とある魔術の仮想世界   作:小仏トンネル

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第34話 原子崩し

「原子…崩し…!」

 

「よぉ…超電磁砲。あん時の決着を今ここでつけようかぁ!!」

 

ブォン!ブォン!ブォン!

 

 

麦野の頭上に3つの緑色に発光する球体が現れる。粒子、または波形を状況に応じて示す電子をどちらでもない「曖昧な状態」に保ち、それを強制的に操り、球体にしたり光線として発射することで周囲に絶大な破壊をもたらすのが彼女の能力「原子崩し」である

 

 

「出たー!!リーダーのユニークスキル!原子崩しー!」

 

「・・・あんた達はそっちのツンツン頭を殺しな。私はこっちの女を殺す」

 

「了解」

 

 

2人の手下が上条当麻に襲いかかってくる

 

 

「来るぞ美琴!あっちが言ってるように俺がこの2人を引き受ける!お前はリーダーの方を頼む!」

 

「ちょっ!ちょっと待ってよ!わたs…」

 

「お前も持ってんだろ!?お前の能力をユニークスキルとして!!口外はしねぇしここじゃ誰も見てねぇからここでは遠慮なく使え!じゃなきゃ本当に殺されるぞ!」

 

「!!!アンタ…知ってて…」

 

「お前のこと考えてずっと黙ってたんだ!この後で何か奢ってくれなきゃ割に合わねぇぞ!」

 

「う、うんっ…!」

 

「お喋りしてる場合かぁっ!?」

 

「どりゃああっ!!」

 

ギンッ!!

 

「チッ!」

 

「ひょおー!硬ったい盾だねー!?」

 

「お前らの相手はこっちだ!美琴!後を頼むぞっ!」

 

 

1人の手下の男が振り下ろす刀を盾で弾く上条。そして美琴が戦いやすくするためにわざと2人の敵を引きつけ距離を取った

 

 

「さぁーて、邪魔もいなくなったみたいだしこっちも始めるとすっか、超電磁砲。悪いけどあん時と同じようにはいかねーぞ?」

 

「・・・そうね。私も同じようにはいかないかも知れないわ。自分の本来の能力を使うのが久しぶりすぎて…」

 

バリバリバリバリッ!!!

 

 

美琴が自分のスキルスロットに封印し続けていた現実世界と同様の自身の能力「超電磁砲」を解放する。その途端に彼女の身体の周りには、最大10億ボルトの電力を誇る紫電がバチバチと音を立てて駆け巡る

 

 

「加減をミスってアンタを黒焦げ通り越してチリにしちゃうかもしれないわよっ!?」

 

「ほざいてろやお子ちゃまがあああぁぁぁぁ!!!」

 

ゴウッ!!

 

「でやぁっ!!」

 

バチィン!!

 

 

麦野の放った原子崩しのビームを美琴が電撃で弾き飛ばす。2人の能力に根差す物は、美琴はもちろんのこと、麦野の能力も突き詰めれば「電子」である。そこに電子があるならば2人の能力は互いに干渉し合うことが出来る。以前の戦いでそれを学んでいた美琴は躊躇うことなく麦野の光線を電気を帯びた右手で弾き飛ばした

 

 

「チッ!干渉できることを覚えてやがったのか…」

 

「お生憎様!頭も良けりゃ記憶力もいいもんでね!」

 

(実際、『STUDY』の作った『擬似メルトダウナー』の時も同じことやったしね)

 

「今度はこっちから行くわよ!」

 

バチバチッ!ズザザザザ!!!

 

「・・・?砂鉄の嵐か…趣味悪りぃな…折角の服が汚れるじゃねえかよ」

 

「服ぐらいで済めばいいけど…ねっ!!」

 

ゾンッ!!

 

 

美琴が自身の電力で発生させた磁力で辺り一帯の砂鉄を操ると、麦野の周囲に砂鉄の嵐を発生させ、それを一斉に振り下ろす。砂鉄は高速振動しているため、直撃すればひとたまりもなく、文字通りグシャグシャになる

 

 

「しゃあねぇ…面倒臭ぇがシールド貼るか…防御は領分じゃねえから癪に触るんだがな…」

 

ブォン!

