わなくてもこうして相手の目くらましに使うことも出来る

 

 

(これでヤツの視界は封じた!それは俺もだが、俺はテメエの位置をしっかり記憶してンだよォ!これでテメエに一撃…!)

 

バキイイィィィィッ!!!!!

 

(ッ!?なんっ!?)

 

「残念だったな、俺にぶつけられるような石ころがなくて」

 

 

上条の死角から襲いかかったはずの一方通行を逆に襲ったのは、彼の右手による幻想殺しの一撃だった。彼の底上げされた筋力から繰り出される一撃はまたも一方通行の反射を無効にしその顔面を捉え、二発目の攻撃にして一方通行のHPバーを赤ゾーンまで削った

 

 

「ガハアァッ!?な、何でだクソッ!?」

 

「索敵スキルだよ。お前は上手く俺の視界を塞いで隙を作ったと思ったかもしれないが、索敵スキルを使えばお前の姿は例え土煙の中からでも透けて見えちまうんだよ」

 

「チィッ!クソが!!たかがゲームのシステムを使いこなしてるぐれェで調子に乗りやがってェ!!」

 

「悪いが、ここは学園都市じゃない。お前が最強でいられるのは学園都市の中だけなんだよ」

 

「ッ!!!!こンのクソッタレがァァァァァ!!!テメエだけは絶対にブッ殺してやンよォ!三下ァァ!!!」

 

ズオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォッッッッ!!!!

 

「なっ!?」

 

 

その瞬間、世界が殺意で塗り潰された

 

 


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