 

 

麦野は3つの原子崩しの球体を薄く広げ、ドームのように自身を包み込み、即席の原子崩しのシールドを作る。そのシールドに触れた瞬間に砂鉄は焼け焦げてしまった

 

 

「流石にそんな一枚岩じゃ倒されてくれないわね…」

 

「当たり前だろうが、お互いこのデスゲームで生きてんだ。簡単に死ぬんじゃねえぞ、もっと私を楽しませろ」

 

「確かにゲームは楽しむものだけど、この世界じゃあんまり楽しめそうにないわね。でも今の戦場はこのゲームで、あの時とは違う。だから今はここのシステムに甘えさせてもらうわ!」

 

シャキィン!

 

「・・・レイピア?んなもんが私の能力に届くと思ってんのか?」

 

「やってみれば分かるわよ!」

 

ビュビュビュビュビュビュ!!

 

(ッ!?速えぇっ!?こいつ、どんだけ敏捷力を!?だがそれ以上に、こいつの剣先のスピードが並みじゃねぇ!)

 

「どう!?避けてばかりで防戦一方かしら!?」

 

「ッ!調子のんな売女ァ!だったらテメエのそのレイピアごと焼き尽くしてやるよぉ!!」

 

ビュンッ!!

 

「残念!!」

 

バジンッ!!

 

「んだとおぉっ!?」

 

「あのね、レイピアの材料は鉄で出来てんのよ。そこに鉄があるなら、私の能力が上乗せ出来る。アンタの能力だって弾き飛ばせるわ!まだまだ行くわよ!」

 

ビュビュビュッ!!ビシュッ!

 

 

何度も高速で突きを繰り出す美琴のレイピアが麦野の頬を掠め、赤い切り込みを入れる。ほんの微かにHPが減る

 

 

「ッ!?チッ!オラァッ!!」

 

ガギィン!ギリギリッ!!

 

 

麦野が腰に下げていた友切包丁を抜き放ち、美琴のレイピア目掛けて振り下ろし、その刀身が火花を上げてぶつかり合う

 

 

「ッ!? 真似、しないでくれる?アンタどうせこの世界でも能力に頼って生きて来たんでしょ?アンタのその武器の性能とソードスキルなんてたかが知れてるわよ?」

 

「けっ、余裕でいられんのも今のうちだ…その状態でもこれを弾けんのかよぉ!?」

 

ドウッ!ドウッ!!ドウッ!!!

 

「ッ!?」

 

キンッ!チュイン!チュイン!ビッ!

 

「っちょ!?あっぶな…!」

 

 

ゼロ距離からの3連原子崩し。麦野のダガーとのつばぜり合いを押し退けてから電撃を纏わせたレイピアを振り回して2つのビームの軌道を変えることに成功するが、残った1つが美琴の頬を掠め、HPを少し削った

 

 

「安心してる暇なんかねぇぞコラァァァ!!」

 

「ヤバッ!!」

 

ガギィン!!ギリギリッ!

 

「おらおら!どうすんだぁ!?このままだとテメエはその可愛い顔から真っ二つだぞぉ!?」

 

「クッ!ゥッ!!」

 

 

体勢を崩して仰向けに倒れた御坂美琴に麦野の友切包丁が襲いかかる。咄嗟に美琴はレイピアを横に構え、包丁をその刃で受け止め、2つの武器が十字にぶつかり合い互いの金属を削り合う

 

 

「あはははははっ!!安心しなぁ?テメエを殺した後であのツンツン頭の野郎もちゃーんと殺してやるからよぉ。天国でも寂しくなるこたぁねぇ…もっとも…2人とも地獄行きかもしれねぇがなぁぁぁ!!」

 

「・・・へぇ、アンタの『ソレ』、ご丁寧に柄まで鉄で出来てる訳ね…」

 

「?あぁ?何か言ったか?」

 

 

美琴の細いレイピアとは対照的な麦野が振るう巨大なダガーは、両手で持つ柄までもその刀身と同じく金属で作られていた

 

 

「そのバカデッカい包丁…しっかり持って離すんじゃないわよ!!」

 

「ッ!?クs…!」

 

「遅いッ!!!!」

 

バリバリバリバリッ!!!!!

 

「ギャアアアアアアアァァァ!!」

 

 

美琴が自分のレイピアに向けて電撃を放つ。するとそのレイピアに接している友切包丁にも電流が流れ、それを持つ麦野にも感電する。最高で10億ボルトの電圧を誇る彼女の電撃は麦野のHPを一瞬で赤ゲージまで削った

 

 

「どうやら勝負あったみたいね」

 

「く、クソが…まだ…終わってねぇぞコラァ!おいテメエら!ツンツン頭はいい!こっちを助けn…」

 

「悪いけど、お前の仲間はもうここにはいねぇよ。PoH」

 

 

麦野の呼びかけに応じるラフィンコフィンの手下の姿はもうなく、十字の丘の濃霧の中から姿を見せたのは上条のみだった

 

 

「んだと!?アイツらはウチの組織の中じゃ上層のヤツらだぞ!?一体どうやって…!!」

 

「アイツら麻痺毒の付加属性がある武器ばっか振り回すからよぉ、マジで危なかったぜ。でもま、ちゃんと盾で守りながらアイツらの武器をお返ししてやったら2人とも痺れちまったから回廊結晶で牢獄送りにしてやったよ」

 

「なっ…!このクソがァァァ…!!」

 

「さぁ〜、いよいよ手詰まりみたいね。ここらで観念するならアンタも牢獄送りで観念してあげるわ」

 

「舐めてんじゃねぇぞコラァァァ!」

 

ズドンッ!!!!!

 

「フンッ!!」

 

パキィィィン!!!

 

「なっ!?私の原子崩しが掻き消されただと!?」

 

「悪いな。俺の右手は幻想殺しって言ってな、定義はまだまだ俺にも分からんことだらけだが、この世界のありとあらゆるスキルを打ち消すんだ。ちなみに現実世界じゃどんな異能の力も打ち消す」

 

「ッ!?現実世界…そうかさてはテメエも学園都市の…」

 

「ま、そんなとこだ」

 

「さ、分かったら大人しく観念なさい。今もうこの状況じゃアンタの能力は私たち2人にはロクに当たりもしないわ」

 

 

もはや詰み。この2人に対してもう麦野の切れる札は存在しない。そう上条と美琴は思い込んでいた。しかし、それはとんだ思い違いだった。麦野は右手を振って自分のメニューを開くと、ウインドウを操作しフレンド項目からとある人物を選択し「コール」のボタンを押す

 

 

「!?動かないで!これ以上動いたら容赦無く殺すわよ!」

 

美琴がレイピアの切っ先を麦野に向ける

 

「ははは、もう遅えよ。油断したな超電磁砲。コイツに頼るのはムカつくがこうなった以上は仕方ねぇ…」

 

 

麦野のウインドウがコールを終え、麦野がコールを掛けた人物との通話が繋がる

 

 

「第1位!手ぇ貸せ!少々癪にさわるがここで死ぬよりゃずっとマシだ!この私に『貸し』を作らせてやる!悪い条件じゃねぇはずだ!分かったら今すぐ転移結晶使って来い!ついでに面白えモンが見られんぞ!19層の十字の丘だ!」

 

「!?だ、第1位ですって!?」

 

「ま、まさかアイツまでこっちの世界に来てるってのか…あの…一方通行が…!」

 

「ははは…もう後悔しても遅えぞ…私としてもアイツになんざ頼りたくはなかったが、これでも同じギルドのメンバーなんでな…一応腹は割った仲だ…こんなとこで死ぬぐらいならどんな手を使ってでもテメエらを殺してやるよぉぉぉぉ!!!」

 

シュン!

 

「「!?」」

 

「・・・来たわね」

 

「・・・ったくよォ、面白ェモンが見られるっつーから来てみれば…一体何なンですかァ?このクソッタレな状況はよォ?」

 

 

上条当麻と御坂美琴の因縁の相手とも言えるであろう、学園都市最強の男。こともあろうにこのSAOの世界で再び両者は相見えた

 

 


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